年末年始と随分間が空いてしまいました。
今年1年はどんな年になるのか楽しみです。
千冬のありがたい説教を小一時間程マスコットちゃんと共に千冬の部屋で受けた後、マスコットちゃんは睡魔に襲われ限界が近いようで既に船を漕ぎ始めていたから彼女を背負って部屋まで運んであげた。その後は千冬の部屋からかっぱらってきたお酒を片手に学校の屋上へと向かった。IS学園のある施設が半島ということもあり、周りには学園ほど高い建物が無いため微かに香る潮の香りと風が心地良いのだ。まあ、未成年がお酒を飲んでるところを見られるのはまずいから来てるだけなんだけどね。だがここはIS学園。国の法など知らんよ!
◆
屋上へと続く扉を開けると、そこには見知った人物がいた。人のことは言えないけれどいいのだろうか。私の場合はバレると千冬に怒られる。他の人はどうなるのかは知らない。私が何をしているのか、と言うよりも私の正体を知っている人は学園長と千冬、楯無ぐらいだと思う。もちろん学園内に限った場合でだけど。他にも国家代表が居れば知っているかもしれないしね。学園外でいればもうちょっといる、と思う。ロシアとドイツ、フランスにアメリカの大統領さんと国家代表の人達ぐらいかな。ロシアとドイツの人達はいい人達だ。頼めば何だってしてくれる。あとはスコールの組織の一部。因みに知り合いもこれで全員。友達はその内の何人か。学園で友達百人できるかな?
話を戻してその学園の屋上にいたのは数少ない友達の一人、
「スコール?」
ぱつきんねーさんだ。
「あら、偶然ね」
「偶然でここに居られたら困る」
偶然なんかで学園に侵入されたら困る。しかも警報も鳴っていないため気付かれずに入り込んだということだ。
もしかしてここの警備頼りにならない…?
「ふふっ、心配しなくても大丈夫よ。私も学園の関係者になったから」
「関係者?」
「そう、関係者。亡国機業は織斑一夏を狙っているからその偵察役として送られたのよ。彼らは貴女がここにいる事は知らないから仕掛ける気満々だったの。だから私が買って出たってわけよ。IS学園の教師としてね」
先生とな。彼女なら学園側も喜ばしい事なのだろうが組織で動かれ、こうも簡単に潜り込まれてはたまったものじゃない。
「スコールは手を出さないと言っていたはず」
「ええ、私は手を出さないわ。勿論エムとオータム、と言うよりもモノクローム・アバターはね。私はただここへ来ただけよ」
「何故?」
エムって誰だろう?オータムはよく覚えているけど。
「貴女がいるからよ」
何ヶ月か前、彼女と最後に行動を共にした時のような笑顔でクスクスと笑いながらそういう彼女はどこか寂しそうだった。
「貴女は傭兵。仕事なのだから各地を回るのは仕方の無いことなのだけど、やっぱり好きな人と離れるのは寂しいものだわ」
「好きな人?」
「あら、体も重ねたことがあるのに気付いてないなんて言わないでよ。お姉さん泣いちゃうわ」
何それいい。美人の涙は見てみたい。でも本気で泣くことは無いだろうから残念だ。そういえば涙の成分でなぜ泣いてるのか分かるとかなんとか。うろ覚えだが感情による涙はタンパク質が二十パーセント程多かったのかな?よく分からないが分かる人が彼女の涙を調べたら嘘泣きだということが一発で判明するはずだ。
それと…いや、これは言わない方がいいか。主に私の身のために。女性とは年齢を男性よりも気にするものだからね。
えっと、スコール姉さん目が怖いです。
「人によく思われないのには敏感だけど好かれるのには鈍い。自覚はしている。でもスコールが好いてくれているのなら嬉しい。でもそれとこれとは別」
美人の涙は綺麗だろうから見てみたい。だが人が泣く顔というのはどこまでも悲しいものだ。あまり見ていて良い気分にはならない。泣かれるのは困る。
「まったくもう、つれないわね。私の告白をすんなり流すなんて」
私もスコールは好きだが面倒ごとを増やされてはたまらない。
