「実は、前々から根回ししてたんだよ、後藤さんが――」
……関くんの説明を要約するとこういう事だ。
二人で謝りに来たあの日以降、後藤さんは元々委員会などの繋がりもあり踊子ちゃんとは仲が良かったようで演劇部に顔がきいた。そこで演劇部に協力してもらい劇を関くんの脚本、そして王子役を関くん、シンデレラ役を私にしてもらえないかという事だったらしい。聞けば後藤さんは謝りに来た後は特に熱心に私と関くんとの仲を取り持とうと頑張っていたらしく、後藤さん曰く関くんの想像力を生かした脚本の中で二人がぶつかれば、愛の化学反応が生まれるとかなんとか……と、説明する関くんも恥ずかしそうだったけれど。
そうして関くんが話し終える。
「そっかぁ……後藤さん、頑張ってくれてたんだなぁ」
演劇部に手伝いをした数日後に、後藤さんが部室に向かっていたのはその辺りの話だったのだろう。シンデレラの衣装の寸法も最初から私に合されていたのか……。でも、シンデレラ役は結果的には私が自分で決めた事……私が断ったらどうするつもりだったのだろう?
「でも、関くん……いくつか疑問があるの」
「うん……なに?」
「一つは、演劇にあれだけ情熱をかけていた踊子ちゃんがいくら後藤さんに何か恩か何かあったにしても、全面的に後藤さんの提案を受けるかって事だけど……」
言って関くんをチラリと見る。
「それは、独自さん(踊子ちゃんの名字)が面白ければノリで決める人だから……あと、脇役好きだしイレギュラーな事が好きな子だから案外乗り気だったらしいよ」
「……へぇ~」
う~ん。あながちウソとは言えないか……それっぽいし。
「じゃあ、二つ目――」
私は指でピースサインを関くんに見せながら言う。
「まだ、劇は本番の途中……王子役の関くんに至ってはまだ出てすらいない。そんなこのタイミングでどうして全部ばらしちゃったの?」
全部終わった後でばらすのが普通のような……。
私が指摘すると関くんはバツが悪そうに顔をしかめる。
――と、その時、『これより、一旦、小休憩に入ります。後編の開始時刻は……』と休憩のアナウンスが入る。すると、トイレへと席を立つ観客であるクラスメイトがガヤガヤと騒ぎだす声が聞こえてくる。明かりも点いたようだけど、元々舞台袖のここはほとんど明るさが変わらない。奥の着替え室の扉を閉めれば、電気スタンドの光量しかなかった。
私は手招きをし、関くんを電気スタンドの辺りまで呼び寄せる。その角の小スペースに二人並んで座った。
「……不思議だよね。こんな小さいスタンドの黄色い灯の中にいるとまるで世界に私達しかいないみたいな気がする。外から声は聞こえるけどそれもどこか遠くの世界の事みたいに……」
そこで横に座っていた関くんの顔を見ると思い耽るような表情。それを見るとなんだか恥ずかしくなっちゃって、
「って、なんだろ……わたし、何言ってんだろ」
「いや、そんなことないけど……」
こちらを見て即答する関くん。肯定されて余計恥ずかしくなって、はははと、笑って誤魔化す。よく考えてみれば関くんの想像力からすれば、そりゃそうだよね。
「……で、まださっきの疑問、答え貰ってないけど」
これ以上、今は喋れない。紅くなった顔もあんまり見られないのが幸いと私は関くんに話をふる。
「……ああ、実は、今になって緊張してきちゃって」
「劇に出るのが?」
私が言うと、横で縦に頷く。
なるほどねぇ。舞台でいきなり王子役として私を驚かせるつもりだったのに、等の本人が――いや、後藤さんが首謀者だとすると関くんも被害者か――その前に緊張しちゃったって訳ね。でも、おかげで後藤さんのドッキリ作戦はパー……? って事もないか。
「ていうか、関くん演技できるの?」
「練習はやった……やらされたよ、後藤さんとね」
聞けば、裏で後藤さんと特訓していたらしく、演技の上手さはともかく台詞は問題ないらしい。
つまり、せっかくの作戦も当人の緊張によって、引っかかる役の私に助けを求めてるって訳か。
――策士策に溺れるとは正にこの事だよ……関くん――!
