Fate/Awakening   作:Vaan

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第一章ですが、まだまだ序章みたいな感じになってます。


第一章 「邂逅・前節」

───平穏な日常。

 

特に、戦場に身を置いていた、多くの人間が経験するならば、その日常から離れたくないと思ってしまうだろう。

 

 

あるところに、古来より続く家系が存在した。

その家は主に暗殺や護衛、傭兵としての生業を家業とする家系であった。

 

時代とともに数多の争いの場を駆け抜け、時には魔術師や、人ならざる者とも対峙した。

 

どこに雇われるのかは、代によって違った。

人の属する組織、魔の属する組織。人一人のために雇われることもあった。

 

そして、その家業は今もなお続く。

身を鍛えるため、山に籠もり、他の武術の門も叩いた。

世界各地の戦場に赴き、数々の戦に参戦し、多くの戦場において活躍し続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───冬木市。

 

西日本の日本海側に存在する、周囲を山と海に囲まれた自然豊かな地方都市。

名前の由来は、冬が長いことからきているらしいが、実際そんなことはなく、とても穏やかな気候である。

 

ちなみに、この「冬木」の地の歴史というのは、あまり良いものではないらしい。

なんでも過去に、大災害や連続殺人事件などがあったとかなんとか。

 

だが、そんなことなど「彼」にとっては、預かり知らないことだった。

 

 

「──それじゃあ、また」

 

夕方、高校の放課後。

友達の一人と、この「穂群原学園」で別れを告げている少年。

 

「おう、勉強教えてくれてありがとな尾神!」

「……いや、俺の方こそありがとう」

 

彼の名は、尾神(おかみ)謙太。穂群原学園二年生。

少し天然パーマ気味の短髪の黒髪、黒眼。

少しゴツい身体つきををしており、身長も高く、見た目はなかなかの威圧を感じさせる。

だが、そんな見た目とは裏腹に、誰にでも優しく、男女ともに人気のある生徒だ。

さらに身体能力も高く、スポーツ万能、博識で、正に模範的な生徒と言っても過言ではない。

 

彼はちょうど半年前、この冬木へとやってきた。

つまり、元々この地域には住んでおらず、急遽この学校へと転入した転入生である。

 

彼の住んでいる場所は、「新都」と呼ばれるところにある、とあるマンションにある。

実家は別のところにあるのだが、学校に行くための交通がなにかと面倒なので、そこで一人暮らしをしていた。

貸賃は実家の仕送りで払っている。

 

マンションに到着し、階段を上がる。

彼の部屋はこの14階建てであるマンションの5階にある。

 

そして、部屋の前。

 

「──あ、尾神くん」

 

玄関の鍵を開け、部屋に入ろうとした時、不意に隣から声が聞こえた。

声をした方を辿ると、そこには彼を先輩と呼ぶ、少女が立っていた。

 

「どうしたんですか、先輩」

 

彼女は、天乃紗夜。

穂群原学園三年生。つまり謙太の先輩にあたる。

見た目は、眼は限りなく黒に近いという感じだろうか。

背にまでかかっている、ストレートの長髪は栗色。一応、地毛らしい。

身長は高くもなく、低くもなく、恐らく歳相応という見た目。

 

謙太と紗夜の部屋は隣同士で、彼はよく彼女にお世話になっていた。

 

「ちょっと買い出しに行こうと思ってね……」

 

また、彼女も彼と同じ、元々この冬木市には住んでおらず、穂群原学園へ入学の際、ここで一人暮らしを始めた。

所謂、仲間でもある。

 

「俺も一緒に行っていいですか?

大して用があるわけじゃないですけど……」

「えっ…え!ホントに!?

