黒鴉と親殺しの神 (更新停止中)   作:ウィキッド

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女性と対戦相手と昔なじみと

 それにしても、何でこんな目にあっているのだろう。

 

「往生際が悪い、ですわよ!」

「そっちこそ! そろそろたおれたら!?」

 

 大声で互いに息も絶え絶えなのにぎりぎりと攻防を続けている二人に声をかける。

 

「あの、もう引き分けでいいんじゃ――」

「「あん!?」」

 

――何でもないです。はい。

ものすごい剣幕で言われてしまったら私程度の人間には対処できないのです、はい。

 

「ちょっと、岸波さん。あきらめないでくださいよ年上でしょ?」

「いや、無理だろあれ止めるの」

 

竜太には悪いが下手に水を差したら矛先が向くのは確実にこちらだ。ここは黙っていくのが吉だと思う。それが人として間違っていたとしても俺は気にしない。

 

”黒野くん。どうするんですか? いまなら逃げられますよ”

 

 霊体化したキャスターに提案される。確かに逃げられそうだけど……いや、やめよう。後が怖い。もし勝手に逃げたことがばれてしまったら……考えただけで冷や汗が止まらない。

 

「ほんっとついてないな」

 

 静かに愚痴りながらどうしてこうなったかを振り返る。

 始まりは唐突だった。一回戦の相手、間桐竜太のこと、正確にはそのサーヴァントのことを調べようと図書室に向かった時のことだ。

 

 霊体化させたキャスターを連れていくと図書室の前でなにやら争うような声が聞こえたのだ。 

 恐る恐る柱の影から除いてみるとそこには見たことがある女性二人が互いに睨み合っていた。

 

「ふん。貴女ごときがこの聖杯戦争に参加しているとは思いませんでしたわ。トオサカ」

 

 澄んだ海をイメージさせる青い服をまとう女性ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト。表情はさながら淑女とも言えるような可憐な笑みを浮かべている。

 

「ええ、私も驚きでしたわ? エーデルフェルトさん?。地上ではお世話になりましたわ。覚えていらっしゃいます?」

 

 ツインテールの黒髪を燃え盛るような炎をイメージさせる赤い服をまとう女性。遠坂凛。こちらも表情はにっこりと笑顔だ。

 

「ええ、私記憶力は元々いいのですが貴女の無様……もとい活躍は忘れることなど難しいものでしたから。ああ、ご安心を。あの時の失敗は水に流して差し上げますから」

「あらぁ、ありがとうございますわ? 体だけでなく心も広いのですね。ですが体の方はも~少し節制なさったほうがよいのではないでしょうか?」

 

”うっわ。お互い笑顔で話してますが殺意出まくりですね”

 

 廊下で、しかも大きな声で行われている口喧嘩と共にピリピリとこちらにも伝わってくる圧力に思わず顔が引きつる。周りにいたNPC達もおびえてどこかに行っちゃったし。というより、まずくないか? これ。

 このままだと争いが始まるのはわかりきっていることだ。だが、アリーナ以外での戦闘行為はペナルティが課せられる。下手をすればこちらもそれの被害に巻き込まれるだろう。というより絶対にそうするあの言峰神父なら難癖をつけて。

 

”逃げます?。幸いにもお二方はこちらに気づいてませんよ? サーヴァントは別のようですが特にこちらに関与する気はないようですし”

 

――ああ、そうしよう。触らぬ神に祟りはないんだ。

 

「あれ、岸波さん? どうしたんですか? こんなところで」

 

 

前言撤回、どうやら触らぬ神にも祟りはあるようだ。

 

 振り返るとそこには声の主、間桐竜太がいた。

 

「何を見ていた――用事を思い出しましたので失礼しますね」

「まて、見捨てるな」

 

 俺が見ていた先、つまりあの二人を見た竜太は顔を青ざめながら立ち去ろうとする。

 それは正しい判断だ、しかし俺は逃がさない、犠牲者は多い方が良い。というよりこいつを囮にすれば助かるんじゃ?

