魔王少女の女王は元ボッチ?   作:ジャガ丸くん

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リハビリ!


ゲーム後の日常1

 

 

 

 

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王とは、誰よりも怠惰に生き、諸人を魅せる姿を指す言葉!

全てのNEETの羨望を束ね、その道標として寝転がる者こそが王!

故に!王とは孤高、その姿勢は多く者に理解されない故に!

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なにが言いたいかというと。

やることがなかった。

いやいや、それはいいことだ。

休めるときには休むは俺の基本方針だ。

むしろ社畜生を歩む俺に取ってはそんなひと時はオアシスといってもいい。

 

だが………

 

 

 

 

「容赦ねぇな」

 

 

 

レーティングゲームが終わり、お叱りと言う名の体罰を受けているミッテルトを視界に入れないようにしながら呟かれたそれは彼らに聞こえるでもなく霧散していく。

 

作戦会議通りとはいえなんとも呆気ない幕切れである。結果を見れば慢心してやられたミッテルトを除き、制限を付けて尚落ちたものはいなかった。

 

ライザーと小猫、そして最後に意地を見せたギャスパーは試合にこそ勝てなかったもののその評価は上がるだろう。

 

ライザーは言わずもがな。

小猫はライザーと共に終始奮闘。

ギャスパーはバロールの力を見事使いこなしたのだから。

 

しかし、それだけだ。

 

かろうじてソーナがヴィザから生き延び続けたことが評価される程度で、それ以外の者達の評価は低い。

 

特に初期に落ちた3家以上に注目を集めていたグレモリーは尚更だろう。

 

赤龍帝は大した機能をせずに落ち、グレモリー本人は殆どなにも出来ていないのだ。

 

 

 

「荒れるか?」

 

《そもそもアレに期待されてたことにボク達は驚きだよ》

 

《圧倒的名前負けね》

 

自分たちでやっておいてなんだが、本当にこれで良かったんだろうかと、俺は溜息を吐かざるを得なかった。

そんな俺の言葉に阿朱羅丸やクルルが反応するがその声色は退屈そうである。

 

 

しかし、ここで気になるのはニオ様達の目的である。彼女達クラスであればらこうなること自体は予想できていたはずだ。

 

慢心を消す為?

いや、この結果になろうと彼らの慢心がそうやすやすと消えるとは思えない。

 

力の誇示?

可能性がなくはないが、わざわざ俺たちを若手組に入れるほどではない。

 

《もっとシンプルだと思うよぉ〜》

 

 

なに?

 

 

思考を巡らせている俺にわからないのかとばかりに阿朱羅丸は声をかける。

 

《面白そうだから、それ以上に理由は必要かい?》

 

これだから年寄りどもは・・・

 

 

 

 

「やぁ、失礼するよ」

 

 

そんな折に、コンコンと小気味良い音がなり、こちらの返事を待たずに言葉と共に入室した男に、先程まで騒いでいた眷属たちも視線を一つへと集めた。

 

 

「小言か?」

 

紅色の髪を揺らしながらこちらへ向かってくる相手に目を細めながら反応すれば

 

 

「リーアたんに関しては、まぁ、レーティングゲームだからね。取り乱しはしたが小言を言う程小さな男であるつもりはないよ」

 

 

俺の訝しむ視線と言葉に対し、くくくと笑いながらそう返してきたサーゼクス。その後ろにはグレイフィアがいつものように付き添っていた。

 

 

「少しお願いがあってね」

 

「面倒ごとはいやだぞ。何せ今回のレーティングゲームで疲れたからな」

 

 

(いや八幡は動いてないじゃん)

 

俺の言葉に皆が一様に意味のある視線を送ってくるがそれは受け流す。

 

《何でアレ面白そうなら受けようよー》

 

《そうね。ほとんど小猫の特訓に出ていたせいで最近暇でしたかないわ》

 

若干2名はここ数週間が本当にお気に召していない様子だが。

 

 

「なに、大したことのない相談のようなものなんだ。実はね」

 

「こいつ人のことを殆ど無視して話し始めやがった」

 

 

