仮面ライダー555vsGE ~神喰らう者と紅の閃光~ 作:ジュンチェ
フェンリル極東支部 屋上
夕刻
「……きたか。」
待ち構えていたフードの青年は見覚えがあった。浅黒い肌…銀の髪………確か、巧がアリサを殴りとばした時、先に彼女へと殴ろうとした彼だ。そんな彼が何用かと巧と海堂は顔を見合わせる。
「いきなり何だって顔だな、乾巧。お前の話はまあ耳にしている…。俺の名前はソーマ…別に覚えなくても良い。」
第1部隊は中々の曲者揃いと解していた巧だったが…このソーマと名乗る青年…一番の面倒さだとすぐに察した巧。すると、『お前に1つ言いたいことがある…』と彼は続けた。
「……あの時、例のロシアの新人を殴っただろ?何故、お前が殴る必要があった?」
ああ…なんだ、そんなことか。巧は納得し、語る…
「別に、殴りたいと思ったから殴った…。どんな優秀な奴だろうと人の命を嗤う奴は許せない、そう思っただけだ。ま、お前のような一般のゴッドイーターが事を起こせば面倒だろ?」
「…ただのゴッドイーター…か…。」
そんな彼にソーマは意味ありげに微笑む。何を思ったのかは巧や海堂には解らない…ただ、自嘲を含むような横顔は印象に残る。
「フンッ…なら新人、ようこそクソッタレな職場へ。お前のようなお人好し…嫌いじゃない。」
「歳上はせめて名前で呼べ。宜しくな。」
握手は交わさない。ベタベタと絡み合うのはお互い柄じゃない…そんな匂いを感じつつ巧はソーマを背て見送る巧。そして、アリサも含めて彼もとなると第1部隊はかなり曲者揃いだと改めて実感して『ふぅ…』と溜息をついた。
「へぇ、アイツがソーマ……何かどっかの誰かさんとそっくり…チラリ?」
「……なんだよ?」
海堂のリアクションも鬱陶しい。さっきはシリアスな空気だったから我慢したが、コイツは元々真面目な雰囲気に馴染む奴でもないのを思いだし…ニヤニヤ顔をぐいっと押し退けて屋上のドアを開け……
ガタッ
「?」
……開け?
ガタッガタッ
「…は?」
……開かない。ドアノブをいくらまわしても、押しても引いても、殴ってみても、開かない。どうした?と海堂も覗きこみ、『あかねぇ…』と呟くや『どれどれ俺に任せてみぃ?』と彼は思いっきり蹴っ飛ばすがただ衝撃で足を痛めてのたうちまわるだけだった。なにしてんだコイツ?
仕方ない、ここは通信を誰かに繋ごう…確か、オペレーターのヒバリだっけか……彼女なら腕輪の通信機能から直接……
【……】
「…もしもし!おい!!」
駄目だ。こっちもノイズを出すだけでろくに動きやしない。なんてこった……ついてない。
苛立ちが込み上げて……
「…おい、巧………」
「あ?」
なんだよ、今取り込み中…
「な~んか、嫌な予感しない?」
海堂の呟きと同時に屋上の手すりを乗り越えてくる複数の人影。黄色いスカーフをなびかせた彼等は飛蝗のマスクを小脇に抱え、胸元には金色の鷲のエンブレムを光らせている。そして、バサッと羽音を立てて着地する巧と海堂と同じ『オルフェノク』…。翼を持つ一角獣というモチーフから『ペガサスオルフェノク』とでも呼ぶべきか…
彼女は巧たちに指先を向けるとマスクを持つエージェントたちに指示を出す。
『乾巧だな。ショッカーは裏切り者<仮面ライダー>を許さない。ここで抹殺する。』
これに反応して、ある者は飛蝗のマスクを被り『ショッカーライダー』へ…ある者は簡易型のベルトのバックルを倒し、ファイズを簡略化したような量産型ライダー『ライオートルーパー』へと変身。そのまま、巧たちを包囲する。
「クソ…噂をすれば、ショッカーかよ!?こちとら手ぶらだぞ……」
悪態をつく巧。すぐにウルフオルフェノクへと変身しようとしたが海堂が不敵に笑い止める。
「まあ、待てよ?こんな状況予想してないと思ったか?」
「?」
「俺だって、馬鹿じゃねぇんだよ!」
彼は鞄の中からゴソゴソとあるモノを取り出した。そう、ペイラーには引き渡したのはあくまでファイズギアとカイザギア…手札にベルトならもう1本あるのだ。
………『デルタギア』
ファイズとカイザのプロトタイプのツールであり、多くの人間を惑わせた魔のアイテム。詳しい説明はここで省くとして、海堂とて信用なるか解らないペイラーに戦う手段全てを預けるほどお人好しではなかった。元の世界から持ち込んだベルトは3本だったが、万一の事態に備えてデルタギアのみ別個で隠していたのである。
「コイツを使え…」
バチンッ!!
