「なのはちゃん、大丈夫?」
「最近のなのはボーッとしすぎよ。」
学校の休み時間。すずかとアリサはぼんやりとしたなのはに呼びかける。あの出来事から数日が経ち、それ以降なのはは何処か元気をなくしていた。
尚、ハイヤードラゴンの件については悟飯が誤魔化しきれずにアリサとすずか、そしてなのはに事情を説明する事になり、放置して騒ぎにならないよう悟飯の時と同様バニングス邸に住む事に決まったのだ。
だがなのはの一件はユーノとなのはが事情を説明しないでほしいという意向によってアリサとすずかには事情を説明していなかった、唯一事情を知る者は悟飯だけである。
「……ううん。なんでもないよ。」
「もし何か悩んでるなら相談に乗るよ。」
「ありがとう。でも何も悩んでないから気にしないで。」
「本当に…? あたし達に何か原因があるなら遠慮なく——。」
「本当に大丈夫だから…心配かけてたならごめんね。」
今回はなのはが何故悩んでいるのか、二人には原因が今一つわからない。二人にとっては原因がわからない悩みほど心配させられるものもなかった。
何か原因があるのなら慰める言葉や話題がある程度は浮かんでくるがそれがわからない以上、なのは自身から打ち明けてこなければ何もする事ができなかったのだ。
「そう……だったらいいの。」
「………うん。」
気まずい空気が三人を包み込む。アリサは話を聞きたくてもなのはが打ち明けてくれないせいでどういう態度を取ればいいか悩んでいるように見える。
すずかはゆっくりとなのはの返事を待ってはいるものの、なのはが悩む前の状態と比べてみれば元気がなく、なのはと同じように暗い表情を浮かべる事も多くなった。
「ねえ悟飯、最近のなのはについてどう思う?」
「………。」
アリサはベンチに座っている悟飯に意見を求めるが、彼からの返答は帰って来ない。
悟飯もまた悩みを抱えており、なのはの元気がなくなるとほぼ同時期に彼も元気がなくなっていた。彼自身の考えている事はやはり数日前に出会ったフェイト。
そしてこの世界に存在するドラゴンボール、自分の中にあると言われる魔力やなのはとユーノのこと。あまりにも考える事が多すぎる、そのせいで疲れさえ感じていた。
悟飯の態度にむすっとしたアリサは機嫌の悪そうな表情を浮かべると耳元まで顔を近づけ。
「ちょっと悟飯!聞いてるの?」
「わあっ!? え、えっと……ごめん聞いてなかった。」
「はぁ……っていうか悟飯も何かあったの?」
改めて思い返してみれば悟飯の様子もおかしい。その事にアリサは気づき始める、心配そうな目線を悟飯に向けながら。
「う、ううん。何もないよ。」
「……それなら別にいいんだけど、何かあったら言いなさいよね。」
「心配している」。それを素直に表現する事ができないせいで悟飯から目線を逸らしてしまう。本当はとても心配で心配でたまらないが結局、これ以上の言葉はアリサの中には思い浮かばなかった。
それはなのはにも同じ事が言える。せめて打ち明けてくれれば力になれなくても一緒に悩んであげられる、だがこれ以上に浮かぶ言葉も見つからない。すずかもアリサと同じ気持ちである。
二人の表情を互いに目にしながら悟飯は曇った表情を露にしていた。そんな中でなのはは雰囲気を察して気遣いを見せるように口を開き。
「そういえば今度、家族旅行で温泉に行くの。よかったらみんなも一緒に来る?」
「———温泉!?もちろん行くに決まってるじゃない!」
「うん…温泉って最近行ってなかったからわたしも行きたいな。」
「温泉かぁ~…ボクも行くよ。」
見事に全員賛同する、アリサとすずかはさっきまでの暗い顔から切り離してぱっと明るい笑みを浮かべてくれた。上手く気持ちと雰囲気の切り替えができたことになのはは無意識に微笑を浮かべて——。
「じゃあ連休にみんなと一緒に温泉旅行…ってことで。」
今度の休日の予定はみんなで温泉旅行だと決まればアリサとすずかは何時も通りの普段の二人に戻り、なのはと悟飯は何時も通りとまではいかなくても少しは元気を取り戻したように見える。こうして楽しい計画を考えながら日にちが過ぎ去っていくのであった。
