魔王少女の女王は元ボッチ?   作:ジャガ丸くん

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今回も短くなってしまった。
すみません。
次回は結構長めに書く予定です。
ではでは本編へどうぞ。


特訓の終わり

 

イッセーside in

 

 

 

拝啓、お父様お母様。いかがお過ごしでしょうか?私めが家を出て10日が過ぎ去りましたが……私は今……地獄を見ています……

 

 

「ほれ、さっさと至らないと本当に死ぬぞ?」

 

そう言いながら俺の親友は彼の周りに浮かぶ大量の刀を俺へと飛ばしてきます。それが普通の刀なら未だしも切れ味抜群な上に言いようのない雰囲気を纏っているのだから洒落にならない。

 

「うぉぉぉぉおおお」

 

悲鳴を上げながら俺は時には避け、時には籠手で防ぎ親友の方へと向かっていこうとするが防ぎきれなかった刀が俺の足を捉える。そうして切られた部分から激痛が走り俺は地面へと伏せてしまう。

 

「くぅっ」

 

「はぁ」

 

苦悶の声をあげる俺に八幡は溜息を吐き近付いてくる。

 

「イッセー、このままじゃマジでまずいぞ?」

 

顔を顰めながら八幡は俺へと言ってくる。

 

レーティングゲームを明日に控えた今日の昼。俺は思ったよりも成長できていなかった……

 

 

 

〜〜〜

〜〜〜

 

 

 

遡ること特訓5日目

 

特訓の折り返し地点となるこの日の夕刻。

いつもならば夕飯を作るためにいないシノンもこの日はどういうわけかいた。

 

「それで、今日で半分終わるわけだがそれぞれどんな感じだ?」

 

木に寄りかかりながら八幡は自身の眷属達に問いかける。周囲にいる俺たちはみんな地べたに座り込んでおり、傷こそアーシアに癒してもらっているものの相変わらず疲れ果てている。

 

「私のところは……正直申し上げますと、私は今回こちらのお2人のレーティングゲーム参加はお勧めできません……」

 

ヴィザさんの言葉に雪ノ下と由比ヶ浜はピクリと反応するが言い返してはこない。自分でそう言われた理由がわかっているのだろう。

 

「理由は?」

 

八幡もヴィザさんに聞き返すが驚いている様子はない。まるでわかっていたことを聞き返すように言葉を発する。

 

「初日にも申し上げましたが由比ヶ浜嬢は魔力の扱いが苦手のようです。加えて神器も持っていない上武術の経験があるわけでもありません。いたって普通の人間が悪魔になっただけなのです。武術の才能が無いとは申し上げませんが、特別才能が高いというわけではありません。伸び代はありますがそれも長期的に見ればの話です。故に残り5日でライザー殿の眷属達に通用するほどの力は備えられないかと……」

 

ヴィザさんも自身の主に聞かれたからか、普通なら言いにくいことを平然と言い放っている……或いは内容が由比ヶ浜と雪ノ下のことだからかもしれない。

 

「次に雪ノ下嬢の方で言えば魔力の扱いはうまいです。しかし、魔力総量が低い上に何よりも彼女自身の駒である騎士の力を使うと、すぐに体力が尽きてしまうのでどうしようもありません。武術は少し嗜んでいるようですが、それがライザー殿の眷属に通用するかと言われれば、微妙なところです。手っ取り早く強くなるには魔力総量をあげて、魔力で体力を補うのが1番なのですが……魔力総量はそう簡単に上られるものでもないので……」

 

雪ノ下と由比ヶ浜は2人して俯いているが、その隣にいる部長はそれ以上に渋い顔をしている。その顔を見ると俺の心も痛む。2人が眷属入りした原因は俺にあるため、それ故に俺も罪悪感が生まれてしまう。

 

「まぁ、出る出ないはリアス・グレモリーが決めることとしてやれるだけやってやってくれヴィザ。すまないな」

 

「いえいえ、八幡殿の頼みとあらば。私も出来る限りの事はやりましょう」

 

八幡が謝るとヴィザさんは深々と頭を下げながら返している。そこには時折3人の見せる八幡への忠誠の意があるように見えた。

 

「それでシノンの方は?」

 

八幡はヴィザさんから今度はシノンさんへと視線を移し問いかける。

 

 

「こっちは問題ないわよ。朱乃さんの方はやられるだけじゃなくて反撃をしてこれるだけの余裕も出てきたし」

 

「ほぉ、シノンが手加減してるとはいえもう反撃できるようになったのか」

 

その言葉が意外だったのか朱乃さんの方を見ながら口元を僅かにあげる。というか、シノンさんいつの間に朱乃先輩を名前で呼ぶようになるほど仲良くなったの?