一緒に行こう尾神くん!」

 

謙太の言葉に、戸惑った様子を見せながらも、嬉しそうに照れ笑いを返す。

 

「良かったです。

すぐ準備するので待っててください」

 

謙太はそう言って部屋へと戻ると、急いで動きやすい私服へと着替え、すでに暗くなった外へと、紗夜と一緒に出掛けていった───

 

 

 

 

 

───一方、冬木市郊外上空。

 

闇夜を切り裂くように、一機の軍用輸送ヘリがプロペラを回していた。

 

「──諸君。状況を伝える」

 

ヘリの後方スペース。

正面に小型のモニターが設置してあり、そこには一人の、いかにも指揮官らしい、厳つい中年の男性が映し出されていた。

ヘリ内には、運転しているパイロットと、漆黒の装備を纏った五人の人間、そして、二基の霊基───

 

 

「重装備のテロリストたちは、とある廃ビルに立てこもっている。

目的の聖杯もそこにあるだろう。

今回はランサーの気配察知により、敵サーヴァントがいることも分かっている」

 

指揮官である男は黙々と言葉を続ける。

 

「RPGを持っているやつがいるため、屋根から侵入することはできない。

下にはセンサー地雷が設置してあるため、正面からの侵入もできない。

向かいのビルから侵入し、ヘリの援護をしろ

その仕事は、ジーン・ベルトイト、そしてランサーに任せる。

残りは合図とともに、ヘリからの降下で侵入、聖杯を奪取しろ」

 

 

あらかた任務内容を告げた指揮官は、通信を静かに切る。

聞き終わった隊員たちは、軽く溜め息をつき、詰まった呼吸を整えた。

 

「楽なもんじゃないな、この仕事も。

不吉な匂いがする冬木にまで来て…」

 

隊員の一人が溜め息混じりに話す。

冬木と言えば、過去に聖杯戦争が行われていた場所と聞く。

そんな場所に聖杯があるのだから、まず吉報でないことは事実であり、「不吉な場所」と揶揄するのにも無理はなかった。

 

「聖堂教会も動いてるとは言え、聖杯は世界中のテロリストに、満遍なく売られていて、数が知れない。

こうやって、俺たちみたいなよく分からん部隊が創設され、動かないとならん事態だ。

仕方ないだろう」

 

さらに、ここで言われた「聖堂教会」と言われる組織だけではなく、「魔術協会」という魔術師の組織も協力しているという話だった。

それでも数が足りないということで、こうしてこの部隊が創設され、今に至っていた。

 

「でも、何で私たちがこの冬木に?

それこそ、聖堂教会や魔術協会みたいな人たちが、ここに来た方が良さそうなのに」

 

シルエットでは分からないが、女性と思われる隊員が疑問を一つ問う。

実際それは皆、思っていたことだった。

冬木の地というのは、聖杯戦争の地であったということもあり、聖堂教会や魔術協会がこの冬木に、少なからず縁がある組織。

そういう組織が向かった方が、地を知っているのもあって、もっと円滑に任務を進められるはずである。

 

少なからずこの質問をした彼女は、魔術協会の人間であるが、冬木との縁など全くもって皆無だった。

 

「その辺りは解らん。

大佐も一応、軍人でありながら、魔術協会に所属しているらしいが、彼からは何の情報もない」

 

「大佐」というのは、彼等の指揮官のこと。

その大佐からも、冬木に行けという任務を告げられただけである。

真相は不明だ。

 

「…まあ、考えても仕方ない。

我々は任された任務を、遂行させるだけだ」

 

目的地はもうすぐ。

他の事を考えている暇は実際ない。

隊員たちは呼吸をもう一度整え、頭を切り替えることにした。

 

「……今回はRPGを持ったやつに、サーヴァント……厄介ですね」

 

隊員の一人が話す。

ちなみにRPGとは、対戦車擲弾。つまり、グレネードランチャーのことである。

 

いざとなれば、サーヴァントの力を借りてどうにかすることはできる。

どちらかと言えば、もう一つの問題の方が大きい事実であった。

 

「敵サーヴァント……こいつをどうするか…」

 

今回は敵サーヴァントがいるという情報。

以前とは違う、明らかな「脅威」という存在がいることだ。

 

 

「──サーヴァントの数は一体。

聖杯の数は……二つ、あるみたいだね」

 

