次回以降の話を早めに書き始めたかったので。
まきはしたものの久々なので試験投稿
序章~正史との乖離~
夏休み明け。午前中で授業が終わるこの日はいくつかの変化がみられていた。
まず1つ目が複数人の転校生。2年の教室では金髪のイケメン男子と空色の短髪美女が話題の中心にいる。
言わずと知れたグレモリー眷属のガイと八幡の眷属であるシノンである。
話すときはクールに、しかし至近距離まで近づくとビクつくガイに周囲は面白そうに話しかけている。
一方のシノンはといえば、当たり障りのないような受け答えのみにとどまっていた。
元々シノン自体が人間界に来る予定はなかったのだが、直近、眷属たち一堂に遠出が控えるように指示が出ていた。それを受け、普段であれば仕事に駆り出されることの多かった面々は余暇の時間が与えられている。そこで彼らが目を付けたのが八幡の人間界での生活である。
もはやワーカーホリックといっても過言ではないほど、普段の言動が一致せず働いている主人に対してストッパー兼世話役としてシノンが人間界に駆り出された。
学校に通うシノンとゼノヴィアが人間界に八幡と在住。
ほかの面々は領地運営及び周辺での簡易な任務に就いていた。
当然世話役なんてと反発しようとした八幡ではあるが、放っておけばラーメンしか食べなくなる、仕事もやり続けるといったシノンの言葉と視線に縮こまってしまった。
── それでいいのか主人よ ──
2つ目の変化は学園災の1人である兵藤だ。
いつもであれば恒例のメンバーで猥談に華を咲かせているのだが、どういうわけかそうした言動が見受けられない。周囲は彼が別人ではないかと疑い、仲間の2人は体調でも悪いのかと心配した。
1部生徒の中には休みの間、遂に警察のお世話になったのではといううわさが流れ始める始末である。
それに対して兵藤は何も答えなかった。
まぁ、さらに少数の生徒には新入生であるガイとまるで莫逆の友であるかのよう語り合っている姿から、そちらの扉を開いたのではないかと勘繰られ始めていた。
── ウスイ本まったなしである ──
そんな普段とは違う学園生活が過ぎた後、オカルト研究部部室でも普段と違う光景が見受けられた。
「告白された?」
「はい…」
顔を赤く染め上げるアーシアに対して胡散臭気に話を聞く八幡。その横では腕を組んだシノンが顔を顰めていた。
「んでなに?受けるの?」
「い、いえ!私にはその…ぃしぇーしゃんが……」
ごにょごにょと語尾を弱めていくアーシアだが、まぁそれはそうだろうと2人は聞いていた。彼女が兵藤に対して好意を抱えているのは周知の事実である。それをどこぞの貴族が昔助けてもらいました。惚れました。今ようやく向かいに来れました。結婚してください。
等といわれたところで、ノーセンキューである。
「しかし、アスタロトがねぇ」
《身体目的だね》
《性癖ね》
ぼそりとこぼれた彼の言葉を吸血鬼の2人が拾い上げる。それを聞いたアーシアはボンッとトマトのように赤く染まってしまった。
《ウブだねぇ》
《まぁ、聖女なら仕方ないわね》
好き勝手言っている2人がケタケタと笑っている。
そんな2人とは対照的に八幡はシノンへと視線を移せば、彼が言いたかったことを理解したのか、2人そろってため息を漏らした。
「まぁ、好きにすればいいんじゃない?グレモリー眷属内のことなんだから、私たちはノータッチね」
「許すはずないじゃない!!!!」
これ以上関わるのは面倒くさいとばかりに呟かれたそれは大音量の叫び声に半ばかき消された。発生源であるグレモリーはこめかみにしわを作りながらフルフルと震えていた。
「アーシアは私のーーー」
声量を落とさずに叫ぶ彼女に嫌気がさしたのか、シノンは目には見えない薄い膜を自身と八幡の周りに付与する。
すると2人はまるでグレモリーの声が聞こえていないかのように平然としながらお茶を飲み始めた。
「ーーーーー」
いや、実際に音は遮断され、2人だけの会話空間となったといってもよいだろう。
『それでどうするのよ。関わりたくはないけど、次のゲームはこの2家よ。それにディオドラって言えば』
『ああ、例のやつだ』
『面倒事よね?』
『確実にな。多すぎだろ、次のレーティングゲームは北欧のオーディンだけじゃなくあの骸骨まで来るんだぞ』
《あの骨は処分でいいと思うよ》
《犬のえさにでもしちゃいなさい》