……でも、なんていうか……可愛い。土壇場で引くに引けず、私に頼る関くん……すっごく可愛い。
「よ……よし! 関くん。大丈夫! 私も、まだ、演劇初心者だけど……最初さえ、勢いでやっちゃえば、あんまり緊張しないからっ! ようは思い切ってやることだよっ! ねっ?」
そう言って、笑顔で関くんの肩を叩く。
「いや……けど、みんな見てるし……」
だけど関くんは踏ん切りがつかない様子。体育座りで身を縮こまらせる
……もう、関くんってばいつもはあんなに大胆な事してるくせになんでそれがこういう時に生かせないのよっ。
……ってそうか。私はいつも関くんの遊びを見ていたから当たり前のように思っていたけど、みんなから見たら知らない事――後藤さんは少し知ってるかもしれないけど、他のみんなは誰も知らない。つまりみんな関くんはそんな大胆な事するような人だと思ってない! 教室の片隅であんな盛大に遊んでいるなんて私以外誰も知らない世界――。
そうか、この演劇は言わばそんな内に秘めた関くんワールドを外に見せる物! 関くんの想像の具現化なんだわ! そうよ……だから、あの時、私がシンデレラの役に決まった時、関くんワールドと対峙するって正にそう思ったのよ。いつもは想像の中での勝負……それが、みんなの見ている中で懲らしめることができる――。
ああ、でもそうやって関くんと触れ合わせるのが後藤さんの狙い……? 後藤さん曰くなんだっけ……愛の化学反応がどったらこったら……ああもう! それはいいけど!!
――とにかく。
「関くんっ」
体をずらし関くんと向かい合い目を見て言う。
「いつも、私に見せてくれたじゃない! 思わず引き込まれるほどの想像力――! 世界観――! あれをクラスのみんななんか気にしないで出せばいいのよ! だいじょうぶ……暗くて見えやしないわよ、みんななんて。それでも気になるって言うなら、私を見て――」
関くんと目を合わせ、手を握る。
…………10秒かそれくらい。関くんが瞬きしたのを確認して、目をそらし、手を放した。
私が紅くなりながら下を向いていると、
「……分かったよ」
「えっ?」
「なんか、やれそうな気がしてきた。やっぱ横井さんはすごいね」
そんな風に一人でウンウンと頷いて、関くんは立ち上がった。
そうして、『間もなく休憩時間が終了します。皆さん席についてください』とアナウンスが流れる。
「それじゃあ」
そう言って、関くんは逆側の舞台袖への通路に続く道に行った。
……どうやら関くんやる気になったみたい。よかった。
関くんが居なくなって、私一人の舞台袖にはいったん静寂が訪れる。
考えてみれば……関くんと喋ったのは凄く久しぶりで……あの、謝ってもらった日から丁度2週間だったけど、全然そんな気しなくて……まあ、そうだよね。たった2週間、見なかった位で私の中の関くんは消えやしない。それまでのずっと、関くんは私の隣で朝から帰りのHRまで……そこに存在していたのだから。ましてや私達はほとんど話していない。話さない対話が中心だった私達にとって、少しの間、口を利かなかった位で関係が変わる訳もなかった。
――ビーーッ! 電気が消され、後半の始まりを告げるブザーが鳴った。
私がカボチャの馬車に乗り、舞踏会の開かれる城に着いた場面。
私には勿体ない位の綺麗な衣装を身にまとい、上機嫌でダンスして城内を駆け巡る。そうして、ようやく関くん王子が登場。当然、クラスメイトからはどよめきの声――その声に少し身を固くする関くん。
私はタンッっとガラスの靴でタップ音を響かせ関くんの興味を自分に引かせ、口元で笑顔を作る。だいじょうぶ。私を見て――。そんな気持ちを込めながら。
気持ちが通じたのか関くんの緊張がほぐれ、覚えてきた台詞を言い、劇が進行する。その演技はそれほど上手じゃなかったけど、しっかりと演じられていて進行は支障なく進んでいた。
……ていうか、自分で書いた台詞でしょうに。ほとんど原作をなぞっているとはいえ。
そうして、ドレスをまとった私とえんじ色の衣装の関くんとが手を取り合ってダンスをする。よくよく考えればとっても恥ずかしい場面。でも、それを恥ずかしく見せない雰囲気が会場には既にできていて、観客もある種の神々しさを感じながら魅入っていた……とは、後に聞いた話だ。
暗い舞台に照明さんのスポットが当たり、左へ右へとステップを踏む。意外と関くんダンスが上手い。もしかしてプライベートでダンスもしたことがある……? 関くんならありうる。最初は一種の高揚感で恥ずかしくなかったダンスも、時間が経つにつれ、お互いの腰に回した手に意識が回ってくる。関くんも同じことを思ったのか、一瞬離しかけたその手を逆に力を込めて掴む。
私は驚いて顔をあげ関くんの顔を見た。
すると……。
――ニタァ。と、悪い顔で笑う関くん。
「!!」
なに!? なんなの? その顔……!?
