あと、この話から非日常編と入ります。そしてヒロインは「ギロッ!」それは読んでからのお楽しみということで……
それではどうぞ~
デパートでの騒動から数日経った日の朝、高層マンションの屋上にフェイトとアルフは佇む。彼女達はこれから母親が待つ別の空間へ向かう予定で共に同行する悟飯が来るのを待っていたのだ。
しかし、集合時間が過ぎても悟飯が来る気配はなく、不安な気持ちがフェイトの表情に押し寄せてくる。
「悟飯、どうしたのかな……。」
「集合場所と時間は伝えた筈なんだけどねぇ。もしかしたら、あのアリサって子に引き止められて来ないんじゃないのかい?」
「……そっか。それじゃ私達だけで行こうか。」
「え? じょ、冗談だよフェイト!さっきのは冗談だって!」
冗談のつもりで言った発言を真に受けるフェイトにアルフは慌てて告げれば、「たぶん此処からじゃあたし達の姿が見えてないんだよ」と言葉を付け加える。実際、このマンションは周囲の建物を見渡せる程高く周囲から彼女達の姿を捉える事は不可能なのだ―――空からでも見下ろさない限りは。
「フェイトちゃーーん!アルフさーーん!!」
風に流されて聞き覚えのある声が二人の耳に入ってくる。フェイトが空を見上げれば此方に向かって飛翔する少年の姿が視界に映り、少年は降下するとフェイトとアルフの元へと歩み寄る。
「悟飯…!」
「遅かったじゃないか! 何かあったんじゃないかと心配してたところだよ。」
「遅れてすみません。ちょっと寄る所があったので……。」
二人が心配してたと聞けば悟飯は申し訳なさそうに謝罪してから遅れた理由を説明する。
悟飯が寄った場所は人気のない公園、そこでユーノと会う約束をしていた。話だけなら念話でも良かったのだが、今回はどうしても確認したい事があったのだ。
それはデパートで遭遇したもう一人の自分と彼が所持していた宝石。あの時は色々有りすぎて其処まで頭が回らなかったが、事が落ち着いて思い返してみるともう一人の悟飯が所持していた宝石は自身が拾った星形の宝石と瓜二つだった。故に直接確認したいとユーノに頼んで持ってきてもらったのである。
「じゃあ、これが悟飯のデバイスなんだ。」
「うん、ボクが持ってた方がいいってユーノが返してくれたんだ。それで、使い方を教わってたら時間が掛かっちゃって。」
「だから来るのが遅かったんだね。ねえ、さっそく使って見せておくれよ。」
「え?今ですか?」
「駄目だよアルフ、悟飯が困ってるよ。」
期待した表情で要求するアルフに悟飯は戸惑いを露にするが、フェイトから注意されると渋々ながらもアルフは諦める。そんな彼女に悟飯は機会があったら見せると告げてこの話を終わりにさせた。
「そろそろ行かなきゃ……二人とも準備はいい?」
「あたしはいつでもいいよ」
「ボクも大丈夫だよ。」
フェイトは箱に包まれたケーキセットを両手で持つと同時に僅かに薄く微笑んでいた。初めて出会った時の冷たい印象と比較すればフェイトは感情をよく表に出すようになったと感じられる。それは身近にいたアルフがより強く感じていたことであり喜ばしい出来事だ。
だが今回のアルフはなぜか表情が強張っていた。
「けど甘いお菓子か。本当にあの人は喜んでくれるのかねぇ……。」
「わからないけど、こういうのは気持ちだから。」
「……そっか。ああ、悟飯。もう少しこっちに寄っておくれ。」
「あ、はい!」
アルフはケーキセットをフェイトから受け取ってじっと見つめるが表情は曇ったまま。二人の会話を聞いていた悟飯はアルフの表情に違和感を抱くも、近づくように言われて彼女達の横に移動して立つ。
そしてフェイトは次元転移魔法の呪文を口にしながら唱えていき彼女特有の金色の魔方陣が地面に浮かんで効力を発揮させる。