 

「黒野さん……う、うしろ」

 

 そんなよこしまな考えを抱いたからか、神様は天罰を下したようだ。

 

「あらお二方。丁度いいですわ。ちょっと付き合ってくださいません?」

 

 ガシリと力強く肩をつかまれる。というよりこの力、女性には思えないほどのものなのだが!?

 

「大丈夫。時間は取らせないから……」

 

 もう片方の肩を同じく万力のような力でつかまれ、振り向かせられる。すると彼女は驚いたように声を上げた。

 

「誰かと思えば岸波くんじゃない!」

 

 なんで俺の名前を……とおもったが、そっか。遠坂凛とは地上で面識があったんだもんな。テロリストと何でも屋、少なくない関わり合いをしていた。

 

「貴方もこの戦争に参加していたのね」

 

 

「貴女キシナミとお知り合いでしたの?」

 

 

 ルヴィアが意外そうに尋ねる。すると凛はポリポリと頬をかきながら答える。

 

「……まぁね。この目つきの悪さは忘れようがないわ」

「……まぁ、確かに」

 

………

「それより、なにしていたんですか?」

 

 竜太が尋ねるとルヴィアが凛を指さす。

 

「いえ、彼女がいきなり私に難癖をつけてきたんですのよ」

「なっ! もとはといえばアンタが!」

 

 ルヴィアの言い分に凛が吠える。

 

「ゴホン、それで?」

 

 このままではまた争いが起きそうになるので要件を言うよう促す。どうせもう逃げられないのだから早く解放されたいのだ。すると、凛がルヴィアを睨みながら言った。

 

「審判をしてほしいの」

 

 そして体育館に移動し、試合(殺し合い)開始。今に至る。

 

 体育館の許可をとる際に訓練といって言峰神父をごまかしたがそれでいいのか管理NPCと突っ込んだ俺は悪くない。止めろよ。

 そんなことを考えている間に勝負は佳境になっていたようだ。

 

「もらった!」

 

 ルヴィアが繰りだす猛攻の隙をついた凛が彼女の懐に入り込み掌底を打ち込もうとする。彼女の拳法はかなりのものだ。まともに食らえばただではすまないだろう。

 しかし――

 

「甘いですわ!」

 

 その伸ばした腕をとったルヴィアが凛の体を投げる。

 

「なっ!」

 

 流れるように宙を舞う凛は驚愕の色を浮かばせながら頭から落ちた。轟音が響くと同時に終了の合図を告げる。当然勝者は投げ飛ばしたルヴィアだ。

 

「うっわ」

 そんな声を出した竜太の気持ちはわかる。だって叩きつけられた凛のパンツはこの位置からだと見えるのだから。女性としてこれはひどい有様といえるだろう。

 

”白パンですか、意外ですね”

 

 キャスターの感想をスルー。こいつの言動にももう慣れた、慣れさせられた。

 

 そんな自分に軽い嫌悪していると竜太が凛に駆け寄り、手を差し伸べる。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 よくよく見ると床に亀裂が走っている。いくらデータの体でも頭から落ちればそれなりにダメージはあるだろう、意識はないかもしれない。

 しかし彼女は俺の予想していたよりもタフだったようで、頭を押さえながら体を起こす。

 

「うぅ……ありがと」

 

 うめき声を上げながら手を取り、立ち上がる。

 

「全く、無茶なことしないでくださいよ お互い女性なんですから」

 

 心配する竜太に凛は照れ臭そうに頬を掻く。

 

「ふふっ兄と違って気が利くわね」

 

 その一言で空気が変わったのがわかった。正確には竜太が纏う空気が、だ。

 

「――そうですか?俺はそこまで差がねぇと思いますが」

 

 平坦とした声。しかしそこに込められた怒りはとても深く、強く感じられた。凛も、ルヴィアも勿論俺もその迫力につい口をつぐんだ。辺りは沈黙に包まれる。

 

――こいつは本当にさっきまでと同じ人物なのか?

 

 そんなことを心の中で抱きながら、いつまでもこうしていられないと思い

 

「んじゃ俺はこれで。お前らもあまり遊びすぎるなよ」

 

 そう切り出し俺は体育館から出ていった。

 

”どうします?”