もう一度、見ると関くんの顔は普通に戻っている。私の見間違え……? ううん。多分それは無い。だって、余りの衝撃で私の脳裏から今の関くんの表情が離れないもの! 大体こんな間近でハッキリと見たんだもの! 見間違えなんてありえない。
そして、そのままダンスが終わった後も普通に演じる関くん。
私は不審に思いながらも、充てられた台詞を言う。
そして、そのまま12時が近づき魔法が解ける前にシンデレラが慌てて帰るシーンが終わり、その後日、王子が残されていったガラスの靴を手に町中、シンデレラを探して回る。
そのシーンも終わり、舞台袖に入った。
……いよいよ、終盤のシーン。後は、ガラスの靴がピッタリと合ったシンデレラが魔法の解けた自分に自信を持てないながらも最後は気持ちを取り戻し、王子と一緒になって結婚するラスト……のみ。
その時、演劇部のメガネの子から一枚の紙を渡される。
「えっ? なにこれ?」
「例のギリギリになるって言ってたラストの脚本だよ」
「…………ああっーー!!」
忘れてた――! 確かに、そんなことがあった。関くんが王子になったり、関くんを励ましている内に完全に忘れていた!
“「この後は、今書いている途中だそうだけど、もう大体書けてるらしいから本番までには絶対間に合うって」
踊子ちゃんがそう説明する。もちろん、「大丈夫なのか?」とかみんながざわつくけど、
「まあ、この後は大体決まった展開だから原作通りに練習すれば問題ないでしょう! あとは、届き次第、練習するってことで」”
――私は、忘れていた事に落胆しながらも折ってあったその紙を開く。
『この後は、アドリブ』
それしか書いてなかった……。
ああ……やられた。関くん、最初っからこのつもりで……。
という事は、この後の展開……まさか、ぶち壊しにするつもり……?
させないわよっ! そんなこと!!
――そして、最後の幕が上がる。
立ち上がりは原作通り。そう、最後の脚本が無くたって、原作にそった仮脚本で練習してきたんだから……! 今更になって慌てたりしないわよ! まあ、その事もあって、最後の脚本がギリギリで来る事を忘れていたんだけどね……。けど、取りあえずは関くんが原作にないアドリブを入れてこない限りは大丈夫……!
そうして、王子とその従者がガラスの靴を持ち、シンデレラの住んでいる屋敷にやってくる。まま母とその娘姉妹の足が合わず、隠れていた私を見つけた王子が靴を持ち、やってくる。
――来た! 関くん。どこで……? アドリブを? それともまだ普通に……?
召使いのみすぼらしい恰好の私は手を握りしめ関くん王子を見つめる。
――そこで、関くんが、再び、ニヤリと笑った。
来る! アドリブが!
