まさかの連続更新。
流石に今年最後の更新となりますがね。
体育祭から1週間が経った休日。 渚は光の誘いと紗千子のお願いから、2人のダンスレッスンを見ていた。
振付師は別の予定が入っていて今は居ない。 なのでほぼ自主練にみたいになっている。
2人の踊る姿を見ている渚だが、少しだけ心ここにあらずという状態だ。 渚の事が気になった紗千子が話しかけてきた。
「ねぇ、渚。 もしかして無理にお願いしちゃった?」
「え? ううん。 そうじゃないの、ごめんね。 2人の誘いは嬉しいし。」
嬉しいのは確かだ。 だけど何処か無理に笑顔を作っている様にも見える。
「元気が無いけど、何かあった?」
「え〜っと…」
話そうか迷っているとらいとまでやって来た。
「何々? 何の話してるの?」
「渚の元気が無いから気になって。」
「あ〜、それ私も気になって、気分転換になるかな〜って思って今日誘ったんだけど。 何かあったの?」
まさか光からも心遣いされているとは思ってもいなかった渚だ。
「実は…って、紗千子は私達の事ってどれぐらい知ってるの?」
「王家の執事の卵って事と、らいとの親と渚の親が知り合いって事くらいかな。」
「まぁ…うん、そんな感じだね。」
この即席で作られた設定は灰が言ったんだなと理解した。
「それを踏まえて何だけど、明お兄ちゃんが執事候補から外されちゃったんだ…」
「「えっ!? そうなの!?」」
2人共驚いている。 特に光にとっては関係無い話では無い。
「な、何でなの?」
「分からない…だけど、お父さんが言うにはやっちゃいけない事をしたんだって。」
「そ…それでアキ君は?」
「路頭に迷ってるって感じかな。 皆には隠してるつもりだけど、私達を兄妹には分かってる。 いつもより元気が無いの。 でも、私達もどうフォローしたら良いのか分からなくて…」
吐き出せたのは良いが、悲しくて涙が出てしまう。 壁にもたれ掛かり、体育座りして顔を隠している。 泣き顔を見せたく無いのだ。
「あぁ、それは何とも…」
重い空気が3人をつつみこむ。 渚に対してもどうフォローすれば良いのか分からない2人だ。
「あれだよ! うじうじしてたって何も分からないままだし、渚ちゃんも踊らない?」
「え…? 踊るって。」
「ほら、渚ちゃんならすぐ踊れるでしょ。 私達が先に踊るから能力使って見ててね!」
「ねぇらいと、能力って?」
「良いから、さっちゃん踊ろう!」
何の話をしているのかさっぱりだが、体を動かす事が良いという事だけは理解した紗千子。 渚の為に踊る事にし、逆渚は言われた通りに能力を使って、目を真っ赤にしつつも見ていた。
踊り終えるとらいとに手を引かれ、3人でもう1度踊る事になった。
完璧に踊り終えると紗千子は驚いていた。
「凄いじゃない渚! 1度見ただけで完璧に踊れるなんて!」
「そういえば言ってなかったね。 私達兄妹にも王家と同じで特殊能力を持ってるのよ。」
「特殊能力って…え、でも渚達は執事の卵って…」
王家代々受け継がれていく特殊能力。 能力自体は違うが、能力を持つ事が王家の証であるこの世の中だ。 だが、長谷川家の兄妹も持っている。
「そう。 王家の証を持っているけど、それは櫻田家の皆だけなんだよ。 私達は執事の家系で、櫻田家を支える家系なんだ。」
「え…でも、あれ?」
紗千子は混乱している。 渚達長谷川兄妹は特殊能力を持っている、だけど王様にはなれない。 そして執事になる家系で、彼女達は専属の執事かメイドになる為に日々訓練をしている。 王家の証を持っているのに王様になれず、執事かメイドにならなければならない。 どうしてなのか…という事を考えていた。
「因みに渚ちゃんの能力は完璧模倣(ミミクリー)って言って、真似が出来るんだよ。」
「お兄ちゃん達に比べれば印象に残りにくい能力だけどね。」
「でもそれって、渚にしか出来ない事よね。」
思わず頬が緩んでしまった。 能力に関して自信が無いと言えば嘘になるが、紗千子からの言葉はとても嬉しいものだった。
「で、踊ってどうだった?」
「楽しかった…かな。」
「じゃあさ、渚ちゃんもアイドルやってみようよ。」
「……え?」
らいとからの思わぬ提案だった。 将来について専属のメイドになる事以外考えた事も無かった。 況してやアイドルになるという考えすらも無く、ただただ凄いなとか、可愛いな等と思っていたくらいだ。
「こららいと! 考えも無しにそういう事言わないの。 渚にも考えさせないと。」
考えた事も無い。 だからこそ今考えてしまった。 渚はアイドルをやってみたいかそうじゃないか。
「え〜、一緒に出来たら絶対に楽しいよ。」