 

 兄の方の間桐、間桐慎二を探すぞ。情報収集だ。

 

 

「それで? 僕に何の用だい? こうみえて多忙なんだから早くしてほしいな」

 

”のりのりで引き受けたくせになにほざいてるんですかねぇ、この海産物”

 

 月見原学園、その屋上。空には真っ青な、本当に真っ青な電子の海が広がっている。ここにいるのは俺とシンジのみ。正確には霊体化した互いのサーヴァントもいるがほかの参加者やNPCはいない。

 

 目の前にいるのは間桐シンジ。アジア圏屈指のゲームチャンプとして知られる名うてのクラッカー。確かにウィザードとしてはかなりの実力者の一人だろうがまさか聖杯戦争にも参加しているとは思わなかった。

 

 正直、俺の誘いなど断られてしまうと思ったが想像とは違って快く引き受けた。

 誘いをかけた時なんて「優勝者候補のこの僕を気に掛けるなんて君は目が高いねぇ」やら「もしかして優勝者へのインタビュー? 流石に気が早いよ」などとほざいていたのでもしかするとこの聖杯戦争をゲームのような甘いものと勘違いをしているのかもしれない。

 まぁそれを利用させてもらって記者のふりして独占インタビューという体で話しを進めることにした。なんにせよスムーズに進むのならば問題はない。

 

「どうしたの?用件がないなら僕は帰るけど。これから相手のサーヴァントと戦うためのイメージトレーニングを行うんだから」

 

 シンジは黙っていた俺に拗ねたように口をすぼめる。へそを曲げられて帰られてしまっては面倒なので急いで話を進める。

 

「ああ、すいません。慣れていないものでして。あ、その前に貴方の弟のことで少々聞きたいことがございまして……」

 

 とたん、慎二が先ほどまでとは違い不快だというように眉を顰める。

 

「……何だよ」

「この間お話してたら途中でなんていうか……雰囲気が突然変化したんですよ?」

 

 俺の問いかけにうんざりとしたような表情を浮かべる。

 

「ああ、二重人格だからね。あいつ」

 

「はい?」

 

 軽いのりで告げられた事実に呆気に取られてしまう。そんな俺の様子も見飽きている、といったようにため息をこぼしながら説明をする。

 

「聞いたことあるでしょ。今時知らない人の方が少ないんだし」

 

 

――別名解離性同一性障害(かいりせいどういつせいしょうがい)と呼ばれるこれは簡単に言うならば一人の体に複数の人格があるという病気の一種にあたる。原因は様々なことが考えられるが大抵は辛い現実からの逃避のために作られることが多いといわれる自己防衛の機能だ。

 

 

「突然君の弟の一人だなんて言って連れこられたのがあいつだ。全く、いつスイッチが入って人格が切り替わるのかわからなくて困るね」

 

 間桐の家系が抱えている事情を俺は知らない。しかしどうみても弟に対しての言いぐさではないことだけはわかる。

 

「仲、わるいんです?」

 つい思ったことを率直に尋ねる。踏み込みすぎて機嫌を損なわせてしまうかもしれない質問だったがそんなことはなかったようだ。

 

「いいや、悪くはないさ。ただねあいつには才能がない、努力しているのを見ていると笑えてくるんだ」

 

 くっくっと笑う慎二を見て思う。ほんとにこいつと竜太は兄弟なのだろうか? まるで似ていないんだが。

 

”性格悪いですねこのワカメ”

 

 ……確かにそうだがわざわざ本音を言って機嫌を損なわせる必要はない。

 

「てか、僕に対してのインタビューは!?」

 

 あー、忘れてた。そういうことだったな。

 

「そうですね。でも間桐さんはお時間が少ないようなのでいくつかの質問だけさせていただきます。とりあえずこの戦いに対しての心意気をどうぞ」

「ご、ゴホン。そうだねぇ、ほかの参加者は強敵ばかりだと思うけど勝つのは僕かな?」

 