「さあ、シンデレラよ! この靴を履くがいい。きっと、お前にピッタリだろう。だが、そしてどうする? 魔法の解けた小汚いお前にはもう用はない、お前は召使いだったよな? 丁度良い、その靴を履いたら跪いて、俺の靴を磨いてくれないか?」
――会場がどよめく。シンデレラは有名な話。細部は知らなくてもここでこんな意地悪を王子が言わないことくらいはみんな知っているのだろう。
けど……関くん。すっごい悪い顔してるーーッ!! ニタニタ……ニタニタ。聞こえてきそうなぐらいにニタニタしてる。よく見ると、まま母役の踊子ちゃんも楽しそうに笑みを浮かべている。ああ、やっぱあの人楽しんでるわぁ。
少ししても、関くんが変わらず悪い顔で待っている。
そうか。アドリブ……私もアドリブで返さなくてはいけない。という事は、私自身の考え、……で、良いんだよね? 関くんだってそうしているし、私が演じている以上。私が答えを出すしかないっ――。
「……そう、分かったわ、王子」
そう言って、私は俯き加減で床に置かれたガラスの靴をはめる。
「靴が、右足で良かったわ」
「……?」
関くんが怪訝な顔をする。
「利き足だからねッツ!!」
私は思い切り、ぼろいドレスのままハイキックで関くんの顔を蹴り上げた!
「ぐはぁっつ!!」
関くんが悪役みたいに悲鳴を上げて倒れた。
「おおおお!!」
観客からは、プロレスみたいな歓声。クラスメイトも先生も盛り上がってる。
……うん。あんまり蹴りとか得意じゃないけど、思ったより効くみたい。関くんまだ痛そうにうずくまっている。
そこで、私は自分の足の違和感で何かに気が付いた。
……って、あっ、これ……『ガラス』の靴だった。小道具の子がやけに力を入れた大作……本物のガラスの靴……!? うわぁああぁ! って、踊ってる時も履いてたのにぴったりで気が付かなかった!! ああ、それは痛いよね。ゴメンねぇ関くん! でも、今は劇中だから謝れないっ! なんだか盛り上がってるし!!
そうして、ようやく関くんが立ち上がる。
「もう、怒った! こうなったら、町中の民全員こき使ってやるわぁ~!」
怒りに身を任せそう言うと、自分の城に帰ろうとする。
――私とシンデレラは今融合している。さっきまではあくまで『役』を演じる身だったけれども。今は違う。アドリブを言い渡された時から私は、今、シンデレラで在ってシンデレラではない。横井るみでもある。私はこの役を演じることになってから、家で何度もこの物語を読んでは考え、思いに耽っていた。考えても仕方のないことだけれど……。どうしても、私には引っかかる部分があった。この物語は結局はハッピーエンドで終わる。それは悪い事じゃない。こき使われて、お父さんも亡くしたシンデレラ。そんな彼女が最後に幸せを掴むのは決して悪い最後じゃないと思う。
……でも、私はいつも思う。私がシンデレラであったなら。どうしていただろう?
人はみんな自分の幸せを願って生きている。自分の幸せのために生きている。でも、だけど、私は……自分の幸せより、みんなを幸せにしたい。そりゃ、世界のみんなって訳には行かないかもしれないけど……でも、少なくとも、手の届く範囲は。それが出来るなら。可能ならば――。
「待ちなさいっ! 王子っ!」
私は関くんに後ろから飛びつく。
「!! ……なんだよ?」
関くんが振り向く。
「私がそんな事させないっ! みんなが不幸せになるようなこと……絶対させない」
「じゃあ、どうする? 薄汚い女」
「薄汚くたっていい……というか、魔法で綺麗になった姿なんて、私には不相応、そんなの一時の夢でいい。それよりも……私は、私の本当の夢を叶えたい!」
「……どうやって」
役に入り込んでいた関くんが気迫に負けてか、少し素に戻る。
「私と……結婚するのよ」
「……はぁっ!? どうして、ただの小娘と」
「そんなの関係ないわ……そんな身分で人の価値は決まらない。あなただって、性格最悪じゃないの!」
すると、観客から、そうだそうだ! の声が。
「でも、じゃあなんで結婚なんか」
「身分は必要ないと言ったけど、それでみんなが幸せになるなら喜んで引き受ける……あなたと結婚して、私があなたをコントロールする。そして、これからは町中の人がみんな幸せになれるように、王の権力、財力を使うの」
「それが……横井さん……の答えか」
私にしか聞こえないような声で、関くんがつぶやいた。
そして……、
「分かった。結婚しよう」
照れたように俯いて、そう簡潔に言った。
その後は、予定調和だった。つまり、原作通りの流れ。と言っても結婚して、町中の人達から祝福される――という場面で終わりだ。
私と関くん――シンデレラと王子は、綺麗なドレスと衣装に身を包み、町の人たちから祝福される。そして、観客であるクラスのみんなも……祝福をしてくれるのであった。
友香ちゃんに、ゆーちゃん、後藤さん……そして、踊子ちゃん。みんな。
「ヒューヒュー! 良かったね、関くん!」
友香ちゃんが言った。隣の照れた様子の関くん。……って、まだ、劇中なんだから関くんって呼んじゃだめでしょ。
「お幸せに~横井」
アハハハ、もう……ゆーちゃんも、なんで、横井って……。
「見事に告白成功だな! 関! 良かったな、横井と結ばれて!」
うわぁ~。男子も……もう、本名で…………あれ?
