魔法少女リリカルなのはvivid 紅き鉄腕   作:tomato88

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閲覧ありがとうございます。今回から新章突入です。アインハルトはまだしばらく登場しません。


春になって

「紅音ー! 早く早く〜!」

「はいはい…………わかってるよ…………」

「紅音ー! 寝ちゃダメー!」

 

眠い目をこすりながら、私はヴィヴィオの後を追う。リビングから漂ってくる美味しそうな匂いがお腹を、くぅ、と鳴らさせる。

大会が終わって、2ヶ月近く経った。ついこの前まで冬であったのが嘘のように、日は長く、風は暖かく、桜は開花し始めた。

 

「ママたちは今日、お休みだから」

「お祝いモードで美味しいものいっぱい作って待ってるよ〜」

「「はーい」」

 

なのはとフェイト、2人に見送られながら家を出る。今日は終業式。私が小学4年生なのも今日で最後だ。そう思うと、13年越しの進級かと、妙な感動が私の中に沸き起こる。

 

「紅音、紅葉が何か振動してるんだけど…………」

「え? あ、本当だ」

 

ヴィヴィオの言った通り、頭の上に乗せている紅葉が微かに振動していた。どうやら、進級の感動で気が付かなかったみたいだ。

 

「えっと、ヴィクターからのメール見たい」

ヴィクターがこんな早朝に連絡を寄越すのは結構珍しい。事実、いつもヴィクターからの連絡は昼か夕方のどちらかだからだ。

 

「えっと、『今日、学校が終わり次第すぐに私の家に来なさい。あなたに見せたいものがあるの』…………?」

「へー。見せたいものっていったいなんなんだろうね?」

「この前ジークには新型のデバイス渡したし…………珍しいパーツ?」

 

この前、ジークにはめでたく私が作った新型デバイス『クロ』を渡すことができた。その名の通り、見た目は紅葉と瓜二つの柴犬。中身は多少改造しているとはいえ、元々のジークが持っていたデバイスのデータが使われている。あの時に渡した場所がダールグリュン家だったというのもあり、ヴィクターの発狂っぷりはすさまじかった。ジークの試し打ち版ガイストを食らってやっと、動きが止まったレベルだ。どれほどひどいものだったか容易に想像できるだろう。

 

「まぁ、とりあえず、なのはには夕飯前には帰るって伝えないとね」

「伝えなくて帰ってこなかったときは恐ろしい目に合うからね…………」

 

そう言ってヴィヴィオは遠い目をしていた。いったい何があったのだろうか。こうして、私たちは学校に向かい、晴れて、一年間の成績表を受け取るとともに、小学4年生としての学校生活は終了した。

ヴィヴィオたちはそのまま無限書庫に向かうという言うので、私は一人で校門の前で待ち続ける。10分を過ぎたあたりに一台の大きな車が私の前に停車した。

 

「お待たせ、紅音。さぁ、早く車の中に入りなさい」

 

ヴィクターはそう言ってエドガーに指示を出し、ドアを開けさせる。周囲の視線が痛いのでありがたくそうさせてもらう。中に入るとそこにはヴィクターとエドガーの他にジークとクロの姿もあった。私は頭の上から紅葉を降ろし、クロと遊ぶように促す。車が発進する頃には、二匹はじゃれあって遊んでいた。

 

「それで、ヴィクター。話って?」

「それについては我が家に着いてから話すわ。それよりもーーーー」

 

そうしてヴィクターが取り出したのはケースに入ったトランプだった。

 

「いつかの雪辱、ここで晴らさせてもらうわ」

 

なるほど。私とジークは顔を見合わせニヤリと笑う。

 

「「望むところ(や)!」」

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

「また負けたわ…………」

「ほら、ヴィクター。項垂れてないで早く行くよ」

 

ほどなくしてダールグリュンの屋敷には着いた。道中のトランプ対決はヴィクターの全敗。結局、雪辱を晴らすことはできなかった。

 

「まぁ、勝つのは次の機会ということで。それでは、部屋に案内するわ、2人とも」

 

気を取り直したヴィクターは私たちの前を歩いて道案内をする。

 

「なぁ、紅音」

「なに、ジーク」

「私、この屋敷に何回来ても道覚えられないんやけど」

「奇遇だね。私もだよ」

 

よく来ているのに部屋に行くまで毎回道案内をしてもらっているのはこれが理由だ。よくわからないけど、覚えられないんだよね。

部屋に案内され、席に着き、エドガーが入れてくれた紅茶を飲む。うん、今日も美味しい。

 

「それで、今日はなんのために私を呼んだの?」

「あ、それについて、先ずは私が話してもいいかな?」

 

断る理由もないので、私たちは無言で頷く。それを見たジークは再び口を開いた。

 

「紅音、この前の大会で番長と試合してたやん?」

「そうだね」

「それを私の両親がたまたま新聞で見たらしくて、この子誰? って聞かれたんよ。それで、別に隠す必要もないから、色々と喋ってもうて…………」

「まぁ、別にそれぐらいなら」

 

特に支障はないだろう。聖王教会にも知られていることだし。

 

「話はそれだけじゃなくて、昨日、私の両親が面白いもの見つけたから、ダールグリュン家に送っておいたって言われて…………」

 

そう言うとジークはヴィクターの方を見る。その視線を受けたヴィクターはなにやら、エドガーに指示を出した。数分後、戻ってきたエドガーは手元に一冊の古ぼけた分厚い本を持っていた。ヴィクターはそれを受け取るとゆっくりとテーブルの中央に置いた。

 

「これ、なに?」

革を使って作られているらしい表紙に書かれている題名は文字が掠れて読めない。

 

「わたくしが調べたところによると、どうやら題名は『青が黒になった日』製作者は『ゴルト・エーベルヴァイン』内容はどうやら、歴史書…………みたいな感じかしら?」

「本の題名も製作者の名前も聞いたことないなぁ。紅音は?」

 

そう、ジークから話を振られどうだったかと考える。さっきから気になっていた。ゴルト・エーベルヴァイン、どこかで聞いたことあるような名前…………

何かを思い出して、私は口を開いた。

 

「もしかしたら、私のご先祖様の時に生きていた人かも」

 

確か、お姉ちゃんが話してた『エレミアの話』に出てきた登場人物にいたはずだ。国王、ゴルト・エーベルヴァイン。そう呼ばれていた気がする。

 

「読んでみていい?」

「え、えぇ、まぁ」

 

何やら歯切れの悪いヴィクターから手渡された本はずっしりと重く、表面はひんやりと冷たかった。ページを開く。

 

「『我が名は国王ゴルト・エーベルヴァイン。いつか、これを読まれる方には真実を知ってもらいたい。これは私が引き起こした罪だ。その罪をここに書き記していこうと思う』」

 

古代ベルカ語で書かれているその文章はエレミアの話と私の記憶が本物であるという確証を持つのに十分過ぎるほどだった。

 

「紅音、古代ベルカ語読めたんやね」

「うん、当然」

 

そもそも、最初から私はこっちの言葉を知っていた。未だ、他の人がそのことに気づいたことはないけど。なんか、なのは辺りのせいで話せること前提になってなかったっけ。実際はギリギリ記憶が残っていただけなのに。

 

「続き読むよ。『ことの発端は私が彼女にあることを依頼したところから始まったーーーーーー」

 

 

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