「開け、誘いの扉…『時の庭園』。———テスタロッサの主の元へ!」
金色の光が煌き魔法陣内にいる三人を包み込み、光が消失した後には彼等の姿は其処になかった。
(此処が時の庭園か……明らかにこれまで見てきた場所と雰囲気が違う……。)
気が付けば悟飯達は別の空間に転移していた。柱が何本も建てられ先程までいた場所とは明らかに雰囲気が異なる建物内だ。だがその建物の雰囲気は決して良いと判断できる物ではないと悟飯は感じていた。禍々しく不気味な雰囲気に包まれた『時の庭園』と呼ばれし場所は自然と警戒心を呼び起こさせる。
そのまま暫く歩くと目の前には巨大な扉が立ち塞がった、彼女達が足を止めた事から此処にフェイトの母親がいるのだろう。
「悟飯とアルフは此処で待ってて、私が先に母さんに挨拶するから……。」
「わかった。」
「フェイト、気をつけるんだよ。」
やはりアルフの様子が可笑しい、胸騒ぎにも近い悪い予感だけが胸を埋め尽くす中でフェイトは微笑を浮かべながらその扉を開いて部屋の向こうへと行ってしまう、フェイトが見えなくなると扉は音と共に完全に塞がれた。
「ドラゴンボールは合計で四つか。あれだけ集めておけばきっと大丈夫なはず……。」
「あの、アルフさん。フェイトちゃんのお母さんってどんな人なんですか?」
フェイトの母親について尋ねてみる。フェイトは慕っているようだったが、アルフからはこれまでの発言や態度を見る限り母親を好ましく思ってないように感じられたのだ。
「フェイトは優しい母親だって言うけど、あたしはあいつが嫌いさ。」
それだけ言うと思い出したくもないといった風にアルフは言葉を閉ざして何も喋ることはなかった、これ以上悟飯も質問することができずに静寂が流れ込んでいく。
「———きゃあぁぁっ!!」
「今の声は…!」
「フェイト…!!」
扉越しから見慣れた声の主の悲鳴と体に衝撃を与えたような衝撃音が一気に耳元へと届き、それは一度で終わることはなく二度も三度にも渡って繰り返される。
アルフは自身の耳元を扉に密着させて内部の声を聞き取ろうと試みるがそれでも上手くいかない。僅かに話し声が聞こえるが何を言っているのかまったく聞き取れず、助けに向かいたくても扉が固く閉ざされて苛立ちが募っていく。
「くっ、フェイトが苦しんでるのに何もできないなんて……。」
「アルフさん、下がっててください。」
「え? あ、ああ……。」
怪訝な表情を浮かべるがアルフはすぐに扉から距離を置く。そして悟飯が巨大な扉に手を添えた直後――
「はっ!」
掛け声と共に衝撃波が巻き起こる、凄まじい暴風が一気に空間内を制圧すると同時に固く閉ざされた扉を強引に開かせてしまう。そのまま進んで二人の視界に入り込んできたのは巨大な部屋と魔力の紐で縛られた傷だらけのフェイトの姿―――
「……アルフ……悟飯…?」
「フェイト…ッ!?」
「フェイトちゃん! そんな……どうして……。」
身に纏っていた漆黒の衣装は引き裂かれ傷だらけの状態で吊るされていた、アルフも悟飯も予想外の事態に戸惑う中でフェイトの先に見えた女性が鋭い眼光を向けてくる。
黒衣の服を身に纏い狂気という言葉を連想させる女性がフェイトの目の前で悟飯とアルフを見下ろしていた。二人の警戒心はより高まっていく。
「躾の邪魔をしないでもらえるかしら……。」
「躾……だって……?」
拳を握り締めたまま怒りで全身を震えさせるアルフの声は敵意に満ち溢れ今にも掴みかかろうとするような獣染みた青い瞳を母親に向けていた。
だがそんな瞳を見ても母親は何も感じることがないのか冷酷とも呼ぶべき態度を崩すことはなく、冷たい視線を浴びせるのみ。