———そして今日は連休の初日。悟飯は未だに魔法のことに関してなのはから聞けず、フェイトやドラゴンボールについてもまったく進展がなかった数日間でもある。
ごく普通にありふれた期間の繰り返し。だがこの期間のおかげでなのはは少し元気を取り戻してきたようにも見える。あの出来事から少しずつ落ち着きを取り戻してきたのだろう。
「すっごい緑ねー…。」
「ホントだぁ……。」
アリサとすずかの声が車内で聞こえてくる。今は温泉に行く途中であり道路を横切っている最中だ。車の中、窓から覗く光景は緑だらけというよりは森だらけであり、自然が多く其処にはあった。
悟飯は好奇心につられて窓から二人の見る光景を覗き見する。暫く見ていた後、どうにも隣がやけに静かに感じて目線を隣の方向、なのはへと向ける。彼女は普段よりも大人しく思えた。
「デビットから聞いたよ、悟飯くんは武術をやっているみたいだね。」
なのはの父親である士郎は運転をしながら悟飯に質問を投げかける。車に乗る前に両親へ自己紹介を済ませた後、士郎とデビットが武術について話していたような気がした。
目は相変わらず前方へ向けたまま。助手席に座る桃子やアリサ達もこちらの会話に気づいて興味津々そうに目線が向けられる。
「体つきからでもかなりの鍛錬をしているように見えるよ。」
「いえ、そんなことないですよ。」
控えめに謙虚に振る舞う。これなら思った以上に良好な関係を築けそうだとなのはとアリサは少し安心していたのだが…。
「誰から武術を習ったんだい?」
「ピッコロさんから習いました!あ、ピッコロさんはボクの武術の師匠で……。」
「(ピッコロさん…外人か?)そうなんだ。何歳頃から始めたのかな?」
「ええっと、4歳頃からです。」
「(4歳だと…!)……あ、あはは…凄いね。やっぱり最初は体力作りから?」
「はい!ピッコロさんに半年間生き残れと言われて荒野に置き去りにされましたけど、そのお陰で体力は――んぐっ!」
「…………。」
すっかり高町家の大黒柱である士郎は目が点になってしまっていた。これ以上は不味いと話の途中からアリサが強引に手で悟飯の口を塞いで話を中断させる。
「あなた!このままじゃぶつかるわよ!!」
「お、おとーさん! 前!前見て!」
直後に桃子となのはは車が道路の端っこまで寄せられてガードレールにぶつかると指摘。すぐに我を取り戻した士郎は正面を向き再び操作に戻る事で事故を起こさずに済む。
「4歳ってわたしたちが幼稚園に通ってる頃だよね。」
「なんか、あんたの強さの秘密がわかったような気がするわ。」
悟飯の過去については容易に話すべきではないのかもしれない。あまりにもこちらの世界の常識とかけ離れすぎている。彼の過去に驚きを隠せないすずかに対しアリサは思わず先が思いやられるようなため息を吐くのだった。
それから悟飯と士郎の会話はシャットダウンするようになのはとアリサが輪に入ってごまかしてその場をやり過そうとしている内に気がつけば海鳴旅館に到着していた。
車が二台、旅館の前に停止すると扉が開く。もう一台の車からはなのはの兄と姉である恭也と美由希やすずかの姉である忍、ファリン、ノエルが外に出てくる。子供の中で一番先に出たのはすずかであった。
———が、突然彼女の体がフリーズでもしたように凍り付く。意味がわからずアリサは怪奇な表情を浮かべ「何してるの?」と声をかける。
「ア、アリサちゃん…! たいへんだよ、あれ…!」
「一体どうしたっていうのよ。旅館になにか―――」
次に出てきたアリサもすずかが指をさした方角を視界に入れると口が止まってしまう。よく見てみると恭也や忍、ファリンまでもがすずかが指をさした方角を注目している。
更に身内以外にも大人達もぞろぞろ集まってきていた、これには驚いて悟飯となのはも慌てて外に出てみると二人までもが拍子抜けな声を上げてしまう。
「これって何処かで見た足跡だよね…?」
「にゃはは……わたしも見覚えがあるかな。」
「けど、まだ決まったわけじゃないわよ。もしかしたら巨漢の男かもしれないし……。」
地面に巨大な足跡。しかも靴の形にしては少し歪であるため、まるで巨大な熊の足跡に見えるのだ。少なくとも成人男性の足のサイズより倍以上、目に見ただけで判断できる。
