真・異世界に迷い込んだ超戦士   作:blacktea

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第5話 バレてしまった秘密

現在、なのはと悟飯は保健室前にいる。先程のなのはの怪我は直接的ではないにしろ自分に原因があると思い込んでしまっている悟飯は罪悪感を持っていた。なのはを悟飯が背負う形で保健室の扉にノックすると小さく音が鳴り響く。

 

 

(あれ? 返事が帰って来ない……。)

 

 

だが保健室からの反応は一切ない。部屋から声が聞こえるわけでもなく、扉が開いたりもせず、その事に二人は不自然に思う。

 

 

「失礼します…。」

 

 

仕方なく悟飯は扉を開けて中へと入っていく。部屋の中に視線を向けて目的の人物である担当の教師を探すが何処にも見当たらない。

 

 

「保険の先生はいないみたいだね。」

 

「今離れてるんじゃないかな。あ、悟飯くん!そこの椅子に下ろして?」

 

 

何時までも背負い続けてるのは体力を消費する行動で悟飯が大変だと思い、異性の少年に密着している状態ではなのは自身も少し恥ずかしくなりつつあるのだ。彼女の言葉に頷くと悟飯は目に見えている椅子になのはを座らせる。

 

 

「本当にごめんね、ボクの所為で怪我を負わせちゃって。」

 

「ううん、わたしがボールに夢中になってただけだから。悟飯くんが気にする事ないよ。」

 

 

悟飯の優しい性格を裏返すように押し寄せる強い罪の意識はなのはもすぐに理解できるほど表に出ていた、故になのはは悟飯が悪いわけではないと笑顔を浮かべる。そんな彼女の言動と明るい笑顔を前にすると焦りにも似た罪悪感が悟飯の中から少し消えていく。完璧に消失したわけではないが気持ちが楽になったと形容できるほどだ。

 

だからこそ視界に入っていた包帯にも意識を向ける事ができた。近くには消毒液が入ったビン、両方ともテーブルに置かれている。すぐに悟飯は二つとも手に取り、消毒液で怪我の雑菌を消毒していき、その後に怪我をした箇所に包帯を巻いていく。

 

 

(なんだろう?なのはちゃんから気とは別に不思議な力を感じる……。)

 

 

———しかし、その作業の途中悟飯は何か唐突な違和感を感じ始める。先程まで慌てていたせいで上手く感じ取る事ができなかった何かが今では感じられた。

それは気と似たような“何か”。なのは自身から発しているおかしな何かに悟飯は変に思ってしまう。普通の人とは何かが違う力のようなものをこの少女から感じるのだ。

 

 

(アリサちゃんやすずかちゃんからは感じられなかったし、この世界の気ってわけじゃなさそうだけど。)

 

 

作業をしながら悟飯は脳内で思い返す。アリサにはこのような力は感じられなかった、すずかも同様に。他の生徒達もそれはアリサ達と一緒だ。

 

 

「ねえ悟飯くん。さっきの事なんだけど……。」

 

 

包帯を巻き終わり悟飯の作業が完了した頃、なのははそれを見計らっていたように話を切り出す。思考していた悟飯は驚いて顔を上げるがなのはが言いたい事を察知すると急に焦り始めて。

 

 

「さ、さっきのはマグ「誤魔化さないで」レ……。」

 

 

なんとか誤魔化そうとするが途中でなのはは遮るように言葉を放つ。罪悪感の次にくる感情は焦りだ、この話題を何より彼は恐れている。それを物語るように悟飯は「う…っ」と小さくぼろを出すような反応までなのはに見せてしまう、もはやこれでは通じる言い訳も通じなくなるだろう。

 

 

「えっと、だからそれは……。」

 

「お願い!本当の事を話して。」

 

 

状況が悪くなる一方で話題から逃れる方法を考えようとするが今の彼女の視線はとても純粋で強い。何か強い思いを胸に秘めたような青い瞳に思わず吸い込まれそうになる。

やがて悟飯は折れたように話すしかないと内心で決断する。アリサにどう説明すればいいかわからないが、本当のことを話さない限りなのはは自分を解放してくれないだろう。観念した悟飯は小さく頷いて口を開こうとした――その直後。

 

 

 

 

 

「なのはーーっ!!」

 

「「アリサちゃん…っ!?」」

 

 