魔王はみんなマイペースなのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけであいさつでもしとけ。ほらお前イケメンだから。適当にスマイル振りまいて歯を輝かせれば男でも女でも堕ちるだろ」

 

 

「おいおい。そりぁないだろ八幡」

 

 

「・・・部長この方は?」

 

「お兄様から話が来たの。いい人を紹介するからって。新しい眷属、騎士の駒を消費したわ」

 

 

 

数日後。

手を額に当てながら溜息を吐くグレモリーと軽口を叩く俺が小猫達の前に立ち1人の男性を紹介していた。

 

 

「まぁ、新メンバー兼お前らの講師その2だよ。アザゼルだけじゃあ足りないみたいだし。それに駒王の管理に関しても、人手足りなさそうだからな。シスコ・・・サーゼクスから頼まれて募集した結果、なんとか一名見繕えたから」

 

 

「見繕え・・俺は粗品か何かか?」

 

「挨拶しろよ?」

 

そんなコントめいたやり取りをする俺だが、相手の金髪イケメンは苦笑いしている。

 

 

「はぁ・・・ガイ・セシルだ。八幡とはまぁ古い付き合いでな。何度か眷属になるか迷ってたんだが、問題があってなれなくてな。今回グレモリーさんに眷属をって話が出て、八幡とサーゼクス様から推挙されたんだ。よろしく頼むよ」

 

 

 

 

キランと歯を輝かせながら笑うガイに思わずため息が出てしまう。こいつはいい奴だし実力もあるが一つ問題がある。

 

 

「そうなんだ。よろしく。僕は木場裕斗」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

木場とガイは何か気があうのか熱い握手を交わす。

 

 

「そうなんですか。塔城小猫です。よろしくお願いし「うわぁぁぁぁあああ!!?」ま……す?」

 

瞬間。場が凍りついた。

 

木場に続き眷属と聞き挨拶しようと近づいた小猫に対しものすごい勢いで遠ざかるガイ。

 

そのあまりのことに皆が言葉を失った。

 

 

 

「彼…女性恐怖症らしいのよ。八幡のとこに行けば確実に女性陣が揶揄ってくるからということで入らなかったらしいわ」

 

頭痛を感じるのか、額を抑えたグレモリーが漏れ出すようにつぶやく。

 

「………なんでうちに来たんですか……」

 

「私や朱乃、アーシアはイッセーが。小猫は八幡が居るから大丈夫だろうってお兄様が」

 

「…ほかにいなかったんですか?」

 

そんな言葉に思わず小猫がジト目になり、グレモリーを見る。

 

 

「希望者を募ったが居なかった。ガイだけが元々サーゼクスとのツテがあったのもあって頼み込まれた末に落ちたからな。頼み込まれた末に。女性恐怖症は基本日常生活だけだ。戦闘には影響ねぇよ」

 

 

「す、すまない。君自身に何か問題があるわけじゃないんだが…」

 

「……先輩………不安です」

 

「基本的にいい奴だから。剣術の腕もユウキと真っ向から打ち合えるレベルだ。あの手この手使って眷属化までしたんだ。受け入れてくれ。いい奴だから。偶にイケメン過ぎて顔面殴りたくなるくらい」

 

 

「酷い言い草だ……」

 

 

 

小猫と俺のやり取りに肩を落とすガイだが、言われてること自体は事実なので強く反論できない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明くる日!

 

 

 

「数にも負けず、禍の団にも負けず、敵の怖さにも圧力にも屈せず、丈夫な体を持ち。鍛え抜かれた力と技で忠義を貫く、そんな生徒に私はしたい」

 

 

「っちょお!?たんまっす!それは流石に、ぎゃゃぁぁぁああああっす」

 

「っ、やはり速いな…これが音に聞く星の杖(オルガノン)か」

 

「・・負けません」

 

 

 

 

 

「頑張らないと1%組手終わらないぞ?」

 

呑気な声をあげながらその様子を見るレティシアとは異なり、ミッテルト・小猫・ライザーの3人からは苦悶の声が漏れていた。

 

相対するは星の杖(オルガノン)を起動したヴィザ。本来のそれとは違い、刃が黒く染まっているが、それが彼の枷となり得ていた。

 