ナイスだ…って言おうとしたが、それより一瞬はやくショッカーライダーの投げたクナイが海堂の手からデルタギアをはたき落としこれを回収したペガサスオルフェノクがベルトを巻く。そして、デルタフォンに無慈悲な認識音声(パス)。
『変身。』
【Complete】
久々の登場から間もなく、出番はまさかの敵に奪われての変身。白いフォトンブラッドのラインが走り、黒の装甲とスーツ…赤い複眼のライダー『仮面ライダーデルタ』が君臨。かつては敵側として散々苦しめられたギアだったか、こんなに呆気なくまた敵となるとはある種の因果なのか………
「そりゃないっしょ!?」
「ちっ!!」
取り敢えず、海堂のドジは今は責めていられない。ウルフオルフェノク、スネークオルフェノクになった彼等はなんとか応戦に入るもライダーシステムまで奪われた上に数まで勝る相手に渡りあえる道理など無い。次々とショッカーライダーとライオートルーパーの連係が襲いかかり、反撃しようと合間を狙えばブラスターモードのデルタフォンで弾丸をデルタにぶちこまれ機会を潰される。
スネークオルフェノクはともかく、ウルフオルフェノクもそれなりにオルフェノクの中では瞬発力や速力に優れるタイプだが、限られた屋上というフィールドかつ多勢に無勢では能力を発揮しろというのが無理な話。スネークオルフェノクに至っては成す術なくリンチされる始末だ。
『…くそ!』
悪態をつくウルフオルフェノク。このままではじり貧だ…なんとか状況を打開しなくては。
焦るその時、視界によぎる影。即座に理解したウルフオルフェノクはスネークオルフェノクを掴み、ショッカーライダーを踏み越え屋上からダイブ。そこを、飛来したオートバジンが掴み、彼方へと飛んでいった。
ショッカーライダーとライオートルーパーたちは地団駄を踏むがデルタはデルタフォンを口元に近づけ音声認証を行う。
『3821(スリーエイトトゥーワン)。』
★☆ ★☆ ★☆ ★☆
逃走、そして、巧と海堂は外部居住区へと投げ出された。オートバジンは主とおまけを運び終わるやバイク形態に戻り着地。やれやれ、散々な目にあったものだ……呻きながらパンパンっと砂ぼこりを払い立ち上がる。取り敢えず、致命的な怪我は負わずに済んだのはせめての幸いだが……
「くそっ……俺ら以外にもオルフェノクがいるなんて聞いてねぇぞ!」
「俺だって知らなかったつーの。ててて……っ…」
よりによって、デルタギアを奪われ敵にそれを扱えるオルフェノクがいた。本当にうんざりする展開だ……ベルトも無しに戦うのは無理がある。さあ、どうする?極東支部に戻ってファイズギアとカイザギアを一刻でもはやく回収しにいきたいところだが、わざわざ敵から逃げたのに丸腰で戻るなど間抜けだ。だが、こちらにはオートバジンしかいない。
巧は辺りを見渡し、居住区を囲む隔壁へと目をつけるとオートバジンへと乗り込む。
「お、おい何処いくんだよ!?支部は……」
「今、支部に戻るのはまずい。俺に考えがある。後ろに乗れ。」
慌てる海堂を後部に乗せ、先を急ごうとエンジンを鳴らす。
すると、海堂はふと、後ろを眺めて突然に巧の肩をバンバンバンバン!と叩く。
「巧、あれ見ろよォ!?」
「…なんだよ! …!?」
瞬間、振り向いた時には言葉を失っていた。外部居住区のあばら家を勢いよく踏み潰しながら向かって来る鋼色の巨大なマシン……球体のような前輪に後部のあまりにも肥大なブースターが後部で幾つも束になったバイク…いや最早、装甲車とでも形容すべき巨大な影が向かってくるではないか!?
