勝負回です。
櫻田家の勝負の当日の朝、健吾から集められた長谷川兄妹。またも唐突に国王からとある集計表を渡された健吾は4人に見せた。
「今朝、国王から送られて来たデータがあってな、これはお前達にやる気を出させるためのものかもしれん。」
それは次期王様候補の櫻田兄妹がもし王様になったとして、誰を専属にするかという集計表だった。
白:0
灰:2
明:4
渚:2
という結果だった。白はこの結果に内心でホッとしていた。
「あ、明に負けた…」
「1人足りないね。」
渚の言う通り、櫻田家の子供達は9人。集まったのは8票だった。櫻田兄妹の誰かは投票しなかったという事になる。
「なるほど。」
「明お兄ちゃん誰か分かるの?」
「分かるけど、誰かを言ったら相手に失礼だし、逆に言えば俺達が頼りないって事だよ。」
「そういう事だ。今日のイベントで考えが変わるかもしれない。だから頑張れ。」
それぞれ一層頑張らなくてはと思う事だった。
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勝負を行う会場は大型デパート。丸々貸し切っている為関係者以外誰もいない状態。
そして櫻田兄妹と長谷川兄妹は入り口に集められ、大型モニターに映し出された王様からルール説明が行われた。
『では、ルール説明を行う。皆をクジでチーム分けし、長谷川さん家の子供達に鉢巻を頭に巻いてもらう。そして皆は鉢巻を奪いに行ってもらう。同じチームの鉢巻をとってはダメだからな。因みに長谷川さん家の子供達は互いに接触する事を禁止し、さらに能力を使う事も禁止する。勝ったチームにはご褒美が待っているし、最初に負けたチームには罰が待っているからな。では、国民の皆が後で観る事になるから怪我の無いように頑張るのだぞ。』
健吾がクジ引きを持って来て、それぞれ引いた後チーム毎に特定の場所へと集められていった。
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Aチーム B1食品売り場の1番レジ前
茜、岬、輝、灰
「おっしゃあ!張り切って行くぞ!」
「「おー!!」「ぉー。」
やる気のある灰と岬と輝。それに引き換え、岬を盾にしつつ周りをキョロキョロしている茜。店内に設置されているカメラも避けたいのだが、この収録の為に大量に設置されたカメラも避けたかった。
「カメラ多過ぎじゃないかな…」
「今度放送する為だってさ。しかもスペシャルで放送するらしいし。でもまぁ、楽しもうぜ茜ちゃん!」
「そうだよあか姉。」
「でも…」
「お姉様!折角たくさんのカメラに映る機会ですよ!」
「それが嫌なんだよ……」
「とりあえず作戦を考えよう。」
「誰から方が良い?」
「明から狙え!」
今朝の集計から、明に対抗心を燃やしていた灰だった。作戦はこうだ。Aチームは人数が多い。だから3人で囲んで鉢巻を狙う。特にターゲットにするのが明。そして灰はどこから現れるか分からない修に気をつける…という事になった。
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Bチーム 2階洋服売り場レジ前
奏、栞、渚
「奏さんと一緒になるなんて何か新鮮だなぁ。」
「あらそうですわね。よろしくお願いしますわ。」
「(奏さん、外出モードだ…)」
いつもの感じではなく、外に出た時の育ちの良さを纏ったお嬢様モードだ。
「栞、頑張りましょうね。」
「頑張る。」
どこか楽しそうな感じな栞だ。この勝負に少しわくわくしている雰囲気だった。
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Cチーム 4階レストランフロアエレベーター前
修、遥、白
「修が同じチームで良かったよ。」
「兄さんの能力が能力だからね。」
「楽勝…と言いたいところだが、そうは行かないのが白さん達でしょう。」
「訓練されてきたからね。多分背後に立っても気付かれるかもしれないから気をつけて。」
「分かりました。」
修が居るだけで、戦力が高いCチームだ。
作戦としては遥か修のどちらかで気を逸らしてる内にどちらかが奪うという事になった。
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Dチーム 6階映画館チケット売り場
葵、光、明
「ご褒美の為に頑張ろう!」
「光は素直ね。」
罰を避け、ご褒美の為に張り切る光だ。そして光の為に頑張ろうと思う葵だった。
「作戦はどうするの?」
「俺達3人で奪いに行こう。」
「明君は白や灰君と渚ちゃんに接触したらダメなんじゃ…」
「接触はしないよ。でも確実に邪魔が入ると思うから、それを食い止める。」
