魔法少女リリカルなのはvivid 紅き鉄腕   作:tomato88

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大会が終わって

夢を見ていた。

 

「ーーはどこに行った?!」

「まさか、あいつが……ッ!」

 

私の記憶じゃない。これは、あの人の記憶。

 

「クソッ! こいつら話も聞きやしねぇ!」

「ここを早く抜けないとーーが!」

 

ずっとむかし。ヴィヴィオの元となった聖王が生きていた古代ベルカ時代よりも前の話。

 

「残念ね。もうーーはこの本の中。どう足掻いても無駄」

「殺す……ッ! あなただけは……あなただけは何があっても絶対に……ッ!」

あの人はもうこの世にはいないけれど、その魂と技術はきっと今も、受け継がれている。

 

▽▽▽

 

 

 

何やら周りが騒がしい。なんで、こんなにうるさいの?

 

…………あれ? ここ、どこだっけ? 私、何してた?

 

暗かった風景に少しずつ光が差し込めた。見えてきたのは、雲ひとつ無い青い空。私は仰向けに倒れていた。

 

そうか、私、ハリーの攻撃を受けてーーーー

 

「負けた……」

 

あそこまで追い詰めていたのに、結局、逆転されて敗北。

 

敗者は立ち去るのみ、そう思って立ち上がろうとしたが身体に力が入らない。

 

「なーに、しけたツラしてんだよ」

 

眩しかった太陽が遮られ、そこから差し出された手があった。

 

「ハリー?」

「おう。 ほら、早く立てって」

 

ハリーに急かされ、力の入らない腕を無理やり動かして、差し出された手を掴んだ。そして、起こしてもらうまでは良かったのだが、やはりと言うか、脚に力が入らない。

 

「ごめん、ハリー。肩貸して」

「しゃーねぇなぁ」

ハリーの肩に腕を回し、体重を乗せる。それで、やっと地に足がついたような感じがした。

 

「ほらよ、見てみろよ、この歓声。これが、ここまで来たやつしか味わえねー特権ってやつだよな」

そう言って、ハリーは顔を上げるように促す。そこには、良いものを観たといった観客の顔。拍手は未だ鳴り終わらない。

 

「うん、そうかも、しれない」

だけど、負けた私はハリーにそう返すことしかできない。これは勝者への歓声、敗者には慰めにしかならない。

 

「だから、なんでそんなしけたツラしてんだよ」

「だって……」

 

私は観客から目を反らすように俯いてしまう。そんな私の様子にハリーは大きくため息をついた。

「何を考えてるのかは知らねーが、顔を上げろよ。勝者にそんな顔は似合わないぜ?」

「え?」

 

勝った? 誰が、誰に?

 

「作戦通り、上手くいってたはずなんだがな。最後にあんな隠し球があるとは予想もしてなかったぜ」

ということはーー

 

「まさか、私が勝ったの……?」

「あぁ、そうだよ。なんだ、嫌味か?」

 

目を細めてハリーがこちらを睨んでくる。私は慌てて首を横に振った。

 

「まぁ、なんとなくわかってた。あれがジークと同じ、エレミアの真髄だってことぐらいよ」

 

そうか、だから、あの人の夢を見てたのか。

 

「次は、それを含めてオレが勝つからな。楽しみにしてろよ?」

「いいや、次も私が勝つよ。あの人の力を使わないで、自分の力だけで」

それぐらいできないと、きっと頂点まではたどり着けないと思うから。

 

「そろそろ、オレは退散するとすっか。お前の仲間もそろそろ来るんだろ?」

 

そう言えば、観客席の最前列にいた3人の姿が見えなくなっていた。もしかしたら、こっちに来てくれているのかもしれない。

「ほら、もう自分で歩けるだろ? 早くあっちに行ってやれよ」

 

ハリーの肩に置いていた手を解かれ、軽く背中を押される。少しよろけるが、大丈夫。自分の足で立てる。

 

「じゃあな。また、リングの上で会おうぜ、紅音」

「うん、また、いつか」

 

そう言うと、ハリーは特攻服を翻し、堂々とした出で立ちでリングを後にした。

 

「勝てたんだ、私」

 

なんか、実感がわかないな。最後のことは全く覚えてないわけだし。

 

「お疲れ」

 

ベンチではノーヴェが1人、満足げな顔をしていた。

「よく頑張ったな」

 

珍しく、恥ずかしがらずにノーヴェは私の頭を撫でる。それほど、コーチとして、ノーヴェも嬉しく思ってくれているのかもしれない。

 

「今、ウェンディのやつに医務室手配してもらってるから、早く行くぞ」

「うん、わかった」

 

テキパキとノーヴェは後片付けを始める。私はというと怪我人には仕事なんて任せてられないとベンチに座らされている。その時だ。

 

「あ〜か〜ね〜っ!」

 

大きな少女の声と軽やかに駆け抜ける音が耳に入った。

 

「ん?」

 

そして、後ろを振り向いた瞬間、軽い衝撃。誰かが抱きついてきたようだった。

 

「紅音っ! 優勝おめでとうっ!」

 

抱きついて来たものの正体はリオだった。満面の笑みを浮かべ、私に抱きつきながら、その場を何回も飛び跳ねている。

 

「ありがとう、リオ」

 

他の2人はリオが到着してから数分後に現れた。2人とも走ってここまで来たのか息が切れていた。コロナは顔を赤くしていたが、大丈夫だろうか?

 

「やったねっ、紅音」

「おめでとうっ!」

「ありがとう、2人とも」

 

ヴィヴィオとコロナが挙げた手に私の手を重ね、ハイタッチを交わす。

 

「仲良く喜んでいるところ悪いが、そろそろ行くぞ」

 

その後は、試合のインタビューと高町家でのお祝いがあり、解散する頃にはもう空は薄暗くなっていた。

 

「ここに来てから、だいぶ経ったな……」

 

私は庭に出て、夜風に当たりながら、そんなことを考える。

もうすぐ、私がここに来てから一年が経つ。その間、いろんなことがあって、いろんな人と出会えた。きっと、あのまま年を取っていたらわからなかったものもあった。それが、私にとっていいことなのかどうかは定かではない。でも、少なくとも今の私はこの生活に満足している。

「あ、紅音、ここにいたんだ」

「ヴィヴィオ? 外になんて来て、どうかした?」

 

それは、ヴィヴィオの存在が大きいかもしれない。私がここに来てから、初めてできた親友、それが高町ヴィヴィオ。この世界で色々と助けてもらったのは言うまでもない。

 

「たまには、2人でゆっくり話したいなーって」

そう言って、ヴィヴィオは照れ笑いを浮かべた。思い返してみると、確かに最近、2人でいることはほとんどなかったかもしれない。学校ではコロナとリオも一緒だし、家に帰ったら、なのはかフェイトのどちらかいる。それに、私が部屋に引きこもっている時も多かった。

 

「ここで?」

「ちょっと寒いけど、しっかり防寒してきたから大丈夫だよ!」

「そう。それならいいんだけど」

 

そして、私たちは語り合う。これまでのこと、これからのこと。それはなのはに怒られるまで続いていった。

そして、季節は冬から春へ移れ行く。次の1年が今、始まろうとしていた。

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