「…嘘だろ。」
『ジェットスライガー』…かつて、デルタが敵に渡った時に幾度となく苦しめられたモンスターマシン。縦横無尽の機動性に爆発的な速力…おまけに、ミサイルまで搭載しているというスマートブレイン社がどう考えても悪ノリで産み出したであろう産物。一応、ファイズやカイザにもあるが試運転では巧ですら扱えきれない代物だったが、使いこなす持ち主ならまさに悪魔的な戦力となる。
「…ちっ!」
一気に巧はハンドルをきって、オートバジンを外壁目掛け繰り出した。直後、ジェットスライガーの横殴りのスライディングがいた場所に空振りし、低空ホバリングしながらデルタは巧たちを見据えながらデルタフォンをガンモードにして撃ちまくる!しかし、巧のハンドル捌きで避けられると再びゴォォ!!火を吹かしジェットスライガーで追う。
「巧、急げ!急げ!!」
「うるさい、少し黙ってろ!」
焦る海堂の声が耳障りだ。わかってる、でもここは人が住んでいるし道は複雑に迷路のようでスピードも出すに出せたもんじゃない。下手をすれば衝動するか、人を轢くかのギリギリで運転をしているがすぐに限界はやってくる。
「…!」
キキィィィ!!!!と急ブレーキ。とうとう行き止まりにぶち当たってしまい、ジェットスライガーに完全に追いつかれてしまう。
『遊びは終わりだ。』
鬼ごっこの幕が下りる……。デルタフォンの引き金がゆっくりと引かれ……
バァァン!!
『!!』
…否、それよりもはやく貫かれたのはジェットスライガーのブースター。オラクル弾のレーザーが鋼鉄の管を融解させ、直撃には至らなかったものの煙が上がり機体が不安定に揺れる。
「俺が考えも無しに逃げ回ってるとでも思ったか?」
仮面ライダーファイズ……乾巧にとってこの手の危機など1度やそこらどころか指で数えきれるくらいではない。場数を踏めば、自然と頭は回転する……例えば、こんな時に『誰が頼れるのか?』『頼れる存在は何処にいるのか?』脳は冷静に答を出す。
★☆ ★☆ ★☆ ★☆
「……あら、駄目ね。やっぱり機械じゃ熱くならない。」
遥かに離れた場所……あばら家の屋根にスナイパーの神機を構える銀髪に眼帯の女性。胸元が大きく開いた服が特徴的な彼女は妖艶に溜息をつき、耳許の通信機で先行している仲間らに一声。
「後は任せたわよ。」
すると、瓦礫を蹴って踊りでる刃とガトリングの銃口。咄嗟にハンドルをきったデルタは強引に車体をよじらせ被弾を最小限に抑えると忌々しい乱入者を睨みつける。
「シュン、お前は引っ込んでろ。傷物にしたらギャラが下がる。」
「はぁ!?ふざけんなよカレル!!コイツは俺の獲物だっつーの!」
畜生め。コイツらは防壁の警護にあたっていたゴッドイーターだろう。あえて支部へとベルトをとりにいこうとしなかった理由はこれか!…と気がついた時には他の方向からも近づく他のゴッドイーターらしき姿も見えた。まあ、あれだけジェットスライガーで暴れまわったのだから当然といえばその通りだろう。流石にこうなれば分が悪いとレバーを操作して浮遊を開始…神機からの弾丸が飛んでくるが致命的なダメージは与えられず鋼の車体は上へ……
そして、バシュゥゥ!!!と轟音をたてて外部障壁へと突撃していき、格納していたミサイルを展開する。
「…まずい!!」
