巫女と無感情の神   作:綿あめ

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展開が物凄く早いです。
今回登場した巫女からが本作品のメインストーリーにする予定であります。


感情

 

『ひとーつ、ふたーつ、みーっつ』

 

『よーっつ、いつーつ、むーっつ』

 

『ななーつ、やーっつ、ここのーつ』

 

「ひとり、ふたり、さんにん、と…」

 

「よにん、ごにん、ろくにん、と…」

 

「ななにん、はちにん、きゅうにん…」

 

「次はどれだけ退屈になる事か。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「靈夢、あなたがひとりでお酒を煽るなんて珍しいわね。」

 

寂れた神社の本堂。生物の気配がしないところに1匹の妖怪がやってくる。何も無い、誰も『いない』方を見ながら語りかける。

 

「…。たまにはいい物だ。」

 

もちろん返ってくる言葉もない。それはそこに存在しながら、存在を認識されない『もの』だったから。

 

「私も一緒にいいかしら?」

 

何も無い空間に向けて妖怪はそれでも語りかける。

 

「断る理由もない。」

 

「それじゃあ失礼するわ。」

 

それは密かに行われる小さな宴会。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…霊知は何代目だったか。」

 

「13代目よ。」

 

「そうか。」

 

「もう何も言わないのね。」

 

「言うまでもない。霊菜が死んだ時にもう受け入れている。」

 

「そう…。」

 

「次の巫女はいつ来るんだ?」

 

「明後日かしらね。…次くる巫女は凄いわよ〜?何せ霊知が自分自身で育てた娘だもの。今まで以上に活躍するかもよぉ。」

 

「へぇ。霊知はよく神社の外に行く娘だったが、そんなことしていたのか。」

 

「そうねぇ。あの娘はクールぶっていたけど活発だったわね。」

 

「最後の最後まで僕に頼る事をしなかったしな。」

 

「…。」

 

「…。」

 

「…つい三時間前までは生きていたのね。」

 

「そうだな。」

 

「やっぱり今回もダメだったわね。」

 

「そうだな。」

 

「…。」

 

「…。」

 

「…亜夢よ。」

 

「うん?」

 

「次に来る娘の名前。霊知が育てた娘の名前。博麗 亜夢。」

 

「…そうか。」

 

「…そうよ。」

 

「まぁいい。今更くよくよすることもなかろう。次こそは常闇の妖怪を退治できるよう、僕達で育てていけばいいさ。」

 

「そうね。」

 

「…またしばらくは慣れない生活が続くな。さて、亜夢か。どんな娘なのだろうかな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「靈夢、いるかしら?」

「ん?紫か。」

「入るわね。新しい巫女を連れてきたわ。」

 

小さな宴会が終わってから早2日が流れた。それは紫が新しい巫女を連れてくると言った日。珍しくスキマを使わずに本堂の扉から紫は入ってきた。

靈夢は紫の姿を確認すると筆と紙を用意する。これは新しい巫女が来た時の恒例とも呼べるべきこと。存在を認識されない靈夢は紙に文字を書くことで存在を伝える。

 

「さ、亜夢も入ってらっしゃい。」

「…ここが本堂か。…そして彼がここで祀る神か。」

「そうよ、彼の名前は……え?」

 

紫はいつも通りの余裕な笑みを浮かべてはいたが、亜夢の一言で驚愕の表情に変えた。

一拍置いてから靈夢も亜夢に向き直る。無論、その表情は一切変わってはいなかったが。

 

「うん?どうした?私は何かおかしなことを言っているのか?」

「亜夢…あなた…見えてるの?」

「見えるも何も、そこにいるのは神ではないのか?神力も感じるならばあれはここで祀る神であろう。」

 

間違いではなかった。目の前の少女は確かに自分自身を見ていた。存在を認識していた。その上での確認も取ってきた。

今の今まで存在を認識したのは紫ただ一人、歴代の巫女ですら靈夢を認識することはなかったが、この少女は、亜夢は確かに『見えて』いた。

 

