「ちょっとレオン。本当にこんなところにあるの?」
「ボスの指示だとここになるよ」
「遺跡とかそういうところかと思ったけれど普通の公園じゃん」
「なんだレベッカ。嫌ならこの任務から降りてもいいんだよ?」
「……下りないわよ」
グローカーの幹部。レオンとレベッカはとある場所に来ていた。
彼らの主君であるボスの指示で来たのは最近できたばかりの大きな公園。二人は最初この場所に目を疑ったが、レオンだけは忠実に従いレベッカは半信半疑のまま来た。
「しかし、こんな平和なところにPGMなんてあるのかしらね」
「単純に作業するだけでは見つからないよ。あらゆる手口を施して、初めて手に入る代物。……とはいっても、今回のはさほど大きなものでは無いようだけれど」
「それじゃあ、私はそこまで必要のないっていう事なんだね」
「そうでもないよ。もしかたら、あの有名なロックマンが邪魔をしてくるかもしれない。その時は相手をしてもらうよ」
「だるいわねー」
夜の公園内を歩きながら、グローカーの二人は談話を交えていた。園内は誰もいない。暗く街灯もない。しかし念のためなのか、不自然ではない格好でいた。
「待ってよ。私が仮にロックマンの相手をしたとして、レオンはどうするの?」
「俺はその間見物でもしているよ。どうせ、メテオGっていう異物がないからまともな強さで戦うのは無理だと思うよ」
「それでも見学ってねー」
レベッカは横目をやりながら、レオンを凝視した。どうやら自分だけかの英雄を相手にするのは不満のようだ。
「俺だってやることはいろいろあるんだよ。時間稼ぎっていう事で我慢して」
「……しょうがないわ。今回だけよ」
「とはいっても、ロックマンが来たらの話だけれど」
「それで、今回の任務。どうやってやるわけ?」
「そうだね。さっきも言ったけれど、今回はあらゆる手を施すよ」
「何それ?」
レベッカの不思議そうな顔に、レオンは思わず微笑んでしまった。何を考えているのか分からない彼だからこその考えなのか。レベッカもその微笑みに対して一切口出しをしなかった。
「今回はこれを使わせてもらうよ」
「これって」
レオンが取り出したのは、一枚のカードらしきもの。中央には『D』の文字が刻まれている。
「研究所で取り扱っている竜化のプログラム。まだ未完成品だけれど、一応試作っていう事で今回使うよ」
「それ……誰に使うのよ」
レベッカの質問に、レオンはただ微笑んでいるだけだった。
「ちょっと!! まさか私に使おうっていうんじゃないでしょうね!?」
「はははは。そんなことないよ。とりあえず、そこら辺のウィザードに使おうかな」
「驚かさないでよ……」
安堵の行きをつくレベッカ。レオンは人をもてあそんでいるとしか思えない。
「でも、本当にそのプログラムで電脳竜のPGMを見つけられるの?」
「確信はないけれど、確証はあるよ。現にこれと同じようなものを使って実験したら反応が出たんだから」
「そうなの」
「ま、物は試し。とりあえず今回は下見をして終わろうか」
そして、二人の影は闇夜へと溶け込んでいった。
騒動から数十分後。WAXAとサテラポリスの人たちが駆けつけ、スバルたちから事情を聴いた。
その間に全校児童は帰宅。残ったのはスバルとジャックだけだった。
「なるほどね。女の子が突然ノイズウェーブを」
「シドウさん。何か知っていますか?」
「実は、こっちでもそのことで調査している最中なんだけれど、何せプログラムの残骸すらないからな。何の仕様もないよ」
「で、結局騒音の原因はあの少女でいいのかよ」
「現時点ではそういう事にされています。また調査が終わり次第、報告しますよ」
「誰もお前になんか聞いてねえよ」
ウォーロックの質問に答えたのは、シドウのウィザード。アシッドだった。犬猿の仲でもある二人が交わると、大変なことになるが最近会っていないからどうなのかはスバルでもわからない。
「今の段階だと謎のままだ。それに、俺もあの少女のことは少し気になるからな」
「シドウさんも?」
「気になるのは、姿とか服装。そういうところではない。さっき電波の流れをモニターで確認したんだ。そうしたら……」
しばらくの沈黙に、思わず固唾をのんでしまうスバル。
「ウイルスを出現させた時と比べると、ものすごい電波の乱れを生じているんだ。そうだな……20年に一度。って言ったほうが大げさになるか? それくらい、乱れていたっていう事なんだ。だから、俺はこの子は何か特別なものを持っているんじゃないかって……」
「シドウ。俺も同じようなことを思っていたぜ」
「お、ウォーロックもか? 奇遇だね」
「お前も気づいていると思うけれど、あれは相当やばいぞ」
「知っているよ。だから、今後の対策を考えるんだよ」
「やばいって……どれくらいなの?」
「そうだな。簡単に言うと、これまでの敵とはけた違いの力を持っている。それに、その力を狙って大きな組織がいたら……ああ、考えただけで頭が痛いよ」
「そんなに……」
これまで。それはディーラーやドクターオリヒメといった悪いやつらとは全然違う。確かに、あれだけのノイズウェーブを出すほどだ。それだけ強大な力を持っていることになる。
「あとは俺たちで対処するから、スバルとジャックは帰っていいぞ」
「わかりました」
