「ほう。そんな子が」
「おかしいと思わない?」
「確かに。そんな服装で人通りの多いところを歩いても、誰も気づかない……」
夜、スバルは家に帰ってから父親の大吾に今日起きたことを話した。
WAXAに復帰した大吾は、科学者という傍らを持っていることもありスバルは躊躇なく父に聞いた。
「まるで電波体みたいだな……」
「そうだな。ウォーロックが言うように、その子はもしかしたら……電波体である可能性があるな」
「じゃあ、あの子はいったい」
「WAXAなら、その子について調べられるかもしれないが普通のウィザードと違うなら厳しいな。もう一度そのこと会える確率も高いわけでもないからな」
「身元を特定できるのも難しいのか……」
しかし、スバルが気になるのはそれだけではない。
少女が着ていた服。色は違えど、ミソラが着ている服と一緒だったのだ。どうしてあの子が着ているのか。その後、ミソラと会ったが彼女から少女のことなど話に出なかった。ならミソラは少女のことを全く知らないのである。
「そういえば、最近面白い調査結果が出ているんだ」
「調査結果?」
「衛星で各都市の電波の流れを見ているんだ。ここらへんだと、スピカモールにシーサーアイランド。ドリームアイランド。ロッポンドーヒルズ。そこらじゅうを映しているんだが、今日スバルたちが行ったスピカモール。ここでちょっとした電波の乱れとノイズが発生しているんだ」
「ということは……その電波の乱れがあった場所に少女が通ったっていう事なのか?」
「そうだな。断言できないが、彼女が通った確率は高いと言えるね。WAXAも危害がないから厳重には見ていなかったけれど、明日から見ていくようにするよ」
「ありがとう。父さん」
「はーい。ごはんよぉ」
ちょうどいいタイミングで、あかねが夕食を配膳しにきた。お皿にはとてもいい匂いを放つハンバーグが盛られていた。
「うお、今日もママのごはんは美味しそうだね」
「うふふふ。ありがと。大吾さん」
大吾に褒められ、少し頬を赤らめるあかね。スバルもにこやかに笑顔を見せ、贅沢な夕食にのどを通していった。
数日がたったある日。コダマ小学校では遠足のシーズンとなっていた。
六年生のスバルたちは遠足と研修旅行といった行事がある。シーサーアイランドのように遠出をすることは年度内には無いようだ。
そんな6年A組でも、遠足の話で盛り上がっていた。
重要事項は育田先生のほうから話してもらい、あとのことはルナを筆頭にきめることになった。
「それでは、当日の自由行動の際の班決めを行います。仲のいい人同士で組むのはいいですが、絶対に4人以上で組むようにしてください。あと、統率を取れる人を各班に入れてください」
ルナの言葉が終わると同時に、クラスメイトが動き出した。スバルはもうルナの先ほどの発言で大体のメンバーは決まっているなと確信したのか、席から動かずにいた。
「スバル」
「……どうした? ジャック」
スバルの座る席は一番後ろの廊下側。学校に復帰してからここが定位置だ。対してジャックはスバルの隣の席だ。
「昨日、変な女の子にあったのか?」
ジャックからその言葉を聞いて、スバルは違和感を抱かなかった。彼はWAXAに非常勤で仕事についているため、大吾から話を聞くのは珍しくもない。ここで詳細を聞くのもいいだろう。
「何か分かったの?」
「さっき姉ちゃんからメールが来たんだけれど、やっぱり電波の乱れと防犯カメラからの解析で、スバルの言っていた女の子が通った場所はいずれも電波の乱れが確認されている」
「ということは……」
「そうなるな」
ジャックからの知らせに、スバルはますます疑問を持つようになった。ジャックは恐らく、ミソラと類似していたという話は聞いていないはず。それを踏まえて調査をするとなるとWAXAにも負担がかかるからか、スバルも考慮をして話はしないでおこうとした。
「星河君。ジャック。あなた達も私の班ね」
「……」
「……」
突然、スバルたちの間に入ってきたルナはいきなり遠足の班について口出しをしてきた。
思わずスバルとジャックは無言を貫いてしまった。それに対してルナは。
「何よあなた達、不満でもあるわけ?」
「いや……不満っていうか」
「……な?」
「こいつら、元からお前らの班に入るつもりだったからな! 委員長の誘いなんていらないっていう事だよ」
高らかに声を上げたのはウォーロックだった。それを聞いたルナはなぜか赤面した。
「な、なら尚更ね!!」
「なんで赤いんだよ」
「う、うるさいっ!!」
ジャックのからかいに、ルナは終始赤面だった。
「なあスバル」
「どうした? ウォーロック」
「なんか、変な気配するんだけれど……」
「気のせいじゃない? それか、ハンターVGのメンテでもしておく?」
「いや……違うんだよ。なんか居心地が悪いっていうか」
ウォーロックにしては弱音を吐くなーと思っていたその時だった。
ギィィィィィィィィィィィィィィィィン
突然、教室のスピーカーから金属がすりあうような轟音が響き渡った。
「きゃあああああ!!」
クラスの女子をはじめ、全員その場にうずくまった。
「ウォーロック!! これって!?」
「やっぱり、電波の乱れか!!」
「スバル!! WAXAから通知が着ている! ハンターを見てみろ」
ジャックに言われるまま、スバルはハンターのメールを開いた。
そこにはWAXAからメールが。
開くと内容は、
『WAXA及びサテラポリスの隊員に連絡します。現在、コダマタウン各地で異常な電波の乱れをキャッチしました。各自、出動してください』
ということは……
スバルはウォーロックを呼んで、ロックマンになろうとしたが。
『……す、……けて。だ……れ……すけ……て』
突然、耳に聞こえてきた誰かの声。
誰……誰なんだ?