「そこは否定しないわよ。 でも、そんな簡単に決めれる事じゃないでしょ。」
「やって…みたい…」
「「えっ?」」
「…かな?」
自分で何を言っているのか分からなかった。 だが、口から出たのは本心だ。
「本当に!? じゃあやろうよ!」
「ちょっと待ちなさい! 渚、ちゃんと考えて決めなさい!」
真剣な表情で問い詰める紗千子。 アイドルとメイドで揺れているのは確かだ。 ここでふと思ってしまった。 路頭に迷ってる明の事を。
将来を決められた兄妹であり、その他の事を考えた事も無く、ひたすら執事になる為に訓練されていた事。
らいとからの誘いをきっかけに将来について考えてしまったが故に、アイドルになりたいという気持ちが芽生えてしまった。
「うん…アイドルになりたいのは嘘じゃない。 でも、その為には専属のメイドになる事を諦めなきゃ。」
「それは後悔する事なの?」
「すると思う。 だけど! 紗千子が言ってくれた様に、私にしか出来ない事をしたい。 アイドルになって良かったって思いたい!」
決意が固まった。 それを聞いた2人は笑顔で迎え入れ、応援した。
アイドルになる為には問題はある。 先ずは大きな障害となる家族の説得からだ。 だが、それをクリアしたとしてもオーディションに受からなければアイドルになれない。
渚は2人に感謝していた。
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その日の夜、皆に大切な話があるとリビングに集めた。
まだ明を許していない健吾は目を合わす事も無い。
普段の真剣な空気よりも一段と重い空気となっている中、渚は恐怖に押し潰されそうになりながらも、重い口を開いた。
「私、アイドルになりたい。 それを皆に許して貰いたい!」
その瞬間に渚の顔に風が当たった。
健吾が叩こうとしているのを明が止めたのだ。
「何しようとしてるんだよ。」
「それはこっちの台詞だ! お前達を執事やメイドにさせる為に育ててきたものを…」
「なる事を決めるのは父さんじゃない! 俺達だ!」
明に圧倒され、押し黙った健吾だ。
「俺は渚を応援する。」
「僕も明と同じく応援するかな。」
「俺も…かな。」
明、灰、白の3人共渚の味方だった。
「俺は認めないぞ。」
その一言を言い残して健吾は自室へと戻っていった。
先程まで黙って見ていた母の恵は複雑そうに考えていた。
「お母さんはどうなの?」
「渚は…本当にアイドルをやってみたいの?」
「うん。」
「メイドをやめる事になっても?」
「それは後悔すると思う。 でも、考えて考え抜いた結果、アイドルをやってみたいの。 なって良かったって思いたい。 だから、許して欲しいの。」
渚の決意は本物だと気付かされる恵。
許したいのは山々だ。 だけど、そう簡単な事でも無い。
「そこまで言うならお母さんはやっても良いと思う。 でも、貴方達には問題があるのよ。」
そこで全員が気付いた。 自分達が抱えている問題。 それは能力による副作用。
白は体が弱り、灰は体内の速度が増して餓死寸前まで行った事。
まだ明と渚の副作用が判明していない今、兄妹を離す事をしたくは無かったのだ。 副作用を持ったが故に互いの異常に気付く可能性が高いからだ。
「お母さんはちゃんと理解してるって言える立場じゃないけど、貴方達の将来を決めたのは貴方達の体の事を思っての事なのよ。 近くに1人でも居れば助けになるし、解決の糸口になると思ってもいる。 だけど、将来が別れると必然的に離れ離れにもなるから不安なのよ。」
恵と健吾が1番心配しているのは、やはり子ども達の身体の事だった。 白に始まり灰も来た。 明と渚にいつ来てもおかしくないと心配で仕方がない。
その為、将来を皆1つにしていたのだった。
「お母さんありがとう。 でも、我が儘でごめんなさい。 それでも私はアイドルになりたい!」
渚の決意は揺らがなかった。
「分かったわ。 お父さんには私から話しておくから、頑張りなさい。」
「うん、皆ありがとう!」
お父さんからの許しはまだだが、お母さんからの許しを貰えた。
そして兄達も応援してくれている。
渚はアイドルを目指す事となった。
あんまり明るい話では無かったかな?
でも、新たな一歩を踏み出す事となった渚の話です。
そして執事候補から除外される明。
・長谷川 灰
1番ライバルと思っていた明が執事候補から除外された事に物凄いショックを受ける。
そして渚のアイドルになる決意は応援し、アイドルになったらグッズを買う事を決意した。
普段あんまり言わないのですが、考えはするので言います。 感想をお待ちしております。 些細な事でも良いので。
では、良いお年を。