結論から言う。あの食堂は素晴らしかった。和食はもちろんの事、祖国の料理であるボルシチも美味しかった。他はまた今度食べようと思う。因みにメニューはお米に味噌汁、それと卵焼きに何かの魚だった。足りなかったからボルシチも頼んだ。次はもう少し多めにしてもらおう。食堂のおばちゃんは優しかったからおまけもしてくれるはず。事実してもらったのだから。
あ、千冬は後から来てちゃんとお金を払ってくれた。良い奴だ。
◆
千冬といたからか視線感じてながら食べていた夕食を終え、今は待ちに待ったマイホームならぬマイルームへ移動中。と言っても食堂からは目と鼻の先のためもう部屋の前にいるのだけど。
「ここが私の部屋だ」
え?普通私の部屋を紹介して隣は自分の部屋だ、見たいな風に言うものじゃないの?どれだけ自分の部屋好きなの?別にいいけど。
「じゃあ私の部屋はここ?」
「そっちは物置だ。お前の部屋は逆」
間違えた。テヘペロ。
ここが私の部屋か。
「…久しぶり」
「何がだ?」
「一定の場所に寝床があるの。長く泊まることはそんなにないから」
そう言うと千冬は察したようで暗い顔になったが、すぐさまいつもの鉄仮面に戻った。
「お前に何かあるなんてのは到底思えんが今日からはここがお前の
「…ありがとう」
さあ、我が家と御対面だ。寮の一室だけど帰る場所があればそこはホームだ。異論は認めるが受付けはしない。
と、その前に。
「トイレはどこ?」
◆
お花を摘みに行って帰ってきてから部屋に入るとそこには机とベッドが二つずつにシャワールームがあった。
あれ?楯無は?
「ああ、あいつなら家の用事だとかで暫く帰ってこないぞ」
マジか、マジなのか。
「入学式の日に来れていたら会えたのにな」
たった1日の差じゃないか。イヤラシイ顔をこっちに向けるんじゃない。
ともかく居ないのであれば仕方ない。大人しく彼女が帰るまで待っていよう。
と、ここで朝の時の疑問。言うほど気になるわけでもないけど。
「そう言えば、なんで私はクラス代表なれないの?」
「馬鹿者。お前が出たら初めから勝負は決まっているも同然だ。あいつらじゃクロエには触れることさえできんだろう」
私の評価が高いのか、それとも彼らの評価が低いのか。果たしてどうなのやら。
「それに…いや、何でもない」
いやそこは言うべき。思わせぶりな言い回しは腹が立ってくるよね。
「言いかけて言わない人は嫌い」
ドストレートに言ってやった。千冬には変に言葉を変えずに言った方が効果がある。
「い、いや、あのな」
ほら、ちょっと揺らいでる。どんどん追い詰めるぞー。ずいっと顔を近づけて
「ねえ」
壁に追いやったところで一言。
「教えてよ」
千冬よりも私の方が背が少し高いから必然的に彼女を少し見下ろす形になっていたが、こうみると千冬も可愛いものである。
再三言うがそんなことは彼女の前では消して言わないけど。
まあ、それは置いておいて。
私がそうやって詰め寄ると彼女は話し始め…無かった。あれ?気失ってる?やりすぎちゃったかな。
◆
千冬はベッドに寝かせておいた。多分奥側のベットが楯無のやつだからそっちに。意外と軽かったのには驚いてしまった。胸にあんな脂肪ぶら下げてるのに。
因みに彼女の胸がシリコンじゃないのは確認済みだ。不公平だと思う。私の周りには大型しか居ないのか。現実とは無情なものなのか。少しぐらい分けてくれたっていいのに。
…別に無くてもいいんだけどね?本当にね?
千冬も寝たまま起きないから荷物を整理し、軽くシャワーを浴びてからその日は眠りについた。翌朝は当然の様に怒られてしまい代償として朝食を付き合わされた。ぼっちなんだね。彼女と静かに朝食を取りながら過ごす朝も悪くない。これからは誘ってあげよう。じゃないと私もぼっちになってしまう。人は喋らないと老化が進むと聞いたことがあるし、なるべく誰かと居たいものだ。ぼっちには慣れてるんだけどね。
朝食を取った後、千冬は仕事があるからと部屋に戻って学校へ行った。早速ぼっちである。
仕方が無いので千冬が用意してくれたであろう勉強用具を鞄に入れて私も学校へと向かった。
「あ、あなたは!」
登校中にどこぞのヒーローさん、ヒロインさんですかと言いたくなる様なセリフを敵意丸出しで投げかけてきたのは昨日の金髪さんだった。名前はなんて言ったっけ。確かオ…オ、オ?
