仮面ライダー555vsGE ~神喰らう者と紅の閃光~   作:ジュンチェ

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冗談だと思うだろ? 前回の更新、一年前だぜ?




第五話 後

――もーいーかい? もーいいーかい?

 

 

――まーだ、だよ!

 

 

 

 

――もーいいーかい? ――もーいいーかい…?

 

 

――まーだ、だよ!

 

 

 

 

――もーいいーかい?

 

 

 

――もーいーよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…かくれんぼ。棄てられたクローゼットに小さな体はすっぽり入る。ここならパパとママに簡単には見つからない。だから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……これがいけなかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

グシャ!!

 

 

 

 

 

突然、低い唸り声と肉が潰れてくちゃくちゃと租借される音…。そして、私はクローゼットの隙間から見てしまった。真っ黒な巨大な影がパパとママを食べちゃうのを……

 

 

 

 

むしゃむしゃと、ただ口の中にほうばっていく…千切れた腕も、破けた白衣も、人間という容を崩して呑み込んでいく。

 

 

 

「やめて… やめて、食べないで……」

 

 

くちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃ。

 

最後にごっくん。もう血の跡しか残らない…。そして、こちらを向く…その顔は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやああああああああ やめてぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

唐突な悲鳴に何事かと、動揺に包まれるラウンジ。慌て手を離した巧だったが、完全に絵面は年頃の少女に手をあげようとしたオッサンである…アウト。否定しようとするが、ぞろぞろと集まるギャラリーたち…これはまずい。

 

 

「おい、違う!こいつは……」

 

「ああ、皆さん…お騒がせしました! 何でもありませんから!!ええ…!」

 

 

そんな時、何処からともなく現れてギャラリーたちを追いはらっていく白衣に黄色いバンダナの中年男。そのまま、そそくさとアリサを回収すると『いやあ、すみません。ご迷惑を。』…そう言い残して去っていった。

 

……何だったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

Φ Φ Φ Φ Φ

 

 

 

 

 

 

 

「P.T.S.D.?」

 

「恐らくな…」

 

 

暫しほとぼりが冷めるまで、リンドウの部屋に避難した巧。直属の上司である彼に話をきくと、どうやらアリサは精神的に不安定な要素があるらしく、かかりつけの医師と共にロシアからやってきたのだとか。極東支部に移った今でも、定期的な投薬に出撃後もカウンセリングが欠かせないという話。新型という鳴り物入りで来たわりには随分な壊れ物である。

 

 

「ま、別に珍しくないさ。特にこのご時世でこんな職場ならな……」

 

 

リンドウのフォローも確かにその通り。アラガミが跋扈するこの世界で肉親や知人を目の前で食いちぎられるなんて話はよくあるのだ。そして、人智を超えた神になぞられる化け物を生身で相手をするなんて、全うな精神でいられるほうが本来なら珍しい。ぶっちゃけ、この激戦区最前線こと極東支部の隊員たちは個性こそ強けれど、気さくな人間や親切な人間が多く摩りきれているような者は表向きは少ないように見える。

 

されど、この世界を生きる全ての人間が強くしなやかではないのだ。

 

 

「アリサの経歴をちょいとこっちも洗ってはみた。幼い時に両親を…ロシアでの親友だった同期をアラガミに喰われたらしい。しかも、本人の目の前でだ。」

 

「…」

 

大切な人間を目の前で奪われる… 作為的であれ事故であれ、その傷の痛みと深さはよく知る巧。しかも、アラガミに喰い殺される…しかも、肉親や親友となればまだ幼さと若さの半々である彼女の精神を歪めてしまうのは納得できる。異様なプライドを誇示したり、他人の死を嘲笑したり、……全ては自分の不安への裏返し。これなら、納得はできる。許しはしないが…

 

 

「そういえば、アリサの過去なんてまたどうして…。それに、お前さ…さっきは出ていくとか騒いでなかったか?」

 

「色々あった。もう少しここにいる。」

 

 

? …そうか。先の騒ぎはリンドウの耳にも入っていたので、気になってはいたが彼が残留するに越したことはない。

で、と次に巧は海堂に視線を向けた。

 

 

「あー、うん知ってたよ。」

 

 

やっぱりか。アリサと同じくロシアから来たならと思ったが予想通りだ。

 

 

「アリサちゃんの保護者とも知り合いだし、ぶっちゃけ任されてこの極東にくっついてきたんだ。」

 

 

巧と違い、ロシアに放り出された海堂はカイザギアと今は奪われたデルタギアを引っ提げて宛もなくさ迷っていたところを現地の女性医師に拾われた。その女性医師がアリサの親代わりであり、本業で手がまわらない自分に代わって彼女の様子を伝えてほしいという依頼を受け、わざわざ極東までついてきたのである。

 

 

「…でな、ロシアで亡くなったアリサの同期ってのがその保護者の女ドクターの妹だったんだ。それを切っ掛けに溝が出来ちまってな。今、あの娘に寄り添ってやれてるのは担当医のオオグルマ先生くらいか。」

 

 

…あの黄色いバンダナの中年男、あいつがオオグルマか。巧は先のアリサのフォローに入ったあの時に見た限りだが、はっきり言って胡散臭い部類というのが印象。しかも、年頃の少女についてまわるオッサンとか絵面がアウトである。 ……まあ、巧自身も歳なので下手をすれば他人事ではないが

