魔法少女リリカルなのはvivid 紅き鉄腕   作:tomato88

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決闘 3

まずはどう動くか……

 

スピードで撹乱? 意表を突いて一気に? 様子見で砲撃? うん、こういう時は……

 

「前に出る!」

「そうこなくてはなッ!」

 

一気に加速してシグナムの懐に潜り込む。誘われている。 そう思わせられるほど簡単に潜り込むことができた。

 

……なるほどね。

 

この距離、あの人と同じ距離。 だから接近戦。 今の私の力がみたい。 本当に言葉の通りという意味か。 私の力がまだあの人には及ばない。 そんなこと自分でもわかってる。 だけど、私にだってボクサーとしての意地がある。

 

「この距離なら、負けないッ!」

「それはどうだろうなッ!」

 

左ボディ、柄頭で防がれる。そこから体重移動で右側へと移動し右ボディ。 これは右肘で防がれた。 次は飛燕で右ボディと見せかけてのアッパー。 これは大きくバックステップすることで避けられた。

……だけど、逃がさない。

 

点火して再度接近。距離を離されてはいけない。チャンスを作るのにはこの距離を保たなければならない。

 

留まるな。足を動かせ。 狙いを絞らせるな。 今はまだ。

ジャブでレヴァンティンを牽制しながらあわよくば大砲を狙い続ける。 プレッシャーを与え続ける。 そしてまた、近づいては離れ、近づいては離れ。 1分、それを続けた時、好機は訪れた。

 

「なかなか……攻めるタイミングが掴めんな……ッ!」

そう言ってシグナムは大きく後ろに下がった。

 

そろそろか……

 

ここが勝負どころ、そう決めた私は紅葉に短い指示を出してから一気に走り出す。同じ加速、同じ速度、同じ動き。

 

「もらったッ!」

 

シグナムが左から右へと横薙ぎにレヴァンティンを振るう。大きく下がって再び突っ込んできた私を迎撃するのが目的だったんだろう。 そんなことわかってる。だから……

 

「ッ!?」

 

罠を張った。残像という罠を。 1発を入れるために。今のシグナムには斬撃に全く手応えがなく、透けたように見えたはずだ。これで避けてから接近してくると踏んでいたであろうシグナムの行動を一瞬でも止めることができる。

 

「点火ッ!」

「まだだッ! レヴァンティン!」

 

シグナムがレヴァンティンを振り切る前に一気に突っ込む。だが、私はもうすでに大きなミスを犯していた。 それは単純に、残像を見せる位置がシグナムに近すぎたのだ。

 

連結刃へと姿を変えたレヴァンティンが大きくしなりながら左側から襲いかかってくる。 位置を間違えたことでシグナムがレヴァンティンを変形するタイミングが早まり、私自身も飛び出すタイミングが早くなってしまった。

 

「クソッ!」

 

点火している状態では動きは止められないし、方向転換できない。 慌てて左腕でカードの姿勢を取る。 一瞬の間、すぐに大きな衝撃が左腕にのしかかってきた。そのまま大きく吹っ飛ばされ、飛ばされたのは海の方角だった。

 

「紅葉!」

 

慣れない浮遊制御。着水するギリギリで浮くことに成功した。

 

「ありがとう、紅葉」

 

シグナムからの追撃はない。 私が飛ばされた時にドクターストップとばかりにシャマルがタオルを投げたのがチラリと見えた。

 

浮遊も安定してないことだし、ゆっくりと戻ろう。

 

そう思いながらフラフラと空中に浮きながら私はみんなのところへと戻っていった。

 

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

「惜しかったな〜 紅音ちゃん」

「なぁなぁ、どうしてシグナムはマイスターが近づく前に切ろうとしたんだ?」

「そうです! 今までシグナムがあそこまでタイミングを間違えたのは見たことないです!」

「あー、あれはなぁ? 蜃気楼、ゆーやつや」

 

蜃気楼、大気中の温度差で光が屈折して遠くのものが近くに見えたりする現象。 私は2人に、生徒たちにも聞こえるようにそのことを説明する。

 

「つまり、紅音ちゃんは温度差を考えながら戦ってた、ってわけや。 なかなかできる芸当ちゃうでー?」

 

私の言葉に子供達は様々な反応をした。そうそう真似できるものではないけど、いいものが見れたと思う。 シグナムも満足そうな顔をしてる。

 

「さてと、みんな〜! おやつにするよ〜!」

 

紅音ちゃんが戻ってくるのを待ってからおやつタイムの開始や!

 

 

 

▽▽▽

 

 

結局、今日は八神家に泊まることになった。遊んで食べて練習して、時間は経ってさっきまで八神家道場の子達で賑わっていた砂浜も今は波の音しか聞こえないほど静かだ。

 

「静かよねぇ〜」

「たまには、こういうのもいいかな」

「なのはちゃんとヴィヴィオちゃんと一緒に住んでると賑やかでしょう?」

「そうだね。 だから、毎日が飽きない」

今ここには私とシャマルしかいない。 他のみんなは家にいる。シャマルとはゆっくり話したかった。 シャマルはあの人のことを覚えている。だから。

 

「シャマル、これは確認なんだけど、闇の書はどこ?」

「紅音ちゃんも知ってると思うけど、闇の書事件の時にあーすらのアルカンシェルによって消滅させられたわ。 今はもう存在してないわね」

「そう……」

 

これは、なのはから聞いていた。 その闇の書事件の時にすずかとアリサは魔法たついて知ったらしい。 私はその場にいなかったけど。確か、お姉ちゃんと一緒にいたと思う。

 

「じゃあ、闇の書の中身はどうしたの?」

「中身? 私たちヴォルケンリッターとかのこと?」

「うん。 あの人が探してたものが闇の書の中にあったはずなんだけど……」

 

あの人が何を探してたのかは私は覚えてない。あの人にとって大切なもののはずだけど、私は何かわからない。

 

シャマルは少し考える素振りをした後、首を横に振った。どうやら彼女にもわからないらしい。

 

「まぁ、仕方ないか」

「お役に立てなくてごめんなさい……」

「大丈夫。 気にしないで」

 

それはきっと私が思い出さないといけないことのはずだから。

 

「それじゃあ、聞きたいことも聞けたし家に戻ろっか?」

「はーい」

 

少しずつ前に進んでる。そう、私は思ってる。 そうそう、八神家の前に着いた時、シャマルがこんなことを私に言ってきた。

 

「紅音ちゃん、ありがとうね。 あなたのおかげで私たち、ヴォルケンリッターのお母さんを思い出すことができた」

そう言った時のシャマルの笑顔は私の頭から離れない。

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