… prologue…
気がつくと、僕はあの ”白い部屋”にいた。
「やぁ、また会ったね。」
声がした方を振り向くと、そこには小さな妖精のようなものが
浮遊していた。
相変わらず チビな奴だ。
「今回はどんなご用件で?。」
変わらない いつものセリフ。
これを初めて耳にしたのは、 今から2か月前のことだった。
01
2020年 7月26日
僕の眠りは 陽気で迷惑な声に消し去られた。
「腕を前から上にあげて、大きく背伸びの運動から〜」
家の隣の公園から聞こえてくるその声は、そう
夏休みの醍醐味の1つ ラジオ体操である。
「うるせぇ…。」
朝から大音量でいい迷惑だ。
「そうか…今日から夏休みか…」
昨日、高校の終業式を終え 僕は1ヶ月と5日の夏休みに入ったのだった。
「…着替えてメシ食わなくちゃな。」
さて、僕が着替えてる間にとっとと僕の自己紹介をしてしまおう。
僕の名前は 明石 叶。 (あかし かなう)
名前だけだと女性と間違えられるが
れっきとした男子高校生だ。ちなみに2年生。17歳。
特技は新作ゲームの速攻バク探し当て というよくわからない特技である。
だが僕のおかげで ゲーム会社様はバグを早期発見できるのだ。感謝の一つや二つ欲しいものだ。
まぁ新作のゲームを買うのは稀にしかないんだが。
と、僕の自己紹介が終わったところで
僕はもう朝食の準備をしているようだ。朝から豚カツらしい。重い。
夏休みの間は僕の目覚まし時計となっているラジオ体操も
とっくに終わっているようだ。
「朝から豚カツかよ…」
「ごちゃごちゃ言わない!昨日の夕飯の残りなんだから
食べちゃわないともったいないでしょ?」
僕が文句を言うとほぼ同時に罵声を浴びせてきた彼女は、
僕の妹の 明石 未来。 (あかし みらい)
名前だけだと男性と間違えられるが
れっきとした女子中学生だ。ちなみに3年生。15歳。
彼女は学校ではかなりの優等生らしい。
しかも学級委員長で、テストは上位の常連だという。
自分の妹だから言うのも何だが 容姿もかなり良い。
バレンタインとは縁のない僕とは大違いの容姿だ。
性格は困った奴がいると助けずにはいられない、
正義の味方のような 面倒見のいい性格だ。
まぁ僕には厳しいのだが。
そんな妹だけど、未来にはかなり助けられている。
母さんが亡くなってから ずっと家事やってくれてるもんな…こいつ。
1年前、母親が死んだ。
轢き逃げ事故で、犯人は未だに捕まっていない。
事故の知らせが来て、病院に駆けつけた時には、
もう母親は死んでいた。母親の隣には大声で泣く未来がいた。
このシーンだけは、焼付くように頭に残ってる。
「はい!朝ご飯食べたら早く片付けて!」
「そう急かすなよ…」
「お兄ちゃんのくせに生意気言わない!早く早く!」
「それはこっちのセリフだ。妹のくせに 生意気言うな」
これが毎朝のお決まりの会話である。
片付けが終わり、一息ついた僕らは
リビングで横になってテレビを見ていた。
未来は、その容姿と性格とは裏腹に
だらしなく、おなかを出してテレビを見ていた。
こいつ…本当に学校では優等生なのか?
そう思って未来の横顔を見ていると
ふと、思った。
そして、聞いてみた。
「なぁ、未来」
「んー?」
ふにゃっとした声で、未来は返事をする。
「母さんを轢いた奴、知りたくないか」
それを聞いた未来は、少し驚いた表情を見せたが、
すぐに冷静な表情に戻り
「もう今はいいよ。過ぎたことなんだしさ。」
と、ふにゃっとした声で、未来は言った。
「そうか…」
「うん」
「少し、外をふらついてくる」
そう言って、僕は外へ出掛けた。
頭に、よくわからないもやもやが 飛び回っていた。
しばらく歩き 踏切に捕まり そして考えた。
未来は本当に知りたくないのだろうか。
実の母親を殺した犯人を、知りたくないのだろうか。
そんな疑問が、踏切の警告音と混じって 頭の中を飛び回った。
ふと、頭の中で 疑問を掻き分けるかのように、
死んだ母親の隣で泣きじゃくる 未来の姿が 浮かんだ。
僕の何かが口から飛び出した。
「母親を殺したヤツを、 未来を悲しませたヤツを、 教えてくれ!」
そして、電車が前を通ると同時に、
僕の意識は、どこかへ“飛んだ”。
続
初投稿です。
何か意見がありましたら、ご自由にどうぞ。
次の更新は明日か明後日か、くらいになると思います。