 

「ええ、それにリアス・グレモリーの方はメンタルはもう大丈夫だから朱乃さんと同じメニューに変えてるわ」

 

「……氷夢でも使ったのか?」

 

「ええ」

 

八幡の質問にシノンさんは笑顔で答えるが逆に八幡が少しだけ引いてた。

 

「やり過ぎくらいでいいとは言ったが……まさか本当に氷夢を使うとはな………」

 

「氷夢ってなんですか?」

 

八幡とシノンさんのやり取りに小猫ちゃんが割り込んでくる。俺たちも気になってたからありがたいけど……

 

「簡単に言うと氷の中に閉じ込めて悪夢を見させる技よ」

 

「悪夢……ですか?」

 

平然と答えてるけどシノンさん、それってかなりエグい技なんじゃないでしょうか?

 

 

「まぁ、見させたものは置いておくとして、あれを見て廃人になってないんだから大丈夫だと思うわよ。」

 

廃人⁉︎廃人って言いました⁉︎

マジでどんなもの見せたの⁉︎

見てみたい気もするけど怖くて聞けない。

ってか部長震えてる⁉︎

マナーモードみたいになってるけど本当に大丈夫だったの⁉︎

 

 

「まぁいっか。そんでユウキの方はどうだ?」

 

いっかってなに⁉︎

もっと心配しろよ⁉︎

 

「んん~、僕の方は面白いよ」

 

面白い?どういうことだ?

 

「2人とも2日目からまるで別人だね。この4日間、初日の何かに迷ってたり、余計なことを考えてるような感じは一切見受けられなかったし、何よりも剣や拳に乗せる想いが初日とじゃ雲泥の差だよ」

 

ユウキさんは本当に楽しそうに言っている。

 

「嬉しそうだな」

 

「まぁね。やっぱり戦いってのは楽しいから」

 

楽しそうな理由が酷いです……

というかユウキさんは戦闘狂なのかな……

というか木場は吹っ切れたみたいで良かった。

小猫ちゃんはどうしたんだろう?

 

 

「私達の方よりあんたの方はどうなのよ八幡」

 

「ん?俺か?」

 

シノンに話しかけられ八幡に全員の視線が向く。

 

「まだ、なんとも言えん」

 

「どういうこと?」

 

「本来ならこんな短期間じゃ無理なことをやらせようとしてるからな。昨日ようやくスタート地点に立ったって感じだ」

 

八幡の言葉に今度は俺が俯いてしまう。

 

「昨日⁉︎どういうこと⁉︎」

 

真っ先に部長が反応する。

まぁ、主として当然の反応だと思うが……

 

「イッセーには言ったが今回のイッセーの最終目標は禁手化だ」

 

『禁手化⁉︎』

 

俺の言葉に禁手のことを知ってるグレモリー眷属の奴らが声をあげる。

 

「まぁ、そういうことだ。普通ならこの短期間で至るなんて絶対無理だが、イッセーの場合神器の中にドライグ……赤龍帝がいる。そいつの力を借りれば可能だ」

 

八幡がそれを言うとみんな口を開けている。

聞いてはいたがすごいことなんだなと改めて実感する。もちろん八幡もあの時言ったことを全ては言っていない。

 

 

「間に合いそうですか?」

 

「微妙だな。ドライグを見たとは言っていたが会話は出来なかったらしい。明日から少しだけやり方を変えてドライグを無理やり目覚めさせれるように仕向けてみるが……まぁ、無理だったら最終手段使うがな……」

 

 

最終手段……それが何かは俺も聞いていないが、取り敢えず俺は昨日からメニューが更に増えて死にそうだ。

 

「どんどん増えてくぞ?」

 

俺の心を読んだのか俺の瞳から涙が零れ落ち、その日の話し合いは終了した……

 

 

 

〜〜〜

〜〜〜

 

 

 

明日ゲームがあるため今日は昼に切り上げることにしているのだが結果として俺は至ることは出来なかった……

 

「っくそ」

 

「まぁ、しゃーねぇだろ。そう簡単に至れるもんじゃねぇよ」

 

思いっきり左手で地面を殴る俺に八幡が声をかけてくる。

 

