前の文章が読みにくかったので、ちょっとした修正。
後は少しだけ(2000字ほど)加筆しました。
必死に生きてきた。
一人で生きてきた。
一人だと思って生きてきた。
当たり前のように失敗して、
それらが全て真っ白な嘘になった。
私には何にも残っていなくて、
私は一人で虚しくなってしまった。
痛くて、いたくて、堪らないのに。
私だけでは、何にも出来ない。
第8羽 友達
アリーゼが死んだ。正しくは生死不明だ。
彼女のものである剣や盾は落ちていた。しかし、所々で落ちていた肉が彼女かは分からなかった。
あの時、私は偶然迷宮に来ていた。
探索をしていると嫌な予感がして、それを三つ目の魔法が捉えて私に知らせた。
急いでここに来てはみたが、私は何一つ間に合わなかった。
全てが終わった後だったのだ。
たった一人でリューが佇んでいた。
覆面越しにも茫然としているのが分かったので、私は声をかけた。
リューはアリーゼに身の危険が迫っていると訴えて、私に協力を要請した。
私の魔法はアリーゼが危ないと告げていたこともあって、私は急いで崩れた壁を壊す。
壁の中の水分の凝固点を操作。常温でも凍るようにする。
ひとりでに壁が崩れて、私は見てしまった。
そこは地獄の後だった。
所々に落ちているまだ少し動いている肉が生々しくて、私はへたり込んでしまう。吐き気がしてきた。
しばらくの後。
リューが18階層に墓を作ると宣言した。
アリーゼたちは墓を作るなら18階層が良いと言っていたらしい。それは聞いたことがあった。
私たちは遺された全てをかき集めて、18階層にやって来た。
森の奥深くに二人で穴を掘って、埋めて、土を被せて、その上に墓標を建て、剣を刺したところで、私はようやく理解が追い付いた。
もう、居ないのだ。
隣に、居ないのだ。
あんなに楽しく笑っていて、次はいつ飲もうか、なんて、そんなことを。話して……
もう、居ないん、だ。
あ、ぁあ。
あぁああぁあっ!
ぁ、あぁ、ぁぁ……
アリーゼの剣を抱き締めて泣き崩れた私に、リューは何も言わずに傍にいてくれた。
彼女も泣いていたのかも知れない。
ーーー
「私は、オラリオに戻ります」
しばらくして、彼女が言った。
「アストレア様に、危険を知らせなくてはならない。天界に戻って頂くことになるかもしれないが、ここに居るよりは……」
言葉が小さくなり、最後は独り言になって。唇を噛んだ音がした気がした。
「ユウは、どうしますか」
少しの沈黙の後に答える。
「私は、まだここに居る」
今はアリーゼと居たい。
そう続けて、私は墓に向き合った。
前世では、ありえない位にみすぼらしい墓だ。
墓石もない。そもそもこの下には彼女は居ないのだ。
そう考えて、私はまた泣いた。
今日はずっとここに居よう。ここに居たいんだ。
☆ ☆
「私は、オラリオに戻ります」
「アストレア様に、危険を知らせなくてはならない。天界に戻って頂くことになるかもしれないが、ここに居るよりは安全な筈だ。
それにあいつらなら、アストレア様に何をするか分からない。
これ以上、好きにはさせられない……っ!」
最後は力んでしまって、唇を噛んだ。
鉄の味がしたが、それよりも憤りが勝った。許せなかった。
「私は、まだここに居る」
ユウはそう答えて、墓に向き合った。
小さくしゃくり上げる音が聞こえて、私も泣きたくなった。
アリーゼとユウは仲が良かった。
私よりも付き合いは短い筈だが、あの二人は何処か似ていた。
容貌とか、そういうことじゃなくて。
雰囲気が似ていたのだ。
私は楽しそうに笑っている二人を見るのが好きだった。
私にとってもユウは友達だったのだ。
だから、ユウの傍に居てやりたいとも思う。
一緒にみっともなく泣きたかった。
それはできない。
これから私がやろうとしていることを考えると、ここで悲しみに暮れていては駄目だ。
終わって、もしくは失敗して、私が居なくなる最後まで、それはしてはならない。
彼女たちの所には行けないだろうけれど、私は止まれない。
あの嗤い声が、私を許さない。
絶対に、許せない。
ーーー
頭を下げる。心が痛かった。
ここはオラリオだ。私は戻ってきて、一人本拠地で待っていたアストレア様に向き合っている。
