真・異世界に迷い込んだ超戦士   作:blacktea

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ふぅ~あと一話で温泉編は終わる予定です、はい月を跨ぐのは確実ですね←
それと、今回は残酷な描写も若干入りますのでご注意ください。あとヒロイン交代のお知らせが「なんですってぇ!」じょ、冗談です(


第14話 少女の涙と少年の怒り

「悟飯くん!フェイトちゃん! ……え?」

 

「これは一体、何が起きてるんだ…!?」

 

 

遅れて駆けつけてきたなのはとユーノ。なのははフェイトを追いかけてる途中で結界を張っていたユーノと合流していたのだ。二人は樹木の近くで地面へと倒れて口から血を流しているアルフに目を向けては信じられない光景が広がっている事に気づく。

怒りに震えている金髪の少女と地面に倒れているボロボロの悟飯。そして身の毛がよだつほどのおぞましい闇色のオーラに包まれた異型の生物が其処にいた。

 

一瞬で彼女達はこれまでにない危機感を本能的に捉える事ができたのだ。今までは悟飯がいてなんとか立ち向かう事ができたが、この状態は正に悟飯が押されており前回の事件とは比べ物にならないほどの非常事態である。

 

 

「あいつは、暴走したハイヤードラゴンよりもっと危険な奴かもしれない。」

 

「悟飯くんでもあんな状態って……。」

 

 

言葉では言い表せない範疇を超えてしまった絶望感が過る。本当はどうにかしなくてはいけない事態ではあるが目の前の敵を見ていると無力感にも襲われてしまう。

 

 

「よくも……よくも、アルフを…!!」

 

 

だがそれ等を超える怒りがフェイトの胸の内に湧き上がってくる。邪悪なオーラを纏う凶悪な生物を視界に入り込めば更に増強される怒りに漆黒の斧を握り締めたまま震え出す。

 

 

「(まずいっ!完全に逆上して周りが見えなくなってる…!)なのはちゃん!フェイトちゃんを連れて遠くに避難して!!」

 

「う、うん。わかったよ!ええっと、その…フェイトちゃん!ここは危ないから逃げ……。」

 

「うわあああああーっ!!」

 

 

その怒りは周辺に撒き散らしているようにも見え、他者を精神的に威圧する目に見えない何かが襲い掛かり上手く言葉を口にすることが出来ない。

 

 

「フォトンランサー、連撃!!」

 

「フェイトちゃんってば…っ!」

 

 

完全に周りの声などシャットアウトされており、フェイトは斧を相手へ向ければ次々と金色の魔法弾を高速の勢いで撃ち続ける———が、合体セルに触れる前に蝋燭の灯火が消えるようにかき消されてしまう。

 

 

「フハハハハ!無駄だ。この魔力オーラがある限り貴様の魔力攻撃はオレには効かん。」

 

「魔力オーラ?」

 

「———魔力オーラだって!?」

 

「ゆ、ユーノくん!魔力オーラって……。」

 

 

――“魔力オーラ”合体セルが纏う邪悪な闇色の炎の正体がそれなのだ。未だ驚きを隠せない様子でユーノは語り始める。

 

 

 

「魔力オーラっていうのは一定の魔力さえあれば誰でも使えるんだ。そのオーラを纏っている間は身体能力や技の威力が上がったり、自分の魔力より低い魔力の攻撃ならオーラが打ち消してくれる。でも、長時間使用すれば魔力消費が激しくてあまり実践じゃ使われないんだけど……。」

 

「もしかして、ジュエルシードのせいで……。」

 

「よくもアルフを…!許さない、許さない…!!」

 

 

突如、強大な金色の魔方陣が出現すると凄まじい魔力を使用しているのか周辺が電撃音に包まれていく、何度も轟く雷鳴の音にユーノは余計に焦りを覚えてしまう。

 

 

「まずい…なのは!無理矢理にでも此処から離れさせよう!」

 

「そうだねユーノくん。フェイトちゃん、ごめんね。ちょっと強引な事するよ…!」

 

 

すぐに彼女の詠唱を邪魔するように腕を引っ張れば魔方陣が消滅する。それでもフェイトは抵抗して「離して!!」と暴れるがなのははなんとか強引に反抗する手を抑えながらその場から連れ出そうとする。

 

 

「何処に行くつもりだ未熟な魔導師……。」

 

「――えっ!?」

 

 

だがそれよりも速く彼女達の背後へと怪物は回り込んでいた。間近で対面するとフェイトの表情が険しくなる。

 

 

「お前だけは絶対に許さない!!アルフの仇だ……っ!!」

 

「フェイトちゃん落ち着いて…!」

 

「そうら、防いでみろ。」

 

「危ないッ!なのは!フェイト!!」

 

「「———っ!!?」」

 

 

放たれた複数の闇の気弾に対してなのはは光り輝く桜色のバリアを発生させる。ユーノの叫びで彼女達が気がつけばすぐに対処できる体制へと入っていた。

しかし気弾は防御魔法を容易に破壊し恐ろしい衝撃音と共に軽い爆発が二人を巻き込む。

 

 

「きゃああああああぁぁぁぁぁっっ!!!」

 