「でもよ⁉︎ライザーを倒すには俺が禁手化するしかないんだろ⁉︎」

 

「ああだから最後の手段を使う…だけどな」

 

そこまで言うと八幡は一度黙り、意を決したように口を再び開く

 

「本当にいいのか?リスクは話したろ?」

 

「構わないさ」

 

八幡の問いに俺は迷わず答えた。

 

「部長をあんな奴に奪われるくらいならどんな代償だって払ってやる」

 

「その結果自分の身体を失ってもか?」

 

「そっちのが何万倍もマシだ‼︎」

 

「ふふ」

 

「なんで笑った⁉︎」

 

俺が真剣に答える中不意に八幡が笑い出す。

 

「いや、わりぃ、ただ……俺も昔似たようなやり取りをしてたなって思っただけだ」

 

「昔……って八幡お前も……」

 

「俺のことはいい。それよりも左手を出せ」

 

これ以上聞いてくるなと言わんばかりに威圧の雰囲気を纏った八幡は右手を握りしめながら突き出してくる。それに応じて俺も拳を作り八幡のそれと当てる。

 

「ほい終了」

 

そう言って八幡は拳を離すと、そろそろ帰るぞと言って歩き出す。

 

「お、おい⁉︎」

 

特に何かした感じはしない。

無論禁手化できた感じもだ。

 

「できることなら強制禁手化なんてしない方がいい。だから、そいつはいざという時のためだ」

 

八幡は足を止めずに俺の疑問に答えてくる。

 

 

「数少ない友人が酷い目になんてあって欲しくねぇんだよ。だからこれが俺の最大の譲歩だ。大丈夫、いざとなったら使えるさ」

 

 

そういうと八幡は足を止めこちらに向き直す。

 

「欲望に素直になれよ、イッセー」

 

「欲望に?」

 

「ああ、欲望は醜い。時として大きな禍も呼ぶだろう。でもな……人間が………悪魔がこれまで生きてこれたのは良い意味でも悪い意味でも欲望に忠実だったからなんだよ。だから自身の魔力に……力に、自分の望む欲望を込めろ。そうすれば強くなるし、お前の中の奴は反応してくれる」

 

 

そういうと再び八幡は歩き出す。

本当にこれで大丈夫なのか?

一抹の不安が残る中、俺は八幡の後を追っていった。

 

 

 

イッセーside out

 

小猫side in

 

 

 

苛烈すぎる10日間が過ぎ、遂にレーティングゲーム当日になってしまいました。後30分ほどで開始されますが、緊張してか落ち着けず、その上イッセー先輩が集中するためとか言って部室でエロ本を読みだしてしまったので、少しだけと部室の外に出ています。

 

「よぉ、緊張してんのか?」

 

ふとかけられた声に振り向くとそこには先輩がいました。

 

「先輩、来てたんですね」

 

「ああ、ヴィザも来てる。さすがに10日間もこっちに集中してたから、ユウキとシノンには新しい仕事が溜まってて2人は帰ったけどな」

 

そうなんですか。

ユウキさん達にも見て欲しかったです……

でも先輩がいるだけでもやる気が湧いてきます。あのお2人も結局出るらしいですけど関係ないです。

 

「それよりもちょうどよかった。小猫に会いに行こうと思ってたんだよ」

 

「んにゃにゃ⁉︎」

 

わ、私にですか⁉︎

せ、先輩いったい何の用でしょう。

 

「何かご用ですか?」

 

「ああ、お前にこれを渡しとこうと思ってな」

 

そう言って先輩はポケットから小さい豆のようなものを1つ取り出して渡してきました。なんでしょう?

 

「これは?」

 

「ああ、世界樹の種子って言ってな。うちの開発マニアの回復アイテムシリーズの1つだ。食べれば受けたダメージも消費した魔力もフル回復する」

 

なんですかそれ⁉︎

とんでもない便利アイテムじゃないですか⁉︎

 

「どうして私に?」

 

これだけのアイテムなら部長やイッセー先輩に渡した方がいいんじゃ……

 

「それはな………」

 

そこで聞いた言葉は私のやる気を更に出すには充分すぎる言葉でした……

 

 

小猫side out

 

ソーナside in

 

 

 

今日はリアスの婚約をかけたレーティングゲームが開催される。私は時間があった女王の椿姫と共に生徒会室で空中に浮かび上がったモニターを見ている。そろそろ始まる時間帯になるだろう。

 

コンコン

 

不意にドアが叩かれる音がした。

誰だろう?

