魔法少女リリカルなのはvivid 紅き鉄腕 作:tomato88
やっと、対ジーク完結。
「はぁ〜。まだ1ラウンド目なのに、ヒヤヒヤするよ〜」
「ほんとにねー。 リングアウトした時はどうなるかと思ったよ〜」
本当にリングアウトした時はこちらもヒヤリとさせられました。 その時は私もコロナも開いた口が塞がらがらなくて……
「なぁ、チビたち。 1つ質問なんだがよ」
ふと、気になった様子でハリー選手が私たちに質問してきました。
「なんですかー?」
「紅音の最後の一発。 あれはなんだ? オレにはジークがあいつのパンチを完全に避けた気がしたんだけどよ。当たったよな?」
やっぱり、気になりますよね。 それに、遠目で見ると紅音のあの技がどれだけ凄いかよくわかります。
「はい! あれは手首から先の捻りでパンチの軌道を変えてるんです。だから、避けた上にパンチを当てることができたんです」
「マジかよ…… あぁ、だからさっき鉄腕がどうとか言ってたのか」
「はい! でも、私も練習してるのを見ただけなので、名前まではわかりませんけど……」
「それはこの試合が終わった後にでも聞いてみるか。 それに、あのガンフレイムを弾丸みたいに連発するやり方は面白いな。 オレも練習してみっか!」
ハリー選手はそう言って、その場で少しだけシャドーを繰り返します。 でも、たぶんあの技はあの独特な構えからじゃないと打てないんですよね。 でも、そこまで紅音が教えるのかなぁ?
「でも、まだ隠し玉はあると思いますよー。期待しててください!」
「そうなのかい? ふふ、それは期待が持てるね」
私もここからの展開がどうなるか、楽しみです!
▽▽▽
『第2ラウンドは開始早々から紅音選手がチャンピオンに向かって果敢に攻めます!』
当たる。 多少、威力は逃されているとはいえ、確実にダメージは入ってるはず。 もう少し……
「避けられないんなら捕まえるまで!」
チャンピオンがジャブを打って伸びている私の左腕を掴もうと手を伸ばす。 それなら。
「点火!」
「くぅっ!」
接近してのボディ、ボディ、ボディ。 そして、バックステップで一旦下がって、息を整える。
『チャンピオンに3連続のボディブローが炸裂! 紅音選手の鮮やかなヒットアンドアウェイに、 チャンピオンは未だその姿を捉えることができません!』
「ふふ、凄いなぁ。 私、こんなパンチ見たことないよ。よしっ! ほんなら、ここからは私も攻めるで!」
「そう。でも、これで決める」
点火して接近、そしてボディと見せかけて、軌道を修正して、顔面にアッパー。だが、それを見越してか、チャンピオンは両手を顔の前に出してアッパーを防御する。 防がれた。
「甘いよ!」
「まだ!」
私はもう一度アッパーを打つ。 そして、それを見たチャンピオンは両手を顔の前に出し、再びアッパーを防ごうとする。 そう、それでいい。狙い通り。
拳の向きを横から縦に、そして、狙うは真ん中。 顔の前に構えている両手の真ん中の隙間。
ガンッ! と会場中に金属同士がぶつかり合う音が響き渡る。 構わない、そのまま押し込め。
「はぁぁッ!」
足を踏み込め、腰を回せ、拳を突き上げろ。
ゴンッ!
