長谷川の事情の話。
第1章終わりまでは走りきるつもり。
茜が告白してから数日、学生達は夏休みへと突入していた。
茜は花蓮と電話をしている最中だ。
花蓮に告白した事を伝えると、物凄く驚愕し、これは偽物の茜なんじゃ無いかと失礼な事を言っていた。 だが、返事は未だに返って来ていない日々が過ぎていく。
『まさか返事をする事を忘れてるとかじゃ無いよね?』
「それは無いと……思いたい」
『どうしたの?』
「よそよそしい…とは違うけど、なんか今まで一緒に居た明君じゃない感じがする」
『それって茜が告白した所為とか?』
「そ、それ以前にもあったから!」
記憶障害であるかもしれないと、花蓮には言えない。白と灰との話し合いはまだ出来ていない。
『んで、その本人は?』
「朝から出掛けてたよ。 渚ちゃん達も含めて」
『この天気の中?』
「うん」
窓の外を見ると、まだ昼なのに真っ暗であり、雨や風も強く、雷も鳴っている。 つまり台風が来ていた。
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健吾からお城のトレーニングルームへと集められた長谷川兄妹。 朝いきなり訓練すると言われ、4人共道着へと着替えるが何をするのか疑問だった。
「最近のお前達に言いたい事があってな、執事の仕事を疎かにしていないか?」
健吾は少し怒っている様子。 どういう事かと分からないと、4人は顔を見合わせる。
「白、専属の執事を目指す気はあるのか?」
「っ!」
今まで黙っていた事が言い当てられ少し動揺してしまう。
「灰、能力開発ばかりに集中していないか?」
「そうだね。 でも、執事の仕事を疎かにしてるつもりはないよ」
「お城に居る時は基本的にランニングマシーンを使ってる所しか見てないが」
速い事が取り柄の灰だが、ゆっくりと目を逸らしていく。
「次に渚、アイドルになる事は認めたが、同時に専属のメイドになる様にと言ったはずだ」
「そんなつもりは無いんだけどなぁ…」
両方共真面目にやってると思いきや、健吾からはそう見えていなかった。
「最後に明、お前が1番酷い。 やる気があるのかすら分からん。 専属候補からは外したが、執事としての仕事はきっちりとこなせ」
「……」
言い返す気持ちが無いという事では無い。思い当たる事が分からないからだ。執事の仕事?っと忘れている記憶を探していた。
「疎かにすればする程、櫻田家の皆に何かあったとなれば対処し辛くなる。だから今一度その根性と叩き直す。だから全員で掛かって来なさい」
4人は顔を見合わせ、灰が健吾に直ぐに走った。だが、読まれてるのか一本背負いされた。
「どうした、こんなものか?」
他の3人に振り返ると、目前には明が迫っていた。殴り掛かるも、それも読まれていたように空振り、更には身体を掴まれ横から接近して来た白へと投げ飛ばされ、2人とも倒れた。
そして死角から攻めようとした渚に向き直り、渚は後退した。
灰達3人は立ち上がると、今一度集まった。
「やっぱり普通に攻め込んでも無理だ。何か方法を考えないと」
「僕の高速でも読まれるからね」
「相手にすると面倒だよね」
「
健吾の能力は
「父さんに勝つには俺達兄妹の力を合わせるしか無いね」
「とは言うもののどうする?」
「無理はさせたく無いけど作戦がある」
「さすが明お兄ちゃん」
健吾に伝わらないように小声で作戦を教える。3秒間で何とか意表を突く事をしなければならない。
指示を出し終えると明は直ぐに渚と一緒に消えた。
「ん?」
3秒後の未来を見ようとするが、明からの攻撃は無い。寧ろ来るのは白だ。
消えてる状態からの攻撃すらも止められるから意味を成さないのは知っている。
予知通り白が接近して来て、灰は部屋中を走り出した。
白は健吾に掴みかかろうとするが、避けられた。特に白に捕まってしまうと、能力が使えなくなる。つまり未来が見えない。そうなると灰や明からの攻撃が分からなくなる。
足払いをして白を転ばせ、1度距離を置こうとすると、背後から灰が迫る。
腕を前に出すと、そこに収まるように首根っこを掴まれてしまった。
「がっ!」
「作戦にしては甘いな」
「そうでもないでしょ!」
灰の背後から飛び上がって来た白。灰を離して、後ろに後退する。
そして何者かから両足首を掴まれる。白に気を取られてるため、見えないが恐らく明だろう。
「何?」
だが、ここで健吾に異変が起こった。
そして今度は羽交締めた。しかもその腕は見えない。
「灰兄!渚!」
そこで健吾は驚愕し、理解した。目の前にいる白は渚が
そして、本物の白はまだ倒れたままで健吾の両足首を掴んでいる。
渚の姿に戻ると白を掴んで離れた。同時に明も離れた。
ここから能力を使えるが、見える未来は1つ。見えた時には灰にタックルされて吹き飛ばされていた。
「良し!」
初めて一泡吹かす事に成功し、4人はハイタッチした。
「驚いたよ。だが、この手はもう食らわん」
「ですよね〜」
渾身の一撃だったが、健吾には効いてはいるが、直ぐに立ち上がった。
この後4人はボロボロなるまで叩きのめされてしまった。
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4人とも起き上がれない程疲れ切っていて、床に転がっていた。久しぶりの父を相手にしての長い訓練だった。
最後に反省するよう言い残して、健吾は別室へと移動した。
「兄さんに聞きたい事があるんだけど…良い?」
「父さんが言ってた事だよね」
健吾が言っていた専属の執事を目指す気はあるのかという質問だ。弟達が気になってるのも仕方ない。
「目指す気があるのかって聞かれると、正直微妙なんだ。ごめん」
「身体の事?」
「それもあって、いざという時に櫻田家の皆を守れる自信が無いんだ」
やっぱりかと、3人は納得してしまった。だが、白が目指す気が無い以上灰にとっては残念な事だ。
「じゃあ、僕だけが専属の執事を目指してるって事か…」
渚は専属を目指してはいるが、アイドルの方を優先している。明に至っては専属候補から外されているから論外だ。
灰の呟きにより、誰も口を開かなくなった。1人だけが目指している専属。他の3人が取り残されたのかと思いきや、灰自身が取り残された気分になってしまった。
「明はもう目指す気は無いの?」
「無い訳じゃないけど。そもそも候補にすらなってないし、父さんが候補に戻すとも思えない。だから他に出来る事を考えてる」
「白兄さんは?」
「俺も同じかな。執事である事には変わりないけど、それ以上の事は望んでない」
「そうか…」
ここ最近、沢山の変化が訪れている。灰を除いた3人の心境に変化がある反面、灰だけが変わっていない。唐突な虚無感に苛まれてしまう。
「分かった。でも、出来れば兄さんも明も渚も専属を目指して僕と競って欲しいな。」
それだけ言うと灰はシャワーを浴びに行った。
残された3人も暫くしてから帰宅の準備を始めるのだった。
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能力は
現国王の総一郎の専属の執事。
子供達に厳しくあり、心配が故に縛っている所がある。
次はアニオリの話ですね。
シリアスな話に変えましたが。
では、また次回に。