 

 

「しかし、どうしてまだフェンリルに残る気に…?」

 

「……嫌な予感がした。今、ここを離れるべきじゃない…。きっと、何かが起こる気がする…よくないことがな。」

 

「…は?」

 

 

あれだけ、上司に突進してからの掌返し。理由が要は勘とか…海堂は呆気をとられていたが、巧は確信を持っていた。そして、巧の『勘』が実は全く別のものであることが明かされるのはまだ先である。

 

 

 

 

★★ ★★ ★★ ★★ ★★

 

 

 

 

 

 

……自分としたことが

 

 

あれから薬の副作用が切れたアリサは、ラウンジで起こした自らの騒ぎに頭をかかえながら神機保管庫にいた。アタッシュケースのような台座に陳列する神機たちの中から、彼女は自分の深紅の神機『アヴェンジャー』をとると、エレベーターで演習場を選択する。

 

 

(頭がまだモヤモヤする…気晴らしをしよう。)

 

 

よりによって、忌々しいあの男…乾巧に自分の情けない姿を見られてしまったのが腹立たしい。先日、殴られた借りも返していないのに! まあ、仕返しなんて子供っぽいことはさておき、こんな時は演習に限る。出撃して、アラガミをぶちのめせればそちらが良いが、第二部隊の防衛班なんぞと一緒の任務などされたらあそこの隊長からの小言が鬱陶しくてたまらない。第三部隊は…まあ、別の意味合いで避けたい。

というわけで、エレベーターを降りてやってきた演習場……だったわけだが

 

 

「お、新人! 訓練か?」

 

「げ…」

 

 

降りてすぐの待合室のベンチに腰かけていた男に顔をしかめる。黒髪のツンツン頭に紅いジャケットは、アリサが嫌がる防衛班の第二部隊隊長『大森 タツミ』だったのだから。気さくで明るい人物だが、自分とはソリがあわない…そんな表情を露骨に顔に出すものださらタツミも苦笑する。

 

 

「おいおい、そんな顔するなよ? 一応、階級と経験はお前さんより上だぞ?」

 

「…失礼しました。」

 

 

謝り方すら不服丸出し、人によっては鉄拳制裁が待っていてもおかしくないが幸い、タツミはそんな人間ではない。それにしても、彼は何をしていたのか…

 

 

「やれやれ。演習なら先客がいるぞ。もう少し経ってから出直したほうが良い。」

 

 

…先客? 怪訝な顔をしながら、厚いガラスの向こうの地下演習場を見れば確かに見覚えがある人影が。ソーマにコウタ……そして、自分と同じ新型ゴッドイーターであるイッシン。3人でヴァジュラのホログラムに連携しながら立ち向かっている。ああ、成る程。

 

 

「…そこそこ悪くない動きですね。」

 

「随分、上から目線だな。」

 

 

当たり前だ。演習のスコアや出撃した際のスコアだって、自分が圧倒的に上だ。同じ新型…?だから? 正直、戦績のデータをロシアに行く前に見せられた時は呆れを通りこして情けないとまで感じたほど…もっと精進してほしいと思ったくらいだ。

 

乾巧…?論外です。

 

 

「お前さんは参加しなくて良いのか?」

 

「私は別に。取り敢えず、邪魔にならなきゃそれで構わないので。」

 

 

アラガミを倒せればそれで良い。自分の両親を奪い喰らった奴等を殺し尽くせれば仲間などどうでも良いのだ…むしろ、役立たずなど居ないほうが良い。……目の前で死なれるくらいなら。

 

 

「…(そう、仲間なんて…。私は独りでいい。独りで良いんだ。)」

 

 

無意識に拳を握る… 頭の中で呪文のようにアラガミを殺すことだけを考える。私は『復讐者(アヴェンジャー)』…握る深紅の神機もその名を冠す。だから、馴れ合いなんて不要だ…滾る怒りのまま冷たい心で荒ぶる神々を殺す。それだけで……

 

 

自ずと眉間にシワが寄る…その深溝にあるものを追及するのは野暮だろうと弁えているタツミ。まあ、性分としてお節介な先輩風は吹かせてしまうのだが…と小さくため息をつく。

 

 

「そうだな…お前さんがお前さんなりに戦う理由はあるんだろうな。だけど、それは他の奴も同じ…『日銭を稼ぐため』『自分の強さを求めるため』『なりゆき』はたまた、『命のやり取りを楽しむため』なんて色んな奴がこの極東にはいる。…だから、お前さんが戦う理由がなんであれ否定はしない。ただ『俺達(ゴッドイーター)』の本分を見失うなよ?少なくともアイツらはそれに向き合っている。」

 

 

最後に、『…ま、こう言うのガラじゃないがな!』と言い残して去っていった。

 

残ったアリサはむっとした気持ちを抱きながら再び演習場を見下ろす…

 

 

 

 

「ゴッドイーターの本分?理由? …そんなの、アラガミを殺すこと以外にあるわけないじゃないですか。」

 

 

 

 

 

そう、自分は両親を奪った神々を喰らい尽くす…そのために『復讐者(ゴッドイーター)』になったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

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