「使い魔の方も躾ができてないわね……。」
「二人とも此処から出てって!」
「けどフェイト!いくらなんでも今回は……うわあああっ!!」
怪しく煌いた紫色の魔力弾が彼女の片手に構成された事に気づいたフェイトは部屋から出るように指示したがもうその時点では遅く、魔力弾はアルフに正面から激突して爆発を引き起こしてしまう。耳障りな爆発音と共に場を包み込む煙が舞い上がりアルフは後方へと大きく吹き飛ばされていた。
「アルフさん!!」
「あたしは大丈夫! それよりフェイトを…っ!」
壁に激突したまま平気だと答えるアルフの言葉を聞くと、再び女性の手から鞭がフェイトを狙って振るわれたのに気付き悟飯は咄嗟に彼女の前に立ち鞭を掴みとる。
「……何のつもりかしら。」
「もう止めてください! いくらなんでもやり過ぎですよ!」
真っ直ぐな視線を女性に向ける。親が子供の躾をするのは普通だが、彼女は躾の域を超えていた。拘束されて身動き取れない子供を一方的に鞭で叩きつける行為、そのやり方が悟飯には許せなかったのだ。
「フェイト、どうして部外者を連れて来たの?」
「そ、それは……。」
「ボクがフェイトちゃんのお母さんに会いたいと頼んだからです。聞きたい事があったので……。」
「聞きたい事?」
「悟飯はあんたが集めろと言ったドラゴンボールがある世界から来たんだよ。」
よろよろとフェイトを守るようにアルフが悟飯に並んで告げては、女性の眉がピクリと反応し鞭が杖に変化するのと同時に魔力の紐が消滅しフェイトの拘束が解かれる。
「そう……あなたが異世界から来たサイヤ人の子供ね。」
「――なっ!?」
「え? 母さん悟飯の事知ってるの!?」
まだ話してなかった故に困惑に満ちた瞳で問うフェイト。だが女性は少女の質問には答えずただアメジストの瞳を悟飯に向けていた。
「まぁいいわ。それで私に聞きたい事と言うのはドラゴンボールの事かしら?」
「……はい、どうしてこの世界にドラゴンボールがあるのですか?」
「それは私にもわからないわ。」
「じゃあ、ドラゴンボールの存在を知ってたのは……。」
「あなたと同じ異世界から来た人物から聞いたのよ。ドラゴンボールを七つ集めれば龍が現れてどんな願いも叶えてくれると……ジュエルシードもその玉に同化してたから探す手間も省けたわ。」
「それで、フェイトにドラゴンボールを集めさせたのか。」
女性の話を聞く限りでは他にも異世界から来た者がいるようだ。真っ先に浮かぶのは自身と同じ姿と名を持つ少年。だが、名前以外の記憶を失ってるなら当然ドラゴンボールの事も覚えてないだろう、少年が嘘を吐いてなければ。
「フェイト、あなたには期待してるのよ。ドラゴンボールは七個必要なの、なのにたった4個じゃ願いが叶えられないわ。あまり母さんを失望させないでちょうだい。」
「ごめんなさい……。」
「ちょっと待ってください! フェイトちゃんはドラゴンボールを集める為に無茶な事をしましたし、危険な目にもあったんですよ。心配じゃないんですか?」
「心配? フェイトなら問題ないわ。大魔導師プレシア・テスタロッサの娘だもの。だから必ず全てのドラゴンボールを集めてくれる……そうよね、フェイト?」
「はい」と小さく答えるフェイトだがその表情は暗く、悟飯はプレシアの発言に目を疑う。
というのも母親のチチは自分が危険を伴う行為に出ようとすれば必ずといっていいほど猛烈に反対する、説得するだけでも苦労するほどに。しかしそれは悟飯を本気で心配しているからであり、母親からの愛情は充分伝わっていた。
対してプレシアはどう見ても娘の身の安全より目的を優先しており、チチとは対照的に思えた。故にフェイトに愛情を与えているのか怪しく感じられたのだ。
