魔法少女リリカルなのはvivid 紅き鉄腕 作:tomato88
開会式も終わり、選手控え室に向かう途中、特攻服を着た人を見つけた。もちろん、ハリーのことだ。その近くにはメガネを掛けた人がいて、2人はどうやら何か言い争いをしているらしい。
「今度こそオレに勝てるといいなぁ、デコメガネ」
「えぇ。前回の屈辱、倍にして返してあげますよ」
2人の間には火花が散っているように見える。なんだか話しかけづらい。ハリー、こっちに気づいてないみたいだし、また後で話せばいっか、と2人の横を通り抜けようとした瞬間、ハリーに捕まった。
「おいおい、なんだよ、紅音。挨拶の1つぐらいしてくれてもいいじゃねーかよ」
「なんだ、気づいてたんだ」
「当たり前だろ? オレとお前の仲じゃねーか」
自分の話を遮られたせいかさっきからあちらからの視線が痛い。チラリと顔を見ると今にも暴走しそうなぐらい顔に怒りマークが付いているような表情をしていた。この人のことは知っている。インターミドル、ベスト8位に入ったエルス・タスミンだ。今回の大会の第2シードでもある選手だ。順当に勝ち上がれば、準決勝で当たる相手。
「ハリー選手? その子は一体誰なのですか?」
彼女は表面上は笑顔を取り繕っていても声でイラついているのはバレバレだった。ハリーもそれを知ってか口を端に釣り上げてこう言った。
「決勝でオレとやりあう相手だ」
「な……」
エルス選手が固まった。ハリーの言葉の意味は『お前はこいつに勝てない』『お前なんて見ていない』というものだ。
「ハリー、挑発するのに私まで巻き込まないで」
「別にいいだろー? オレはこの大会でお前とやり合うの楽しみにしてんだからよ」
ため息をつきたくなるが、我慢する。確かに、エルス選手に勝たなきゃいけないのは本当だし、私もハリーと公式試合で戦うのを楽しみにしていた。
しばらくすると、エルス選手がフリーズから復活した。ただ、怒りは収まっていないらしく怒り顔は継続中だ。エルス選手は私にビシッ!と指を指す。
「えぇ、いいですとも。えぇ、いいですとも! 先ずは貴方を倒してからハリー選手を倒すとします! それでは次はリングの上で会いましょうッ!」
彼女はそう言ってドスドスと音を鳴らしながらその場を後にした。
「それじゃあ、そろそろオレも行くわ。絶対、勝ち上がってこいよ」
1人残された私も一回戦の準備のために控え室の中に入っていった。
▽▽▽
「紅音、1回戦の相手はーー」
「シュータータイプで距離を置いてくる。距離を離される前に一気にカタをつけろ、でしょ?」
2人しかいない控え室。やけに声は響いて聞こえる。
「なんだ、いやにやる気だな」
私がいつもよりも闘志を燃やしているのが、ノーヴェには不思議に思ったらしい。別に深い意味があるわけじゃない。
「勝ちたい相手がいるから。それに……」
「それに、なんだ?」
「一応、先輩だから、あの3人より前に行ってるってとこ、見せたい」
「アハハ! なんだよそれ!」
「ただの意地だよ。今度はライバルとして当たるかもなんだから」
まだ負けてやるつもりはない。ただのそういう意思表示。
「よしっ! そろそろ時間だ! 準備はいいか?」
「聞かれるまでもない」
「そうだな。行くか」
「うん!」
とりあえず、1回戦、勝たないと。