保健室に入り込んできたのは長い金色の髪をした少女、ガラガラと扉を開けて二人の会話を邪魔するような形で入り込んでくる。悟飯からすればまた反応に困る出来事であった。

アリサが此処に来た理由は他でもない、悟飯の速度に驚いたクラスメイト達は自分でなんとかできるとしても、なのはに対して悟飯は対処できるかどうかに疑問を感じていた。

もしかしたら、言い訳する事ができなくて話してしまうのではないかと不安に思っての行動でもある、勿論なのはが心配なのも行動の理由としては大きいが悟飯の件も混じっているのだ。

 

 

「ごめんアリサちゃん。ボク、なのはちゃんに話そうと思うんだ。」

 

「えっ!?」

 

「悟飯くん……。」

 

 

案の定それはアリサにとっても恐れていた展開で、ある意味では予想していた展開になりつつある事が悟飯の言葉でわかった。なのははそれをただ見守るだけ。

予想していた展開という事もあって、自分の友達であるすずかも巻き込み、なのはのこの強い視線はもう明らかに隠し通せるほどのレベルではなくなってしまっている。

アリサは此処に来るまでの間、考えていた言い訳を切り出すこともできず、ただ暫く沈黙が場を包み込むだけ。精神的疲労を激しく感じさせる無言だったが、ついにアリサは沈黙を破り。

 

 

「……わかったわよ、何時かはなのは達に話すつもりだったし。でも話が長くなりそうだからすずかも入れてお昼ご飯の時で。なのはもそれでいいわね?」

 

「うん、わたしはそれでいいよ。」

 

 

もはやアリサ自身もお手上げだった。これから話す悟飯の経歴を二人は信じてくれるかどうかわからないが、こうなってしまっては有りのままに起こった事を話すしかないと心に決めるのだった。

 

 

 

 

——そしてチャイムの音が合図のように鳴り響き昼休みの時間が始まる。

昼休みは通常の休憩時間よりも長く、生徒が食事をしたり勉強の疲れを癒すために休憩をしたり限られた範囲内で自由な休憩方法を取る事ができる時間だ。

 

悟飯はあのドッジボールで自ら起こした移動速度の件で、クラスメイト達がそれについて噂をしてなのはの時みたいに問い詰められるのかと不安に思っていた。

だが、いざ教室へ入ってみると誰も自分のあの超越した身体能力を話題にしている者はおらず何事もなく普通に接してくれたのだ。恐らくアリサが手を回してくれたのだろう。

 

その後、クラスメートの男子に「一緒にお昼を食べないか?」と誘われたがアリサ達との約束がある為、また次の機会へと断りを入れてから急いで屋上に向かった。

 

 

「全員揃ったわね。今から話すことは信じられないと思うけど、全部真実だからちゃんと聞いててほしいの。」

 

 

アリサ達は屋上でお弁当を食べる事が日課となっている。見下ろす風景はとても綺麗であり、彼女達にとっては気持ちが楽になれるような場所なのだ。

 

 

「えっと、その前にあそこに座らない…?」

 

「…確かに立ち話もあれだしね。」

 

 

流れる風に髪が揺れる、すずかが指をさした先には青いベンチがあった。丁度、四人全員が座れそうな位の大きさである。アリサと悟飯となのははすずかの提案に同意してベンチへと向かい其処へ座っていく、自分の持っているお弁当を抱えながら。

しかし誰もお弁当に手をつけることはなく、すずかとなのはは話があると言った本人達から会話を切り出してくるのをただ静かに待つ、普段とは違う物音もない静かな雰囲気に切り出しにくさを悟飯とアリサは感じてしまい少しの間沈黙が続いていた。

 

 

「まず悟飯の事なんだけど、実は悟飯はこの世界の人間じゃないの。」

 

「「え…?」」

 

 

一番に口を開いたのはアリサだった。非現実的で信じられない言葉、思いもしなかった言葉にすずかとなのはは言葉を揃えてしまう。

アリサの話は止まることはなく、何故この世界の人間ではないのか、悟飯の身体能力について、自分と悟飯との出会い、此処に至るまでの経歴を淡々と話し続けた。

 

 

「悟飯くんが…アリサちゃんを助けて……?」

 

「正直、信じられない話だと思うけど今あたしが話したことは全部ホント。そうよね、悟飯?」

 

「うん……なんでボクがこの世界に来たのかはわからないんだけどね。」

 

