あと、前半の逃走劇は引き続き「blue destination」を聞きながら読んでみてください。
~リィン救出作戦決行時の宮殿内、皇帝の私室~
「大臣が余を傀儡に……一体、どうすれば?」
先日、ヴィータにオネストを疑うように暗示をかけられた皇帝は、行動を起こしてオネストの本性を知ってしまう。それ以降、彼は疑心暗鬼に陥っていた。
(今まで大臣に政治の全てを頼り切っていたから、他に頼れる者はいない。ブドー大将軍も、外敵からは守ってくれるだろうが政治にはかかわってくれない。つまり大臣を止めるには余が自分で動かないといけないが……どうすれば?)
皇帝は現状で頼れるものがおらず、自分が動くための力も無い。その事実に打ちひしがれている。
「あらあら。お困りのようですね、陛下」
そんな中、皇帝は聞き覚えのある妖美な女性の声が聞こえた。そして声のした方を見ると見覚えのある女性と見知らぬ少年がいた。女性はヴィータで、もう一人は赤いブレザーを着た黄緑の髪の少年だった。
「昨日はどうも、皇帝陛下」
「ヴぃ、ヴィータ殿? どうやってここに……それと、そちらの者は一体?」
「これはどうも皇帝陛下。いや、まだ子供だから気さくに坊やの方がいいかな?」
からかうような口調で、少年は皇帝にそんなことを言う。下手をすれば不敬罪に問われそうだが、そんなの知ったこっちゃないという雰囲気だった。
「年下なのは認めるが、そちらも子供だろう。ところで、ヴィータ殿と一緒にいるということは歌劇場の関係者なのか其方は?」
「それじゃあ、真面目に自己紹介しましょうか」
そう言いながら少年は大仰に芝居がかった仕草で会釈をする。
「僕はカンパネルラ。ヴィータ・クロチルダ様と帝都入りした、しがない道化師でございます。以後、見知りおきを」
ヴィータの連れた少年カンパネルラ。彼も執行者の一人で、盟主の代行として計画の未届けをするという特殊な立場から、ナンバーは0だという。そしてその二つ名も皇帝に名乗った物と同じ”道化師”だ。
「私達はある組織に属していまして、ある目的を達するために帝国を訪れた次第であります」
「それには、皇帝陛下を大臣派と反乱軍の双方から守る必要があると判断しました」
ヴィータとカンパネルラが続けざまに目的を語る。帝具の破壊が目的で、そのためには皇帝を懐柔する必要があるという。まあ、明け渡すように交渉するなら皇帝を直接味方につける野が確実だろうが。
「そこで、ある人たちに貴方を預けたいと思った次第です」
「ある人たち?」
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閃の剣聖として為すべきこと、アリサの想いに触れて真にその事実に気づいたリィンは、クロメとセリューの帝具を以てしても敵うことは無かった。
「馬鹿な……私は正義の筈なんだ……負けるはずが…」
「悔しいけど、これが現実だよ。対抗できるのは、隊長くらいじゃないかな?」
リィンに完膚なきまで叩きのめされたセリューとクロメ。そのありえない強さに、二人とも動揺を隠せていない。
「これが、リィン君の真の力……」
「父さんやアリオスさんと同じ、剣聖の名を冠するだけはあるね」
「鬼の力とやらも初めて見たが、凄まじい物だな」
その一方で、エステル達もリィンの真の力を目の当たりにして驚愕している。
「アリサ、これから脱出するけど……ごめん」
「え?」
戦闘を終えて戻ってきたリィンは、納刀していきなりアリサに謝罪、当の本人は呆けてしまう。そしてその直後
「きゃあ!?」
「「「「な!?」」」」
「あらあら」
なんと、リィンはアリサをお姫様抱っこし始めたのだ。そしてリィンはその状態のまま駆け出し、異常な跳躍力でクロメ達を飛び越えてしまった。
「って、あいつらが呆けてる隙に行くわよ!」
「了解!」
エステル達も一瞬呆けてしまうが、この隙をついてクロメ達を突破する。ちなみに、エマはシャロンに抱えられてだ。
「……あ、びっくりして固まっちゃった」
「賊め、逃がしてたまるか!!」
「チームスタイリッシュ、実験用の捕虜が逃走! 至急捕えるように!!」
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「以上が、スタイリッシュ様からの連絡です」