(近くに気は感じられないけど……まさかね。)
物凄くその足跡に見覚えがあるが確信は持てず、悟飯は想像した展開にならないように祈るしかなかった。
大人組は真剣に話し合っており、子供組みは何処か居づらさを感じてしまう。あまり割り込みしない方がいいような、そんな気を感じて。
「おとーさん!わたし達は先に部屋に行ってるね。」
「なのは、部屋分かるの?」
「うん、さっき確認したから。」
なのはが海鳴旅館に来るのは今回が始めてではない。過去にも連休に何度か来ている事もあってこの旅館にはすっかり慣れてしまっている。故に自由に行動する事ができるのだ。
「わかった。それと、くれぐれも外には出ないでくれ。いくぞ恭也!美由希!」
「私達も同行します!」
「それならボクも「あんたはこっち!」わああっ!?」
外に外敵がいると判断したのか士郎は恭也と美由希を引き連れて旅館とは別の離れた場所に駆け出していき、後からノエルとファリンも三人の後を追う形で森の中へと移動。
悟飯も気になって士郎達を追いかけようとしたが、アリサに襟首を掴まれてそのまま桃子や忍達と一緒に部屋に連れて行かれる。部屋に着くと浴衣を用意して子供組は温泉へと向かうのだった。
「なんであんなに嫌がるのかしら?ユーノと一緒に入りたかったのに。」
「うーん、どうしてなんだろう。悟飯くんに懐いてるからかな?」
「そうかも。悟飯くん、動物によく懐かれるからね。」
アリサは女湯の方にユーノを連れて行こうとしたのだが、なにやらユーノが頑なに拒否の動作を見せて悟飯の肩に強くしがみつくので仕方なく悟飯に預ける事となったのだ。
ユーノのあの全力否定に何処か奇妙な違和感を感じてしまい、なのはもとても不思議に不可解に感じられた。
しかしもう過ぎた事なのであまりその事は気にしすぎず、タオルを身体に巻いた後は早速なのはとすずかとアリサ、三人で温泉を堪能する事にする。
「ふぅ~、なんとか助かった……。」
(なにが助かったんだろう…?)
一方、悟飯とユーノは女性陣が着替えている頃にはもう温泉に浸かっていた、ユーノはなのは達と別れてほっと一息吐いているが悟飯はその理由がわからず首を傾げざるをえない。
見渡せば誰もいない温泉風呂、二人しかいない空間。それは悟飯にとっては今まで聞きたかった質問を投げかけられるチャンスでもあり早速話しかけてみる。
「あ、あの…ユーノさん……。」
「え?ああ、ユーノでいいよ。歳も君と同じぐらいだから。」
「そうなんですか? でも、動物ですよね?」
「いや、えっと…実はそうじゃないんだ。色々訳があってこの姿をしているだけで……。」
すると突然、フェレットは光に包まれ発光し始める。優しげな緑色の光が湯に反射して鏡に反射しながら姿が変わっていき———。
「…とまぁ、こんな感じなんだ。」
「———!? 人に変わった……。」
光が消え去ったときには色素の薄い茶髪の髪を持つ少年が湯船に浸かっていた。フェレットの姿は跡形もなく、まさしく正真正銘の人間の子供が其処にいたのだ。
「いや、本当は元の姿がこれなんだけど…動物の姿の方が色々と都合がいいから、普段はフェレットのままでいるんだ。」
「そうだったんですか。あ、そういえばユーノさんとなのはちゃんはなんでドラゴンボールを?」
「これも色々理由があって…けど、ドラゴンボー……。」
ユーノは唐突に言葉を止めると壁の方へと視線を向ける、そのままジーッと睨むように緑の眼光を浴びせながら壁を見つめる。
「…悟飯、なにか声が聞こえない?」
「声? 確かに聞こえるような……。」
静かに耳を済ませてみれば甲高い声が聞こえてきた。しかも一人ではなく、二人、いや三人ほどいるだろうか。何か騒いでいるような叫び声が耳に入る。
ユーノと悟飯は互いに顔を合わせながらどうするか迷ってしまう、話し声でここまで大きな声は出さない筈だ。だとしたら遊んでいるのか、盛り上がっているのか。
「…なんか、様子がおかしい。」
「そうですね。それに声がだんだん大きくなっています。」
ユーノは呟く。この言葉に同意するように頷く悟飯は湯船から立ち上がってユーノと同じ位置にまで歩けば壁を二人で見つめる。睨み続け、視線を浴びせながら。