「でも、これで謎が解けたかも。悟飯くん、ちょっとおかしな所あったから。」

 

 

すずかは先程のような固い表情を向けるわけもなく、柔らかな微笑を浮かべていた。まるで今までの話を聞いていて納得したように。

悟飯とアリサはその微笑を見て驚いてしまう。意外とあっさり受け入れてしまうすずかの態度に目を丸くする。

 

 

「疑ったりしないの…?」

 

「しないよ。悟飯くんと話してて、すこし浮世離れしてる所あったし…。」

 

 

此処に至るまでに彼女は悟飯と話し続けていた。何度も何度も、飽きることなく何気ない話を交わし続けて。

改めて思い返してみれば確かに悟飯は何処かおかしな雰囲気を発している。すずかはそれを直感的に見抜いていたのだ。

 

 

「それにアリサちゃん、嘘は吐かないもん。」

 

「ありがとうすずか……って、なのは!なんかボーッとしてるけど、どうかしたの?」

 

「ふえ? あ、ううん…大丈夫、ちょっと考え事してただけだから。わたしもアリサちゃんと悟飯くんのお話信じるよ。」

 

 

今まで話に入ってこなかった彼女、なのはは自分の考えていた予想を遥かに超える話に呆然としていた。特別な力を持っているところまでは予測の範囲だったのだが、まさか別の世界、それも自分達の住む“地球”と同じ名前の星から来た事には驚きを隠せない。

だがアリサはすずかの言うように嘘は吐かない。悟飯に関してもこれまでの会話で嘘を吐けない性格に思える。屋上に呼び出しておいて冗談話をする筈もない。少なくとも、この二人はそのような馬鹿げた話をするようには見えなかった。

 

 

「二人とも、信じてくれてありがとう。」

 

「どういたしまして。」

 

「じゃ、話も纏まってきたからそろそろお昼ご飯食べましょ! あたしお腹ペコペコよ〜。」

 

「うん!わたしもお腹空いちゃった。」

 

 

話が一段落すると何時も通りの雰囲気に戻る。ごく普通の生徒のお昼休みのように、全員が口を揃えて「いただきます!」と声を合わせた。

その様子は他の生徒と何も変わりはなく、昼食を楽しむ友達同士であった。血生臭い殺し合いも超越した力も非現実的な要素は決してない、ありふれて何処でも見るような光景である。

 

「この玉子焼きおいしい」とアリサが言えばすずかが「そうなんだ」と反応する。それに続いてなのはも「このウィンナーもおいしいよ」と食事の話題で持ちきりだった。

悟飯はサイヤ人の血を引いている事だけあって食事は沢山摂取するのだが、量が少ないせいもあってそこまで目立つ行動を取る事はない。

その代わり、どこか物足りなさそうな表情を見せていた。弁当箱自体はアリサよりも一段多いのだがそれでも悟飯には少なく感じる。それは種族の特性上というものであり、一番の理解者であるアリサが彼の様子にすぐに気づく。

 

 

「仕方ないわねぇ~ほら、あたしのを少し分けてあげるわ。」

 

 

そう言うと玉子焼きの入った弁当を悟飯に見せてその一つを箸で挟んで差し出す。

 

 

「え…?で、でも……。」

 

「悟飯くん、もしかして量が足りない? わたしのウィンナー食べる?」

 

「量が足りないなら、ご飯少しだけあげるよ?」

 

 

アリサの次に二人は察したようにお弁当を分け与えようとする。先程の話を聞いて以来、二人もちゃんと悟飯の物足りなさを理解しているのだ。

 

 

「気持ちは嬉しいけど……。」

 

「あーもう!人の好意は素直に受け取る!!」

 

 

それでも取りそうにない悟飯にムッとした表情を浮かべながら強引に玉子焼き、ウインナー、ご飯を彼の弁当箱に押し込み、思わずなのはとすずかは苦笑いを見せてしまう。

だが強引な方法を取らなければ、悟飯はせっかく自分に差し出されたおかずもご飯も受け取ろうとはしない。アリサの強引な手段によってようやく彼は受け取るのだった。

 

 

 

暫くの間は食事の時間。屋上から見下ろす風景の眺めの良さに感心しながら時間を費やしていく。やがて、全員がお弁当を食べ終わり教室へ戻ろうとする頃。

 

 

「あ、そういえば新しいゲームを買ったんだけど、よかったら学校がお休みの日にお家に来る?みんなでやってみたいなって……。」

 

「わたしは大丈夫だよ。おにーちゃんも忍さんに会いに行くみたいだから。」

 

「あたしも行く!なのは、その時にユーノ連れてきてくれない?久しぶりに見たいし。」

 

「うん、いいよ。ユーノも一緒に連れて行くね。」

 

(ユーノ?)