「「おぉ。」」
何とも心強いと思う光と葵だった。
「でも、その作戦リスクが高くない?」
「高いよ。でもどこに居たって修さんがいつ何処に現れるか分からないし、灰兄のチームは人数が多い。俺達のチームと渚達のチームは不利だ。だからそれを補わなきゃ。」
なるほど。と2人は納得した。
明なら鉢巻を奪われる心配は少ないと思っていた。
この勝負、BチームとDチームが不利に思える勝負だったが、大番狂わせな出来事が起こった。
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店内放送でスタートの合図が響き渡り、勝負が始まった。
灰と渚と白はそれぞれ隠れ、それを探すように他のチームは動き回っていた。
「居た! あそこ!」
「うわっ、見つかっちゃった」
最初に見つかったのは渚。そして見つけたのは遥達Cチームだ。修が直ぐに渚の背後に瞬間移動して鉢巻を奪おうとしたが、それに反応してバックステップで修に体当たりをしてから離れた。
「うおっと!」
「あ〜危なかった。じゃあね!」
直ちに逃げようとするが、またも修に回り込まれていた。
「修さんのそれって厄介過ぎない?」
「能力を使う事は禁止されてないからな。」
遥と修に挟まれた渚。今いる場所は3階の書店コーナーだ。隣の洋服売り場へと行ければまだ逃げ道があると考え、遥の方に走り出した。
「遥、捕まえろ!」
「分かった!」
迎え討とうとしたが、渚は前転してその勢いでバク転した後、トンッ、と軽やかなバク宙で遥を飛び越えたのだった。
いきなり目の前から渚が消えた遥にとっては困惑ものだ。
「じゃあね!」
そのまま身を屈めながら、服に紛れ込みながら姿を消した。
「逃げられたか。」
「なんかいつも訓練訓練って言ってたけど、凄い事が分かった気がするよ。」
「確かに。」
長谷川家の子供達の凄さを体感で身に染みた遥だった。修に至っては明に伏せさせられた事があった為、その時に痛感していた。
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5階ゲームセンター
「待て〜!」
茜に追われている白。茜は重力制御の力で身体を軽くして速く動けるようにしていた。
運動が苦手な白にとっては厄介なチームの1人である。
「はぁ…はぁ…これはちょっと…キツいかな。」
茜の後ろからは岬と輝が走ってきている。茜を振り切らなければマズい事になる。だが、見間違いだと思ったが明が走って向かって来ていた。
「えっ!? 明君!?」
白とすれ違い、茜の両腕を掴んで押し留めた。
「ここから先は行かせないよ。」
顔が近いのと掴まれているという事で真っ赤になる茜だが、今はそれどころではない。
「あか姉、そのまま抑えてて!」
「そんな事言われても!」
「「「「「「「「どぉりゃあああ!!」」」」」」」」
岬は感情分裂を使って7人の分身を作り、計8人の岬が襲いかかってきた。
「忘れてた…岬さんが居ると人数は増えるのか…」
修の瞬間移動も厄介だが、岬の能力も強かった。ただでさえ人数の多いAチームだが、その倍以上に増やせるのだ。
茜から離れてゲームセンターを逃げ回るが、岬の分身達に回り込まれたりして逃げ場を失っていくばかりだ。
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「危なかった…明が居なかったらダメだったかも。」
息を整え、4階のレストランフロアまで逃げた白。だが、その近くには2人が隠れていた。
「俺だって一応執事の訓練を受けてるんだ。来てるのは分かるよ。」
「やっぱり流石ね、白。」
隠れていたのは葵と光だった。そしてそこからまた追いかけっこが始まった。
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5階ゲームセンター
「これは油断したかな…」
角に追い込まれてしまった明。目の前には茜と輝、そして8人の岬達。計10に囲まれている。
「観念した方が良いよ。」
「岬さん、諦めると思う?」
「思わないけど、ここで終わりよ!」
10人全員が襲いかかり、明は迎え討とうとした時だった。
『Aチーム、アウト。』
「「「えっ?」」」
「は?」
その場にいる全員が唖然としていた。
勝負の内容は悩みましたが逃走中が浮かんで、これ良いじゃんとか思って、それを参考にしました。デパートの中で鬼ごっことかやってみたい。
チーム分けはあみだくじで決めてました。櫻田家は櫻田家で、長谷川家は長谷川家で。
少し悩みましたが、考えてみれば面白かったのでそんなチームになりました。
因みに櫻田兄妹の中で票を入れなかった人は奏です。理由は察してやって下さい。