軽い気持ちでお読みください。
よろしくお願いします。
───とある国の某所。
様々な高層ビルが建ち並ぶビル街。
こんな夜に街の絶景をどこからか眺めるならば、なんとも綺麗な景色が目に映るのだろう。
その街に存在する高層ビルでも、一位二位を争う程度の高さであるビルの屋上。
遠い地上は行き交う車のエンジン音、または人々の忙しそうな足音が騒がしい限りだが、ビルの屋上は真逆とも言える程に静かで殺風景。
その静かな上空に、一機の輸送用ヘリが音を立て接近した。
『──よし…降下開始』
無線から聞こえた指示により、複数の人間がヘリから垂れ下がったロープを使い素早く降下していく。
黒い戦闘服。所謂、特殊部隊が着ているような服を着ているせいか、完全に彼らは闇に紛れている。
顔全体もフルフェイスのヘルメットで隠されて、その素顔を確認することはできない。
その手には小型のサブマシンガンを携えていた。
その部隊の隊長と思われる一人が、隊員三人へとハンドサインより指示を送り、音を出すことなく、ビルの中へ潜入していった。
───一人、もう一人、また一人と、静かに人が床に崩れ去っていく。
サブマシンガンの先に付けられたサプレッサーの消音効果により、ある程度の音だけで撃つことができる。
気付かれる前に撃つ。気付かれないように撃つ。
その繰り返し。
殲滅任務ではないが、「目的の物」を奪取するためには、敵の屍を越えて行かなければならなかった。
今ここは正に敵の手の中。
油断をすればこちらが殺される。
ならば、こちらから殺るしかない。
生きて帰るか、死んでここに残るか、だ。
暫く進むと、一つの扉が見えた。
部隊の隊長が、目的物がある部屋に到着したことのサインを、隊員たちに送る。
作戦前の建物内の反応によれば、間違いなくここに例の物があるはず。
室内へと慎重かつ大胆に銃を構え、一気に室内へと侵入する。
部屋全体を確認すると、一面の窓からは光り輝いている街の夜景が広がっているのが見える。
しかし、室内はそれとは違い、何もなく薄暗い。
一つ言えば、部屋の中心にぽつんと台が置かれていて、その上に貴金属の杯が置かれていたのが目に付いた。
「…クリア」
これこそが目的の物である───「聖杯」。
無論本物ではなく、過去に行われていたと言われる冬木の聖杯戦争のものでもない。
「擬似聖杯」。贋作の贋作。
つまりこれは偽物のまた偽物の聖杯。
願望器としての機能はなく、あるのは「サーヴァント召喚」のみ。
また、その召喚においてでも欠けている部分がある。
本来の聖杯ならば、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、そしてバーサーカー───合計七騎のサーヴァントを召喚することができる。
エクストラクラスというのも存在するらしいが……。
だが、この擬似聖杯は、「一騎のみ」しかサーヴァントを出すことができない。
だが、油断は禁物である。
一騎のサーヴァントだけでもそれは力となり、時には悪用されるということも有り得る。
この偽聖杯を回収し、利用しようとするテロリストを排除すること。
そして、これを世界中の秘密結社や組織に売りさばいた、聖杯の偽物を制作した「黒幕」を探し出すことが我々の任務だ。
「──がああぁぁ!!」
ふと、部屋の外から聞こえた悲鳴。
その後にも複数人の叫び声と銃声が木霊する。
その音に反応し、入り口の方へと一斉に銃を構える。
「──外にいる者は片づけた。
この部屋で、一網打尽にするつもりだったのだろう」
扉の前には一人の少女。
見た目はこの状況に似つかわしくない。
翠緑の衣装を纏っていて、獣の耳と尻尾が何故か生えている。
眼差しも獣のようで、髪は無造作に伸ばされている。
だがその野生味の中にも、不思議と気品を感じさせるものがあった。
「やはりか……」
何となく勘づいてはいた。
ここに来るまでがまず警備が手薄であったし、まず聖杯が保管してあるところとしては簡単すぎた。
だからこそ、閃光弾を投げる準備はしていたが……。
「汝たちが倒したかったというのなら、謝る。
手柄を横取りするつもりは、毛頭なかった」
「いや……俺の方こそすまない。
手を煩わせてしまったな」
結局は油断していたことに変わりはない。
完全にミスである。
助けてもらった彼女には、実は最初から霊体化させ、付いて来てもらっていた。
手に弓を持った、見たままの「アーチャー」のクラス。
ちなみに、彼女のようなサーヴァントと言われる者には、主とも言うべき「マスター」という魔力を与える存在が必要である。
「ありがとうアーチャー。助かったわ」
服装もあって、見た目では分かりづらいが、紅一点である隊員の一人がアーチャーに声をかける。
「気にしなくていい。
マスターを守るのは当然のことだ」
そう。
この女性隊員こそが、深緑のアーチャーのマスター。
魔術師でもあり、この部隊に所属する軍人の一人でもある。
今ここには彼女しかいないが、他にも一人、魔術師がこの作戦へ参加している。
そして、協力してくれているサーヴァントも二体───つまりこれこそが、我々の「切り札」となる存在。
これまでに回収した擬似聖杯は二つ。
その二つを逆に利用し、召喚に成功した英霊である。
擬似聖杯を、相手が所持しているということは、相手もサーヴァントを召喚してくる可能性がある。
そうなれば、激戦になるのは必至。
それに我々だけでは対処しきれない。
そのための対策を講じる必要があった。
「しかし、良かった…。
ここには魔力を持ったやつはいなかったようだ」
何はともあれ作戦は成功した。
残るは帰還するのみ。
「擬似聖杯は確保した。
これより離脱のため、屋上に待機しているヘリへ向かう。
まだ敵がいるかもしれない。十分に注意しろ」
「「「了解」」」
擬似聖杯を大事に箱に詰め、時間指定に合わせて屋上へと向かった───
───世界にばらまかれた擬似聖杯は多数存在する。
今もなお増え続け、擬似聖杯の作成技術は明らかに向上している。
それはいずれ冬木の贋作のような聖杯が、できることを示唆していた。
もしもこのまま、様々な組織に売り渡されることを野放しにすれば、その聖杯を巡りさらなる力を求め、泥沼の戦い───聖杯戦争が再び始まってしまう可能性があった。
そうなれば、聖杯は各地にばらまかれているために、世界を巻き込む戦争になる。
十数年前に行われた冬木の聖杯戦争。
また、様々に行われた聖杯戦争のどれにも似つかない───最悪の聖杯戦争。
その最悪なシナリオを辿らないため、新たに設立された特殊部隊。
国連軍独立部隊Fate Defense Force。通称FDF。
人類の「
後に彼等がある少年と邂逅した時、遂に「運命」の歯車は、回り出すこととなる───
fateの設定に関して、正直ほぼ無知であるので、とてもおかしいところがあれば、ご指摘ください。
ちなみに特殊部隊の名前、FDFは、あるゲームの名前が元ネタです。FDF!FDF!
※誤字があったので修正しました。