そういえばDB新作映画の円盤が出るようなのでようやくもう一つの方も動かせますね。更新日は不明ですけど(
あ、話には関係ないですが、自分はハーレムより修羅場の方が好きです。
「むぅ~~。」
悟飯と別れてから既に30分が過ぎていた。あれだけ五月蠅いくらいに騒いでいた子供達の声もヒーローショーが終わった事で静かになり、夕方になるに連れて人混みも減り始めていく。
「何回かけても繋がらないし、これじゃ携帯持たせた意味がないじゃない。」
最近の悟飯は単独行動する事が多くなりがちな為、その対策も含めてデパートを回ってる時に家電売り場で携帯電話を購入したのだ。これなら互いに離れていても連絡が取り合えるから安心できると考えて。
だが実際に電話をかければ繋がらず、メールを送っても返事はなくアリサの苛立ちは募るばかり。
「はぁ~、もうこれ以上は…―――!?」
いい加減待つのが限界になって腰を上げようとすれば、不意に携帯から着信音が鳴る。慌ててバッグから携帯を取り出すと孫悟飯の名前が表示されていた。
彼から着信が来た事で仏頂面だったアリサの表情はほんの少しだけ柔らかくなりすぐに携帯を開き通話に入る。
『もしもし、アリサちゃん?』
「遅ーーーい!! いったいどんだけ待たせるつもりよ! 全然連絡来ないから心配したじゃないの。」
『う、ごめん。ちょっと色々あって……。』
「色々? なに、またなんかトラブルに巻き込まれてたとか?」
『えっ!? なんでわかったの?』
「……勘よ。」
すぐに連絡がこなかった時点である程度は予想出来ていた、ただそうだとわかっていても連絡して何の反応も返って来なければ嫌でも心配になる。
『あ、けど危険な事とかじゃないよ。ただ、もう少し時間が掛かりそうだから先に帰っててもらえないかな。』
「そんなに掛かるの? しょうがないわねぇ~だったら終わるまで待っててあげるわよ。」
『え? でもアリサちゃんに悪い『悟飯くん、何やっとるん?』わあぁっ!?』
通話中に聞こえてきた少女の声。その声は確かに悟飯の名前を呼んでおり、思わず眉を顰める。
「悟飯、今のは……。」
『えっと、なんでもないよ! と、とにかく遅くなるから先に帰っててね!』
「ちょっと! 悟飯まちなさ―――」
追求する前にプツンと通話が途切れる。それから直ぐに悟飯に掛け直すが電源が入ってないのか電波の届かない場所にいるのか繋がらず。
(あやしいわね……。)
明らかに悟飯の様子は変だった。自分を気遣って言った言葉だとしても何処かよそよそしい。
更に通話中に聞こえた少女の声は悟飯に話しかけていた、それも親しそうに。その直後に悟飯が慌てだして……。
「ふ、ふふふ……どういうことか説明してもらうわよ! 悟飯!!」
自分なりの予測を立てたアリサは携帯を握りしめたまま勢いよく立ち上がる。そして怒りに燃えた瞳を灯しながら屋上を飛び出していくのであった。
「ありがとうございましたー。」
「うーん、やっぱりデパートやと高いなぁ。品揃えは悪くないんやけど。」
レジで会計を済ますと買った商品を袋に入れながら少女の呟きに耳を傾ける。彼女の言う通り値段は高いが品揃えは豊富で必要な食材は全て手に入れる事ができた。
時計に目を向ければ30分以上経過しており、食品売り場は買い物客達によって混み始めている。
(アリサちゃんには悪い事しちゃったかな。)
名前を呼ばれた事が気になってちょっと確かめに行くだけだった筈がどうしてこのような状況になってしまったのか?本来ならば普通にアリサと買い物を行って帰宅している頃だ。
携帯を通じて連絡はしたが、あの様子だと納得してもらえないだろう。家に帰ったら改めて謝罪する事に決めて作業に集中する。
「ほんまにごめんなぁ~わたしのワガママで買い物に付きあわせてもうて。」
「大丈夫だよ。でも、いつもこんなに買ってるの?」
「そうやな。少し前まではそんなに買わんかったけど、悟飯くんが来てからはこんな感じや。せやけど、たくさん食べるから食費が掛かってな。最初の頃なんか一週間分の食料を一日で食べ尽くしたんやで。」