スバルはその場で硬直したままだった。
「おいスバル!! 体育館に行くぞ!!」
「……っ!? うん」
とにかく今はこの騒動を止めなければいけない。スバルは雑念を振り払って、教室を出て行った。
教室を出ても、轟音は鳴りやまない。立っているだけでも精いっぱいだ。
苦をしてついた体育館。誰もいないはずの体育館には……
「あれは……」
耳をふさぎ、音に耐えるスバルが見たのは先日スピカモールで見かけた少女だった。
「ジャック、あの子だよ」
「まさか、あいつが騒動の原因か?」
「とにかく、電波変換するぞ!!」
立ちくらみになりながら、スバルはハンターVGを操作し。
「トランスコード003!! シューティングスターロックマン!!」
「電波変換!! ジャック。オンエア!!」
電波変換したことで、多少楽にはなったがそれでも耳に伝わる音は消えない。
「……君はいったい誰なんだ!!」
スバルの声に、少女は振り向いた。
その姿は、以前あった時とはまるで違う。着ていた服はボロボロ。足も泥まみれ。とても電波体には見えない。
「お前、本当に電波体なのか」
「ジャック」
攻撃を仕掛けるそぶりを見せたジャックに、スバルは手で静止した。
見て分かる通り、向こうは戦える状況ではない。むやみに手を出して状況を悪化させたらそれでこそ本末転倒だ。
「君はいったい誰なんだ? どこから来たの?」
「……いや……」
「え?」
小さい声で何をつぶやいたのかわからなかった。その時。
「イヤァァァァァ」
少女は突然叫びだし、ノイズウェーブが次々と発生。そこから大量のウイルスが出てきた。
「スバル!」
「分かっているよ!!」
久しぶりのウイルスバスティングだが、戦いの感覚は全く鈍ってはいない。
「バトルカード、キャノン!」
次々と出てくるウイルスを、二人で撃退するが、スバルはある異変に気付いた。
ウイルスが今までのウイルスとは違うのだ。頭からは角のようなものが生え、尻尾までも。今まで出会ったウイルスとは見違える姿だ。
しかし、今はそんなことを気にしている余裕はない。目の前のウイルスを倒すのに専念しなければならない。
次々とノイズウェーブから湧き出てくるウイルスたち。さすがのロックマンとジャックでは手を打つことはできない。でも助けを呼ぶことはできない。
「仕方ねえな!! おい、スバル!! ノイズウェーブに手を出さない限り、延々とウイルスは出てくるぞ!!」
「ということは、あのノイズウェーブを直接叩けばいいのか」
「それなら俺に任せろ」
ウイルスたちをロックマンに任せ、ジャック・コーヴァスは宙に舞った。そして、両翼を広げ、
「ペインヘルフレイム!!」
火の球を何発も出現させ、それをノイズウェーブへあてた。直後、爆風がおこりしばらくしてからウイルスの群れは出現しなくなった。
同時に、先ほどの少女の姿も消えていた。
「いったい……なんだったのだろうか」
「さあな。とにかく、あの騒音の原因は少女だっていう事だ。俺は姉ちゃんに連絡してくる」
「うん」
電波変換を解くと、先ほどまでウイルスがいたなんて嘘のように静まり返っていた。
スバルはしばらく考え込んだ。あの少女はさっき、何かを言いかけていた。表情からして助けを求めていた?
ますますわからない……
「ねえウォーロック。あの子はいったい……」
「それなんだがなスバル。俺も一つ思ったことがあるんだよ」
「……なに?」
「あの少女……昨日大吾が電波体である可能性があるっていったよな?」
スバルはウォーロックの言葉に首を縦に振った。確かに昨日の夜、大吾から話を聞いた通りあの女の子は電波体の可能性がある……そういっていた。
実体化したウォーロックは、しばらく黙りこみ。
「確かに電波体の感じはしたんだ……したんだが」
「何をためらっているの」
「……あれはとんでもねえ力の持ち主だ」
「……え?」
ウォーロックの言葉に、スバルはただただ首をかしげることしかできなかった。