二基のサーヴァントの内の一騎。

簡素な服装に、しなやかな緑色の長髪、顔はこの世に存在する者の中でも、殆どの人間が目を奪われるぐらいに美しい。

だが、その締まった身体は、柔和な女性と言うより、どちらかと言えば男性寄りであろうか。

その端整で優美な姿は、男と女、人為と自然、淫靡と純粋といった矛盾した印象を同時に併せ持っていた。

 

その物腰柔らく、温和な雰囲気な「彼女」───いや、「彼」は話す。

 

「聖杯が二つだと?」

「間違いないと思う。

この前の偽物みたいに、サーヴァントを召喚できないものなのかは分からないけど、現状、サーヴァントは一体だけみたいだ」

 

ランサーが言ったように、一つ前の任務で回収したのは、聖杯としての性能が何も無い、ある意味本当の偽物だった。

 

彼は考える。

果たしてこれは、「どっち」なのかと。

 

「召喚することができない偽物なのか。

或いは、召喚することができる偽物なのか……」

 

前者であるならば良いが、後者であれば、非常に厄介なことになる。

 

「…急いだ方が良いのかもしれんな」

 

テロリストに利用されるその前に、それだけは阻止する必要がある。

サーヴァントを二体相手すれば、それこそ激戦になりかねない。

 

 

 

「──もうすぐ到着です!」

 

ヘリのパイロットが部隊員に伝える。

外を覗くと、目視からも、目的地を捉えることができた。

 

「サーヴァントの相手はお前に任せる。

できるな?アーチャー」

「無論だ」

 

深緑のアーチャーは静かに答える。

本当は、二体で敵サーヴァントを攻めるのが好ましいが、何より、ランサーの力が「強力」すぎた。

そんなサーヴァントが戦えば、狭い空間での戦闘では、自分たちにも被害が及ぶ可能性があった。

 

「もしもの場合は、外に誘導しろ。

その時は、ランサー。お前も戦闘に参加してくれ」

「…うん。分かった」

 

 

気付けば、目的地。

向かいのビルの真上。

隊員たちと顔を見合わせ、静かに頷き、準備の確認を取る。

 

 

「…よし──任務を開始しろ」

 

これより、静寂なる暗闇の中、世界を守護する戦いの火蓋は、切って落とされた───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静粛なる暗闇の中、所々に存在する街灯が、進むべき道を照らしていた。

 

買い出しに行っていた謙太と紗夜は、それを終え、家へと向かっていた。

 

「──そういえば、尾神くんは毎朝身体を鍛えてるの?

ランニングとかしてるよね?」

「ああ、それが日課になってるますからね」

 

そんな他愛もない話をしながら、夜道を歩く。

 

こうやって、二人で一緒に買い出しに行くのも、割と珍しくなく、食材が尽きれば、謙太が紗夜に付いて来たり、はたまた紗夜が謙太に付いて来たり、よくあることであった。

 

「うーん…ランニングだけで、そんな体つきになるの?」

「え?あー……ランニング以外も勿論してますよ。

腹筋とか腕立て伏せとか、背筋とか」

「…ふーん」

 

ちなみに、お互い部活には入ってはいない。

とは言っても、謙太は毎日のようにいろんな部活から、勧誘がきていたりするのだが、全部断っていた。

 

 

「──ん?」

「…?どうしたの?」

「いや、ヘリの音が……随分近いと思いまして」

 

談笑していた途中、遠くの方から、音が近づいていることに気付く。

それはヘリのプロペラの音。

静かな夜を裂いた音は、徐々に大きくなっていて、ヘリがこちらに近づいていることが分かった。

 

「音、大きいね。

低く飛んでるのかなあ」

 

低く飛んでいるにしても、音から推測すれと、普段飛んでいるようなヘリより、断然低く、近くを飛んでいることが分かる。

音はもはや爆音となっていて、その音で紗夜の話す声が、ほとんど聞こえないほど。

 

(なんでこんな近くを……)

 

謙太は夜空を見上げ、自分の頭上を通ったヘリを眼に捕らえる。

 

 

それは建物の陰から急に現れた。

とても大きな空を飛ぶ機体。

たまに飛んでいるような旅客機ではない。

頑強に造られているであろう見た目で、意図も容易く夜に紛れられるような、黒色の塗装が施されていた。

 

 

「……軍用機?