今日は一般の生徒は登校してこないはずだし、眷属の者ならノックなどしない。

 

「ハイ」

 

そう言ってドアを椿姫が開ける

 

「邪魔するぞ」

 

そこには予想していなかった人物がいた。

 

「だ、誰ですかあなた⁉︎」

 

突然の来訪者に驚く椿姫だが、当の彼はそれに答えず私の方へ声をかけてくる。

 

「よ、ソーナ。俺らも見たいから失礼するぞ」

 

そう言って彼は部屋の中へと入ってきます。

その後ろにはよく知る老人も一緒に……

 

「は、八幡君⁉︎それにヴィザ翁まで⁉︎どうして⁉︎」

 

「いやはや失礼いたしますソーナ殿。なに、10日とはいえ教え子達の初陣。それを見に来たのですよ」

 

「お、教え子⁉︎」

 

「サーゼクス様とグレイフィアに頼まれた」

 

ヴィザ翁の言葉に驚く私に八幡君が追加で説明を入れてくれて私はようやく理解しました。

 

「八幡君……お疲れ様です。私のことが終わってまだ間もないのに」

 

そう言って彼に労いの言葉をかける。

彼には3ヶ月ほど前に私の婚約で迷惑をかけてしまったばかりだからだ。

 

「かまわねぇよ。ソーナのこともリアス・グレモリーの事も。それより説明してやったらどうだ?」

 

そう言って八幡君は椿姫の方を見ます。

ああ、完全にスルーしてましたね。

 

「椿姫、彼は比企谷八幡君。お姉様……セラフォルー・レヴィアタン様の女王です。それと隣のご老人はヴィザさん。八幡君の眷属よ」

 

私が説明すると椿姫は慌てた様子で返す。

 

「せ、セラフォルー様の女王でしたか⁉︎失礼しました。女王の真羅椿姫と言います」

 

「ああ、そんなかしこまらなくていいですよ。年齢的に言えば先輩の方が年上なんで。セラフォルー・レヴィアタン様の女王比企谷八幡です。以後よろしくお願いします」

 

「八幡殿の眷属、騎士のヴィザです。以後お見知り置きを」

 

 

 

3人が軽い挨拶をし終えたその時、グレイフィアから開始の合図があり、レーティングゲームが始まった。

 

 

「始まりましたね」

 

椿姫が初めて見るレーティングゲームを見ながら呟くとそれに続いて私も言葉を発する。

 

「八幡君……リアスは勝てますか?」

 

「さぁな。やれるだけのことはやったが、時間も少なかった。だが………」

 

そこまで言葉を続けた八幡君は一度言葉を切りモニターを見る。

 

そこには体育館へと向かう2人の人物がいた。

 

 

「今回の重要点は3つ。その3つを乗り越えられなきゃ、あいつらに勝ち目はないだろうな。」

 

「3つ……ですか……」

 

勝ち目はないと言われなかったことに安堵を覚えながらも、3つの壁があることに私は不安を隠しきれない。

 

「大丈夫でしょう」

 

そう呟いたのはヴィザ翁だった。

 

「私は雪ノ下嬢と由比ヶ浜嬢の特訓だけに付き合っていましたが、それでも断言できます。ユウキ殿とシノン殿、そしてなによりも八幡殿との特訓に耐え抜いた彼らは、そう簡単に敗れはしません」

 

ヴィザ翁の言葉に私は少なくない驚きを見せる。

 

八幡君とヴィザ翁だけでも充分なのにさらにユウキちゃんやシノンさんまでリアスの特訓に付き合ったということにだ。

 

「随分と豪華な顔触れで特訓に着いたのですね」

 

「万全の体制でやれってグレイフィアから念押しされたからな」

 

八幡君はモニターから目を逸らさずにこちらの言葉に返してきます。その目は真剣そのものでした。やはり、八幡君は昔と変わらないですね………

 

そんなことを思いながら私もモニターに目を向けると、そこでは先ほどの2人が体育館内でライザー眷属と遭遇していました………

 

 

 

 

 

 




回覧ありがとうございます。

今回の物語にあった八幡がイッセーと拳を合わせた理由や、小猫と話したことの内容は次回は出るのでお楽しみに。


感想、誤字脱字のご指摘お待ちきております。


次回、レーティングゲーム本編プラスa

明日か明後日には登校予定です( ´ ▽ ` )ノ

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