第一話 転生そして謎の衝動
「あぁ〜血が吸いたいなぁ」
ちょっと待ったー!! 私は今何を考えてたんだー!!
私こと、一ノ瀬鏡花(いちのせきょうか)は謎の現象に悩まされる日々が続いていました。
それは、赤い色の物を見ると起こる、謎の衝動でした。
急に喉が渇いてくるというか、目の前がぼんやりしてくると言うか、身体全体が熱くなってきてしまうのです……一種の快楽的な衝動なのでしょうか? あ! でもでも、決して淫乱な訳ではないですからね! た……たぶん。
私が、この現象に悩まされるようになったのはとある日の事。いつものように普段と特に変わらない学校が終わり、街灯が照らす中、家に帰ろうと交差点の横断歩道を歩いていると、いきなり猛スピードでやってきた車にひかれ、そのまま意識が飛んでしまいました。
次に目が覚めたときには、病室のベッドの上ーーではなく、何やら豪華な装飾が部屋に施された、一室のベッドの上でした。
「あれ? 私たしか車にひかれたような……?」
私は疑問に思いながらもベッドから起き上がると、部屋の中を歩き始めた。
部屋の中を見てみると、何やらお高そうな物ばかりある。
推定どのくらいの金額がするんだろうと思えるくらいの高級感に溢れた机に、金色に輝く額縁に収められた、ものすごく美人な金髪の女性の肖像画らしき絵が1枚壁に飾ってあった。そして、白をベースとした、いかにもお姫様が使っていそうな4段くらいのタンスのような物、どれも見たことがない物ばかりだった。
うーん、もしかしたら夢でも見ているんでしょうか……?
夢じゃないかと、自分のほっぺをぎゅーっと摘んでみると、普通にズキズキとした痛みが脳へと走る。
どうやら夢ではないらしい。おかしいなぁ、それになんか周りの物がすごく、大きく見えるんだよねぇ……。私はふと、部屋に置かれてあった全身鏡の前を通り過ぎた瞬間、パニックになった。
「いやぁぁぁぁぁ!! な、何なのこれー!!」
鏡に映し出されていたのは、背は幼稚園児じゃないのかと思うくらい小さく、髪の色は綺麗なピンク色の腰くらいまであるかと思われるロングヘアーで顔立ちは幼く、その瞳は燃えるように赤かった。肌も人間なのこれは? と思えるほど白く、服は黒いゴスロリみたいなドレスを着ていた。
私は、一体どうしちゃったのでしょうか? 普通に考えたらおかしな話だ。そもそも、私は普通のごく平凡な家庭に生まれ育ち、今年はれて高校に入学したばかりのピチピチの女子高生だった。
ーーそれが何だって若返りをしているのか。
事故の後遺症で若返りました、なんてことはないだろうし、ましてや病院のベッドの上ではなく知らない部屋だ。さっぱり、今の状況がつかめない。そう思いつつも、とにかく今の私の状況を少しでも把握するべきだと、部屋を出た。
部屋を出て見ると目の前は大理石でできたような白い床の廊下だった。いかにもお金持ちの宮殿みたいな作りで、お高そうな花瓶や、騎士の鎧みたいな物が廊下に飾られてある。
とりあえず誰か人を探そう。こんな建物の中からでも普通の家の何倍もありそうに見える所に私1人だけのはずがないよね。そう思い廊下を歩いていく。
少し廊下を歩いていると、なにやら下へと降りれる、横幅が広い真っ赤なジュウタンがひかれている階段がある場所に着いた。階段の下は広い部屋というべきか広間みたいになっていて、降りた先の正面にはものすごく大きな左右に分かれた扉があった。
これは俗に言う玄関ホールなんでしょうか……?
もしかしてあの扉を開けると外に行けるのかな?
私が階段を降りて下へ行こうとした時だった。急にその真っ赤なジュウタンを見た途端、目の前がぼんやりしだした。
ーーあれ……? なんだろう、この感じ……。
身体全体が燃えるように熱くなり、ガクガクと足は震え出し、両手で自分の身体をぎゅっと押さえつけようとするも、震えが止まらず、その場に座り込んでしまった。
ーーなに……? これ……。
そう思っていた時、階段の下の左の部屋の扉から、何やらメイド服を着た黒い髪のショートヘアーな少女が階段に向かって歩いてきた。そして階段を登ろうとした時、ばっちりと私と目が合うと、両手を口元に当てその少しキリっとした目を見開いていた。
「いけない!!」
メイド服を着た少女は、焦ったような声を放ち私に急いで駆け寄ると、優しく小さな身体を抱きしめてきた。
「駄目です……どうか理性を失わないで下さい……」
理性って何……? 失わないでってどう言う事……? あぁ、いい香りがする。ものすごく、落ち着けるような香り。香水か何かなのでしょうか? あれ? 少女の首筋……すごい綺麗です……。
私は少女をその場に押し倒し、じっとその首筋を見つめながらゆっくりと小さな口を開けるも、そこで私の意識はプツリと途切れた。