「うわああああああああああっっ!!!」

 

 

防御魔法を使用した事と合体セルが遊んでいたおかげで威力は下げられているとしても、並の威力ではなかった。

そのまま大きく吹き飛ばされたなのはとフェイトはそれぞれ別の位置へと叩きつけられる。

 

 

「う…くぅ!フェイトちゃんを早く避難…させ、ないと…っ!」

 

 

起き上がろうと身体に力を入れるも思うように力が入らない、それどころか激痛が更に悪化する始末。意識は保っていられるがそれでも体が起き上がらなければ意味がない。

近くには少女が持っていた漆黒の斧が自分達と同じように地面へと倒れていた。意識が途切れそうなほどの全身からくる苦痛を耐えながらもフェイトを探そうとする。

 

 

「なのは…!今すぐ治療するから……っ。」

 

「ありがとう。でも、フェイトちゃんは…?」

 

「うわあぁぁ…ぐっ、うぅ…!」

 

「おっと、お楽しみはこれからだ。」

 

 

目を向けた先には倒れているフェイトの長い金色の髪を掴んで無理矢理持ち上げながら浮遊していく合体セルの姿が。目も当てられない悲惨極まりない状況に絶句してしまう。

常識を飛び越えた弱肉強食の世界を改めて嫌というほど実感させられるが、だからこそこみ上げてくる怒りは我を忘れさせてしまうほどである。

 

 

「あ…あぁぁ……。」

 

「フェイトちゃん!」

 

「なにをする気だ!!」

 

 

おぞましい巨体と彼から放たれる威圧にフェイトはさっきまでの怒りが嘘のように消失して恐怖で全身が震え上がるが、合体セルは容赦なく鋭い爪を煌かせ彼女の漆黒の衣装を切り裂いていく。バリアジャケットが破壊されたせいで抵抗力は殆どなくなったと言えるだろう、切り裂かれた部分からは肌が露出され血が滲みでる。

 

 

「うっ、あああ…っ!」

 

「安心しろ、すぐには殺さん。じわじわとオレの気が済むまで痛めつけてやるまではな。」

 

 

身体を固定されたフェイトの腹部に剛腕な拳が打ち付けられる。それは一度で終わらず何度も何度も繰り出されていく、鈍い音を響かせながら。

 

 

「酷すぎる……。」

 

「いやああぁぁ!!」

 

 

目の前の痛ましすぎる風景におぞましさも感じてしまう。恐怖が体を強張らせて余計に身動きを取れなくさせてしまうのだ、あまりにも悲惨な状況は幼い少女には精神的にも辛すぎる面があった。

 

 

「やめろっ! どうしてこんな酷い事をするんだ!!」

 

「どうしてだと? ふん、気に食わんからだ。オレ達は奴隷のようにコキ使われる毎日。途中で力尽きればすぐに新しく生み出せばいいだけの存在。だがこいつだけは特別扱いされている…――同じ存在であるにも関わらずにだ。」

 

「なんだって!?」

 

 

怪物の口から出た言葉は予想だにしないものだった。同じ存在?いや、それよりも相手は昔からフェイトの事を知っていたのか……フェイトは彼等を知っているようには見えなかったが。

 

 

「くっくっく、今までは仕方なく従っていたがその必要もなくなった。此処で貴様等を始末したらオレがこの世界を支配してやる。」

 

「うわああ…!! うあっ、ぐっ…!ぐう…ぁ…。」

 

 

フェイトの悲鳴が届く度に「ぎぎぎ…。」と歯を食いしばる悟飯。自分勝手な理由で罪のない少女を痛めつける行為と未だに自分の体が動いてくれない事に怒りが溢れてくる、悪意に満ち溢れた巨体に無力感を抱けば抱くほどそれに反比例するように膨れ上がっていく。無意識の内に純白の星を強く握り締める。

 

 

(くそっ!フェイトちゃんは無抵抗なのに……ボクがパワーを引き出すことさえできれば。)

 

 

今すぐにでも助けにいきたい。だが力を引き出そうとすれば直ぐに激痛が襲い掛かってくる。

いくら我慢してもそれは抗えず全身を震えさせながらも終わらない暴力を眺める事しかできずにいた。

 

 

「っぐ…レイジングハート……。」

 

「駄目だなのは!今魔法を使ったらなのはの体が……。」

 

「でも、このままじゃフェイトちゃんが…!」

 

「う…ぎぎ……やめろ…やめろ……。」

 

 

フェイトは口から血が流れ出しながらも必死に耐え続けてる、いっそ意識がなくなった方がどれだけ楽なのか。

幾度も少女の小さな腹に手加減された怪力が押し当てられる、しかしフェイトからすれば充分すぎるほどの威力を持ち合わせており生死を彷徨わせる事ぐらいは容易だった。

 

 

「ギーッヒヒヒィ!もっと苦しめ、泣き叫べ。」

 

「かあ…さん……。」

 

 

