どぞどぞ
「剣を捧げた主人だと?天命を自身で決めるだと?その結果があの小僧か?あんなガキが、あんな存在があなたの全てを捧げるに足る男だと!!」
ヴィザの言葉に拳を握り血を滴らせたクルゼレイが牙を剥き出しにしながら叫んだ。
「ふざけるなぁ!!!!貴方ほどのお方が、あの様な小僧の下につくだと!配下に甘んじるだと!!?ただ、運良く鬼呪龍を宿しただけの存在に。僅か10数年しか生きていない悪魔の何たるかも知らぬガキに忠を尽くすというのか?あれが、父上以上の存在だと!!!!」
ありえない。
自身の許容を大きく超える言葉にクルゼレイ・アスモデウスは声を荒げる。
「ただの人ではないか!ただの醜い生き物だ!今の悪魔の上層部と同じだ!自身の欲求を優先する。どこまでも利己的な存在だ。あの小僧の過去を知らないとは言わせない。ただ自身に酔っているだけの道化ではないか!!!」
甥の嘆きに、ほんの僅かにヴィザの瞳が細められる。
「間違っている。今の悪魔のその在り方も貴方も。何故だ?貴方ほどの方があの小僧の矛盾に気づかないわけもない。今の上層部の滑稽さを理解できないわけがない。それなのに何故貴方がそれを許容しているんだ!!!」
怒り、困惑、悲しみ。
あらゆる感情をごちゃ混ぜにしながらも甥は叔父へと問い詰める。
長年考えるもついぞ答えの出なかった問いの答えを知る為に。
「ええ、理解していますとも」
ーその程度のことー
そんな彼に対してヴィザは極めて静かに返答する。
「上層部が老害であることなど1から10まで解っている」
ーその在り方も考え方もー
人に頼らなければ種の存続が危ういと自覚しながらも人を下等種族と見る考えも。
自身たちの立場を必死になって保持しようという在り方も。
ー嫌というほど知っているー
「ええ、解っているのです。八幡殿が矛盾を抱えているなど」
自身の主人のことは1番解っている。
矛盾の最たる例が中学の時に起こった事件だ。そもそも、あの時彼がそこまでやる必要など本来はなかったのだ。彼がわざわざ自己犠牲などしなくてもよかった。しかし彼は行った。それが最善だと信じて。
自身がセラフォルーと同じ方法などできないと知ってるのに。
他者への勝手な期待はやめたと言いながらも、なお期待を止めることのできない矛盾を抱えながら。
「しかし、それでもなお私は八幡殿に仕えた。ええ。理解していますよ。過去の彼が抱えていた矛盾には。理解していますとも。彼が今抱えている矛盾も」
ーだがそれがどうしたー
その言葉に顔を歪ませていたクルゼレイは呆けてしまう。
「完璧な存在などこの世には居ませんよ。人も悪魔も神でさえも何かしらの矛盾を抱えている。何かしらの過ちを犯している」
ーだからこそ……ー
「私は八幡殿を主人とした。ええ、クルゼレイ。貴方の言う通り彼は〈まだ〉10数年しか生きていないのです。だからこそ八幡殿の未来に私は賭けた。鬼呪龍と出会い、セラフォルーの女王となり、数々の矛盾を痛みを自己陶酔を抱えながらも、僅かに10数年でここまで成長し得た八幡殿に」
まるで甥に自慢するように彼は話しかける。
「自身に酔っている?可愛いものでしょう?数千年もの間、只管に抜き身の刃であれと自身に念じ、数年前までその在り方酔っていた私と比べれば」
自重気味に笑いながらも今度は叔父として指摘する。
「矛盾を抱えている?それは貴方もでしょう?クルゼレイ。禍の団の悪魔達もまた人間を下等生物と見ている。そんなところに在籍している貴方もまた酷い矛盾を抱えている」
ー違いますか?ー
その言葉にクルゼレイは顔を再び顰めさせた。
「主人が道を間違えそうになるのであれば我らが正しましょう。我らが叱りましょう。3年前のように。主人が自己陶酔を続けるのであれば我らが醒ませましょう。私自身がかつて救われた時のように」
続けるヴィザの瞳はまるで少年のように光を宿していた。
「その先に生きる八幡殿のことを私は見てみたい。僅か10数年でここまで成長した彼がこれから先悪魔として万年生きた時、一体どれ程の存在になるのか。どのような志を持つのか。そして何を成すのか。それを私は近くで見ていたい。その歩みを共に感じたい」
ギリッと音が聞こえそうなほどに歯を食いしばるクルゼレイへと告白しながら、ヴィザは手にしていた杖を強く握った。