「そこまでしてドラゴンボールに何を願うつもりですか?」
――どんな願いも叶える、その能力を悪用しようとする者は数多く悟飯はそれらの人物に出会ったからこそ事態を深刻に受け止めてもいた。フェイトの母親は娘を使ってまで一体何を願おうとしているのか、まったく見当もつかないほど何を考えているのか想像することができずにいる。
「それを聞いてどうするの?」
「もし、悪い事に使うならボクが止めます!」
純粋なまでの揺るぎない決意の瞳がプレシアを貫く。だがそれでも臆することもなくプレシアは悟飯を眺めているだけであり、張り詰めた沈黙が二人を包み込む。
「……———いいわ、私との勝負に勝てたら質問に答えてあげる……。」
「えっ!?」
「はあっ!? いきなり何言ってるんだよ!」
突然の提案に戸惑いを隠せない。アルフが猛抗議するもフェイトの時同様無視して悟飯の手前まで接近すれば冷たい瞳で悟飯を見下ろす。
「勝負とは?」
「簡単な事よ。これから私が用意する相手と試合してもらうだけ……その相手にあなたが勝てば質問に答えてあげる。その代わり、あなたが負けたら私に協力しなさい。」
出された条件は試合して対戦相手に勝つ事。もし、負ければプレシアに協力しなければない。
そんな理不尽な条件にアルフは更に反論するが悟飯はボロボロのフェイトを一瞥してから視線を戻し……。
「すみません、一ついいですか?」
「なにかしら。」
「もうこんな酷い事は止めてください。フェイトちゃんは本当に頑張ってました、何度も危険な目に合ったのに諦めないでドラゴンボールを集め続けてたんです……お母さんの喜ぶ顔が見たいからって。それだけあなたのことを慕っているのに、こんなのあんまりじゃないですか!」
「悟飯……。」
ハイヤードラゴンや合体セルの時も危険だとわかっていながら必死になってドラゴンボールを手に入れようと奮闘していた、全ては母親の為に。その気持ちは悟飯にも伝わっておりだからこそプレシアにもフェイトの頑張りを知って欲しかったのだ。
「―――ッ!?」
刹那、プレシアの視界から悟飯が消えて幼い金髪の少女の姿が映り込む。その姿を見て目を見開くが、次に瞬きをした後には少女の姿はなかった。そして少し間を置いてから静かに口を開く。
「それに関してもあなたが勝てたら約束するわ。」
「……わかりました。」
事情を知れば考えを改めてくれるかもしれないと思ったが、今の言葉でその望みも絶たれた。あくまで勝負に勝つことが全てにおいての前提条件、負ければフェイトはまた同じ目に合うかもしれない。
悟飯は覚悟を決めるとポケットから宝石を取り出し強く握り締め――
「……セットアップ。」
小さく唱えれば悟飯の身体は発光し紫色の道着の上に白いマントを羽織った戦士の姿へと変わる。
その姿は合体セルとの闘いで見せた時と同様のもので青いリストバントには白い星形の紋様が象徴されていたが、前回とは違い金色のオーラは身に纏っておらず、髪型も金色ではなく黒髪のままだった。
(オマケ)
悟飯&アリサ「夏だーっ!!」
なのは&すずか「プールだ!」
ハイヤードラゴン「クァーッ!」
ユーノ「あ、みんな忘れてる……って、遅かったか」
子供組「わあっ!? 目が真っ赤!」
フェイト「ホントだ、私と一緒だね」
アルフ「いや、それとは違うんじゃ……」
忍「ほら、これを使いなさい」
ファリン「目に染みないからお子様にも優しいんですよ~」
恭也「む、確かに染みないな……」
ノエル「それは子供用です恭也様」
美由紀「元気に泳いだ後は!」
ロOト子供ソOト~~♪
全員「ドラリリケースに入れてねっ!」