最初は驚いていた彼女だったが、次第に状況を理解したのか、悲しそうな顔に変わった。
私はオラリオを去るように懇願した。
頭を下げて、涙を流して、必死に懇願した。
それが通じたのか、アストレア様は天界に戻っていった。
誰も居なくなった私たちの本拠地は静かで、何の音も無かった。
カラン、と音がして、覆面が落ちた。
私の仮面が剥がれた。
目が熱くて、視界が霞んだ。滲んでいく世界で、私がやるべきことは分かっていた。
頭を振って、迷いを殺す。
まずは何をするべきだろうか。
監視だ。行動のパターンを調べる。全員を一気には不可能だ。だから、一人ずつ。確実に。やらなくては。
彼女たちのために。私のために。
殺るんだ。
☆ ☆
どれだけ泣いていたのだろうか。
どれだけ経っても、涙が止まる気配は無かった。
町で高い花、酒を買って墓の前で供える。
何も考えられなかった。ずっと、蹲っていた。
日が暮れて、クリスタルが輝いて、また曇った。
その頃には、涙は枯れていた。
脱け殻のように探索もせずに、モンスターとも戦わずにオラリオに戻る。
日が照っていて、眩しかった。
何も変わらない人混みが私を打ちのめして、廃教会に帰る。
暗くなって、神様が帰ってきた。
「ユウ君。帰ってたのか。どうしたんだ。明かりもつけないで」
いつも通りの口調で。
「何か、あったみたいだね。うん、今日はボクが何か作ろう。何か食べたいものはあるかい?」
神様が話していて、
「いらない。何も食べたくない」
そうかい、といって神様は出ていった。ここしかまともな部屋はないのに。
……私を一人にしてくれたのかな。
ーーー
私は塞ぎ込んでいた。
私にとって、アリーゼは始めての友達だったのだ。
ずっと一人で生きて、勝手に一人で絶望して。
何に見送られるでなく居なくなった、過去の私。
笑い合えた人など、一人としていなかった。
それが当たり前になって、人付き合いをしなくなって、どうして寂しいのかさえ分からなくなった。
感情が死んで、凝り固まった世界で完結した。
死ぬまで治らなかった、馬鹿という病気。
だけど死んだら治ったんだ。
神様が居る世界で、私は望まれてはいなかった。
自分を無くして、取り戻して。
神様に出会って歩き出したら、友達が居たんだ。
すぐ側で笑って認めてくれたんだ。
今度はそれが当たり前になって、ちゃんと笑えるようになったのに。
なのに、どうして、どうしてこんな。こんな、ことに、なったのかな。
どうして……
ーーー
朝になって、部屋を出た。神様がいた。
「起きたんだね。ううん、寝てないのかな。
何日も食べていないようだから、食べやすいものを作っておいたよ」
食べたかったら食べるといいよといった神様は机の上を示して、私はそこを見た。
並べられた料理の湯気が目に入って、眼球を濡らした。
神様は何も言わずにそこに居てくれた。
私はよろよろと机に座って、食べた。
食欲なんて無かった。でも、神様が私のために作ってくれたものだから、食べようと思えたのだ。
お腹に食べ物を入れて、ようやく普段の私が帰ってくる。
礼を言って、話を始めた。友達の話。自慢話。
沢山、たくさん話して、たくさん食べて、ひたすら泣いた。
私は、ここ数日で前回の一生分は泣いたんじゃないのかと思うぐらいに泣いた。感情を放出した。
誰かの前でこんな醜態を曝すのは始めてで、何と言えばいいのか分からない気持ちになった。
そして、気分が幾分か晴れて、神様は笑った。
「ユウ君が無事に帰ってきてくれて、ボクは嬉しいよ」
ちゃんと約束は守ってくれたね、と続けて、
「最近は、物騒だからね。ユウ君が無事で、本当に良かった。
昨日もとあるファミリアの構成員が殺されたらしいんだ。立て続けに同じファミリアから、二人だよ。怖いよねぇ」
何か恨みでもかったのかな、と神様は話した。
嫌な予感がして、詳しくその話を聞く。
思った通りだった。殺された人の所属するファミリアの名前に、聞き覚えがあった。
アリーゼたちが良く噂にしていたファミリアだ。曰く、怪しいと。
三つ目の魔法を使う。予感を感じる。
やっぱりだ。これはリューだ。リューがやっている。
ということは今回のアリーゼたちの件は意図的なものだということ……?
