魔法少女リリカルなのはvivid 紅き鉄腕 作:tomato88
「おーおー、紅音のやつ、ここまでやるのかよ。 それに、さっきのオレの『ガンフレイム』だろ? いつの間にできるようになったんだよ」
「さぁね? 相性が良かったんじゃないのかい? 数日でできていたよ?」
「ゲッ! まじかよ。 こりゃ新技考えねぇといけねーかもしんねぇなぁ」
試合が始まってからの最初の攻防は、引き分け、と言うよりは紅音の方が少しダメージを食らったものでした。
ミカヤさんやハリー選手はあれを見て、どう思ったのでしょうか? 先程の会話でだいたいは想像がつくような気がしますけども。
『な、なんということでしょうか!! 紅音選手もチャンピオンと同時に鉄腕を出しました!!』
そういえば、この大会ではまだ一度も紅音は鉄腕を使ってませんでした。確か、一昨日まで調整が長引いていたと言っていました。 機材がなくてシャーリーのとこまで通っていたそうです。
「ねぇ、ヴィヴィオ。 紅音の鉄腕ってどこが変わったか知ってる? 見た目じゃ何も変わってないように見えて……」
「んーとね、手首を動かしやすくなってる……だったかな? 前のじゃ手首がほとんど動かせないって言って嘆いてたから」
「手首? どういうことだろう?」
「わからないけど…… 何かするつもりなんだと思う」
この前、庭で練習していたものをこっそりと見た時にやっていたコンビネーションをやるのかな?
「お、紅音から仕掛けたぜ」
ハリー選手の言葉で私は意識をリングに戻しました。
▽▽▽
「君が噂の鉄腕使いやったか。 なるほどなぁ」
「噂?」
どうしてこんなに広まってるのだろう? そんなに見せびらかした事はないはずなんだけど……
「えっと、ヴィクターが言ってたんよ。 あ、ヴィクターはヴィクトーリア・ダールグリュン選手のことなんやけど、わかる?」
「さすがに、わかる」
雷帝の子孫だったかな? 頑丈そうな鎧を着けてたから私とは反対だな、と覚えていた。
「そのヴィクターがな? 風の噂で紅い鉄腕を使う子が大会に出てくるー、って、ゆーてたんよ。 私も気になってたんやけどな。 大会では誰も見てないって聞いてがっかりしてたんよ」
「ちょっと、色々と改造してたから出せなくて…… なんか、ごめん……」
「あ、別にええんよ? 君が気にすることやないんから」
「そう? なら、そろそろ仕掛けてもいい?」
まだ、一度も試してないから結構、うずうずしてる。
「ええよ。 ほんなら、楽しもか」
「もちろん。 それじゃあ、今度はこっちから」
今の私とチャンピオンの距離では拳は当たらない。 砲撃を溜める余裕もない。 だけど、溜める必要がなかったら、大丈夫だよね。
「バレット……」
突き出し気味に構えた左手から、肩と手首の捻りのみで打つ、コークスクリューブロー。 そして、拳に乗せた炎熱変換された魔力をそのまま圧縮し、放つ技。
「うわっ!? 予備動作なしで撃てるんか!? それなら私だって!」
そう言うとチャンピオンは大きく後ろに後退して、周囲に無数の魔力球を展開した。
「ケヴェイア・クーゲル!」
そして、その展開した魔力球を私に向けて飛ばしてきた。
「紅葉、 一気に抜けるよ。 シールド制御、お願い」
『ワン!』
「それじゃあ、点火!」
魔力球の間をほとんどチャンピオンに向かって直線の距離を一気に駆け抜け、そのまま拳をぶつける。
「はぁ!」
「それは、甘いで!」
「え、あ」
私の拳はいなされ、加速していた私の身体はそのまま、壁に一直線に向かって吹っ飛んだ。
▽▽▽
『り、リングアウト〜ッ! カウントが入ります!』
「あー、もう! 何やってんだよ!? あれほど冷静に行けって言ったじゃねぇか!?」
「えっと、少し落ち着いて」
「チッ! まぁ、あいつもこれで少しは目が覚めただろ。 最初にリズム崩されてから浮き足立ってたしな。 ちょうどいいか」
壁と衝突する前に防御してたみたいだし、大してダメージはねぇだろ。
そう思っていてもなかなか立ち上がらない紅音に苛立ちが隠せない。 ボクシングの癖でカウントギリギリまで休んでいるのはわかってるんだが、こっちも、焦っているのかもしれない。
『18! 立った! 紅音選手、立ち上がりました! カウントギリギリでの起ち上り、ダメージの方が心配されます!』
レフェリーが紅音に駆け寄り、状態を聞く。 足もフラついてないし、焦点も合ってる。 大丈夫そうだな。
「目付きが変わりましたね。 なんというか、鋭くなってる」
「紅音ちゃんのあの顔って集中し過ぎて何やらかすかわからないんだよね〜。 森を焼け焦がした時もあんな感じだったし」
「そうなのか? まぁ、期待するしかねーか」
そろそろ、チャンピオンの度肝をぬかしてこい。
▽▽▽
「結構大きな音して行っちゃったけど……大丈夫?」
「派手な方が痛くない。 大丈夫」
うん。 足もしっかりしてるし、目も見える。 それに、リズムも戻った気がする。 あくまでマイペースに。自分が相手に合わせるんじゃなくて、相手を自分に合わせるつもりで。
そこから繰り広げられたのは拳の応酬。 打っては避けて、避けては打って。
「もうすぐ! 1ラウンド目も終わりやな!」
「そう、だね。 一発でも当ててから帰るよ!」
「させへんで!」
そろそろ、改造した鉄腕の力を見せる時。 手首の可動範囲を広くしただけだけど、今の私にはこれだけでも十分。
『両選手、どちらも被弾せず、1ラウンド目が終わろうとしています!』
集中だ。 ジャブの軌道は慣れさせた。 これでいい。 まずは一発でも当てる。
「……ッ!?」
ガンッ! と、チャンピオンの顔面に私の拳が入った。 だが、ジョブだからか威力は大きくない。 それでも、驚かすぐらいはできたと思う。
『な、なんと〜! チャンピオン、クリーンヒットォォ! そして、 ここでゴングです!! 1ラウンド目、終了〜!!」
そのアナウンスを聞いた私は避けたはずのジャブが当たって驚いた顔をしているチャンピオンを尻目にノーヴェたちの元へと戻った。
「後半は悪くなかった。 あの調子でいけばそうそう被弾はしないはずだ。 それで、どうだ? あの技はうまく決まりそうか?」
「見てたでしょ? あと1ラウンドぐらいはバレずに打てるよ」
エリオとキャロの頭には疑問符が浮かんでいるが、次のラウンドあたりでノーヴェが教えるだろう。 それに、まだ披露してない技もあることだしね。
「わかった。 焦らず、じっくりいけよ」
「うん。 それじゃあ、行ってくる」
私は3人に見送られながら、リング中央へと足を向けた。