「わかった」
シドウの指示通り、スバルとジャックは帰路へとついた。
シドウは二人が体育館から出ていく背中を見つめてから、隣にいるアシッドに話しかけた。
「どう思う。アシッド」
「現時点では何とも言えませんが、ウォーロックの言う通り例の少女は危険です。いつ、どこで現れて混乱を招くかわかりません。早急に対策を取るべきだと思います」
「やっぱりそうなるよな……」
シドウは顎を指でつまみ、しばらく考え込んだ。
果たして例の少女は何者なのか。まずはそこから探り入れなければならない。
「電脳竜……」
ポツリと、シドウはある言葉を口にしたのだった。
学校で起きた騒動から数日。休日のある昼下がり。スバルはあかねが操作する掃除機の音で目覚めた。
「うーん……」
「ほら、いい加減起きなさいよ」
「あとちょっと……」
「午後にはお客さんが来るのだから、早くしてね」
「うん……」
あかねの言葉に生返事をし、スバルはもう少し出だけ眠りにつくことにした。
しかし。
「おい、スバル」
「……なにー」
「WAXAからこの前のことでメールが来ているぞ」
「うーん……」
まだ夢うつつな中で布団から体を起こし、ハンターVGを操作した。
メールの内容は、
『星河スバル君へ。先日の件、解析した結果例の少女は電波体でありながら、ウォーロックのようなFM星人ではなく、最近普及されたウィザードでもない。ウイルスも最近では検知されていない種類なのだ。今後、似たようなことが起きる可能性があるのでいつでも出動できるようにしてくれ。シドウ』
「……」
「これまたおっかなびっくりだな」
「FM星人でもなく、ウィザードでもない。次は何が起きるのか、本当に予想がつかないね……」
「……おい。メールの続きがあるぞ」
「え?」
ウォーロックに言われ、さっきのメールの内容から下を見てみるとまさにその通りだった。
「……なにこれ」
「なんだなんだ?」
メールの内容は、スバルの眠気を一瞬で吹き飛ばすものだった。
「なんで……急に?」
「こりゃあ驚きだな」
「スバル!! ミソラちゃん来たわよ!!」
「えっ!?」
「早いな……」
そう、メールのないようなこうだったのだ。
『追伸。なぜかミソラがWAXAに来てな、コダマ小学校に行きたいって言いだしたんだ。小学校のほうからは許可は得たのだが、寝泊まりする場所がなくて……大吾さんに行ってお前んちに泊めてもらうことになったからよろしく!!』
このメールを見て驚くのも無理はない。
今日メールを送られてきて、今日来客が来る。これにはスバルも頭をかいた。
「スバルー!!」
「仕方ねえよ。詳しい事情は本人に聞こうぜ」
「何が何だか僕にもわからないよ……」
急いで着替え、スバルはリビングへと駆けていった。
「やっほう。スバル君」
「……やっほー」
「メール見たでしょ? 今日から家で暮らすらしいから、一応挨拶ね」
あかねの陽気な言葉に、スバルは口をあんぐり開けたままだった。
「ごめんね。突然急に。迷惑かけるけれどよろしくね」
「う……うん」
状況をうまく呑み込めないのか、スバルは曖昧な返事ばかりだった。
「とりあえず上がって上がって」
「……」
もうスバルは何も言えない状態だった。あまりの適当さに、ウォーロックも口を出せない状況であった。
何しろ、スバルが一番困るのは父親の反応だ。ミソラがスバルの倒産といくら顔を合わせているとはいえ、それはプライベートでは皆無なのだからリアクションをとてつもなく、見たくないとスバルは心から願っている。
「とりあえず……二階に上がって」
いったい部屋はどうするのか。自分の部屋だったらどうしようか。階段を上がるスバルはそれで頭がいっぱいであった。
二階に上がり、自室の前でスバルは硬直した。
「とりあえず……隣の部屋空いているからそっち使ってくれる? 布団とかはまたあとで持っていくからさ……」
「う、うん。なんか急にごめんね」
「あ、全然いいよ」
思考回路が回らない。急展開過ぎる出来事にスバルの戸惑いを隠せないのは当たり前だ。
「……なんで急に学校へ?」
「言い出したのは私だけれど、提案したのはハープなのよね。ほら、私って真面に学校なんて行かないで芸能活動ばかりやっていたでしょ? 仕事も最近になって忙しくなってきたけれど、学校へ行く分には問題はないと思ってね。それで、ダメもとでWAXAの人にお願いしたら……っていう感じ」
「ちなみに、そのWAXAの人っていうのはシドウさん?」
「違うよ。スバル君のお父さん」
「……」
道理で話がかみ合うと思った。と、スバルは悟りを開き始めた。
「とりあえず、委員長たちにはこのことを伝えておくね。いきなり学校へ来た時に騒がれても無理だろうから」
「本当にごめんね」
少々面倒なことにはなるが、スバルにとっては少しばかり、うれしいことだ。
「にしてもハープ。お前はいつも余計なこと言うよな」
「あら、脳ミソバカのあなたに言われる筋合いはないわよ」
「こらこらウォーロック」
「二人ともー。お昼ご飯で来たから下りてきてー」
下からアカネの呼ぶ声が聞こえてきた。
「それじゃあ、これからよろしくお願いね。スバル君」
「よろしくね」
そのスバルの顔は、すこしだけ頬が赤らんでいるようにも見えたのだった。