魔法少女リリカルなのはvivid 紅き鉄腕 作:tomato88
本当はヴィヴィオ辺りを中心として書こうと思ったのですが、思いつかずこうなりました。 次こそは! と思ってるんですけどね……
「それじゃあ、行ってきます」
「気おつけて行ってらっしゃい。 エリオとキャロによろしくね」
「うん、わかった。……フェイトおばあちゃん」
「あ! ちょっと!? 紅音!?」
フェイトの制止を聞かず、私は家を飛び出す。 あの日、試合に負けてから1週間が経った。 次の日に受けた診察では左腕は問題なく完治し、右腕は1ヶ月ぐらいはかかるだろうという結果だった。 シャマル曰く「あの技を戦場で受けていたら右腕は千切れていた」と言われた。記憶には千切れるどころか消滅している人もいたはずなので、運がよかったと言わざるをえない。
「えっと、この船で良いのかな?」
あの日はあの日で楽しかった。 アギトがほとんど私と紅葉にベッタリだったからシグナムが嫉妬で怒り狂ってみんなで止めたり、リインに魔法を習ったり、ザフィーラとヴィータには戦闘時の立ち回りや戦術を学んだ。見学の時に見たミウラという人のパワーがとてつもないことが印象に残っている。後ははやて特製鉄板焼きが凄く美味しかった。 さすが関西人。
『間も無く、スプールス行きの次元船が発車します。もうしばらく座ってお待ちください』
話は変わって、今日から二泊三日、1日だけ余分な休みを挟み、私はスプールスに帰ることになった。 ほとんど実家に帰るようなものだ。だが、まず第一の目的は私が落ちてきたところに何か残っていないか調べることだ。 たぶん、ほとんど調べられていると思うが、もしかしたら、があるかもしれない。 それを求めて、私はスプールスに行く。 当然、エリオとキャロに会いに行くのも目的なんだけどね。
『間も無く、スプールスに到着します。 降りる際はお忘れ物がないよう、ご注意ください』
これが、ここからが私の第一歩。 あの日、何があったのか思い出すための、第一歩。
▽▽▽
スプールスに着いた時には空は真っ暗になっていた。 2人ももうすでに仕事が終わっていたらしく、迎えに来てくれた。
「ただいま、お父さん、お母さん」
「あはは…… 紅音、さすがにそれはやめよう。 僕たち、3つしか変わらないんだからさ」
「そうだよ!? 私たちまだ13歳なんだよ!?」
「一応、こっちの戸籍上は私の親。 呼び名的には間違ってない」
こっちに来た時に私は新しい戸籍を持った。 理由は簡単。 元々の私の戸籍は既に死亡扱いになっていたからだ。その際、私の親は海鳴を離れていることを聞いた。 それに消息も分からないらしい。 だから、今までは特に何も調べてこなかったが、まずは、第一歩として、こっちの世界から調べようと思った。
「まぁ、そうなんだけどね…… よしっ! 明日は僕たちもお休みが貰えたから、今日はゆっくり休んで、明日に出かけようか?」
「うん。そうする」
「あ、じゃあじゃあ、 紅音ちゃん! 一緒にお風呂に入りに行こう?」
「いいよ。でも、ちょっと待って。 荷物置きに行かなきゃ」
「大丈夫だよ。それぐらい僕がやっておくから。紅音はキャロとゆっくりしておいで」
「そう? それじゃあ、お願い」
その場で手早く下着と寝間着と石鹸を用意する。 取り出すだけなので、そこまで時間はかからないが片腕だと少しやりづらった。 結局、キャロが手伝ってくれたんだけどね。
「エリオ。 紅葉とこの荷物、よろしく」
「任せておいて」
「それじゃあ、行ってくるね! エリオ君!」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい。 こらこら、フリードはこっち」
エリオ、紅葉、フリードに見送られながら私とキャロは風呂場に向かった。 そこまでの距離はなく、少し歩くだけで着いてしまった。
ここのお風呂はそれなりの大きさがある。行ったことはないが日本にある銭湯などを想像したらいいだろうか、だいたいあんな感じだ。
「片腕だとやりにくいよね? 私が洗っていいかな?」
キャロが洗いにくそうにしていた私を見て気を使ってくれた。
「いいの? お願い」
「任せて! じゃあ、まずは頭から〜」
この1週間、髪やら背中やらを洗ってもらうことが多い。 と言うより、ヴィヴィオが私が入っているときに無理矢理風呂場に乗り込んでくる。 前々から言ってくれればいいのだけれど、いつも突然過ぎてビックリする。そういうイタズラ好きなところとかに、やっぱりなのはの娘なんだな、とそう感じる。
「明日の予定はもう決まってるの?」
髪も体も洗い終わり、湯船にゆっくりと浸かりながら明日の予定を確認する。
「午前中に調べておこうかなって。 折角、こっちに来たからゆっくりしたいし」