「オリゴ糖?」
「オルコットですわ!」
そうだったそうだった。申し訳ない。見るからに呆れてる。あれ?怒ってるだろって?気にしちゃダメ。絶対。
でもこのノリ、やっぱりこの人は好きになれそうだ。
「それでオルコット、何?」
「な、何って、と、特に何もありませんわ」
おい。何も無いのに人を呼び止めるのだろうかコヤツは。
「そう」
そこからは無言でオルコットと並んで登校するという外野からしたら気味悪い状況を暫し過ごした。途中隣の席のロリシリコンちゃんに会って背負って登校する事になったのと、妙に話しかけられることが多かったこと以外は何もなく登校出来た。これが普通なのかな?イベント多すぎる気がしなくもないけど。
教室に入ってからロリシリコンちゃんを下ろしてオルコットからではと挨拶されたのに驚いたのも束の間、千冬がやってきて強制的に席に座らされた。
◆
その日の放課後、ロリシリコンちゃんこと布仏本音ちゃんにお茶しようと誘われた。やっぱり放課後はそういうものだったのか。嬉しい誘いだったけれど他にやることがあるため泣く泣く断った。本当に泣きそうだったのは多分バレてないと思う。というよりそう思いたい。因みに彼女の名前は朝知った。そう、背負っている時に聞いたのだ。本人曰く
「好きに呼んでくれていいよー」
とのことで、彼女のことはその着衣から心の中ではマスコットちゃんと呼ぶことにした。可愛いでしょ?口に出す時は本音と呼ばさせてもらうことにした。
マスコットちゃんと別れてからは校内を歩き回っていた。校内の案内図を見ながら学園長の部屋とか各クラス、施設等の位置を確認しているとある施設を見つけた。
「射撃場…?」
読んで字の如くな場所なんだろうが使う人なんているのだろうか。アリーナがあったし練習するならあちらで対人戦をした方が練習にはなるから特殊な人しか使わないのではないのだろうか。例えば遠距離での戦闘に特化した人とか。まあ、せっかくだし寄ってみよう。
中に入ってみるとなかなかの広さだった。ISを学ぶ学園だけあってIS専用なのか射程距離は一番短いのでも人が狙い撃ちできるのかと疑う程の遠さだった。
という訳で早速千冬に電話、射撃場使用の許可をもらいスナイパーライフルを借りて挑戦することにした。無論、IS用のライフルのため腕と脚にISを部分展開させた。流石にIS用狙撃銃の反動を生身で受けきる自身はない。
…あれ?これってもうIS展開させて撃つのと変わらない?
「あ、あなたは!」
片付けていると聞こえてきたこの声、このセリフは本日二度目だ。声の招待はあいつだよ。甘味成分たっぷりなのに全然私に甘くないあのオリゴ糖ちゃん!
「オルコットですわ!」
心の中まで読めるとは一体何者なんだろう。千冬とかスコールである程度は慣れたから驚きはしないけどあの二人は色んな意味で人やめてるからオルコットもどうなのか気になる。同じ人種なのだろうか。
「貴女は私の名前を覚える気がありますの?」
「セシリア・オルコット。ちゃんと覚えてる」
気に入った相手の名前は誰でも覚えるものだろう。ましてや同じクラス。名前を知る手段なんてものは沢山ある。
「はあ、まあ覚えているのならばいいですわ」
いいのか。これからも間違い続けていいのか。
「オルコットこそ私のこと貴女、貴女って言ってるけど名前覚えてくれてる?」
「も、勿論ですわ。クロエ…、クロエ…、クロエ…」
覚えてくれていないのか。何だか悲しいぞ。
「アヴドーチヤだ」
「お、織斑先生!?」
ここでお呼ばれしていないゲストの登場。けど来てくれたのは嬉しい。
「全く、クロエが射撃場を使わせてくれなんて言うから来てみたがオルコットと喋っているだけなのか」
「もう仕事は終わったの?」
「ああ、急いで終わらせてきた」
何とまあ。まあまあまあ。出来る女だったんだね。お姉さん感激。
「あ、あの!」
「どうしたオルコット」
「その、織斑先生はアヴドーチヤさんと随分親しそうに見えるのですが…」
私が千冬と仲良くしていたら問題でもあるのだろうか?
「コイツとは昔からの知り合いでな。色々と世話を焼かされたが世話になったやつでもあるからな」
へへ、なんか照れるね。
「それでクロエは撃たないのか?」
「IS武装のライフルしかなかった。人が生身で使えるスナイパーライフルが欲しい」
「そういうことか。ではまたドイツの知り合いに頼んでおいてやろう」
千冬さん本当にいい人。惚れちゃいそう。自分の代わりに銃を用意してくれたなんて物騒な理由で惚れはしないけど。
「ちょ、ちょっと待ってくださいまし!」
さっきから聞きに徹していたオルコットがまたしても声を荒らげた。
「何故ISに乗っていながらISの武装を使わないんですの?アヴドーチヤさんも専用機持ちですわよね?」
アヴドーチヤって呼ばれるのは何だかむず痒い。オルコットもクロエって呼んでくれないかな。
「専用機はあるけどあまり乗らない。今日も乗る予定は無かった。色々あって結局腕と脚は展開させたけど結局何もしないで止めた」
だから今手元にあるこの
と、ここで千冬が口を挟んできた。
「そこから先は私が説明しよう」
何でだよ。何でだよ!別にいいけれども!
「その前にオルコットに忠告しておく。自分のサシでコイツを図ろうとしないほうがいい」
「…わかりました」
あれはよくわかっていない顔だ。かくいう私も分からん。
「あともう一つ、いきなり説明しても多分信じることは出来んだろう。だから先に昔話といこう。クロエもいいか?」
私の恥ずかしいの暴露されちゃうの?
…どんとこい!
「うん。オルコットは信用するに値する人」
ってのは冗談で、結構真面目な話。
「…良かったなオルコット。お前はクロエに気に入られたようだ」
「ふぇ!?」
だったはずなのになぁ。目の前には怒ってますオーラを出している千冬と顔を赤くしてこっちを見てくるオルコット。なぜ怒っているのか分からないしなぜ顔を赤くしているのかも分からない。不思議な人たちだ。あ、オルコットも千冬と同類だったのか。
「…まあいい」
なぜ千冬が許してやるみたいになっているのか理解に苦しむが例のスルースキルを発動させ話の続きを催促した。
すると千冬も頷き、オルコットも真面目な顔になって話が始まった。
あれはーーーーー
気付けば前回から随分とたってしまいました。時の流れってのははやいですな。