 なるほど、といいペンを走らせてメモを取るふりをする。正直どうでもいい情報だ。

 

「では今大会で一番の強敵となる人物はどなたでしょうか?」

 

 当たり障りのない質問をするとシンジは悩むようにうなる。

 

「うーん。トオサカやルヴィアみたいな奴ら、あとは……アトラス院の力も油断ならないかな? でも、一番はレオだ。レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ。知っているだろう?」

 

 やはりこの自信過剰の塊であるシンジにとってもレオは特別な存在のようだ。

 そのあといくつか質問をし、切りのいいところで終わらせた。

 

「ああ。すいませんね、お時間をとらせて」

「別にいいさ。凡人の頼みを聞くのが天才の役目なんだから」

 

 本当に無駄なところでイラッとさせるなこいつ。

 

「では、一回戦の後でまた続きをお願いします」

 

 社交辞令的に別れを告げ、慎二に背を向け屋上の出入り口に向かう、その途中呼びかけられた。

 

「なぁ、お前の対戦相手なんだろ? あいつ」

 

 あいつ、とは竜太のことだろう。なぜ知っているのかはわからないがシンジに彼の情報を聞いた辺りで俺が探っていることに気づいたのかもしれない。

 なにか兄らしく勝利を譲れとでもいうつもりだろうか? 

 

「なら全力で潰して、努力なんて無駄だって思い知らせてやってくれ」

 

 予想外なお願いに一拍、唖然とした。

 

「善処します」

 

 動揺を隠しつつそう答えて屋上を後にした。

 

 階段を下りる中、彼の言葉を思い出す。

『なら全力で潰して、努力なんて無駄だって思い知らせてやってくれ』

――その願いはなぜだか彼らしくもあり、それが弟の将来を心配する兄のようにも思えた。

 

”それにしても複雑な事情をお持ちなようですねあの子供”

 

――ああそのようだな、だが手を弱めてはいけない。こちらがやられてしまう。

 

 竜太のサーヴァント、ライダーの姿を思い返す。ありとあらゆる存在を粉砕できるともいえるあの戦車。真っ向勝負では勝ち目は億分の一もない。

 何か策を考えなければ……だがあいにくと自分は何でも屋をで働いてはいたが”英雄”なんてものを相手にしたことなどない。まともな策など果たして出るのだろうか?

 いや、出さなくてはいけないのだ。勝つために、死に物狂いで。

 

”ところで事情といえば黒野くん、マイルームの前にいる女性はお知り合いの方ですか?”

 

 女性? キャスターに言われて先を見ると誰か立っていた。

 軍用ヘルメットをかぶった女性。雪のような白髪は肩までの長さで切り揃えられている。以前あったときとは違うのはタバコを吸っているところだろうか? 

 学園内でタバコを吸うのはどうなんだとかそんな疑問は置いておいてとにかくこれは不味いことになった。できるならば気づかれないようにゆっくりと下がろう。

 

「「あ」」

 

 目が合ってしまった。彼女はこちらに笑顔で手を振る。あの笑顔を向けられたら世の中の男は喜んで手を振り返すだろう。俺もそう思う。

 

 当然、俺は――

 

「すまん」

 

 全力で逃げ出した。

 

”な、なんでにげるんですか?”

 

 珍しく動揺したキャスターの声が頭の中で響くが返答する余裕はない。とにかく彼女から距離をとらなくてはいけない。ここが電脳空間でよかった。普通の学校だったらつかまって教育的指導を受けてしまうだろう。

 

”そも、普通の学校でもこんなに必死に逃げることなんてないと思いますが……”

 

 珍しく正論を言うキャスターを無視し走る。とにかくどこかの空き教室に入ろうと手をかけた瞬間、ピシリ、と俺の少し横側で音が聞こえた。

 ゆっくりと見てみると二つの弾痕が扉についていた。

 

「何で逃げるのかしら?」

 

 怒りを抑えたような低い声が聞こえ、振り返ると硝煙が漂う銃口を息を吹きかけて消す女性、優香がいた。

 

「いや、ははは。忘れてたことでキレられるかと思って」

 