それについても魔法で確認。うん、誰かが関わってる。間違いない。
じゃあ、これは復讐だ。リュー、何てことをしているんだ……!
魔法の無理な行使で視界がぶれる。
不味い、まだ安定した使い方も確立していないから体へのフィードバックが強すぎるんだ。
どんどん視界が傾いていき、バタン、と何かが倒れる音と神様の焦った声が聞こえた。
☆ ☆
毒を塗る。致死性は無い。
だが痺れ毒だ。まともに動けなくはなる。確実にパフォーマンスは落ちる。
ならば殺せる。
投げナイフ、吹き矢、隠し爪、毒薬を用意する。
腕に包帯を巻く。昨日殺した奴の最後の足掻きに殺られた。利き腕だったけど、まだ動く。
ならば殺せる。
もう、嗤わせはしない。
モンスターを誘き寄せる罠を大量に仕掛け、道をふさいで自分達だけは安全を確保した時のような、愉しそうな声を引き裂いてやる。
その嗤い声は何を奪ったと思っているんだ。
何の為にそんなことをしたというんだ!
お前らが私たちには邪魔だったんだよ、と高らかに宣言したその口は私に許しを願った。
その中に痺れ毒を突き入れた。嗤い声が呻き声に変わって、墓の前で泣いていたユウを思い出す。
彼の気持ちが分かっただろうか。
いや、親友を失って泣いていたあの痛みに満ちた声はこんなものではなかった。
爪を全て剥いで、少しづつ殺してやろうかとも思ったが、最後に隠し持っていたナイフを私に突き刺して来たので、首を掻き切った。
心は一つも晴れなかった。
ーーー
昨日は不覚を取ったが、今日は容赦をしない。
まずは毒で弱らせる。そして、一気に殺す。
ターゲットの男性は疑心暗鬼になって部屋に引きこもっている。
しかし、食事には出て来ざるを得ない。
信用のおける店に行こうとしても意味はない。その店を潰してでも殺ってやる。
案の定、思った通りに動いた。
店には入られると厄介だ。その前に殺す。
人混みのなかで後ろから近づき、首に針を刺す。倒れた。速効性の高い薬だ。まともに喋ることすら出来ないはずだ。
そのまま路地裏に連れ込む。
まるで連れが酔って倒れたように見せかけて、人目につかないところに移動する。
今日は楽そうだ。
ナイフを取り出して、男の心臓に突き刺そうとする。
男が必死な形相で口を動かしたかと思うと、男の周りに火が舞った。
ああ、そう言えばこいつは魔導士だったな。
目障りだ。耳障りだ。
あの馬鹿みたいに優しかったエルフと同じ炎の魔法。
お前などが口にするな。それはそんなに下賤な物じゃない。
目標を口に変更する。
未だに喚く口にナイフを突き入れて、回す。
目を見開いた男は詠唱を止めた。
ナイフを抜き取ると、血と歯が何本か地面に落ちた。
これで詠唱をしようものなら激痛が走るだろう。
いい様だ。
殺す前に男のローブを剥ぐ。
自決用に持っている火炎石を確認する。
こんなものでは殺さない。殺してやらない。
男に良く見えるようにナイフを這わせて、左胸に刃先をあてる。
さようなら。地獄で、懺悔し続けろ。
アリーゼに、ドワーフに、エルフに、ヒューマンに、ユウに。
貴様は報いを受けろ。
ナイフの持つ手に力を込めようとして。
気付く。ナイフが濡れている。
これは、確かユウの
一瞬の思考の後に、ナイフに付いた水滴が周りに飛び散って。
「っ、はあ、はぁっ。間に、合った!」
ナイフが空間に固定された。
☆ ☆
危機一髪だった。
ナイフを凍らせて止める。地面や壁とも癒着したナイフはこの場ではもう使えない。
倒れている男を見る。
良かった、まだ生きてる。守るようにその人の前に立って、問い詰める。
「リュー! どういうつもりなんだ! どうしてこんなことを……!」
最後まで言い終わらないうちに、叫び返される。
「ユウ! 貴方が分からないわけがないだろう!
誰よりもアリーゼと仲が良かった貴方が!