「ええ、ええ。小僧大いに結構。最初から完成された存在の行く末など面白くもなんともない。不完全で不安定で不相応なことなど百も承知。それでこそ、行末を見る甲斐がある。そも、この身もまた未だ未完の身。八幡殿と共に歩いてから多くの者に出会い、自身の弱さを知った。自身の未熟さを知った。ならばこそ、主人たる八幡殿と共に歩き成長するも一興。年長者として見守るもの一興。そして」
――敗者として従うも一興――
ニヤリと笑い杖を前に掲げる。
その顔には不安も後悔もない。
ただあるのは期待。
魔翁たる自分を精神的にも力量的にも打ち負かせて見せた主人への期待と。
そんな主人や同僚と共に歩む未来への期待。
かつてベルフェゴール家の息女が枯れ木の流木とまで言った男の姿は今。
彼の兄が見たことすらないほど強く、気高く燃え上がっていた。
「っっっ!!!!!」
そんか叔父の姿を前にクルゼレイは握りしめた拳を突き出す。
刹那多くの魔力球が放出されるが、標的に到達する前に掻き消される。
掻き消した張本人に対し、更なる苛立ちを集わせ、先程の倍以上のそれを打ち出すが結果は変わらない。
「認め…るか……認められるものか!!あの小僧にそんな可能性などっ。そんな未来などっ。私は認めない。認めてやるものか。叔父上が負けたなど。あの小僧に父上を超える程の資質があるなど!!!!アスモデウスはそんな安いものではない!!!!!!!」
その叫びに呼応するようにクルゼレイの纏う魔力が膨れ上がり周囲の空間が歪んでいく。
「一体どれほど喰らったことか。悪魔らしいといえば悪魔らしい」
色欲の悪魔として名高いアスモデウスの力を色濃く受け継ぎ、喰らうことで次々と力を溜め込んでいくその力はまさに先代アスモデウスの力であり脅威なのだろう。
もっとも……
「兄上と比べるべくもない。現代で言えば最上級なのでしょう。しかし、過去の大戦から見れば未熟もいいところ」
郁数千万の死線をくぐり抜けてきた男にとって、その力は脅威に値しなかった。
「もうやめなさい、クルゼレイ。これが叔父として最後にかけられる通告です。私とて出来るならば兄上の子を殺めたくはない」
静かに、しかし明確な殺意とそれとは反する暖かさを僅かに含ませヴィザは告げる。
「オジウェェェェエエエエエエエエエ!!!」
しかし、止まらない。止まることなどできない。彼の中に流れる血が。彼が積み上げてきたものが。今ここで引くという選択肢を取らせることを許さない。
そうでなくては自身がアスモデウスであることを誇示できないが故に。
そうでなくては自分を保っていられないが故に。
「さよなら、クルゼレイ。先に兄上に会っていてください。いずれは私も逝きます。その時は貴方が驚くような、兄上が笑うような経験を、物語を、土産話を持って逝きます」
1つ決着は着いた。
魔の王を志す若き芽が摘まれたその場で、一筋の雫が大地を潤した。
「ヴィザの方は決着がついたようじゃな」
世界において指折りの実力者同士が睨み合う場でニオは僅かに口角を上げた。
「忌々しい。げに恐ろしき早斬りよ。あのまま枯れ落ちていれば良いものを……呪いを受けた鬼が余計なことを」
そんなニオとは違い冥府の王はカタカタとその身を震わせる。
「っかっかっか。ヴィザに八坊を仕向けたのはまさに行幸じゃった。立ち直るどころかまさか、ついぞワシがつけることのできなかった火をやつにつけ燃え上がらせたのじゃからのぉ」
「コウモリがっ……」
愉快愉快とばかりに笑うニオと心底不愉快そうに睨むハーデス。
一見睨み話し合うだけのように見えるも、互いに牽制し合い千日手となりつつあった。
冥府の王たるハーデスは紛れもなく強者だ。
それも上から数えた方が早いほどに。全勢力でトップ10に入るというギリシア勢力中最強の神の名は伊達ではない。
しかしそんな神すらも苛立たせているのがニオである。
(あいも変わらず忌々しい。冥府の死すら廃らせる力。ベルフェゴールの力"怠惰"を突き詰め退廃にまで昇華させるとは。もはや権能の領域じゃろうに)
苛立ちを隠しもしないハーデスの内は表以上に荒れていた。
悪魔としての力を昇華させ続けた結果。
信仰を廃れさせ、畏怖を忘却させ、研鑽を途絶えさせる姿なき無貌の権能にまで至った悪魔は各神話から大いに警戒をされている。
それこそ冥府の王たる自身が出向かねば止まらぬ程に。
「っかっかっか、何久しぶりの闘争じゃ楽しもうでないか?」
「ファファファ、余裕ではないか?良いのか?鬼には龍が向かう。あの若造共はオーディンの護衛で動けん。鬼の眷属たちが如何に強かろうと、この数相手にどこまで持つか?」
しかし、冥府の王には勝機があった。
無ければこの場には居ない。