何でこんなところに…」

 

それは軍で使用される輸送用のヘリであった。

普通ならば、地方の都市の上空を通ることなどない。

近くに軍事基地があるならまだしも、この冬木近辺にはないはずである。

 

 

そのまま陰険な雰囲気を出すヘリは、高層ビルやマンションがそびえ立つ地域の方向へと飛び去っていった。

 

(あのヘリ、ランペリングでもしようとしてるのか?

まさか……)

 

「ほら、もう行こ尾神くん」

「あ、ああ……」

 

彼は胸騒ぎを覚えていた。

まるでこれから、何か大きい事が起こるような、そんな感覚であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───場面変わり、冬木市某所にある廃ビル。

壁には数多の銃弾の跡が残されていた。

場所によっては、銃弾により、壁としての機能は失われている程。

それは正しく、現代の戦闘跡と言えるだろう。

だが、その中に混じり、旧時代の武器と言うべき矢が、突き刺さっていた。

 

「──くッ…!」

 

矢を次々に番え、弓を引き絞る深緑のアーチャー。

右足首には切り傷があり、多量の出血をしていた。

彼女はその足の痛みを堪え、建物内を高速で縦横無尽に動き回り、数多の矢を放つ。

 

ところが、撃ち放った弓矢は、全て容易く、手に携えた薙刀で軽々と全て弾かれてしまった。

 

「……下らんな。もっとやれるのかと思ったが、期待外れだ」

 

その男は、特徴のある立派な甲冑を備え、身長以上の大きさである薙刀を持っていた。

恐らく、ランサーのクラスである男が、呆れた顔でアーチャーを見る。

 

本来ならば、弓を武器として扱う者は、距離を一定に離し、戦うべきである。

しかし、現在戦闘を行っている場所は建物内であり、それは不可能に近い。

ならばと、アーチャーは自慢の俊足を使い翻弄し矢を放つのが、選択としてもっとも正しい戦い方であると、彼女は考えた。

 

「鼠のように動き回る程度では、私を倒すことはできぬぞ。

……いいや、そもそも火力不足のようだな、アーチャー」

 

だが、この状況での戦法として相応しくはなかった。

敵であるランサーの言う通り、火力がまず足りておらず、ダメージが全くと言っていいほど与えられていない。

それでおいて、動き回っているのはアーチャーのみで、疲れが溜まっていく一方。

完全にジリ貧の状態であった。

 

「黙れ!!ランサー!!」

 

このような行動を取ったのも、彼女は焦っていた。

その焦りが状況判断が鈍り、相応しいとは言えない戦法を繰り返していたのだった。

 

 

 

屋内に侵入し、彼女たちを待っていたのは、予想外の出来事であった。

 

ヘリを援護すべく、先にビルへと潜入したジーンが、敵テロリストと内通していた。

言わば裏切り。

 

こちらの情報は完全に把握され、建物内に潜入した途端に、攻撃を受けた。

ヘリはRPGによって撃墜され、 退路は絶たれてしまった。

なんとか部隊は敵を倒しながら、聖杯のある場所へと進んだものの、今の状況は最悪。

十数人の敵に囲まれ、窮地に追いやられていた。

 

アーチャーは、この状況を少しでも良くしようと、敵のランサークラスであったサーヴァントを、別の場所に誘い出していた。

 

 

そしてそれだけではない

それとは別に、大きな問題がある。

 

それはこちら側のランサーのこと。

ランサーの温和な性格からして、こちら側を裏切るという可能性は低いと思われるが、マスターはジーンであり、令呪で命令されれば、さらに不味い状況となり得る。

 

現状、令呪の命令で待機させているのだろうか、姿は見ない。

強力すぎる力で、巻き込まれることを恐れてか、これぐらいで十分と、慢心しているかは分からないが、それが部隊や彼女にとって、不幸中の幸いとなっていた。

 

だが油断はできない。

故にアーチャーは、マスターが所属する部隊に加勢するためにも、あのランサーを呼ばれる前に、この和風ランサーを早急に仕留める必要があった。

だからこその焦りを覚えていた。

 

 

(どうすれば……どうすれば倒せる…!)