顎に私の拳が当たって、チャンピオンの顔が上へと、跳ね上がる。
『チャンピオンの顔が上に跳ね上がったぁぁ!!』
いけ、もう1つ。
「ホワイト・ファング!!」
左アッパーとチョッピング・ライトの高速コンビネーション。 それが顔が上がったままのチャンピオンに決まる。 感触的には、綺麗に拳が入った。普通だったらこれで決まったはず。現に、チャンピオンの目からは光が感じられない。 だけど、油断はできない。
「よしっ! 飛燕からの燕返し、最後にホワイト・ファングのコンビネーション! 練習した通りだぜ! 今だ紅音! そのまま一気に畳み掛けろ!」
背後から、ノーヴェの指示が飛んでくる。そうだ。これで、終わりにするんだ。
「ディバイン・バスター!!」
魔力を一瞬溜めて撃つ、高速砲。 もう後は放出するだけ、それだけでこの試合は終わる。 だけど、なんだ。 なんでこんなに嫌な感じがするんだ。 背中から嫌な汗が垂れてくる気がする。
そう思いながらも、私は勝負を決めるため、高速砲を発射した。
▽▽▽
『決まったァァァァァ!! 紅音選手の高速砲がチャンピオンに命中! そのまま壁まで吹き飛ばされましたァァァァァ!! これは決まったかぁぁ!? いや、紅音選手もリングに膝をついています!! これは、これはダブルノックアウトだァァァァァ!!』
うるさい。 解説者の声が頭に響く。 あぁ、クソ、やられた。 右腕を持っていかれた。肘から下の感覚がない。 そうだ、なんで忘れてた。これでいったい何人の仲間がやられたと思ってる。 あいつらにはあれがあったじゃないか。ガイストが。
とりあえず、このままじゃいけない。 立たないと。
そう思って立ち上がろうとしても、身体にかなりのダメージを受けたせいか思うように立ち上がれない。 フラつきながらもカウントのうちに立ち上がることができた。
『紅音選手、立ち上がりましたぁぁ!! チャンピオンは……立ってます! 先程のダメージがないと言わんばかりのしっかりした足取り!! これは形勢が逆転したか!?』
冗談じゃない。 ダメージは確実にある。それに、 あの目は違う。 生気がない。 正直、意識があるかどうかすらわからない状態。 でも、それが今の状況では1番やばい。 一時的とはいえ、ほとんどダメージがないような動きをしてくるはずだから。 それに、もう一撃でも食らったら私のライフが全て削れる。
『第2ラウンドも残り1分! どちらもライフは危険域! この試合、どっちに勝敗が転ぶか想像がつきません!!』
「紅音ぇ!! それ以上食らうんじゃねぇ!!」
「早くそこから動いて!!」
「紅音ちゃん!!」
わかってる。 そんなこと、自分が1番わかってる。 でも、足が地面にくっついたように動かない。 クソ、動け、動け、動け。
「ガイスト・クヴァール……」
「くぅ!」
なんとか転がることで避けることができた。 だけど、これがあと何回避けられるか……
「はぁ……はぁ……」
チャンピオンがあいつの姿とダブってしまう。 違う。 ここは戦場じゃない。 ここはリングだ。 目の前にいるのはあいつじゃない。 去年のDSAAのチャンピオン、ジークリンデ・エレミアだ。 そうだ。 これは試合なんだ。 まだ、やれる、まだ。
「ふぅ…… 」
落ち着け。 混乱するな。 冷静に状況を把握しろ。
「すぅ……はぁ……」
今の私の状態は、ダメージ大、右腕は動かない、足元はふらつく。だけど、魔力は残ってる。 なら、やれるのは1つだけ。
「紅葉、左手にありったけの魔力を集めて。 玉砕覚悟で一撃、行くよ」
『ワン!』
集中、集中、集中。 相手をよく見ろ。 最小限で躱せ。 掠ってもいい。 どうせあと一発だ。
『ワン!!』
よし、準備はできた。 あとは、いつも通りだ。 狙え。
「はぁ……はぁ……」
チャンピオンが鋭く、速く、死角から攻撃を仕掛けてくる。 私はそれをひたすら避けながら、好機を待つ。
……ッ! 来た、大振り。
ガイストが防護服に掠り、破ける。 その衝撃で、少しだけよろめいたところに止めとばかりの大振り、チャンスは今だ。 いけ。
「インフェルノ・ブレイカァァァァァ!!」
身体を捻れ、音速を超えろ。
「はぁぁぁ!!」
大振りを躱してのカウンター。 確実に、決まった、そう思っていた。
「え……?」
大振りした右手とは逆の左手で、下から掬い上げられるように、腕をぶん殴られた。 私の砲撃はそのまま上空へと、逸らされた。
私が最後に見た光景は迫り来る鉄の塊と空に浮かぶ白いタオル。 それと、
「ごめん」
チャンピオンのボソリと言ったその一言だった。