黒く染まったその凶刃は通常よりも遥かに重く、星の杖(オルガノン)の性能を多く削いでいる。

 

しかし、それでも十全な速さを持つそれはヴィザという老練の戦士が使うことで十分な兵器となっていた。

 

それを証明するように、3人は至る所を切り刻まれており、対するヴィザは普段と何一つ変わりがなかった。

 

 

 

「ヴィヴィヴィ・・ヴィザ翁!っちょおっと待って欲しいっす!確かに今回のレーティングゲームではウチが悪かったっすけど!毎度毎度、帰ってくるたびに修行がきつくなったら、ウチは禍の団とかと戦う前に・・・」

 

 

「ええ、では・・・」

「彼らが殺すのが先か、修行で殺してしまうのが先か・・・勝負です」

 

「ちっがーーーーう!色々とおかしいっすよ!久々の戦闘でテンションでも上がってるんっすかーーーー!!!?」

 

 

「とばっちりもいいとこです」

 

「だな。だがこちらの方が燃える、だろ?」

 

「・・・そうですね」

 

 

 

珍しく高揚しているヴィザに対し、泣き顔になりつつあるミッテルトと修行を付き合っている2人のやり合いは、夕飯の知らせが来るまで続いていた。

 

 

 

 

 

 

「本当にひどい目にあったっす」

 

「お前さんの自業自得だろぅ」

 

食後、1日のことをボヤくミッテルトに間髪入れず阿伏兎がツッコミを入れる。

 

眷属や屋敷に住まう者達が広間に集まり、各々がやりたいことをやっている。

 

特に目につくのは食後の休憩を決め込んでいる八幡だろう。某人どころか悪魔すらもダメにするソファにグデンと座っており、その腹部や伸ばした太腿には同じく休憩をするユウや恋の頭がある。

 

食器を片付けるメイド達からは微笑ましそうな視線が彼らに向けられていた。

 

 

「っぅ。それは……そうっすけど……」

 

「まぁ、これに懲りたら慢心は捨てるこった。んなもん持ってて百害あって一利なしだ。慢心と油断、余裕は全くの別もんだからな」

 

「旦那が気にしてないとはいえ、本来なら姉御達にしばかれるはずだったんだ。ジィさんには感謝しとけよ」

 

「・・・わかってるっすよ」

 

 

フリードのいう事実に、ミッテルトの声色は更に落ちていく。

 

ヴィザが扱き直すと言わなければ、間違いなく彼女はシノン達にしばかれていただろう。それも死んだ方がいいとすら思えるように。

それだけ今回のことはマズかった。

 

敵に倒されるならまだ良かった。

自身の力及ばないところであれば。

だが今回は違う。

 

ミッテルトは本来であれば制限されていても十分勝てる相手に負けたのだ。

それもその相手自身ではなく、自身の視野の狭さが招いた、フレンドリーファイヤーによって。

 

 

当然黒歌も小言はもらっていた。

 

しかし、彼女はそもそも、視覚を封じていたのだ。加えて多大に魔力も仙術も使っていたとあっては、咄嗟の判断が遅れるのは仕方のないこととも言えた。

 

 

それ故に。

ただ、光力の使用を禁じられていただけのミッテルトの失態は重いのだ。

 

八幡からすればさほど重要な戦ではなかったが故に気にはしていないが、眷属達がそうではなかった。

 

 

自分たちの失態は主人たる八幡の失態。

 

故に細心の注意を払った。

相手が格下であっても、制限をつけていても。その中で十全に力を出せば、完全勝利など容易い戦だった。

 

 

 

「この汚名は必ず返上するっす」

力強く彼女は呟く。

 

自身も理解しているからこそ、ミッテルトは落ち込み、その心中では激しく燃えていた。

次こそはと。

 

彼女の言葉に耳をすませていた周囲の眷属達はただその言葉に笑みを深めるのだった。

 

 

 

 

 





日常少し続くよ!


次回の日常はグレモリー!!

新メンバーがまさかまさかの人を推薦入部!
新メンバーとの絡み回ですね!



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