深いため息を吐きながら愚痴を言う少女に苦笑を浮かべる事しかできず。いくら自分が人並み以上の食欲を持っていても流石に食料が尽きるまで食べたりなどしない。彼女の記憶にある自分はよっぽどお腹が空いていたのだろうか。
こういった事も含めて車椅子に乗る少女――八神はやては悟飯について詳しかった。これまでの会話からわかった事はもう一人の悟飯は“背丈や体格が同じで声もそのまま”、“頭が良く正義感が強い”“大食いで力持ち”等。ほとんど今の悟飯と条件が一致していた。
「それにしても、本当にそっくりやな。最初全然気づかんかったで。」
ただもう一人の悟飯には額や頬に傷跡があり一人称も違う為、買い物中での会話で違和感を感じたはやては一緒にいる悟飯が別人だと気づいたのだ。
又、もう一人の悟飯ははやてが出会った時から記憶を失っているらしく名前以外はまったく覚えていないらしい。現在ははやての家で暮らしている。
(もう一人のボクか……一体何者なんだ。)
――もう一人の自分が何者なのか?何故この世界にいるのか?考えれば考えるほど疑問だけが深まり続ける。
「もう少し待ってればあえ―――」
「あっ! 悟飯くん!!」
聞き覚えのある柔らかい声と共に此方に近づいてくる足音、その声と音に反応して振り返ると。
「なのはちゃん!」
片手に買い物袋を持ったなのはが駆け寄ってくる。知り合いに会えたからなのか嬉しそうな表情を浮かべながら。
「どうしたのなのはちゃ……え? 悟飯くん?」
続いて買い物袋を持ったすずかがなのはの後を追う形で歩いてくるが彼女の方は悟飯の姿を捉えると目を丸くしていた。原因は彼の着ている大人びた衣装にあるのだが当の本人は気づいておらず二人に「こんにちは」と挨拶を交わす。
「なのはちゃんとすずかちゃんも買い物に来てたんだね。」
「うん、おにーちゃんと忍さんも一緒だよ。今は別行動中なんだけど。」
「二人のデートを邪魔しちゃ悪いから」と答えるなのはに対してすずかはきょろきょろと辺りを見回す。まるで何かを探しているかのように。
「ねえ悟飯くん、アリサちゃんは一緒じゃないの?」
疑問を投げかけるすずか。元々、アリサと悟飯が今日一緒に出掛ける事を知っていたからこそ出た言葉で、彼女の姿が何所にも見当たらない事を不思議に思っていた。
「あ、うん。さっきまでは一緒だったけど、今は家に帰ってるんじゃないかな。」
「え? 一人で!?」
「もしかしてケンカでもしたの!?」
驚いた表情で問い詰めようとする二人に困惑しながらも、とりあえずこうなった経緯を一から順に説明していく。その際にはやての紹介も加えながら。
「よろしゅうな、なのはちゃん、すずかちゃん。あと、わたしの事は名前で呼んでもええよ。」
「わかったよ。じゃあ、はやてちゃんって呼ぶね? 私の事もすずかでいいから。」
「よろしくね、はやてちゃん。わたしもなのはでいいよ。」
互いに自己紹介して間もないのに仲良く雑談する三人の少女。そんな三人を見つめながら少しだけ羨ましそうな表情を浮かべる悟飯だが彼女達の視線が自分に集まると改めて状況を説明する。
「つまり、はやてちゃんの買い物に付き合う為にアリサちゃんを帰らせたってこと?」
「それもあるけど、一緒に待ってればもう一人のボクに会えると思ったんだ。」
悟飯がアリサを帰らせてまで残った本当の理由―――それはもう一人の自分に会う為。
はやての買い物に付き合ったのもそれが関係しており、どうしても直接会って話をしたかったのだ。純粋に興味があったというのもあり、もしかしたら元の世界に帰る手がかりを持っているかもしれないとも考えて。
「そのことアリサちゃんには話したの?」
「話してないよ。ボク個人の用事にアリサちゃんを巻き込むのは悪いと思ったから。」
アリサにはトラブルに巻き込まれたとだけ伝えてある。それだけでも心配かけているのに本当の事を話せば彼女は自分に着いて行くと言いかねない。フェイトの母親の元に向かうのを反対した時のように。
「そうなんだ。悟飯くんに悪気がないのはわかったけど、アリサちゃんには謝った方がいいよ。」