どうして! どうして止めるんだ!」
悲痛な声だった。
始めて見たリューの顔はひどく歪んでいて、だからこそ答えを返さなければならなかった。
「リュー! それは君が……!?」
着物が燃えた。
驚いて振り返ると足を引きずって逃げようとする後ろ姿が見えた。
慌てて魔法で火を消して追おうとするが、遅かった。
火を消している間にリューが私を追い越して、隠し持っていたナイフで喉を掻き切る。
赤色の噴水になったナマモノは、血で湿気った火炎石で中途半端に燃えていった。
「待て! リュー! せめて話を……!」
駄目だ。追い付けない。
暗い裏道を駆け抜けて、リューは消えていった。
私の声は届かない。まともに話をすることさえ出来なかった。
中途半端な赤色の噴水の焚き火の音が聞こえた。
同情すら湧かない。こいつらはアリーゼの仇だ。
背中は見事に焼けているが、問題はない。
このナマモノが所属していたファミリアは分かる。
私の魔法が逃がさない。なら、手はある。
リューを止めるまで私は諦めない。
ーーー
それが、少し前のこと。
私はナマモノ共のファミリアを見張って、リューを警戒していた。
あれから、私とリューは鼬ごっこを続けている。
話すら聞いてくれないのだ。
だから、私は追いかけるしかない。
そして、成果もあげられていない。
私の視界から姿を消すように、リューは派手な真似をしなくなって、地下に潜っている。
私は私でリューを見つけるために、明らかに違法な酒場や娼婦街なども訪れて、情報網を構築した。
お陰でアンダーグラウンドには随分と詳しくなった。
だというのに、リューは成果をあげ続けている。
既にナマモノのファミリアは半数以下になっていた。
そんな日々がさらに続いたある日のことだ。
私が情報を求めて裏路地にいると、襲われた。
ナマモノのファミリア共だった。
恐らく、裏酒場の一つが買収されたのだろう。心当たりもあった。
奇襲に対応できてしまったのが更に問題だった。
ナマモノ共は私がファミリアの襲撃犯だと勘違いしたのだ。
確かに、私はナマモノ共の行動を知るために危ない橋を何度も渡っている。
勘違いされてもおかしくはなかった。
ナマモノ共は残った全員で私を襲撃して、数の暴力で私を捕らえた。
そして、彼らの隠れ家に連れ込まれた。
「おい! 何とか言ったらどうだ!」
鳩尾に拳が入る。繋がれた椅子の脚が衝撃に耐えきれずに折れた。
呼吸が止まって、喉にドロリとしたナニかが流し込まれる。
ポイズン・ウェルミスの毒と、後は感覚増幅剤の類いかな。
……粗悪品だな。この程度なら昔の方がよっぽど酷い。
だが、暴力は不味い。指の骨の一本づつを異なる折り方をしてくる。
相当手慣れてるな、こいつら。拷問慣れしている。
……それが分かる私も相当おかしい気がするけど。
「くそっ、だんまりかよ!」
唾を吐かれて、針を刺される。左足の感覚がない。
……不味いな。このまま嬲られ続ければ近いうちに死ぬ。本当に死ぬ。
詠唱をしようにも頭を蹴られては無理だ。
困ったな。
これじゃ、リューを止められない。
ーーー
針を刺していた男の腕が無くなった。
私の頭を踏みつけていた足が明後日の方向に折れて、後ろで控えていた女の喉にナイフが刺さる。
私の右肩に刺さっていた大針がリーダーの目に突き刺さった。
暴力より過激で、暴虐より鮮烈な、これは嵐。
吹き荒れる風のように鋭い目が、泣いていた。
私を庇うように前に出て、構えるナマモノ共を見渡した。
許さないと呟いて、局所的な嵐が訪れた。
ーーー
ほとんどが殺し尽くされた頃に、瀕死の男が私の首に剣を突き付けて叫んだ。
「止まれ! 止まれよぉ! こいつがどうな……」
一瞬の銀閃が疾って、頸動脈が切れた。
血が横から噴き出して、私の顔を濡らす。臭い。
その隙を突かれたリューが後ろから矢を射られて、体制を崩す。
脇腹に刺さった。あれは不味い。下手をしたら内臓を傷付けた。
先ほど投げられたナイフが近くに落ちている。
そこまで這って近付き、腕の縄を切る。
口枷を取って、即座に詠唱。
リューに迫っていた矢を撃ち落とす。
射手がこちらに向いて、矢を射る。落とす。
追撃はしない。私は殺さない。
だが私はもう限界で、リューを止められなかった。
脇腹から引き抜いた矢を凶器にして、射手の首に突き刺さった。
その人が倒れて、一瞬の静寂が訪れる。
そして、重なりあうようにリューも倒れた。
誰も動かなくなった。
リューの攻撃は的確だ。間違いなく全員死んでいる。
死体が火炎石で燃えないところを見るに、私を捕らえて油断していたな。
私は感覚の無い左足を無理矢理動かして、倒れているリューに近付く。
ここから離れなければならない。
リューがやったことはバレているかもしれないが、ここにいたら確定的だからだ。
私はリューの手を取って走る。廃教会まで行きたかったが、体力が持たなかった。
どこかも分からない路地裏で、私たちは倒れ込んだ。
☆ ☆
私は非常に焦っていた。
想定外の事が起きたからだ。
あれから時が経っても、まだユウは私の復讐の邪魔をしている。
理由が分からない。
正義感に駆られるような人物ではないはずだ。
あんなにアリーゼと仲が良かったユウだ。
私よりも無念なはずだ。悲しかったはずだ。
アリーゼの墓の前で泣き崩れた彼は、それほどに痛々しかった。
なのに、どうして邪魔をするんだ!