「…紫、驚くことはない。亜夢と言ったか。ここで祭神をしている白零靈夢だ。以後、末永く頼みたい。」

「意味深な言葉を使うんだな。初めに言っておこう。私は齢25になろうと常闇の妖怪には負けないさ。」

「…知っているのか。」

「全ては霊知に聞いた。」

「霊知には見透かされていたか…。」

「名付けの親が良かったのだろう。知識の言を名前に含ませ、それは見事に彼女に反映した。私は全ての人間を知った訳では無いが、霊知は天才だと言えるな。」

「その霊知に教わった亜夢、お前もまた天才とも呼べるべきだろう。…代々続いた博麗の巫女、僕を認識できたのは君が初めてさ。」

「それも霊知から聞いたが…。だがまぁ私の場合は見れて当然なのだがな。」

「なぜだ?」

 

「ふむ…できるだけ短くは説明しよう。霊知は常闇の妖怪と戦う前、既に死ぬつもりだったのだ。いや、あれは霊知の齢がまだ22の時か。私のところへ訪ねてきた。まぁ私はいわゆる孤児だった。幼いうちに親を亡くしてな、里の人の所へ居候しながら生活をしていた。そこへ霊知が訪ねてきてな、次の巫女をやってほしいと頼まれた。…どうやらその時点でもう決めていはいたらしくてな。自分では常闇の妖怪に勝てないから残りの3年間で常闇の妖怪に勝てる巫女を育てるとな。」

 

亜夢は1度そこで言葉を切る。こちらの反応を伺うように目線を靈夢に合わせたまま、それは無表情で無感情な顔をしていた。

 

…やはり霊知は賢いな。そこまで見通しての修行を亜夢に行っていたということか。修行の内容も気になるが、亜夢の無感情。これはきっと素でもあるんだろうが霊知が施したことでもあるな。

だが、まだこれで常闇の妖怪に勝てるとは決まった訳では無い。…はっきり言ってしまえば亜夢からは霊力が感じられない。3年間、確かに霊知は修行を行ったのだろうが、当の亜夢は全く霊力を持っていない。

霊力を持っていないのならどのような修行を施したのか、僕にはそれは全くわからないが霊知にもそれなりに考えはあったんだろう。それにも1つかけてみるとするか。

 

「亜夢、お前はきっと今のままでは常闇の妖怪に勝てるとは思ってないはずだ。…これからの修行、僕は特に口を出すことはしない。……がんばれ。」

「ふふっ、なかなか面白い祭神がいる神社に来たものだ。これからの生活少しは楽しめそうだな。改めて自己紹介はしておこう。博麗 亜夢だ。」

「ああ、よろしく。」

「こちらこそよろしく。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊知が育てることだけはあり、亜夢は優秀な娘だった。家事はもちろんのこと、博麗としての、巫女としての技術はとても高かった。最初は欠片も感じられぬ霊力も今では霊知程ではないが、感じるようにもなってきた。

 

 

 

「...。」

「...何か用か?」

「何でもない。ただ、お前を見ているのは楽しい。」

「ふっ、神を、ましてや祀る神に向かってお前、か...。」

「悪いことか?」

「まぁ、悪くないな。」

 

話すことは他愛もないこと。今までの巫女とは全く違うタイプに最初は接し方を悩んでいたが、以外にも亜夢の方から話しかけてくることが多い。話題も全くないが、今まで紫以外と話したことがないことから、亜夢と話すのは楽しみというものが感じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…失礼するわね?」

「…紫か。」

 

草木も眠る丑三つ時。寝る必要もない靈夢は本堂にて1人腰を下ろしていた。紫は相変わらずスキマから身を乗り出すようにして、靈夢の隣に現れる。

 

「…最近のあなた、とても嬉しそうよ?」

「嬉しいの感情はわからない。ただ、話し相手が増えたことは退屈が減った。」

「心にもないことねぇ…。今度、亜夢と夕食を共にするのだけれど、あなたも一緒にどうかしら?」

「…断る理由もないな。」

「ふふ、あなたならそう言うと思っていたわよ。」

 

紫はそれだけ残すとスキマの奥に消えていく。再び静まり返った本堂に、虚空を見つめる靈夢は何を考えているかを読み取ることは、長年の付き合いの紫にもわかることはなかった。

 

「亜夢、か…。」

 

神の言葉を耳にする者はいなかった。

 

「…。」

 

無感情に宿る神。未だに感情を知らぬ神。

 

「これが少し『楽しみ』だな。」

 

無感情の神の口角は僅かに上へと動いた。

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