「まさかあの彼に、脱出するだけの気力があったとは……」
「自分の立場をわかってねぇガキに、お仕置きしてやるか」
一方、リィン達の進行ルートにはDr.スタイリッシュの部下であるチームスタイリッシュの姿があった。トビーとカクサンの他に、耳を肥大化させた少女?がスタイリッシュからの報告を聞いている。この他にハードゲイ風の意匠を纏ったアイマスクの男、鼻が肥大化した白い仮面の男、上半身裸に仮面の男が数十人もいた。彼らは順に将棋の金と銀に例えられた耳、目、鼻とコードネームにちなんだ箇所の感覚に特化した改造を受けた偵察要員、残りの雑兵たちも同じく将棋の駒である歩に例えられた軍団だ。ここに、先程ロイドが倒したトローマを加えて、チームスタイリッシュの全貌ということだった。
「報告にあれば、エスデス将軍が恋人候補に連れ去った彼があの少年の仲間だそうです。逃げた少年以外のメンバーは、その彼を含めて皆殺しだそうで」
「なるほど。なら、新装備を試すいい機会になりそうですね」
「へへ。俺もスタイリッシュ様がくれた、帝具を試すのにいい機会だぜ」
「緊急報告! ここから10㎞先に目的の集団が迫ってきています!」
「匂いも確認完了! 我々で一気に潰しちゃいましょう!!」
そのままチームスタイリッシュは一致団結、リィン達を潰すために奮起するのだった。
一方、リィン達は前方で包囲網が展開されているとは知らずに走り続ける。
「すみません。戦闘とリィンさんの回復で消耗した所為で、転移術を使えそうになくって……」
「まあ、いいさ。この手の脱出も、俺達には必要な物だしな」
エマが転移を使えない理由の説明と、そのことに関する謝罪をする。しかし一同を代表してロイドが応対、危機的状況なのに笑い飛ばしていた。
その一方で、リィンとアリサはというと。
「アリサ、すまない。こんな恥ずかしい逃げ方で」
「う、ううん。いいのよ……むしろ、少し嬉しいかも……」
一応、逃走中という身ではあるがリィンとアリサは妙にイチャイチャしている。
「ここから先は通しませんよ!」
前方から声が聞こえて来たので視線を向けると、すでに戦闘準備万端なチームスタイリッシュの姿があった。
「まだ敵がいるか」
「しかも、あのドクターの部下ばかりだな」
「なんか、遠目に見ても気持ち悪いのばっかりなんですけど……」
リィンもロイドもうんざりしている中、エステルは現れたチームスタイリッシュの姿に顔を引きつらせてしまう。
「流石に、あの数は直接倒さないと突破出来そうにないな」
「リィン、ここは僕達に任せて欲しいな」
「アタシ達にも、美味しいところを持って行かせてよ」
「二人とも……それじゃあ、任せてもらおうかな」
リィンがこの状況をどう突破すべきか考えていると、エステルとヨシュアの二人が名乗りを上げるので、二人に任せてみることにした。
そして肝心の二人が戦闘に躍り出たのを確認すると、チームスタイリッシュも戦闘態勢に入った。
「俺らを衛兵どもと一緒にしてもらっちゃ、困るぜ!」
「我らの包囲網、そう簡単に突破できるはずが……」
カクサンとトビーが戦闘態勢に入り、他のチームスタイリッシュも動き出そうとする。しかし
「はぁあ!」
何とヨシュアが、一瞬にして三人に分身したのだ。そしてそのままチームスタイリッシュに飛び込み、一斉に斬りつける。
「秘儀・
そして距離を取り、ヨシュアが技名を叫んで再度飛び込む。そして超スピードでチームスタイリッシュの面々を切り刻んだ。
しかし、トビーとカクサンの格上二人を打ち漏らしていた。
「ま、まさかあんな技を使えるとは……」
「だが、アッチの小娘に俺らが止められるはずがねぇ!」
そして対抗しようと、トビーは体に仕込んだ各種銃火器を展開、カクサンは与えられたという帝具の力か周囲に水球を浮かべている。
「あれはリィン君から聞いたブラックマリン!?」
「おうよ。スタイリッシュ様がくれた、ご機嫌な俺の為の帝具だ!」
カクサン自身は指が肥大化しているため、どこか別の所に隠し持っているのかもしれない。まさかの帝具持ちに、形勢は逆転かと思われたが……
「だからって引くわけにいかないから、アタシもとっておきを見せてあげる!」
エステルは帝具使いが相手だからと言って、決して怯むことは無い。
「てやぁあ!!」