「クアックア〜ッ!」
「「「きゃあああああああああああーーーっ!!!」」」
「「…へ?」」
悲鳴と間抜けな声がそれぞれ重なって反響しているせいでもはや状況を把握する事は難しい。突然、壁が音を出しながら崩れた先にはハイヤードラゴンがタオルを巻きながらこちらに突進してくるという信じられない光景が起きていた。
しかも後ろには三人の少女がドラゴンの背中に掴まっている。金色の髪、茶色の髪、紫色の髪、見慣れた少女達であるなのはとすずかとアリサがドラゴンと共にこちらに向かっている状況。
「…っ〜〜〜〜!!?」
「ハ、ハイヤードラゴン!?」
ユーノは火が吹き出てきそうなほど顔面を真っ赤にさせながらフェレット状態に一瞬で戻る、といってもフェレット状態でも冷や汗を流してかなりの焦り様で直ぐに悟飯の肩に乗った。
悟飯は何故ユーノがここまでオーバーな反応を見せるのか疑問に感じながらもハイヤードラゴンを静止する為に受け止めようとする——―
「止まって!ハイヤー…――わわわわっ!!?」
「悟飯…!?…って落ちるーー!!」
「「きゃああっ!!」」
「クア〜ッ♪」
が、ハイヤードラゴンは悟飯に出会えた事に喜びの鳴き声を上げると同時——悟飯は不意に濡れた床に足を滑らせ、ドラゴンの勢いに負けてバランス感覚は崩れ全員が湯船の中へ派手な効果音と共に落下。
身体の温度が一気に熱くなったような感触を覚える中、すぐに湯船から顔を出すとやっとハイヤードラゴンが止まった事に安心のため息を吐くなのはとすずか。フェレットはドラゴンの頭の上に湯をかぶりながらぐったり倒れている。
そんな中で水飛沫と共に湯船から2つのシルエットが姿を現し。
「…やーっと捕まえたわよ、これでもうにげ………。」
「ぷはぁ!ビックリした~。あれ、アリサちゃん?」
キョトンとした顔で純粋に見つめる悟飯、一方では顔を赤くしながら彼の背中に両腕を回しているアリサは客観的に見れば悟飯を抱きしめている構図。一糸纏わぬ姿で少年と少女は気がつけば密着していた。
ユーノが顔面を真っ赤にさせた理由はアリサが今感じている事だ。なのはとすずかもドラゴンの背中に乗ってはいるもののアリサと同じような状態でありそれのせいでユーノは今も目を回したように冷や汗を流している。
「………。」
「アリサちゃん?」
あまりにも純粋無垢で何も感じていない悟飯は彼女の様子に疑問符を浮かべる、だがそこまで把握するほどの余裕を持ち合わせていないアリサはぷるぷると体を震わせて静かに息を吸い込み……。
「………いやああああああああぁぁぁぁぁーーーっ!!!!」
「――うあああっ!?」
風呂場で木霊し、反響し合い更に音量がボリュームアップした悲鳴がこの場を支配し、同時に突き出された両手によって悟飯は再び湯船の中へと落とされるのだった。
「クアッ、クア〜……。」
騒動から数分の時間が流れる。何故ハイヤードラゴンがいたのか四人が思考した結果、知らない間に部屋から抜け出して悟飯を追ってきたのではないかという結論に辿り付く。
相当、悟飯に懐いている様子なのでそういう結論に至っても不自然ではなく、ハイヤードラゴンが悟飯に向かって突進してきたのが証拠と成りうるからだ。
「ダメだよ、勝手に家を抜け出しちゃ……。」
「でも、なんで此処にいるってわかったのかな…?」
「たぶん匂いだと思うけど……そうなると、あの足跡はハイヤードラゴンのものになるよね。」
地面にあった巨大な足跡を思い出せば、あの異常に大きい足のサイズの持ち主はやはりハイヤードラゴンのものだったとわかり安心する。これで危険を感じる必要もないだろう。
「ところで、これどうしよう……。」
青色の瞳はやがて大きな穴が空いた壁へと向けられる。その先には女湯である女性専用の風呂場が見え、その間が通路となって男湯と女湯が繋がってしまったのだ。
「ハイヤードラゴンがした事だからボクが旅館の人に謝るよ。」
「でも、悟飯くんがやったってお店の人は信じてくれるかな…?」
「信じてくれないよね……そういえばアリサちゃん、大丈夫?」
彼等の会話に参加していないアリサは先程の件をかなり引きずっているらしく、入り込もうとしない。僅かな距離を取って羞恥心に打ち震え今も精神的なダメージは大きかった。
