巫女と無感情の神   作:綿あめ

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長らくお待たせしたこと、大変迷惑をお掛けしたことを謝罪します。
長く時間を使わせていただいた分、これから先の物語の矛盾点を無くしていけたかと思っております。
また末永くお願いします。


今歩むべき道

 

緩やかに流れる時間の中で、人間はどの程度成長する事ができるのか。

 

人間の限界は果たして何処にあるだろうか。年老い晩期を尽くした時か。はたや若さゆえの体力が存在する限りか。

 

人間はその限界にたどり着けるのか。100に満たぬ短く尊い時間の中で、人間は成長の限界に至る事はできるのか。

 

きっと、それは不可能なのだろう。

 

人間とは理不尽な生物。どこまでも利己的で、どこまでも独裁的で。その心の隙間故に生まれた妖怪。助けを求む心ゆえ生まれた神。

 

神も妖怪も、それは人間の心が生んだ生物。故に人間に依存する。だから人間も依存する。そんな因果関係が確立した世の中で、果たして人間はどこまで自力で限界を到れるだろうか。

 

元より孤独を歩む僕からしてみれば、努力など滑稽なものと思ってしまった。

 

続く博麗の巫女は天の才能を有している。それが人間の心の隙なのだが。無論、努力もしているだろう。修行もしているだろう。しかしそれも仮初、か。やっていますの形を取るところで、わかる者からしてもそれは努力と呼べるものでもなかった。

 

博麗の巫女が代々、常闇の妖怪に殺される。僕はそれを既に当たり前と認識していた。生まれ持った才能が、そこら辺の並の妖怪共をのしていっても、最恐たる妖怪の前では所詮人間ということ。

 

そこにほんの少しでも、努力があったとするなら。少しでも修行を行っていたのなら。もしやの話ながら常闇の妖怪を破る巫女がいたのかもしれない。

 

...いや、僕とした事か。過ぎ去った過去に可能性の話をしたところで変わるものはない、か。今過ぎ行く時の流れに、今代の巫女はどこまで成長してくれるか。孤独を歩むこの少女なら。人間の限界を見せてくれるのではないだろうか。

 

それは才能が無く生まれ、努力でここまで登りついた少女。今も尚努力を続けるこの少女なら。

 

そう思える程に白零靈夢は博麗亜夢に期待を寄せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

此処は博麗神社の本堂。

普段から誰も立ち入ることのない本堂内に、足を崩して座る神が一人。その顔はいつも通りに無表情。しかし、一枚の紙を見つめるその眼は、何処か真剣さに満ちた雰囲気を出している。

 

 

靈夢様

 

今まで私霊菜を、博麗を、幻想郷を見守っていて下さり本当に有難う御座いました。

霊菜はわかってます。もう二度と此処に帰ることができないことを。

霊菜は修行を怠りました。明日討伐に出掛ける常闇の妖怪。きっと霊菜に敵う相手ではないでしょう。

わかるのです。常闇の妖怪の名は聞いてました。警戒もしてました。しかし、その妖力は霊菜の霊力に遠く及ばないと、そう思っていたのです。

それも、最近になって大きくなるのがわかるのです。それはもう霊菜の手には負えず、紫様の手を持っても敵うものかがわからずにあります。

霊菜は怠慢なる者です。霊菜が今の幻想郷で討伐できない妖怪はいないと踏んで、修行を怠ってしまいました。その結果、霊菜は常闇の妖怪に破れるでしょう。

この手紙を靈夢様が読んで下さる時、霊菜はもう息をしてないと思います。どうか、霊菜の事は忘れてください。

次の博麗に、霊菜の未練は伝えないでください。

...長く、なってしまいましたね。では、霊菜はそろそろ常闇の妖怪の討伐準備をします。本当は、本当は死にたくないのですが、もう、遅かったのかも知れませんね。

靈夢様、あなたが神社で祀られるようになってから、霊菜の過ごす毎日は夢のようで御座いました。

さようならです。

 

博麗霊菜

 

 

 

それは、5代目博麗の巫女、博麗霊菜が残した手紙。ところどころが霊菜の涙と思われる雫の後を残したその手紙は、霊菜の葬儀の後に見つかったものだった。

こう読み返すのも、もう数えるのをやめたほどの回数になるだろうか。霊菜の事は割り切ったつもりではいた。が、ここまで大事に持ち歩き、時間を見ては手紙を読み返す。手紙には忘れて欲しいとは書かれたが、靈夢が霊菜を忘れる事はない。

霊菜に限らず、靈夢は5代目からの巫女をすべて忘れた事などなかった。記憶に新しい13代目霊知の事だって、少し阿呆な子の10代目法夢事だって。自分を祀った巫女の全てが靈夢には尊いものだった。

自分の事すらわからなかった靈夢に此処を紹介してくれた紫の事だって、今靈夢を取り巻く環境のすべてが靈夢のすべてでもあったから。

 

「...随分と熱心なものだな、靈夢。」

「亜夢か。全然気づかなかったな、何時からいた?」

「普通にノックもしたさ。お前がそこまで真剣に紙を眺めているから気づかなかったのだろう?」

「...違いないな。」

 