エステルは走っていた勢いで一気に飛びあがり、そのまま高速回転する。そしてそのまま、彼女の気がたぎってそれが炎と化す。しかも、その炎が巨大な鳥のような姿へと変じた。
「奥義・鳳凰烈波!!」
そしてエステルが技名を叫び、火の鳥となった彼女はカクサンが放った水球を蒸発させて、トビーの銃弾も弾いて一気に突撃した。それによって巨大な爆発が生じ、エステルがそこから飛び出して棒を構えなおす。
「ば、馬鹿な……」
「俺が、こんな小娘に……」
爆炎が晴れると、トビーとカクサンは揃って呟き、そのまま倒れ伏した。
「あの二人も、桁違いに強いんだな」
「私達と同年代でA級、つまりサラ教官と同クラスなわけだしね」
そのままリィンとアリサが倒れ伏すチームスタイリッシュの面々を通過しながら、エステルとヨシュアの実力を垣間見て感想を述べる。遊撃士の真の力、改めてその凄さを実感したわけだった。
「後は何事もなく、脱出できればいいんだけどな……」
そもそもセリューたちと交戦する前に中庭を通過したため、後は突き進めば宮殿から脱出可能だった。しかし、ここまで来て早々上手くいくわけがないと、ロイドの直感が告げていた。
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一方、宮殿の出入り口
「ハーゲルシュプルング!!」
「ギルティフレイム!!」
エスデスとマクバーンの一騎打ちは、宮殿の外に場所を移していた。そのおかげで二人とも羽目を外しており、エスデスは家一軒押し潰せる大きさの氷塊を、マクバーンは高威力の炎を押し固めた球体をそれぞれ放った。そしてそれらが激突し、大爆発を起こした。
「はは! こんなにもアツくなれたのは、久しぶりだぜエスデスよぉ!!」
「私も、ここまで楽しませてくれたのは初めてだマクバーン!!」
爆発が収まると同時に、今度は二人同時に駆けだして白兵戦に持ち込む。エスデスの巧みなサーベル捌き、デモンズエキスの力で作った氷の刃による二刀流や奇襲攻撃。帝国最強だけあり、直接の戦闘力も帝具の応用力も他の追随を許さない。そしてマクバーンは、エスデスの帝具に攻撃力で対抗可能な炎をノーリスクで使用、加えてある奥の手に起因してか体術でも対抗可能、まさに最強の執行者に恥じない強さだった。
「こ、これが隊長の本気なのか?」
「たぶん。で、その隊長と互角に戦える彼も凄いね……」
「本人曰く帝具使いじゃないそうですが、だとしたらあの力は一体?」
一方、マクバーンの対処に当たっていたウェイブ達もう半分のイェーガーズも、そんなマクバーンと対等に戦えるエスデスの姿に驚愕と戦慄を感じていた。
そしてそんな彼らを他所に、マクバーンもエスデスは嬉々とした様子で戦いを続けている。
「まさか、俺が体術を使うことになるとはな。あんたマジで面白ぇよ!」
「それはこっちのセリフだ。ブドー以外に私を凌駕しえる者など、この国にはいなかったからな!」
お互い、新しいおもちゃを与えられた子供のようなはしゃぎ具合だった。それほどまでに、二人は昂っている。
「さて。あんただってもっと楽しみたいだろうし、もっとアツくしようぜ」
「それもそうだな。まあ後ろの部下達なら勝手に生き残るだろうから、もっと本気を出すか」
エスデスとマクバーンがいきなり言葉を交わしたかと思いきや、二人の纏う炎と冷気がより一層強大な物と化す。まだ二人は全力ではなかったのだ。
「うぉおりゃああああああああああああああああああああ!!」
「でやぁああああああああああああああああああああああ!!」
二人して咆哮をあげながら特大の火炎弾と氷塊をそれぞれ発射、そして本人も拳と剣を振りかざして駆け出した。
そしてそれらが激突。
「その位にしておきなさい、劫炎殿」
「……鋼のか」
直後に響いた凛としている澄んだ声が聞こえたと思うと、マクバーンはそこから妨害者の正体を察した。もう一人の結社最強にして第七使徒のアリアンロードであった。
そのアリアンロードがエスデスとマクバーンの間に割って入り、エスデスのサーベルを所謂ショートソードで、マクバーンの炎を纏った拳を馬上槍でそれぞれ防いでいた。アリアンロード自身が無傷だったことから、炎も氷塊も全て相殺してしまったのだろう。
「……鋼の、なんのつもりだ? 折角のお楽しみを邪魔するとは……」
