祭とあった後、すぐに家に帰った。だか、待っていたのは、ぼろぼろになった玄関と泥だらけの廊下、荒らされた寝室だけだった。この状況だけ見ると泥棒に入られたのかと思ってしまう。
しかし、ニュースでは、僕の家にGHQが家宅捜索に入ったと言っていた。
それを見た祭はやりすぎだと憤怒していたが、それがどういう意味を持つのかは次の日学校に行くまで分からなかった。
もちろん祭は学校には行くなと、言っていたが僕はなにも変わらない生活をしたかった。もうそんなことが出来ないと理解できていなかった為に浮かんできた願望でもあった。
また、ニュースを見た母さんからも電話があった。職場にGHQが来たらしく珍しくピリピリしながらであった。
内容は、僕の安否を確認するものだった。何をしたのか、とか聞いてくることもなく、『あんたが元気でいるならそれでいい。そして、また、二人で暮らしていけるなら別にかまわない』と、言われ男らしいと、母親に対して思ってしまった。
しかし、母さんは違うことも言っていた。『もう、そんなに時間がなくなったのね。情けない、母さんは何もできなかった。責めて、出来るとしたらいつものように、朝あんたを起こして朝食を一緒に食べていつものように過ごし、いつものようにおやすみって言って寝ること。それくらいは母親だからやらせて。って言いたかった。けどそれは無理なら話よね。だから時々でいいから私には元気だと教えてね。』そこから先は泣きながらで、何を言ってるか分からなかったが、僕のことを思って言ってくれているのはわかった。
家の中を片付けていたら朝がやって来た。もうこの家にも帰ってこれない。そう思い、外泊のいくつかの着替えを用意して学校に行った。
秋だというのに、冬のように寒く今日は厚着をしていった。
祭と合流して校門をくぐるとそこにはいつもより多くの生徒がいるように思えた。しかも皆、同じ方向を見ている。僕をだ。
クラスメイトが近くにいたので話しかけてみた。
「おはよう、何があったのこれ?」
「当事者のくせに呑気だな、お前」
祭は僕からは顔をそらし、少し下を向いていた。
「え?」
「え?じゃねぇよ犯罪者!」
「何で学校に来てんだ!」
「さっさと浄化されちまえ」
最初は軽い罵倒だけだった。それを「何でそんなこと言うの?」何て聞いたもんだから、罵倒だけでなく暴力にまで発展した。
ある者は箒を持ち出して殴りかかってきた、またある者は部活で使うバットを、竹刀をラケットを。それらがない者は石や砂を投げつけて来た。
「痛い!」
「なに言ってんだ、犯罪者!」「さっさと帰ってしまえ!」「いや、ここで浄化しようぜ」「それいいな!」「早くしろ、うつっちまうぞ」
「集、お前なにかやったのか?なぁ、集、答えろよ」
「僕はなにも……」
「してないわけないよな!」
「八尋!?」
「なにもしてないよ……」
「ほら、谷尋。集、は何もしてないって」
「ならなぜ、警察じゃなくGHQが動くんだ?」
「それは……」
「それに俺は見たんだ。こいつが葬儀社っていうテロリストと一緒にいるところを!」
「なんだよそれ!?」
「集、ほんとなのか?」
目の前にたっている、
「谷尋くんそれはどこで知ったの?」
「校条さんはどうしてそれを知りたがるの?君には関係なくないか?」
「そんなことない!シュウは私の友達だもん!」
「けど、昨日のニュース見てないわけないよね?」
「何かの間違いに決まってる!それこそなに?あなたはあんなでたらめな報道信じるわけ?」
「あぁ、信じるね。あんなに信じられる報道をしてた番組を信じないなんて逆にあり得ないね。むしろ気が狂ってる」
「そうまでして同じ部活の友達を貶めたいの?馬鹿げてる!」
「犯罪者が友達?そっちの方が馬鹿げてる!」
久しぶりに祭がキレた。いつも穏やかな祭はキレることはない。実際にキレたところは見たことがない。それぐらいに祭には耐えられないことだったらしい。うれしいことではあるが逆に申し訳なくなってしまう。
僕が言われてるのに、何もしてないからそう思ってしまう。
「話にならない!行くよ集!」
「ま、待って」
「逃げるのか?」
「バカ言ってないで教室に戻りなさい!授業は始まってますよ!」
先生が教室から叫んでいる。もう、とっくにチャイムがなっていたようだ。
気が付かなかった。そんなに長い間殴られていたのだろうか。
祭はそんなこと気にせず、来た道を僕の手を引きながら戻っていく。
「集、さっさと着替えて。そのままじゃ、嫌でも目立つから」
「ハレ、そんなに僕ってぼろぼろになったの?」
「そう、だから着替えて」
「うん……」
着替えてきた。鞄の中に入れていた着替えがすぐに役に立ってしまった。
「その制服はもう捨ててね。そんなもの、もう見たくないから」
「わかった」
「それと怪我してるから手当てしなきゃなの、だから早くね」
首を縦に振って肯定を示す。それから着替えるために少し隠れられるところに入った。そして、着替えて戻った。
確かにぼろぼろだった。結構な量の血がついていた。
「シュウ、私の目を見て」
「え?」
「いいから!」
何の説明もなく、そんなこと言われても困ってしまう。
「ねぇ!私が怖いの?!」
そう言われ、両手で顔の向きを強制的に変えさせられた。そんなことされるとドキドキしてしまう。
「しっかりみる!」
真剣な表情の祭と目があった。それと同時に祭は僕の手を掴んだ。
「あなたに力の使い方、教えてあげる。この手を相手の胸に当てるの。」
そういい、祭は僕の手を祭の胸へと持っていく。
「そして、後は分かるわね」
祭の谷間からは銀色のリボンが渦巻きながら何本も出ていた。その真ん中は穴が開いていて中が見えた。
「これは!?」
「それはボイド。ボイドは王様だけが使える魂を糧に生み出す罪の力。使い方次第では何でもできる力。
ただ、私から産み出されるボイドは癒しのボイド。傷ついてるものなら、生物でも建物だって直してしまう、包帯のボイド。さ、私を使って?」
人の心が形となったボイドは、その人の苦手とするものやトラウマからふさわしい物となることが決まることが多い。そう聞いた。もちろん祭に。
「ハレ、いくよ?」
「うん、大丈夫早くね」
引き抜いた包帯は自分の意思で動かすことができた。それを自分の体に巻き付けた。
するとどうだろうか、傷がまるて何も無かったかのように治っていくではないか。その上、こころなしか体力も回復しているような気がした。
「ハレ、こんな感じ?ハレ?ハレ!」
祭はなにも言わず倒れていた、さも、魂を抜かれたかのように。人の心を抜けば肉体はただの人形となす、その証明をしてしまったようだった。
集は自分に巻いた包帯をほどき、祭に巻き付けようとした。
「な、何で!?」
だか、巻き付かず中に染み入るように祭に触れたところから消えていった。
そして、為す術なく全てが祭の中に入ったとき、祭は起き上がった。
「どうやら、うまくは行ったみたいね。」
え?けど……それはどういう?
「私のボイドは修繕のボイド。傷ついたものを元に戻す能力を持つボイドよ。それが、物であれ人であれ傷があれば傷のできる前の状態に戻すの。そういう力なの。」