鬼呪龍神皇にニオ。
この2人を止めねば冥界に打撃を与えることなどできない。
しかし逆を言えば2人さえ抑えれば如何とでもなる。
数の暴力、そしてその数に質を与えた。
この場はもちろん。
原初の大樹の獲得すら狙うハーデスはここに来て口角を上げた。
「確かに鬼の眷属は強い。だが、それだけよ。鬼の眷属など捨て置き他を潰せば良いだけ。ファファファ、お主や鬼ならばいざ知らず、ここまで広範囲の我軍を退けるのに果たしてどれほどが血を流すか?」
死の神に相応しい笑みを浮かべながらニオに問いかける。
貴様らは終わっていると。
合成獣に死神。
神滅具による魔獣。
更には捨て石のコウモリ。
数と質を兼ね備え。
特記戦力である者達を抑え。
この場と大樹への強襲をかけた。
「ファファファファファファ」
上手くいけば大勝ち。
仮に失敗したとしても大きな打撃を不愉快な奴等に与えることができる。
自身の策と巡り合わせに笑いを上げるハーデス。
しかし
「っかっかっか。知っておったよ」
「なに?」
誤算があるとすれば
「知っておったよ。お主らが攻めてくることも。規模も質も策も。何から何までの」
「なにを?」
それは2つ
「お主がこの場で暴れることも」
王は知らなかった
自身の勢力に裏切り者がいたことに
「お主が宝樹アダムを狙っていることも」
王は知らなかった
残り2人の眷属を
「だから備えた。最高の戦力を」
そして今
「最高の神殺しを」
それらは現れる
「いやー、疲れたっすねぇ。あっちこっち飛び回ってあっしはクタクタでやんすよ」
知っている
されど冥府の王が嫌う気配を内包した少女と
「定刻。タイミングは問題ない?」
知らない
けれど感じる忌々しい気配を
「っかっかっか、グッドタイミングじゃのぉ
「っ貴様ぁ!!」
そしてそこで初めて冥府の王は明確な怒りを示した。
何せ目の前にいる少女の片割れ。
それは紛れもなく……
「死神でありながらコウモリっ!呪いを受けた鬼にその身を売ったのか!!!!」
自身の配下たる死神であった。
「別にあっしはただ、ハーデス様やクソ親父のやり方についていけなかっただけっすよ。あんたらは閉鎖すぎていけねぇ。別に人だけでなく他の神話とも仲良くやればいいのに」
「この恥晒しが、ワシ自らの手で八つ裂きにしてくれる!!!!」
怒髪天を衝く勢いで荒ぶる死の力。
されどそれはベンニーアやニオに届くことはなく。
「障壁展開」
ただ長門の一言によって拒まれた。
「っこのガキが」
口汚く台詞を吐くハーデスに対し涼しげな表情の長門は続ける。
「彼から許可は得ている。他の眷属、
「かまわーーーーん!ワシも許そう!」
先ほど以上に愉快そうに笑うニオの返答を受け彼女は神器を展開する。
「っそれは??!!!」
それに気がついたハーデスに冷や汗と焦りが現れた。同じ神威を感じ取りそれが何なのかを理解してしまった。
「なぜそれを悪魔が持っている!!!」
そんなハーデスの声すら気にせず長門は告げる
「展開解放【"
刹那神器に巻きつかれていた鎖が解かれ莫大な聖光気が解き放たれる
本来であれば悪魔にとって猛毒な光
しかし転生悪魔たる長門の性質と情報変換という彼女独自の異能により魔なる存在にも適応された光が場を通り抜けていった。
「ありえん!!!!それは聖書の原本だぞ!
聖書の神の遺志を宿す聖槍
聖書の神の権能を宿す原典
どちらも最上位に位置する神滅具
その片割れが悪魔陣営
それも鬼呪龍神皇の元にあることにこれまでにないほどの焦燥がハーデスを襲った。
「っかっかっか、何かわかれば話が早いのぉ。やれ、長門」
今日イチの悪どい笑みを浮かべながらニオが告げれば、言われるまでもないとばかりに長門は唱える。
「っ!!!まっ」
「召喚」
止めに入るハーデスだがそれは見えぬ障壁に拒まれる。
「
刹那天が割れる。
空を飛び交う異形たちは。
各地で戦闘に身を浸からせていた者達は思わず立ち止まり空を見上げる。
そこには
「Excuse マイマスター。お久しぶりです。ところでグランドマスターは何処に?早くグランドマスターの××××××で○○○○な****を☆☆☆☆にして□□□□□「ジブにゃんストーーーーーップにゃ!!!!!」
神殺しとしてはとても
そう。
とてもとても言動が残念な者と
「っちょアズリール先輩??!っむが」
それを止める姉
そして
『あははははは』
背後で笑う姉妹達がいた。
コメントお待ちしております。
ほんじゃまた気が向いた時間ができた時に(・ω・)ノノシ