 理由はそれだけだ。地上での様子を思い出すと理由としては十分だ。決して面倒なことになるからだとかそんな理由ではない。うん。

 

「それくらいじゃ怒らないわよ、私。それより思い出したのね。黒野」

「なんとかな」

 

 ヘラヘラと笑い答える。その様子に彼女も笑みをこぼす。

 

「それで? 何のようだよ?」

 

 

 彼女は照れくさそうに頬を染め、体をうねらせる。わざとだなこれは。

 

「貴方、私と組まない?」

「……どういうことだ?」

 

 優香は冷静な俺の様子をみてコホンと声を整える。

 

「単純に勝率をあげるためよ。お互いに手の内を探らないなどの条件のもと、対戦相手の情報を集めることへの協力や作戦の協力をする、というのが簡略化した内容ね」

 

 つまり、二人になるまで同盟を組もうという話だ。

 他の人なら断っていたが、彼女ならば信用にたる人物だ。実力も保証する。だからわかった、そう答えようとした瞬間に

 

「――ストップ、お口にホチキスです」

 

 キャスターが霊体化をとき、俺と優香の間に、正確に言うと俺をかばうように現れた。

 

「キャスター?」

 

 急に霊体化をといた彼女に訝しげな視線を向ける。しかし彼女は俺の視線に答えるように鋭い目線を返した。

 

「黒野くん。貴方本当にその方を信じるんですか?だとしたら又減点ですよ?」

 

 少し厳しい口調で尋ねられる。俺はそれに少し驚いたが言い返す。

 

「あのな、そいつは嘘つかない。俺が保証する」

 

 何やかんやでこいつとの付き合いは長い。

 

 鏡音優香(かがみねゆうか)

 関係は一応昔馴染み、小学のクラスメイトということになるのだろうか。だが最初はそんなに親密な関係ではなく、出会ったら挨拶し合う程度の仲だった。

 だが、とある事件に巻き込まれたコイツを助けたことからこいつとの仲は始まった。

 その後、彼女は俺の戦う姿に惹かれるものがあったらしく、なつかれた。それだけならまだしも彼女も瞬く間にどこかで戦闘技術を上げていき俺と同じく何でも屋になった。

 何だかんだで付き合いは長く、同僚としても、友人としても正直一番信頼している存在かもしれない。だから同盟の提案が出たときも素直に助かったと思ったのだが。

 

しかしキャスターは呆れたようにため息をこぼす。

 

「何を根拠にですか?地上でのやり取りなんてほざかないでくださいよ?」

 

 図星を疲れ返答につまる。

 

「……はぁ、黒野くん。これは戦争ですよ?それも願いが叶うなんて目玉の景品つきの。普段のやり取りで信用するかどうかなんて決められません。だって地上とは条件が違いすぎますから」

 

 確かに彼女のいう通りだ。願いが叶うなんてことが賞品ならば人はどうなるかわからない。それこそ親しい人を罠にはめるなんて気にせず行うかもしれない。

 彼女と全く関わりがないキャスターから見ればそう考えるのは道理だ。しかし俺からしてはどうしても私情が入ってしまう。それを考慮してなのか、言っても無駄だと判断されたかわからないが彼女は一言「彼女が参加者ということを考えてくださいね」と残し再び霊体化した。

 

 

「色々大変なのね 貴方たち」

 その様子を見ていた優香は演劇でも見ていたかのように笑う。

 

「そう言うわけで共闘はなしの方向で」

 

「ええ、わかったわよ。貴方のサーヴァントがどんな性格かわかっただけでも今は良しとするわ」

 

 残念そうに肩を落とす。声もどこか沈んでいる気がする、だがそれも数秒のことですぐに元の声色に戻った。

 

 

「それじゃあ、お互い戦うまで生き残っていられるといいわね」

 

 そう言って去っていく姿に、彼女もいつか殺さなくてはいけないのだということを思い出し、少しだけ悲しく思った。

 

「……はぁ。戦争はやっぱり碌なものじゃないな」

 

 ――無意識にこぼれたため息を指摘する声はなかった。




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