戦慄する巧。外界と支部内を隔絶する障壁を破壊して逃走する気だろう…そうなれば、空いた穴から外をウヨウヨするアラガミたちが雪崩れこんでくるのは間違いない。おまけに、守りの要たちはこの事態を片付けるために持ち場を離れているとなれば被害は甚大なものになる……しかし、バケモノマシンのスピードの前にもう為す術はな……
「逃がしません!!」
その時、ジェットスライガーの直線上に立ちはだかるのはアリサ。神機の銃口は恐れもブレもなくデルタを狙っているが、もし狙撃が成功したとしても操縦を失った鉄塊が彼女にその莫大な質量で牙を剥くのは想像に難くない。
「よせェ!!!」
巧が叫ぶ。しかし、応えることない彼女。スコープのような蒼い瞳がデルタを見据える……絶対に外さない……自身があった。あの車体も直前で避ければ良い。それだけのことだ、不規則なアラガミに比べればあんなもの訓練の的。訓練と同じ、狙って引き金を引けばいい……引き金をひけば…………
『……!?』
「…………………え?」
しかし、寸前でジェットスライガーは不意に車体をもたげ、アリサの頭上をゴォウ!!と過っていった。舞い上がる彼女の赤い帽子。彼方へと飛んでいく襲撃者。
結果、進路は上部へと逸れて装甲壁の頭をかるく削る程度におさまった。
「……」
そのあとを、ただ……ただ……見送る彼女。
何故、自分は引き金を引けなかったのだろう
何故、轢き潰すことだって容易だったはずなのに襲撃者は自分を避けたのだろう
……何故、自分は名前を呼ばれた気がしたのだろう
次々と浮かびあがる疑問。沈む太陽は日没を告げ、少女を日没と共に謎の闇へと誘おうとしているようだった。
To be continued.
☆Open your eyes for the next 555GE.
ペイラー「……君も知っておくへぎだ。アラガミとはなんなのかをね?」
巧「エイジス計画?」
コウタ「…それが成功すれば、皆助かるんだろ?」
デルタ『……アリサ…』
アリサ「答えなさい!!あなたは何者なんですか!?」
マンティコアオルフェノク『…変身。』
巧「……帝王のベルト!」
☆☆☆
ランキングに555の作品があって決意。こっちも更新しなくては!!
更新が遅くていつもすまんのう。
最近の仮面ライダーも嫌いじゃないけど、ファイズのスタイリッシュさが恋しいこの頃。ビルドのラピラピタンタンも思った以上にかっこよくてハザードも活かしてるのがとてもいいけど、すでに情報が出ているあの最終形態はいったい…。いや、これはエグゼイドみたいにマキシマムからのムテキみたいにいちど溜めてからの~~っていうパターンでしょう??そうだと言ってよ!!でないと、クローズがかっこよすぎるじゃんか!!(バンバン
さて、今回の話はファイズといえばベルトの奪い合い。今作でもバリバリやっていく予定……そして、早速と敵にまわるデルタ。デルタってさ、やっぱり敵ライダーのほうがしっくりくるんだよねぇ。そう思いません?いや、まあドイツもコイツもヒーロー面じゃないというのは置いておいて。
ペガサスオルフェノクはゴッドイーターの知識が深い人ならあらまし正体は想像できるんじゃないかな?あと、オルフェノクは次回予告のマンティコアオルフェノクが控えていたりします。そして、あの仮面ライダーも……
感想お待ちしてます! では!