蹂躙し続けた醜い化け物は爽快そうな声を上げる。フェイトは嘔吐感や酷い激痛も何故か感覚がなくなる錯覚を覚え、拳が腹へ打ち込まれる時間も遅く感じていた。自身が最も愛する母親の姿を思い浮かべながら瞼を閉じて、一粒の涙が零れ落ちていく———。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっっっ!!!」

 

 

———刹那、その空間内を支配するのは少年の絶叫とも呼ぶべき声。今まで以上に最後の体力を振り絞って全ての感情が込められた空間内を制圧する叫び声が木霊していた。

同時に体内に痛みが発生するが彼の叫びが止むことはなく、更に秘められた力は上昇していく。それに反応して銀色の光が星型の石から溢れ出していけば気と混ざり合い体内で起こる激痛は止まり使い物にならない筈の全身を起き上がらせ立ち上がる。そして光は衝撃破となって樹木や地面を破壊的に制圧する。

 

 

「きゃあああっ…!? ご、悟飯くん…!」

 

「そんな!結界が…!?」

 

 

地面を無造作に抉り取り、樹木をなぎ払っていく凄まじい衝撃破によって魔力結界が崩壊し、銀白の光と金色の炎が悟飯自身を包み込んでいき———。

 

 

「ぬおお……っ!?」

 

 

眩しさのあまり合体セルはフェイトの髪から手を離してしまう。魔力を扱う力も体を動かす力も残ってないフェイトはそのまま地面へと落下して地面に体を打ち付ける――筈だった。

 

 

(あたたかい……。)

 

 

全身を包みこむ温かな感触がフェイトの意識を呼び覚ます。前にも似たような事があった、逆上した男に突き飛ばされて海へと落下した時だ。その時も今のような感覚を得ていたが今回はそれ以上に温かく、心地よい気分になって……。

 

 

「ご…はん……?」

 

 

虚ろな意識の中、見上げた先にいたのは先程までの黒髪の少年ではなかった。重力に反して細かく逆立った金髪、垂れ下がる長い前髪から覗かせるのは敵を見据えるエメラルドブルーの瞳。

 

 

「姿が変わった!?」

 

「あれが悟飯くんなの?」

 

 

なのはとユーノも変わり果てた少年の姿に動揺を隠せずにいた。身に纏う黄金の炎とバチバチと飛び散らす稲妻状の火花。更に衣装は先程までのボロボロの浴衣ではなく紫に染められた道着に肩まで幅がある純白のマント、両腕には白い星形の紋様が描かれた青いリストバンド。明らかに以前までの悟飯とは違う。

 

 

「ふん…少しはパワーアップしたようだな。だがそれでもオレの方が上だーーッ!」

 

 

すかさず合体セルは闇色の炎を纏い二対の羽を広げてフェイトを抱えた悟飯に突撃する。アルフを襲撃した時とは比べ物にならない程の音速を超えた速度、常人はおろか達人でも捉える事のできないスピード。悪意を剥き出しにした怪物が大気を切り裂いて迫りくる。

 

 

「フハハハハ…――――ぬおおおおおおおおぉぉぉぉっっ!!!??」

 

 

しかし、彼等の眼前まで接近した所で合体セルの体は吹き飛ばされる。見えない衝撃波によって。

一瞬、何が起きたのか理解できなかった。なのは達からみれば突如合体セルが悟飯達の前に現れたかと思えば弾き返されるように吹き飛ぶ不可思議な光景。

 

 

(今のって……。)

 

 

只一人、悟飯に抱えられたフェイトだけがこの現象を捉えていた。合体セルが接近した瞬間、真下から風圧が発生していたのだ。そして少年の立ち位置が変わっていた事から恐らく目にも止まらない爆発的な速度を持った怪力を誇る蹴りを浴びせたのでないかと考える。それも合体セルの速度よりも速く。

 

 

「……なのはちゃん、フェイトちゃんを。」

 

「え!? あ、うん……。」

 

 

なのはにフェイトを預けると悟飯はゆっくりと歩き始める、より一層黄金の炎を猛らせながら。

彼がいる周囲だけは深い闇に覆われていても明るく照らしだす。そしてその瞳に写るのは関係のない者を巻き込み、戦意のない少女を痛みつけて快楽を得る怪物。

 

深い闇に覆われた空間の中、マントをなびかせる少年は黄金の炎と共に威圧感を纏い。

 

 

「これ以上、お前のスキにはさせない!」

 

 

怒りの籠った鋭い眼光を放つ。―――此処に今、限界を超えた“超戦士”が次元を跨いで異世界に姿を現すのだった。




(オマケ/その頃の恭也くん)

恭也「はぁ~やっと忍から解放された。さて、寝不足になる前に寝るか。」

士郎「恭也、お前も大変な目にあったんだな……。」

恭也「父さん!お前もって事はまさか父さんも……?」

士郎「ああ、あの足跡の事で相談があるからってさっきまで女将さんの部屋に行ってたんだけど、戻ってきたら桃子が不機嫌になってて。」

恭也「いや、それは不機嫌になるだろ。」

士郎「此処の女将さんとは昔からの馴染みだし、桃子もわかってくれると思ったんだけどなぁ。」

恭也「女心は複雑なんだろうな…。」

恭也&士郎「はぁ~……。」
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