……いや、今はいい。それよりも問題がある。
ユウがあいつらにマークされたのだ。
ユウはあいつらの情報を集めていた。
そして、情報源の一つが裏切ったのだ。
あいつらにユウの事が知られた。
それも、殺された奴の近くには常にユウが居たと言う情報だった。
ユウは私を追っていたのだ。殺された奴に常に行き着くユウの優秀さが
あいつらは私とユウを履き違えたのだ。
アリーゼの仇を! 守ろうとする馬鹿とだ!
許せなかった。私から、また大切なものを奪おうというのか。
だがユウとは顔を合わせられない。
今ユウに面と向かって復讐を止められたら、私はどうなるか分からなかった。
私が手をこまねいていると、あいつらはユウを捕らえた。数の暴力で制圧したのだ。
そして拷問が始まった。
爪を剥がされて、骨が折れる音が聞こえた。ユウの叫び声が聞こえる。
針で刺されて、ナイフで剥かれて、叫び声が聞こえなくなった。
何かを飲まされて、何の反応しなくなったユウがビクンと跳ねた。
体が微かに痙攣して、血を吐いた。
ああ。あれは駄目だ。対異状を貫通する劇毒だ。
不味い、このままではユウまで死ぬ。殺される。
唯一残った、私が大切だと思える人物が!
頭が沸騰して、思考が熱を持った。
そうか、あいつらを殺せばいいんだ。
ーーー
それからはあまり覚えていない。
気付けば、私の脇腹に矢が刺さっていて、ユウが矢を打ち落としていた。
隙をついて刺さった矢抜いて、その矢で射手を殺る。
終わった。全員、殺したよ、アリーゼ。
そんなことを考えていると、体が限界を迎えて倒れた。動かない。
それを見たユウが私の手を掴んで、足を引きずりながら一緒に歩く。
二人ともボロボロで手まで血だらけなのに、掴まれた不快感は全く無かった。
安心して意識を手放そうとして、ユウが転んだ。
足の骨が折れていて、まともに歩けなかったのだ。
薄暗い路地裏で倒れた私はユウに質問した。
このままでは二人とも死んでしまうだろうから、最後の質問のつもりだったのだ。
「ユウ、どうして私を止めたんだ……?」
ユウが血塗れの顔をこちらに向けて。
「ねぇ、リュー。おかしいことなのかな?
私はリューを友達だと思っているよ。
だから、一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒に生きていきたいんだ。
それなのに指名手配なんかされたら、一緒に居られないよ」
微かに笑って、そして、
「一緒に居るためには、止めるしかないじゃないか。友達なんだよ……?
