櫻田家の隣の家の長谷川家   作:遊斗

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この話で「長谷川家と櫻田家」の章は終了です。
ここまで更新するのに時間を掛け過ぎたなって思ってます。どういう話を書こうかと悩む事が多かった気がする。今思えば、その時は色んな作品を観てたなぁ…




エピローグ

 

 

夏休みも終わり、新学期が始まっている。いつも通り登校して授業を受け、学級委員長としての仕事をこなす茜。

いつも通りなのだが、花蓮にとっては大切な何かが抜け落ちてる様にも見えた。

 

それは明がまだ目覚めてないのが原因である。世間には公にしていないが、クラスの皆には事故があって入院しているという事だけ伝えてあった。

明のファンクラブ等が見舞いに行こうとしたのだが、櫻田家と長谷川家と城の関係者以外面会謝絶となっていた。

 

花蓮は何があったのか聞くに聞けなかった。茜から直接聞きたいというのがあって、無理して聞くものじゃないと思ったのだ。

 

そして放課後になると1人で病院に行っている。これには花蓮は驚いていた。監視カメラや色んな人達が居るのに普通に向かっているからだ。

 

 

「成長したなぁ…」

 

 

と思いつつ、今は明の事で頭がいっぱいだから出来ているのであって、ふと気付いた瞬間にいつもの恥ずかしがり屋の茜に戻るのはいつになるだろうと思っていた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

既に日課と化している明のお見舞い。学校が終われば病院へ、選挙活動が無ければ病院へと足を運んでいる茜。

病室に着くと、いつも通り今日あった事を話す。眠っていて聞いていないのは分かっていたが、いつか起きるんじゃないかと期待していた。

 

 

「夏休みも終わってさ、来年が受験生だから段々と進路についての話が多くなってきたよ。明君はどうするのかな…大学に行くのか、それとも執事として働くのか…その前に選挙だよぉ…」

 

 

想像しただけでまだ頑張りが足りない事を実感する茜。葵と比べるとまだ天と地の差がある。

 

ここでふと思った。お伽話みたいに明に対してキスをすれば目覚めるのではないかと。

 

 

「うぅ…やってみたい気持ちがあるけど、付き合っている訳ではないからして良いものか…」

 

 

酸素マスクを取ろうと手を伸ばし、いや、それはダメだと悶絶している。

落ち着けと自分に言い聞かせる。

 

深呼吸をしている内に、明と一緒にいる空間に安心して睡魔がやってくる。

 

 

「少しくらい寝ても良いよね?」

 

 

返事が返ってこないのは分かっていたが、聞きたかった。ベッドに伏して眠った。

 

 

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頬に少し冷たさを感じた。でも、知っている感触である。それは手だった。

 

 

「んっ…」

 

「起きた…?」

 

 

そして聞き慣れた声が聞こえた。

ゆっくりと身体を起こし、やや寝惚けている感じがあるが、声がした方に顔を向けた。

 

 

「……おはよう…」

 

「あき…ら…くん…?」

 

 

茜の意識は夢なのか現実なのかはっきりとしていなかった。

でも、明の目覚めていた。

 

 

「な、ナースコールを!」

 

 

ボタンを押そうとしたら明に止められた。

 

 

「…いい、すぐまた…眠るから…」

 

「でも!」

 

「…聞いて…欲しい」

 

 

酸素マスクを取って、弱々しい声で茜に語りかけた。

 

 

「茜さんに…謝らないと…いけないんだ…皆の事を…今までの…出来事を忘れて…いたんだ……」

 

「忘れたってどういう事?」

 

「俺の…副作用…だ。記憶が…無くなって…いってた」

 

「やっぱり」

 

 

茜の予想は当たっていた。以前奏と話をしている時に、明は記憶障害なのではないかと思っていたからだ。

 

 

「でも、何でこのタイミングで分かったの?」

 

「全部…思い出したんだ…忘れていた事も…茜さん…から…告白された事も…」

 

「え…?」

 

 

初耳だった。いつまで経っても返事が来ないから気になっていたが、まさか忘れていたとは思ってもいなかった。だから副作用の所為とはいえショックである。

 

 

「本当に…ごめん…」

 

「う、うん…」

 

「ここからは…お願い…なんだけど…良い?」

 

「うん、何でも言って!」

 

 

明の力になれるなら何でもしてあげたかった。だから力強く答えた。

 

 

「兄さんや…奏さんに…副作用の…事を…話して欲しい…記憶障害…だって事を…」

 

「うん、任せて」

 

「後は…俺がちゃんと…目覚めた時に…なんとか…してくれると…思う…それと、俺の机の…上にあった…ノートを覚えてる?」

 

「覚えてるよ」

 

 

茜の中で引っかかっていた物だった為、覚えていた。

 

 

「あれに…書いて欲しい…事がある…」

 

「何て書いん…!?」

 

 

何て書いて欲しいのか聞こうとする前に、明に後頭部に手を当てられて引き寄せられ、そしてキスをされた。

驚きのあまり、目をパチクリしている茜。そして明はゆっくりと身体を引き離した。

 

 

「俺、長谷川明と…櫻田茜は…付き合って…いるって…事を……これが…あの時の…返事だ…」

 

「っ…うん!」

 

 

茜はもう1度キスをした。想いが通じて嬉し涙さえ出てくる。

 

 

「そして…これが最後の…皆への…茜へのお願いだ…」

 

「うん、言って」

 

 

時間が迫ってきている事を理解した茜。最後まで聞き入れようとするが、涙がどんどん溢れてくる。

 

 

「次に…目覚めたとしても…記憶が…残っている保証が…無い……それに…いつ起きれるかも…分からない…それでも…待っていて欲しい」

 

「待っでるがら、だがら…絶対に…」

 

 

その先の言葉が出て来ない。嗚咽している。でも、言わなければならない。

 

 

「明君は…私っ…の執事なんだから!絶対に起きて、絶対に思い出してね!」

 

「分かってる…俺は、茜の執事だから…」

 

 

そう言ってマスクを着けて、茜の手を握って静かに眠った。

次にいつ起きるのか分からない明。今起きた事の奇跡などで思考がぐちゃぐちゃになってしまった茜は号泣した。

そして泣き疲れたのか、その場でいつの間にか眠ってしまった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

携帯のバイブレーションがポケットで振動した。それに驚くように飛び上がるように茜は起床した。

いつの間に寝たのだろうか、先程の事は夢なんじゃいかと思えたが、自分の手を明が握っている事が、先程の事が現実だという証拠だった。

 

 

「夢じゃないんだ…」

 

 

つい頬が緩んでしまう。

未だに振動している携帯がメールでは無く着信だと気付き、通話してみると葵からだった。

今どこに居るのか、何時だと思ってるの?という心配の電話だった。

面会時間終了のギリギリの時間だった為、直ぐに帰宅してこってりと母と葵に怒られた。

 

次の日、お願いされた通りに長谷川家の人達に報告し、奏にも副作用の事を伝えた。そして、ノートにも付き合っている事を書き綴った。

 

明がいない生活がもう少し続くのだが、元に戻った事もあった。

 

 

「ねぇ、いい加減私の背後に隠れるのやめない? 最近まで普通にしてたじゃん」

 

「だって〜…うぎゃー!カメラが!」

 

 

以前の様に視線に敏感になった茜だった。

 

 

 





・長谷川 明
櫻田茜と付き合う事になるが、また昏睡状態に戻ってしまう。そして次はいつ起きるのか、そして記憶がどうなっているのかは分からない。

次からは新章ですが、その前に長谷川兄妹のキャラ紹介です。
それでは。
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