「その様子からしてマクバーンの知り合いのようだが、同じくお楽しみを邪魔するとはどういうことだ?」
いきなり現れたアリアンロードに決闘を邪魔され、エスデスもマクバーンも機嫌を悪くしていた。
「もう当座の目的は達しました。なのに帝具の破壊を遂行するでもなく、無駄な戦闘を続けるのであれば力ずくでも連れ帰らせていただきます」
「……ああ、そういうことか。で、あちらさんもちょうどここに着いたみたいだな」
アリアンロードの言葉をすぐにまぐバーンは理解、その直後に宮殿の中からリィン達が出て来た。
「……他に侵入者がいたか。そして、そこにロイドが紛れている」
そしてエスデスはロイドに視線を移し、すぐにマクバーンの方に戻した。すると、今度はマクバーンの方からエスデスに声をかけてくる。
「鋼のが邪魔しちまった所為で、興が覚めちまった。また今度、仕切り直しと行こうぜ」
「私も同じく興が覚めたから、同意する。それに、もう一つすることも出来たからある意味丁度良かった」
そう言い、お互いに対決は強制終了ということで納得する。そしてマクバーンはアリアンロードに連れられて転移しようとすると、エスデスがまた声をかける。
「そうだ、最後に二つ聞きたいんだがいいか?」
「ああ、何だ?」
「我々にも為すべきことがあるので、手短にどうぞ」
ひとまずそれに同意し、マクバーン達は質問を聞くことにする。
「まずはそこ、貴様が先日に三獣士、リーダーが髭の男な三人組の帝具使いを倒したアリアンロードか?」
「ええ、そうですね。以上でしょうか?」
「今のはただの確認だ。見たところ私はマクバーンとも対等に戦えそうだが、今度お前とも仕合ってもいいか?」
三獣士の仇を取るとリヴァの亡骸の前で誓い、しかもその相手がマクバーンと同等かそれ以上の可能性があるのだ。戦闘狂のエスデスが放っておくはずは無かった。
「断っておきましょう。私は貴公のように戦闘そのものや虐殺を楽しむ気質ではないので」
「そうか……まあ、いずれ戦う可能性もあるからその時にでも無理やり相手をしてやるか」
アリアンロードは一寸の迷いもなくその申し出を断るが、エスデスは無理やりにでも戦う気満々だった。そして、もう一つの質問をマクバーンに振る。
「それとマクバーン、お前は私と帝具の混じり具合が半々と言っていたな。なら、お前の力はどのくらいの混じり具合なんだ?」
「ああ、いいぜ。俺の場合は……」
そしてマクバーンは、少し間を置いて……
「ぜんぶだ」
最後にそう答えたマクバーンは、アリアンロードと供に転移する。その去り際の様子に、凄まじい寒気を感じるウェイブ達だったが、エスデスはむしろ興奮すらしている。
(ぜんぶ……つまり異能そのものだと言いたいのか。ますます次に会う時が楽しみになってきたな。で……)
エスデスはマクバーンとの再会を楽しみにし、続いてロイドに視線を向ける。エスデスは先程までマクバーンと会話していたにも拘らず、ロイドやリィンに殺気をぶつけて牽制していた。そのため、先程は逃げるチャンスに見えてまったく隙が無かったのだ。
「待たせたな、ロイド。どうやら攻めて来たのはお前の仲間だったようだが、マクバーンとは知り合いだったのか?」
「一応、敵対勢力という間柄ではありますが俺の仲間がですね。まあ、察しの通り冒険家が嘘の肩書だというのは認めますクロスベル独立国警察の特務支援課所属、ロイド・バニングス特務捜査官。俺の本名と肩書は、今言った通りです」
「あたしも遊撃士所属のA級遊撃士、エステル・ブライト。これが本名よ」
「リィン・シュバルツァー、エレボニア帝国という国から来た一介の剣士だ」
そのままエスデスに、もう隠しても無駄ということでロイド達は己の素性を明かす。
「ロイド、お前ってこの間侵入してきた賊と仲間だったってことなのか?」
「ああ。結果的にだます形になってしまったが、そういうことだ」
「まさか、何処かの異国からスパイ、しかも警察の人間が送り込まれるとは予想外でしたよ」
ウェイブが真実を知って驚愕する中、
「俺達の目的はスパイじゃない。俺達の国で猟奇殺人があって、その犯人が帝具を使った可能性があったから手がかりを追って来たのが切っ掛けだ」
「この国の軍事関係者、主に暗殺や諜報といった裏の仕事をしている連中が、帝具の試験を目的にしている可能性もあった。だからこの国の中枢にも触れる必要があったんです」