――ん? なんだか、違和感……私だけが何かに気が付いていない。そんな違和感。
立ち上がって、盛り上がっているクラスのみんな……こっちを見て、隣の関くんは照れていて……? そうだ! 後藤さんっ! 後藤さんを見れば……!
そうして、後藤さんを探す。いたっ! そして、その表情を見ると、
笑顔で……私と目が合うと…………にやぁ。笑み! これは!?
直感的に思った! 何かある! と。
な、なんだろう。考える。……その間にも、おめでとう! そんな声、数多。誰も劇中だと思っていない様子……? なぜ?
――もしかして、関くん、あの時、私に全部伝えてない? 今回の作戦。……その可能性はある。というか、その可能性の方が大きい。と、すれば関くんが私に言う必要が無かった事……? あるいは言うのが恥ずかしかった事……?
「演劇部に根回ししていた」「愛の化学反応」
二つの関くんの言葉を思い出した。今のこのクラスメイトの反応! これを見るに明らかにみんな知っている! という事は、クラスのみんなも根回しされていた!? 後藤さんに! という事は何を知っている? 考えてみれば、この二つ目の言葉、あの時、関くんは後藤さんが何と言っていたと言っていただろう? 確か――後藤さん曰く関くんの想像力を生かした脚本の中で二人がぶつかれば、愛の化学反応が生まれるとかなんとか――ちょっと抽象的すぎない? 私と関くんをくっ付けたいとあんなに思っている後藤さんがそんな抽象的な作戦で終わらせるとは思えない……? という事は……?
関くん、もしかしてこの演劇の舞台を借りながら……私に……?
そう言えば、そんな台詞あった。「分かった。結婚しよう」あ、あれかー!!
気が付いた瞬間、私の顔は真っ赤になってしまう。
でも、そんなのアリ!? 確かに私の方から言ったけど……いや、それはノーカンだとしても……ああ、でも、クラスの子も根回しされているんだった。みんな知っているんだろう。関くんがこの劇中で私に告白をするのだと。
でも、結局、告白したのは私。それに受けるように関くんは答えたけど。
「やられた」
今、分かった。結局、私は踊らされていたのだ。後藤さんにも関くんにも、果てはクラスメイト全員に。くやしい、くやしい。くやしい~!!
まあ、でも……顔を上げると、相変わらずのみんなの笑顔。みんな心から祝福してくれている。そんな風に見えた。
……そんな、みんなの顔を見ていたら悔しさなんてどこか飛んでしまって……気が付けば嬉しさに変わっていた。
だって、結局はこれも、関くんの『遊び』だったって事なんでしょう? 私しか、私だけが楽しんだ、関くんと一緒に楽しんだ遊び……そう、結局は隣に居た。こんな演劇の大舞台でも、ずっと隣で、遊んでいた。二人にしかわからない遊び。関くんと私にしか。関くんは私に結婚を志願させて楽しんだ。自分を避ける私に逆に告白させることで。そして、ほくそ笑んでる。心の中で。
――でも、やっぱり私の勝ちだったよ。関くん。
だって、私、ずっと前から気が付いていたんだ。私、関くんの事好きだもん。だから、言った台詞全部ウソじゃない。私が欲しいのは小さな幸せ。
勘違いかも知れないと思って、しばらく見ないようにしていたけど、舞台袖で関くんに久々に会った時、確信したんだよ。やっぱり好きだったって。
――ずっと隣に居てほしい。ずっと隣に居たい。そうしてあなたと遊んでいたい。