 

「悟飯、あんたも来なさいよね。まだ話してなかったけどユーノってばすっごく可愛いんだから。」

 

 

確かにすずかとなのはの話は聞いていたが“ユーノ”については初耳で、そのせいで話に入れないといった状況なのだ。更に返事をする前にアリサは勝手に決めてしまう、もはや彼女の中では確定事項となっていた。実際の所、アリサはただ単純に悟飯にユーノを見せたいだけだが。

 

 

(やっぱりアリサちゃんって、ブルマさんに似ているなぁ。)

 

 

アリサの言動や性格を思い返した悟飯は彼女が元の世界に住む知人と共通した部分を持っているように感じられた。気が強く強引であり、それでいてしっかり者であるという所や頭が良い等も含めて。性格とは関係ないがお金持ちのお嬢様という所も共通する。

思わず似た部分を持っているアリサを見ては此処に来る前の自分の世界を少し思い出してしまう。家族の事や大勢の仲間達の事を。

 

 

「ちょっと悟飯、聞いてるの!」

 

「えっ!? あ…ごめん、聞いてるよ。」

 

「……本当に?」

 

「う、うん……すずかちゃんの家に行く話だよね?ユーノを見るのも楽しみにしてるよ。」

 

 

先程まで別の事を考えていたせいですぐに反応する事ができずにいた。それを隣にいたアリサに気づかれ、ジトーと疑いに満ちた目を向けられてしまう。

悟飯は深く問い詰められる前に自分が聞いていた証拠として内容を答える。悟飯が話を聞いていた事が分かるとあっさりとアリサは身を引き、先程の会話の続きが始まる。その結果、彼等が教室に戻ったのは次の始業ベルが鳴る三分前だった。

 

 

 

 

 

「じゃあな孫。」

 

「ばいばーい!」

 

「また明日ねー。」

 

 

時間は経過していき、全ての授業が終了した頃。放課後になって大勢の生徒達は帰宅に入っていた。悟飯もクラスメートに別れの挨拶を返した後、帰宅準備をして昇降口前で待つアリサ達と合流。そして今は帰り道、三人の少女と一人の少年が雑談を交えながら並んで歩いている。

 

 

「悟飯くん、わたし達はこれから塾があるの……。」

 

「だから、この先の曲がり角でお別れかな。」

 

「そうだった!悟飯、あんた一人で帰れる?もし道がわからないなら地図を描いてあげるわよ?」

 

「大丈夫だよ。家までの道は覚えているから。」

 

 

すずかとなのはの声一言で全員の足が止まる。アリサはすっかり忘れていたがこの後、彼女達は塾に向かう予定なのだ。慌ててカバンを開けようとするアリサを制して悟飯は答える。自宅、つまりアリサの家へのルートは複雑な経路ではない、そのおかげで彼は一回で頭に入っていた。

 

 

「ならいいけど。じゃあ、あたし達はこっちだから、寄り道しないで真っ直ぐ帰りなさいよ。」

 

「悟飯くん、また明日ね。ばいばい。」

 

「気を付けてね悟飯くん。また学校でね。」

 

 

母親みたいなアリサの言動に苦笑いを浮かべながらも「バイバイ」となのはとすずかに返事を返す。それと同時にアリサ達は塾がある方角へと向かっていく。三人と別れた悟飯は全員の背を見送った後、再び自宅へと歩き始めた。

暫く歩き続けていると太陽が沈み始める。空は水色から藍色へと、白い雲はオレンジ色に染まりきり、朝や昼には見られない光景が夕方には広がっていた。

 

平凡で毎日がごく普通の生活の繰り返し…それは本来、子供が送るべき生活であり悟飯が望んでいた生活なのかもしれない――




(オマケ)

アリサ「う~ん、悟飯大丈夫かしら?」

すずか「きっと大丈夫だよ。悟飯くん賢いし」

なのは「アリサちゃんは心配なの?」

アリサ「そりゃ、しょっちゅうトラブルに巻き込まれてれば心配になるわよ。」

なのは&すずか「「え?」」
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