本堂の扉が開かれ、その扉に寄りかかるようにして立っていたのは今代の巫女亜夢だった。

言われて気づくが、確かに靈夢は熱心になり過ぎたのかも知れない。人一人入る事にも気づかぬ程だとは、とは思ったが、実際に霊菜の手紙を読んでる時は決まってこのような場面が多かった。

 

「気になってはいたが、その紙はお前にとって余程大切な物なのだな。」

「あぁ、そうだな。5代目巫女の博麗霊菜が残した遺書。まぁ僕に向けて書いた内容で埋まってはいるがな。」

「ふむ...。まぁ深くは聞かぬ方が良いな。ところで、だ。そろそろ鍛錬でも積まぬか?」

「...そうだな、まぁ軽くあしらってやるとするか。」

「吠え面かかせてやろう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

靈夢が欠かさず行ってる日課、それは亜夢との対人格闘戦である。歴代巫女は主に霊力を使用した札等を戦闘法に用いているが、亜夢はその方面に欠けていた。だが、その分霊力を身体能力向上に使う戦闘法に長けている亜夢は、霊力を込めた突き等で妖怪を退治している。

その戦闘法で1番向いている修行方というのが対人格闘戦である。

 

 

「はっ!…はっ!」

「踏み込みが甘いな。」

 

靈夢は亜夢の右ストレートを体を後ろに引くことで躱し、そのまま右手首を掴み亜夢の左足の自分の左足の踵を付け、体重移動で亜夢の体を地面にへと叩きつける。

 

「げほ…っ。全く、うちの祭神は容赦を知らない奴だな。」

「僕に勝てないようだと常闇の妖怪に勝てるかもわからんからな。」

「はっ、それは言えてるか。」

 

靈夢が右手を伸ばすと亜夢はその手をしっかりと握り、そのまま起こされる。

何気なく行われた、割と良くあるであろう行動。本来触れることさえできない靈夢にとっては、亜夢と暮らすようになってからできるようになった行動。

 

歴代博麗の巫女でさえ触れたり感じたりする事が無かった靈夢。それを別にどうとも思ったことはなかった。

その博麗の中で唯一靈夢を認識できる巫女。亜夢との出会いは靈夢を変えたのか、と。妖怪の賢者八雲紫は賽銭箱の隣に腰を下ろしながら見守っていた。

 

「しかし不思議なものだな。お前がそれほどまで体術ができるとは。」

「お前と同じ事。僕が有するのは神力、それを身体能力向上に当てているだけさ。」

「霊力と神力でそこまで違いが出るとはな。」

「信仰の違いだ。無意識に生命体は僕を信仰する。まぁ例外のようにお前みたいのは僕を信仰しないがな。不思議なものだ、祀る神を信仰しないなど。」

「信仰したところで私はお前を認識できなくなるだけさ。見えてる今、修行も共にできると言うのであれば有効活用させて貰うが道義。」

 

つくづく思うものだ。この巫女は祭神をなんだと思っているのだが。まぁ退屈はしない時間だ、割り切る訳ではないが新鮮な時を与えてくれることには感謝してやろうとも思う。まぁ、なんとも上から目線な考えだが、亜夢もそうなのであればお互い様と言うものだ。

 

「お疲れ様ね、二人共。」

「僕は疲れていないがな。」

「それを私の目の前で言うとは随分と挑戦的なものだな。」

「ふふふ、二人共仲がいいわね〜。お昼ご飯ができてるわ。温かいうちに頂きなさい。」

「ほぅ、驚いたものだ。私が思うにお前は料理などできる訳がないと思うていたが?」

「あら、当たり前じゃない亜夢。作ったのは私の式神、私が雑用をやる訳がないじゃないの。」

 

どうにも売り言葉に買い言葉のような物言いだが、それはだらけてるに過ぎないのだがな。まぁ口に出したらネチネチと言われ続けるのはわかってるから、僕もわざわざ口には出さないんだけど。

...いや、これは言った方がいいものか。こいつは少し式神に頼りすぎている。藍、と言ったか?あいつはかなりできる妖怪、反乱したところで手をつけ......られなくもないな。きっと紫なら上手く丸めこめるだろう。

 

 

 

 

今日も今日とて当たり障りのない日々だ。亜夢が日に日に成長していくのはわかるが、まだ僕に追いつく事はないだろう。故に紫と共にからかい、それに耐えられなくなった亜夢が藍を味方に戦いを申し込んでくる。

藍も藍で何故紫に刃向かうか?と問うてみては、使い方が荒いしストレスが溜まってると、まぁ当たり前な答えが返ってくる。

...ふむ、ならば今回は少し手を抜いてみるか。僕の思惑通りに1対2となった紫はボコボコにされていく。

あぁ、『楽しい』ものだな。





無感情の神が歩む道に、果たして幸せがあるのか。

幸せとは無感情でいて理解できるものなのか。

無感情は何故に神になれたか。

世界は無感情を必要とするのか。
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