 

手には汗が滲み、その実感がじわじわと伝わってきている。

矢こそ正確に射ているものの、増した焦燥感が、さらに冷静な判断を狂わせてしまう。

 

 

「どうした?動きが鈍いぞ」

「──がッ…!?」

 

動き回っていたアーチャーが飛んだ先、気付けばランサーが薙刀を構え、回り込んでいた。

 

薙刀の柄で思い切り殴打され、頭に重い衝撃が走る。

そして、その場から蹴り飛ばされ、吹き壁へと彼女の身体は激突する。

身体は壁にめり込み、壁自体には、まるで鏡のようにヒビが割れていた。

そのままゆっくりと、壁から床へと沈む。

 

「その首、貰い受けようか。深緑のアーチャーよ」

 

彼女は逃げようと身体を起こそうとするが、身体全体が重く、思うように動かすことができない。

限界がきていたのか、怪我をした右足の感覚はほぼ無かった。

頭からは血が流れているのか、生暖かい感触が頬を伝い、床にぽたぽたと赤い斑点が出来上がっていた。

 

「ぐッ、何故だ……」

「……?」

「戦争が起きれば……世界中の子供たちも巻き込まれ、ただでは済まない……。

子供たちまで巻き込むなんて……許せない……!」

 

しどろもどろな声でアーチャーは声を発する。

呼吸は乱れ、意識を失いかけていたにも関わらず。

 

「戦争というのは、いつの世でも必ず存在する。

今回は『擬似聖杯』の奪い合いが、火種となるだけのことだろう。

それを止めようとするなど、甘い考えだ」

「なッ…貴様…!」

「やつらが考えていることは、戯けた考えだとは思っている。

──が、夢物語を語る馬鹿者の方がよっぽどつまらんよ」

 

近くまで寄ったランサーは、刃をアーチャーの首元に狙いを定め、薙刀を振り上げる。

 

「介錯してやろう。

罪のない子供が苦しむ姿を、そなたが見なくていいようにな」

 

 

ランサーの持つ薙刀は美麗な円弧を描き、アーチャーの首元へと向かっていく。

アーチャーは目を閉じることなく、その振り下ろされる刃を見つめていた。

死を覚悟する他なかった。

 

「く…そ…」

 

身体は動くことなく、避けることは叶わない。

また、「世界中の子供を救う」という彼女願いも叶うことなく、終わる──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はずであった。

 

ランサーの刃は、()を切り裂いた。

 

「──!!?」

 

彼には見えなかった。

確実にアーチャーの首を取ったと思っていた。

だが、そこに彼女の首は無く、身体も無い。

あるのは、彼女が落とした血の滴のみ。

 

 

そして見えなかったのは、首を刈り取られようとしていた彼女もまた同じ。

気付けば、彼女は腕に抱えられていた。

首は今も繋がり、生の実感もある。

 

一瞬何が起こったのかと、理解することができなかったが、彼女を抱えていた腕の温かな体温を感じ、ようやくこの男によって助けられたことが理解できた。

 

彼女は助けた者を見上げる、洗練された威圧、まるで死地を潜り抜けてきたような雰囲気を出しながらも、若さが感じられる少年(・・)がいた。

 

 

「──間に合って良かった。大丈夫ですか?」

 

その目には情熱が宿っていた。

そして、その中に優しさが共生しているかのような、温かみのある雰囲気。

彼女はそんな印象を抱いた。

 

「貴様は…一体?」

 

彼はアーチャーの問いかけに、静かに口を開く。

 

「──尾神。尾神謙太です」

 

少年──尾神謙太はそこにいた。




fateは設定が深く、なかなか大変ですね……

※誤字があったので修正しました
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