「うん、そのつもりだよ。許してくれるかはわからないけど。」
「きっと許してくれるよ。アリサちゃん優しいから。」
「なんかごめんなぁ~。わたしの所為で折角のデートを邪魔することになってしもうて。」
知らなかったとは言え結果的に彼等の時間を潰してしまった事を申し訳なく感じ謝罪するはやて。
彼女が悪い訳ではないので「気にしないで」と悟飯は優しく言葉を掛けるが、それでも責任を抱いてしまう。そして発端となったもう一人の悟飯は未だ戻ってくる気配がなくはやての心に少しずつ不安が芽生えていく。
「あ、私の携帯が鳴ってる。ちょっとごめんね。」
不意に明るいメロディが周囲に鳴り響けばすずかは荷物から携帯電話を取り出し一言断りを入れてから電話に出る。
「もしもし『すずか!今、何処にいるの!!』お姉ちゃん!? いきなり大声出さないでよ。」
電話の相手は姉の忍から、しかし何処か焦っている様子でキーンと響く大声は悟飯達の耳にまで届いてきていた。
『ご、ごめん……それで、今何処にいるの? 後なのはちゃんとは一緒?』
「今は1Fの食品売り場でなのはちゃんも一緒だよ。」
『食品売り場ね。なら、すぐに迎えに行くから其処で大人しく待ってなさい。』
「う、うん……。」
普段とは違って深刻そうに話す忍。その雰囲気に呑まれて素直に頷くすずかだが、内心はなにかあったのかと気が気でならない。
「すずかちゃん、さっきから顔色が悪いけど大丈夫かな……。」
「もしかして、おにーちゃんとなにかあったのかも。」
「少なくともただ事でないというのは確かやな。」
内容は分からずとも重い雰囲気は伝わってくる。それ故に彼女達が何を話しているのかと気になりながらも通話が終わるのを待つ。
『ん?今声が聞こえたけど他にも誰かいるの?』
「うん、悟飯くん達が一緒に『嘘っ!?』きゃっ! きゅ、急にどうしたのお姉ちゃん。」
悟飯の名前を言った直後、再び携帯越しから忍の声が大きくなりすずかは驚いて目を見開く。
『だって、悟飯くんは恭也と一緒にアリサちゃんをさらった男を追いかけてる筈なのに。』
「え!? お姉ちゃん、今アリサちゃんがさらわれたって……。」
「アリサちゃんがさらわれた!?」
すずかの口から出た言葉に驚きを隠せない悟飯。アリサには家に帰るよう伝えた為、とっくに帰っているとばかり思っていた。それなのにどうして………。
(僅かだけどアリサちゃんの気が感じられる。まだデパートの中にいるみたいだ……それにこの気は―――!?)
アリサの気を探ると同時に感じた気。その気は悟飯が持つ気とまったく同じものだった。
他にも恭也や知らない気を二つ察知するが、恭也の気はアリサと同様に僅かしか感じられず。
「……ごめん! ボクちょっとトイレに行ってくる!!」
「―――悟飯くん!」
何か嫌な予感を感じた悟飯はトイレに行くと伝えて駆け出して行く。せめて周りに心配かけないよう配慮したのだろう。余程急いでいるのか買い物袋に入れられた商品は床にばら撒かれた状態で。
だが、悟飯が向かった方角はトイレとは真逆の通路で、鬼気迫った彼の様子からアリサを助けに向かったのだろうと気づいたなのはは二人に向き直り。
「にゃはは、悟飯くんトイレの場所わからないみたいだから教えてくるね。すぐに戻ってくるから二人はここで待ってて!」
そう告げるとなのはも悟飯の背中を追うように駆け出して行く。残されたすずかとはやては突然の二人の行動に呆然と佇む事しかできず、携帯越しからは忍の声だけが響くのだった。
(おまけ)
すずか&はやて「………。」
忍『すずか?聞こえてるの?』
すずか「え? あ、うん聞こえてるよ。それよりお姉ちゃん、アリサちゃんがさらわれたって本当?」
忍『……ええ、でも大丈夫。恭也が助けに向かったし警察にも連絡したから。』
はやて「なぁ、すずかちゃん。悟飯くんとなのはちゃんは何処に行ったんやろうな。」
すずか「……少なくともトイレじゃないと思うよ。」
忍『え!? すずか、悟飯くんとなのはちゃんがどうしたの!』