「うん。わかった。終わったらピクニックでもしようか? 私、張り切ってお弁当作っちゃうよ!」
「本当? 期待してもいい?」
「うん! 何がいいかな〜」
その日1日は2人とともにのんびりと過ごした。 ノーヴェに「いい機会だから、この際しっかり休んどけ。 だけど、治ったらみっちり練習だかんな」と言われたので、これはこれでちょうどよかった。 紅葉もフリードと仲良くなれたようだし。 遊んでいるその姿はとても微笑ましいものだった。 そして。
明日、何か見つかるといいな。
そう思いながら、私は眠りについた。
再び夜が明け、時間は経って。私たちはあの場所を訪れていた。 私が見つかったあの場所に。
「どう、紅葉。何かありそう?」
そう問いかけるが紅葉は首を横に振った。
「そう、わかった。 2人の方はどう!」
「こっちは何もないよ!」
「こっちも!」
少し離れた位置で調べてくれている2人にも聞いてみるがいい結果は出ていないようだった。 この辺りを調べ始めてからもう2時間以上経過している。 三方向に分かれておかげで、もうほとんど調べ尽くしたはずだが、まだ何も見つかっていない。
「はぁ…… 紅葉。 2人を呼んできてもらえる?」
そろそろ切り上げようと思い、紅葉にそう頼む。だが、返事が返ってこない。 不審に思った私は一旦周りを見渡す。紅葉の姿はそこにはなかった。
「紅葉ー どこー」
少し周りを歩いてみたが、紅葉がいない。 こういうことが今までなかったためか、私はひどく動揺した。
「紅葉!? どこなの!?」
その私の声に気づいて、エリオとキャロが来てくれた。 そして、一緒に探してくれたが、紅葉は見つからなかった。
「僕はもう一度上から探してみるよ。 フリード、行こう」
「大丈夫だよ。 きっと見つかるよ」
「うん……」
またしばらく歩いて探す。 そして、30分後、やっと紅葉を見つけることができた。
「紅音! ここから50メートル先に紅葉らしきものを見つけた!」
フリードに乗り、上から探してくれていたエリオが見つけてくれた。
「紅音ちゃん! 急ご!」
「うん!」
地面の感触を確かめる。 うん。 大丈夫そう。
「キャロ、ちょっとごめん」
「え? きゃっ!」
キャロを左腕で抱える。 キャロは軽いから私でも持てる。 だから、50メートルぐらいなら、こっちの方がいい。
「点火」
一瞬目の前が真っ白になる。 それに、圧力で右腕が痛む。 だけど、そんなこと気にしていられない。
「紅葉!」
「わん!」
紅葉を見つけた時点で踵で滑るように減速し、止まる。 そのまま、目を回しているキャロを紅葉を見つけた嬉しさでその場に落としてしまった。
「う〜ん……」
「あ、ごめん、キャロ」
空から降りてきたエリオにキャロを任せ、私は紅葉に小走りで駆け寄る。
「よかった……」
「わん!」
「それ、どうしたの?」
紅葉が持っていたのはクリスタル状の何かの破片だった。
「あれ? これ、どこかで……」
……ダメだ。思い出せない。 けど、私はこれが、何かのキッカケになる。 そう思った。
「ありがとう、 紅葉。 これで少しは進展しそうだよ」
私はその破片をそっと、ポケットの中にしまった。
▽▽▽
「本当に大丈夫? 専門の機関に調べてもらった方が……」
「大丈夫。これぐらい、自分で調べてみせるよ」
結局、紅葉が見つけた破片しかめぼしいものもなく、調査もそこそこに、私たちは一度、寄宿舎に戻ってきた。そして、2人の反対を押し切り、あのクリスタル状の破片は私が自分で調べることにした。 あれを他人の目に渡してはいけない。 そんな予感がしたから。
「無理はしちゃダメだよ! 何かあったら私たちに相談!」
「うん。 そうするつもり」
自分で調べると言っても専門の機材がなければ何もできない。だから、そこらへんは相談しないといけない。だけどとりあえず今は。
「みんな、準備はいい?」
「お弁当よし!水筒よし! シートよし! 着替えにタオルに雨具よし! いつでもいけるよ〜!」
「出発」
「わん!」「キュ〜!」
みんなとピクニックを楽しもう。
▽▽▽
「紅音、気をつけて帰るんだよ」
「フェイトさんによろしくね!」
「うん。 ありがとう2人とも」
スプールスに来てから2日が経ち、私はミッドチルダに戻ることになった。楽しかった時間はあっという間に過ぎた。
「今度休みができたら僕たちの方がそっちに遊びに行くからね」
「今度はみんなでショッピング!だね!」
「楽しみにしてるよ。 それじゃあ、時間だから。もう行くね。 おいで、紅葉」
2人に別れを告げ、次元船に乗り込む。 ここに来てよかった。 そう思いながら、膝に乗せた紅葉を撫でながら、外の景色を眺めながら、私はこれからのことについて想いを馳せた。