「心配しなくても大丈夫って言ったでしょう?私は貴女に会いたくてここへ来ただけよ。亡国機業か貴女か、選ぶまでもないわ」
「それは何もしないと捉えても問題は無いの?」
「そう思ってくれていいわ。なんとなく属している組織と惚れた相手じゃどちらの側につくかなんて決まっているわ」
「何だか照れる」
敵じゃないと分かれば何だか急に恥ずかしくなってきた。今までは敵対するかもしれないという方に意識がいっていたがそれが消え去ると別の方に意識が移ってしまう。
「そう言いつつも表情は全く変わってないわね」
「このぐらいで変えてちゃスコールの相手なんて出来ない」
「ふふ、よく言うわ。それはそうと、仮にも私はこの学園の教師。貴女が手に持っているそれを見逃すわけにはいかないわね」
そう言いながら指を向けた先には私の手に収まったお酒。千冬の部屋から拝借したものだ。すっかり忘れていたが、千冬にさえ見つからなければいいと思っていたのにこんなところに伏兵がいるとは案外IS学園も侮れないのかもしれない。
「私も戦場に身を置く人の一人。軍人の給与がいいのと同じでいつ死ぬのかわからないからそれなりの褒美は欲しい。スコールも元軍人なんだからわかるはず。見逃してほしい」
「貴女はそう簡単に死なないでしょ。長生きするためにやめときなさい」
「なら私の部屋で一緒に飲もう」
「どうしてそうなるのかしら」
彼女もかなり飲むほうだから誘えば乗ってくれるかと思ったのに。
「私はスコールと飲みたい」
久しぶりの再会なのだから少しぐらいハメを外してお酒なんかでぱーっとやりたかったものだ。千冬の場合はそんな事言ったら大変なことになりそうだから言えなかったけど。何しろ生徒も住んでいる寮内にお酒をもちこんでいるぐらいなんだから。
仕方なしに手にしていたお酒を持ってスコールに渡そうと彼女の下へと行き、差し出した。
「じゃあこれは私が貰うわね」
「飲まないでとっておいて」
「それは約束できないわ」
こいつ飲む気なのか。
「あ、今日クロエの部屋に泊めてくれる?私まだ部屋がないのよね」
こいつ私の部屋で飲む気なのか!
◆ ◆ ◆
夢を見ていた。
辺り一面は炎の渦。
地には誰のものかすらわからない血の海。
耳に聴こえてくるのは木々が焼かれる音。
────そして、愛する者の悲鳴
その中で私は走り続けていた。
ただひたすらに、前へ、前へ、と。
生かされた命と、託された命を手に前へ進み続けた。
耳に聴こえてくるのは悲鳴、だが頭の中で再生されるのはあの言葉。
愛する者が私に最後に言ったあの言葉。
“お姉ちゃんは生きて、生きて、生き抜いて。誰にも負けない、私の憧れの強いお姉ちゃんのままでいて”
だから、私に敗北の二文字は許されない。
何よりも、私の希望だから、と。
彼女は、彼女達は立ち向かった。
例えそれが勝ち目の無い勝負だとしても。
生かされた私の命。
託された
彼女の為にも、みんなの為にも、私に敗北は許されない。
◆ ◆ ◆
不意に感じるヌクモリ。私はそれによって目を覚ました。
「んぅ…?」
「あら、起きたのね」
現在は昨夜の出来事から時がたち翌日の朝。マイホームであるマイルームのマイベッドの上。何故か全裸のスコールに抱き締められていた。脂肪が鬱陶しい。
「…スコール?」
「泣いていたみたいだから、ね」
「そう…。ありがとう」
またあの夢。忘れることは出来ないであろう出来事。まあ、忘れるつもりなんてないのだがたまに見る夢。夢にまで出て来ないで欲しい。まるで自分自身に拷問されている気分だ。思い出せ、忘れるなってね。
「もう少しこのまま」
「いつまででもいいわよ、ふふ」
歳がいっている分母性も出てくるのだろうか安心する。甘えたくなるような見惚れる笑顔で返されたため朝食までの少しだけの時間、顔全体でやーらかい脂肪の感触を楽しむことにしよう。自分から彼女の方へ寄り添おうと少し体を動かした。のだが気がついてしまった。
なんで私も裸?
