魔法少女リリカルなのはvivid 紅き鉄腕   作:tomato88

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対エルス その2

「先手必勝! バニッシャー!!」

 

第2ラウンド早々、エルス選手は勝負を仕掛けてきた。

 

どうする。相手がこのまま1ラウンド目と同じことを繰り返すわけがない。考えろ。何を仕掛けてくる。

 

そんなことを考えている間にもとんでもない量のバインドが私に向かって飛んできている。避け続けること2分、ついに状況は動いた。それは、私がしてやられる、という形で。

 

「ここですッ!」

 

誘われた。そう分かってはいても、気づくのが少し遅かった。上手く組み合わされたバインドの数々は私をリングの隅に追いやるための罠だった。

 

「いけ……ッ!」

 

この位置からの攻撃は大体予想通り、全方位からのバインド。ただ、わかってはいても、そうそう避けられるものではない。避けられるかは神のみぞ知る。一か八かだ。

 

「点火!」

 

間に合うかーー

 

「私のバニッシャーの方が速い!」

 

一瞬の衝撃。だがそれは、点火によって加速するようなものではないく、止められる、引っ張られる力だった。

 

「くそッ!」

「やっと捕まえましたよ!」

 

見るまでもなく、両腕が手錠により捕まえられている。それに、まだまだ! と言うようにエルス選手は次々にバインドの量を増やしていく。

 

『紅音選手! ついにエルス選手のバインドに捕まってしまったぁぁ!』

 

大丈夫だ。落ち着け。そう、自分に言い聞かせる。これはピンチでもあり、チャンスなんだ。

距離はーー少し遠い。魔力量はーー十分。あとはタイミングだけだ。

 

「このまま、勝たせていただきます……ッ!」

「くぅ……ッ!」

 

締め付けがどんどん強くなっていく。まだだ、耐えろ。

 

『紅音選手のライフがどんどん削られていく! このまま決着となるか!?』

「これで……止めです!」

 

エルス選手が一層力を入れようと一瞬、引く力を抜いた。ここだ。練習通りにやるんだ。

 

一気に脱力、足はしっかり踏み込んで、腰を回転させ、拳を……押し出すッ!

 

みしり、という音とともに体を縛り付けていた圧力から、解放された。

これだ、この感じ。ノーヴェに習ったバインド対策、アンチェイン・ナックル。

 

「ディバイン・バスター!」

 

ただ、バインドから解放されるだけでは終わらない。私は押し出した拳に速射砲を乗せ、放つ。いつもよりスピードのでている速射砲は一直線にエルス選手に向かっていき、油断していたエルス選手に命中した。

 

……ここで終わらせるッ!

 

黒煙がリングを埋め尽くしている中、私は走って、距離を詰める。点火は使わない。今は、溜める方に集中したいから。

 

「「もらった!」」

 

声が重なる。どちらも渾身の右ストレート。タイミングもほぼ、同時だった。しかし、僅かながら、エルス選手の方が攻撃に入ったのが速い。

 

「はぁっ!」

 

それはエルス選手もわかっている。残り少ない私のライフを削りきるつもりだ。だからこそ、だからこそ隙ができる。

少しだけ、大きく振るわれた右手。ハリー辺りならこれで十分かもしれない。だけど、私はボクサーだ!

ドン、と私の拳がエルス選手を打つ。その場所は胸の中央から少し下がったところ、鳩尾と呼ばれる急所の1つだった。

 

「とどめッ! インフェルノ・ブレイカーァァァァ!」

 

紅い炎の奔流。エルス選手はそれに飲み込まれ、壁に叩きつけられた。エルス選手のライフはゼロ、私のライフは残り僅か。

 

勝ったーー

 

ここに私とエルス選手の勝負は終りを告げた。

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

会場は拍手に包まれていた。私はノーヴェに肩を貸してもらいながら、リングを後にした。その途中、観客席にヴィヴィオ、コロナ、リオの3人を見つけた。自分のことのように喜んでくれていて、嬉しかった。

 

「どうしたの、ノーヴェ?」

 

控え室に戻る途中の廊下。なぜかそこでノーヴェは立ち止まった。

 

「あー、なんて言うかな? お前と話したい、って言ってるやつがいてな。ここで待っててくれ、って頼まれたんだよ」

 

私が頭に疑問符を浮かべている間にも、控え室で待ってるからなー、とノーヴェは行ってしまった。仕方なく、近くにあったベンチに座り紅葉と戯れていると、向こうからこっちに来るような足音がきこえた。

紅蓮のような髪に自称不良とは程遠い可愛らしい服装。

 

「よっ! 紅音!」

「なんだ、ハリーか」

「なんだとは、なんだよ」

「別に」

 

ハリー・トライベッカ、私が決勝で当たるその人だった。

 

「それで、話ってなに?」

「ん? 大したことはねーよ。決勝前にお前とサシで話したかっただけだ」

 

和やかだった雰囲気が一転し、ピリッと張り詰めた空気が辺りを漂う。

「オレが大会前に言ったこと、覚えてるよな?」

「楽しみにしてる、てやつ?」

「あぁ、そうだ。あの言葉に嘘はない。だから、もう一度言うぜ。『お前との試合、楽しみにしてるぜ』」

 

そう言って、ハリーはギラギラとした目で拳を突き出してくる。それに私はーー

 

「こちらこそ」

拳をぶつけて答える。

 

「さぁて、紅音とやるからにはそれ相応に準備しないといけないからな。オレはもう行くぜ」

次にハリーと会うのはリングの上だ。最初に戦った半年前とは違う。今回も勝てるとは限らない。

 

「私も練習しないと」

 

私は急いでノーヴェのいる控え室に戻っていくのだった。

 

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