そのまま自分達の目的なども、包み隠さずに打ち明けるリィン達。しかし、エスデスは信じるかどうか以前にそれに納得はしてくれそうになかった。
「お前達の素性や事情はどうでもいいが、私は戦闘も戦争も生きがいとしているからな。今の情勢に干渉されるのは少し癪だから、この場で始末してやるか」
言った直後にエスデスは凶悪な笑み―セリューのような異常者のそれでなく、背筋が凍るような静かな狂気を感じる冷めた笑顔を浮かべながら告げる。
「というのは冗談だがロイドは生け捕りにして調教、残りのメンバーは私の退屈しのぎの相手になってもらおうか」
そしてそれをすぐに解いたかと思うと、方向は違うが物騒な発言をしつつサーベルを構える。
「まあ、今の私はマクバーンと一騎打ちをした直後だからいくらか消耗している。付け入る隙はあるかもしれんぞ?」
「なるほど。それでも簡単に勝てるとは思えませんが、俺達の目的のためにも通させてもらいます」
そう言いながら、ロイドがトンファーを構えて臨戦態勢に入る。そしてそれに続き、リィン達もそれぞれの得物を構える。
「じゃあ、早いところやっつけちゃいましょうか」
「僕らだって、やるべきことがあるんで通させてもらいますよ」
「ああ。俺たちは前に進まなきゃいけないから、あなたを倒させてもらいます」
「貴方がロイドに惚れたように、私だってリィンに惚れているんです。だから、リィンと一緒に生きて帰らせてもらいます」
「私も若輩ながら、魔女の眷属としてそんなお二人を支えたいと思っています」
「私の大いなる愛は、アリサお嬢様とご実家のラインフォルト家に尽くしています。ですので、貴女様のことも断ち切って見せましょう」
そしてそのまま戦闘に入るかと思いきや
「喰らいなさい!」
「グランフォール!」
ランとウェイブがリィン達に攻撃を仕掛け、その回避をしたためにチームが分散されてしまった。
結果、リィン、ロイド、エステルとヨシュアがエスデスの近くに、残ったアリサ達はそのままウェイブ達残りのイェーガーズと対峙することとなる。
「ウェイブにラン、それにボルス。お前達はそこの連中を相手にしろ。私はロイドを筆頭に弧の四人を相手にする。お前らにこいつ等は勝ち目がないと思うからな」
「まさかの御指名か。でも、他のメンバーが妨害してこないならまだ勝率も上がるだろう」
「それでも、この人相手だと厳しいかもね」
「だからって、引くわけにいかないけど」
「ああ。敗走も考慮して、絶対に生きて帰る。その隙を見つければいいわけだしな」
ロイド達は順に、これから始まるエスデスとの対決で思うところを打ち明ける。
「でも……」
すると、リィンが再び口を開いてある物の名を告げた。
「戦術リンク。これがあれば一人で戦う彼女なら、なんとなく勝てそうな気がするんだ」
ここ最近、ご無沙汰していた絆を力に変える戦術リンク。これならきっと、エスデス相手にも通用する。消耗して、尚且つ一人で戦う彼女になら確実だった。
「それじゃあ、行こうかエステル」
「ええ。フォロー頼むわよ、ヨシュア」
直後、エステルとヨシュアが青い光に包まれ、そこから帯状の光が伸びて二人を繋ぐ。
「なら、俺はリィンとか。……初めてだけど、上手くいけるか?」
「きっと……いや、必ずうまくいく。そんな気がするんだ」
そして早速繋いで見ると、リィンとロイドは黄色い光でエステル達と同じ現象が発生した。そして、戦術リンクは使用者同士で不和が生じるといきなりリンクが切れてしまうが、特に問題無さそうに繋がったままだ。
「その光がどういう者かは知らんが、お前達の力という訳か。果たして、マクバーンのように楽しませてくれるものだろうか」
そう言いつつ、未知の力との闘争に嬉々とした様子で臨戦態勢に入るエスデスだった。
そして、リィン達もそんな彼女を迎え撃とうと準備する。
「みんな、一気に行くぞ!!」
「「おお!」
「ええ!」
「かかって来い、異大陸の戦士達!!」
今、帝国最強との対決が始まった。
エスデスとの対決まで書きたかったんですが、キリがいいので今回はここまで。
そして、皇帝は特に名前なども付けずにただ皇帝とだけ表記しようと思います。原作でも結局は名前が出てないままなので、下手に考えても読みにくくなりそうなので。