しかし話自体は聞こえていた為、すずかから声を掛けられると「大丈夫」と小さく返事を返し胸元のタオルを手で抑えながら穴の開いた壁に視線を向け。
「……信じてくれなくても謝るしかないわ。」
結局、彼女が思い浮かんだ発案はそれしかなかった。他のなのはやすずかもお手上げ状態なのかこれといった案は浮かばない。
ハイヤードラゴンは人の言葉がわかるのか反省するように「クア〜…。」と元気のない鳴き声を上げて申し訳なさそうに落ち込む。ユーノは動物状態であるせいで下手に何か言えなかった。
「と、とりあえずせっかく温泉に来たんだからみんなで背中流そうよ。」
「クアッ、クアックアッ!」
「うん、謝るのはそのあとでも大丈夫…だよね。」
確かに考えた所で方法が見つからない以上、落ち込んでいても仕方がない。すずかの提案になのはとハイヤードラゴンが賛同すれば、アリサも気を取り直してずぶ濡れになった髪を二つに括り付ける。
「そうね。じゃあ———。」
金色の髪をツインテールにさせているアリサはその髪を揺らしながら呆然と見つめているユーノを両手で掴む、ユーノは突然捉まれた事に目を丸くしてアリサを見つめ返せば。
「あんたはあたしが洗ってあげる!」
「キューーーッ!!」
「じゃあ私はハイヤードラゴンの背中を流してあげるね。」
「クアークアッ!」
アリサはやたらとユーノを気に入っているが、ユーノの方は顔を真っ赤にしながらじたばと暴れており。対照的にハイヤードラゴンは嬉しそうな声を上げるとすずかは軽く微笑んでスポンジに石鹸を泡立てる。
「なら、ボクがなのはちゃんの背中流すね?」
「ふえええっ!? え、あ、その……ありがとう。」
あっさりと口に出す悟飯に戸惑いの表情を露にするなのは。同年代の男子に洗ってもらうのは恥ずかしいというのが理由だが、その相手は異性に興味がないのかと思える程純粋でアリサとの件があっても動揺すら見せず。故に彼が親切心で言ってるのが分かっているからこそ断わらずに受け入れる。
それでも最初は緊張していたなのはだったが、時間が経過するに連れて緊張が解けてきたのか互いに嬉しそうに微笑を浮かべ合う。先程の一件から気を取り直して方向性に切り替えた四人は温泉を満喫していた。
「…そういえば、あんたのパパってどんな人だったの?」
一通り流し終えると別の相手に交代する、アリサが悟飯の背中を洗っている間に思ったことだった。
前に家族について話を聞いた事があったがその時の悟飯が言うには自分の父親はもうこの世を去っているという事しか聞いてなかった為、どんな人物なのか気になっていたのだ。
「お父さんは強くて優しくて…ボクの憧れなんだ。ボクや仲間達がピンチになった時、何度も助けてくれた。それだけじゃなくて、なんていうか側にいてくれるだけで安心するんだ。」
「側にいてくれるだけで?不思議な人なのね……。」
意外な返答でもあって予想外な答え。彼が憧れとしている父親は確かに聞いている限り、とても凄い人物なのは間違いないと思う。
「じゃあ、悟飯も父親のように強くなりたいの?」
「ううん、ボクは戦いがスキじゃないから強くなりたいとは思わないかな。でも、もし悪い奴が現れて地球が狙われた時は……。」
「その時は地球を守る為に戦う」と告げる。戦いは好まないが、大切なものを守る為なら戦う事を厭わない。“孫悟空”がいない今、自分がやらなければならないと強い決意を抱いて。
「……あんたなら守れるわよ。」
「え?アリサちゃん、今なんて…?」
「なんでもない! ほら、そろそろ上がるわよ。」
シャワーの音でアリサの呟きが耳に届かず、悟飯が尋ねればアリサはほんのりと頬を染めてプイッと顔を背ける。思わず首を傾げてしまうが「早く出ないと誰かくるかも!」とすずかの一言で早急に全員は温泉を後にするのであった。
(オマケ/脱衣所にて)
ユーノ「悟飯、君はよくあの状況で平気でいられたね。」
悟飯「あの状況?」
ユーノ「あの状況と言うのは…その、なのは達のはだ……キュ~~!!」
悟飯「ユーノ!? 大変だ!顔が赤くなってる……。なのはちゃん!ユーノが――」
三人娘「「「きゃああああっ!!」」」