スコールが全裸なのは百歩譲ってまあ、まだ分かる。分かりたくはないけど。だが私までそうなっているのがわからない。昨日の夜は確かに服を着たまま眠りについたはずだ。
「ああ、それならうなされていたから暑いのかと思って脱がせたわ」
何故そうなる。
「…そう」
よく分からないがまだ眠かったので眠りにつくことにし────ようかと思ったのだが、ガチャッという音が聞こえた。
「おはようございまーす」
そう小声で言いながら部屋に入ってきた声の主。
「セシリア?」
「起きてらしたんで…す…ね?」
入ってきたはいいのだがこちらを見てかたまるセシリア。目線の先には私ではなく隣にいるスコールだ。
「な、な、誰ですの!?」
早朝に似つかわしくない大声。隣の部屋は千冬なんだぞ。怒られるのは私なんだぞ。
「淑女に有るまじき叫びね。初めましてセシリア・オルコットさん。私はスコール・ミューゼル。新しくココに赴任した教師よ。宜しくね」
「え?あ、はい。よろしくお願いしますわ」
「それじゃあ客人も来たようだし私もそろそろ行くわ。またねクロエ」
いつの間に着たのか、さっきまで全裸だったのに服を着ていた彼女はそう言い残して部屋を後にした。どうしたんだろうか。
「それでどうしたの?」
「えっと、朝食を御一緒させて頂ければ、と思いまして」
そのためにわざわざ部屋まで来たのだろうか。寮長の隣の部屋だけあって彼女の部屋からはそれなりに距離はある筈だ。
「いいよ。ちょっとまってて」
布団から出て、顔を真っ赤にしたセシリアを横目に行方不明の服を探しながら気付いた。
「まだだいぶ時間ある」
◆
いつものメンバーである私と千冬、そこにセシリアが加わった朝食は違和感が凄かった。今までは千冬と二人で食べ、千冬が放つ威圧感に耐えられないからか近寄ってくる人すらいなかったのにいきなり一人増えたのだ。
変化というのはどんなものでも人に何かしらの影響を与えてくれる。私もそうだが、例えばそう千冬だ。違和感にいつもの五割増ぐらいの威圧感を重ねてきた。そこまで教師に徹しなくてもいいと思うのだが、そこまでして威厳ある教師でいたいのだろうか。
でも、せてめご飯中はやめて欲しかった。
そんな時間も過ぎ去り、遂にやってきた実習授業。専用機持ちはアリーナさえ使えればIS操縦の練習が出来るが他はそうもいかない。彼女達にとって待ち遠しかった授業だろう。
「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット試しに飛んでみろ」
「俺達だけなのか?クロエも専用機持ちだったよな」
「三人も要らないだろう。お前とオルコットが完璧にこなせば問題は無い」
それ言ったらセシリアだけでもいい気がする。織斑弟にも実際にさせるあたりやっぱりブラコン千冬。分かりにくいツンデレさんだ。
おっと、千冬がこちらを睨んでいる。
「でもクロエの専用機がどんなのか見てみたいな」
すると彼の後からわマスコットちゃんの私もと言う声が上がり、徐々にそれが広がっていった。団結力って凄い。群れてるだけとも言う。
「静かにしろ馬鹿どもが。…アヴドーチヤ、お前もやれ。加減はしろよ」
そこは折れて欲しくなかった。正直面倒くさい。
「…
「では織斑、オルコット、アヴドーチヤ、まずはISを展開してみろ」
「分かりましたわ!」
千冬に言われ最初に動いたのはセシリア。流石は代表候補生と言ったところなのか、なかなかの速さで展開を完了させた。千冬も満足そう。
だがセシリアとは対照的に織斑弟は苦戦中。まだ慣れていないのだろう。
周りの期待の目が怖いので私も足の付け根にさして合った例の扇子取り出し展開。
────
全身が真赤に塗装されている私のISの名は
「クロちゃんの何だかスッキリしてるね」
そう、マスコットちゃんが言う通り
色々と他と違うのは
「かっこいいでしょ?」
「うん!」
うん。マスコットちゃんは可愛い。
それにしても織斑弟はまだ展開出来てない。
「あとはお前だけだ織斑。アヴドーチヤを見ただろ。熟練した操縦者は展開まで一秒とかからないぞ」
「もうちょっと!」
むむっとしながら何やら力を込め始めた。
あれで出来るのかと思ったがどうやら出来たようだ
────白式
篠ノ之束が直接手掛けたらしい第三世代のIS。御本人様登場である。
「よし、では飛んでみろ」
「はい!ではクロエさん、お先に行きますわ!」
セシリアが飛び立ち、織斑弟が飛び立つかと思いきや地面に平行に飛んでからセシリアを追っていった。千冬に加減しろと言われているため、私も後からまったりと追いかける。
『遅い!スペック上の出力では白式が一番だぞ』
「そう言われても。自分の前方に角錐を展開させるイメージするんだっけ?」
「イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」
「だいたい、空を飛ぶ感覚自体があやふやなんだよ」
『織斑、オルコット、アヴドーチヤ、急降下と完全停止をやってみせろ』
経験の問題だろう。数をこなせば織斑弟も慣れてくるだろう。
「了解です。ではお先に」
セシリアが先頭を切って急降下、完全停止を完璧にこなした。綺麗なもんだ。
「上手いもんだな。クロエ、先に行くぜ」
半分ぐらいフラグを立てて降りていった織斑弟だが、見事失敗。グランドに穴ができた。
「痛そう」
普通に痛そうだ。
人だかりも出来ていたため、私はゆっくりと降りていった。
オリジナル機体の設定は追々出しながら進めていきます。