一緒に居たいって思って、
泣いていた。
かつてどこかで聞いた言葉で、ユウが、私の友達が泣いていた。
どうにかしようとして、私も泣いていることに気づいた。
一緒に笑って、一緒に泣いたのだ。
そうしていると、綺麗な銀髪の女の子が私たちを見つけてくれた。
☆ ☆
全身がが痛んだ。
喉に突っかかるように何かがあり、必死で吐き出す。血だった。
右腕が動かない。折れている。左足も同様の状態だった。
視界が戻ってくる。ここはベットだ。
周りを見ようとして、首が痛む。まともに動かなかった。
まるで金縛りに掛かったみたいで、どうしたものかと考えていると、声がした。
「大丈夫ですか、ユウ? 私も似たような状況ですけれど」
全治1ヵ月ですかね。とリューは笑った。
私は笑えない。エリクサーなどが存在するこの世界で、全治1ヵ月は相当である。
前世なら何らかの後遺症もあったはずだ。
この世界で良かったね、と返すと首をかしげられた。当然である。
「起きたんですね。どこか違和感等はありますか?」
銀髪が入ってきた。
綺麗な人だと思うが、まあいいや。悪い人には見えないから、今はそれでいい。
銀髪の名前はシルと言うらしく、行き倒れていた私たちを助けたらしい。
リューが事情を説明して、放り出すように言ったが、シルさんはこの店(ここは店らしい)の店主であるミアさんを呼び、彼女の一声により私たちはここで療養することになった。
ーーー
動けるようになった。
だが休まってはいない。大変だったのだ。
まずは神様だ。どこで聞き付けたのか、駆け込んできたのである。
今までファミリアに上納したヴァリスで高い薬を買って。
ありがたいが、どんな状態かも分からない人に薬を持ってくるのはどうなんだろうか。
助かったので何も言えないが。
次の問題が深刻だ。ギルドの審問会に呼ばれたのだ。
私とリューの二人ともである。ファミリア壊滅と殲滅の話だろう。
行かないわけにはいかなかった。
ーーー
「で、どうしてファミリアを壊滅させたのかな」
調べはついているんだよ、と目の前の好青年が言った。ヘルメス様だった。
「君のおかげで僕たちは大損害だよ。何せお得意様が居なくなったからね!」
どうしてくれるんだ、と凄む神様は厄介だが、それ以外の人は冷めた反応だった。
あのファミリアは今回の件でとある問題が明るみに出たのだ。
加えて、アストレア・ファミリアを壊滅させた上に私を拷問している。
生き残りのリューの復讐には正当性があったのだ。
つまり、審問会はリューに重い罰を課すつもりなど無いのだ。
とはいえ、それを説明してもヘルメス様は納得しない。
それはそうだ。儲けが丸々飛んだのだ。補填しなければならない。
私はリューを見て、彼女も頷いた。
「私の方から弁償はさせていただきます。
アストレア・ファミリアには手付かずの資金があります。それでどうでしょうか」
「いいよ」
即答だった。
それからは審問会なのに譲渡金額の詳細が詰められた。
審問会の人達は帰りたそうな顔をしていたが、呼びつけた側である以上、帰るわけにはいかなかったようだ。可哀想に。
まあ、あのファミリアについて集めた情報などを提供しているときは真剣に聞いていたので、収穫はあったのだろうが。
結果、リューは弁償と冒険者の地位の剥奪ということになった。
☆ ☆
私のレベルが上がって、4になった。
あれから随分と経って、私は相変わらずにソロで迷宮に籠っていた。
成果としては、三つ目の魔法の調整ついでに階層主を討伐した。
この魔法は私が使う限りにおいて、即死魔法でもあるのだ。
使って分かったが、隙が大きすぎる上に単体相手にしか使えないので問題は山積みだが。
今日は外食だ。場所は決まっている。
扉を開けると、いらっしゃいませ、と元気な声が聞こえる。
シルだろう。彼女には恩もあるので、仲は良い、つもりだ。友達の、つもりだ。
何故か避けられているような気がしないでもないが、友達ったら友達なのだ。
目の前に酒が置かれる。金髪のエルフだった。
「大丈夫ですよ、ユウ。シルは貴方が少し苦手だと言っていましたが、友達だとも言っていました」
だからそんなに落ち込まないで欲しい、と言いながらリューは対面に座った。
休憩なのかな。こうして飲むのはいつものことだから、二人で見合わせて、
「「乾杯」」
あ、ぁあ。
あぁああぁあっ!
ぁ、あぁ、ぁぁ……
私の、休日は……。もう、居ないん、だね……。
冗談はともかく。上の表現の様なものを小説に組み込んでみました。
うーん、ちょっとテンポは落ちてるよね。
まあ、私の小説のテンポはミクロでは遅めだと思うので、これはこれでいいのかも知れないけど。
どうなんでしょうね。
と言うことでリメイクでした! 長い! もう少し短くすればいいのに。きっと、この作者は纏めるのが苦手なんだろうね。
これより前もリメイクは考えたのですが、再リメイクをすると再々リメイクを! とかになりそうなので、保留。
要望があれば考えます。