その中での話は重々しい。
セラフォルー、ニオという強大なバックアップと独自の情報収集力をもつ彼らだからこそこの先起こる面倒事を予感していた。
ましてや骨・骸骨と呼ばれる存在を示唆した瞬間、吸血鬼2人はあからさまにいやそうな顔をする。
『…シノン、今日の夜の眷属全員の予定ってわかるか?』
しばらく続いた沈黙の後、何かを決意したように彼は彼女の瞳をのぞき込む。
『ないわ、どこかに私用で出かけていなければ特に重要なことはないはず。最近の命令で出かけるにしても遠出はしていないはずだし』
『なら眷属全員を絶対に集めろ。場所は人間界のうちだ。お前らに会わせたいやつがいる』
その真剣な声色と普段使われることのない絶対という言葉に、彼女は普段の軽い形ではなく、眷属としてふさわしい対応を見せた。
『了解しました。すぐに連絡します。でも会わせたいやつって…』
まさかという目で彼女は目を細めた。
その視線から逃れるように彼の顔は明後日の方角へと逃げていく。
『…話してはいるんでしょうね?』
『ニオ様は知ってた。あとはリタとミッテルトは知っている』
知ってたという言い回しの言葉に対して予想が当たったのか、彼女は先ほどとはまた違った種類のため息をこぼすのであった。
「お主が来るとはのぅ。どういう風の吹き回しじゃ?」
「ファファファ、なに。かの鬼を宿したものがいるのであれば気にもなるというものだ」
「相変わらず、ガチャガチャとうるさい身体じゃのぉ」
「蝙蝠が、相変わらず口の減らないことじゃ」
レーティングゲーム当時、貴賓席では異様な光景が広がっていた。
前回はいなかった隻眼の老人とまるで死そのものを体現している骸骨。
そしてそれらを前にしても普段と変わらない様子のニオ。
しかし周りでは気が気ではなかった。
何せニオが相手しているのは北欧アースガルズの主神であるオーディンとギリシア勢力、オリュンポスの3柱神の1柱であり、冥府の王であるハーデスだ。
どちらも世界でも指折りの実力者であり、権力者である。
4大魔王でさえハーデスが来るのは予想外だったのか緊張と警戒心をあらわにしている。
「っかっかっか。おかしなことはするなよ?」
「ファファファ、なに、別におかしなことをしようと等思ってはおらん。わしは当たり前のことしかせんのでな」
「ほー、当たり前のことか?」
「そうじゃ、あたりまえのことじゃ」
「っかっかっかっかっかっかっか」
「ファファファファファファファ」
「おい、これ一番危ないの儂じゃね?」
黒い気配を隠そうともせず話す2人に対して、来る時を間違えたかな?と冷や汗を垂らしたオーディンは悪くないだろう。
かくして、時代は動き始める。
ここは正史の世界ではない。
数多くのイレギュラーが存在している。
本来ではいなかった存在が。
本来ではたどらなかった物語が。
今まさに開幕しようとしていた。
「ぬかりなし。すべてはハーデス様のお心のままに」
ある者たちは自身の神の為にすべてを尽くすだろう。
「ふん、忌々しい偽りの王が。だが、今日冥界は生まれ変わる!」
ある者は己の野望の為に動くだろう。
「ようやく、ようやく会える。今ここであなたの真意を確かめる。何故あんな小僧に仕えているのか。何故あの時いなくなってしまったのか。今日こそ決着をつける」
ある者は知るためにその命すらかけるだろう。
「フフフ、たーのしみだなぁ。どんな結末になるんだろう」
ある者は出向かずとも行く末を傍観しているだろう。
「…アシェラ?でも違う…あれはなに?」
ある龍は疑問を解きに向かうだろう。
だが、間違いなくわかっていることは。
これから先訪れるものは3大勢力の戦争以降最大規模の戦闘だということだけである。
最後に笑うのは神か?旧勢力か?新勢力か?
それを知るものは未だいない。
「……ようやく、戦える。…彼と、みんなと。……たのしみ」
そうつぶやく少女の傍らには鎖がキリキリと音を立てて1本、また1本と鎖が解けていく本がカタカタと揺れていた。
次回以降戦闘やいろんなキャラの過去関連も出できます。
時間あるときに書き溜めていくので気長にお待ちくださいませ。
~PS~
感想が心に刺さる今日この頃……
作者、ハイスクールDDはアニメ、SSのみの回覧ですが、
その他関連作品などは小説網羅済みですorz
自分が書いてみたいなぁって思う範囲で書いてますのでYO☆RO☆SI☆KUゞ