先日、ファルコムマガジンが出たので見たんですがいよいよ哮天獅子バルクホルンが出てくるようで楽しみです。で、新キャラっぽい子に紛れてトールズの校証が入った服着たアルティナの姿があったんですが……種ちゃん(種田梨沙さん)、復帰願ってます。
第24話 開幕、新たなる物語
西ゼムリア同盟の介入宣言から数日が経過。
カレイジャスの一室。
「ご馳走様。アリサもタツミもありがとう」
「お粗末様です」
「デザートランナーの肉、気に入ってもらえてよかったです」
リィンはベッドの上で食事をとっており、今しがた食べ終わったところだった。メニューはタツミが取ってきたデザートランナーという危険種の肉、それを用いてアリサが作ったシチューだった。デザートランナーはエビルバード同様、食用になる鳥形危険種だがダチョウやオオミチバシリの様な飛べない鳥らしい。タツミはこの肉を使った唐揚げが好物らしく、しかもスタミナが付くということで、今のリィンにちょうどいいと踏んだらしい。そして病み上がりの彼にも食べやすいよう、アリサがシチューにしたわけだ。ちなみにアリサの得意料理は、社長令嬢でありながら意外にもカレーやコロッケなどの家庭料理で、シチューもその一つだったわけだ。
「今度は体力とかしっかりしたときに、改めて唐揚げをご馳走しますから楽しみにしてください」
「ああ、楽しみにしている。というか、体調は流石に数日も休んでたから、すっかり良くなったよ」
そういい、リィンは立ち上がると同時に伸びをする。そして、アリサがそれを終えるのを確認して包帯を取る。細いながらにしっかりと筋肉がついた、戦士として完成された肉体である。そしてその胸に、鬼の力と何か関係あると思われる、炎のような形の痣があった。
そんな中、タツミがその肉体を見てつい感想を漏らす。
「しっかし、いい体してるっすよね。俺もリィンさんが羨ましいですよ」
「タツミだって、いい具合に鍛えこんだみたいじゃないか。向こうでの生活と鍛錬が、いい刺激になったみたいだな」
その一方で、リィンもタツミに鍛錬の成果が出ていることを感じ取る。彼が遊撃士を志望したことに、自分たちがここに来たことにいい影響があったとつい嬉しくなる。
そして同時に、あることに気づいてそれについて指摘する。
「ただ、会長からクロウの戦い方を継いだって聞いたときは、流石に驚いたけど……」
「なんか、向こうでトワさん達に話聞いたら……もしかしたらナイトレイドに入ってたかもしれない俺と重なって…」
タツミが双刃剣での戦闘スタイルを継承した胸の内を聞き、その意味に納得する。確かに、タツミはナイトレイドの最終目的を聞いて賛成しそうだった。それを考えれば、彼がナイトレイドに入ってその報酬での仕送りや革命で極端な徴税を抑えようとしてもおかしくはなかった。
「……なるほど。クロウも、タツミみたいなまっすぐな男に戦い方を継承してもらって、草葉の陰で安心してるだろうな」
「なんか、アンゼリカさんにも似たようなこと言われたな……リィンさんも受け入れてくれて、よかったっす」
そのリィンの評価に、タツミもつい照れ臭くなってしまうのだった。そんな中、もう一つ継ぐこととなったある力とそれを用意した人物のことが二人の頭の中に浮かんでくる。
「しかも、クロチルダさんからアレまで託されて、今その試練を受けてる途中だとか…」
「はい。とりあえず、第一の試しはサヨと二人で突破して、他の階層を攻略してる最中にこっち来る予定が、って具合っすね」
「やっぱり、結社の思想云々を抜きにしたら、あの人も根っからの悪人じゃないんだな」
そして同時に、ヴィータから皇帝を預けられた時のことを思い出した。
~回想~
「それじゃあ、私たちはそろそろ置賜させてもらうけど、他に聞きたいこととかあったりするかしら?」
皇帝のカレイジャス滞在が決まり、ヴィータとカンパネルラも去る準備をしていた。しかし、あることが気になりヨシュアが問いかける。
「それじゃあ、一つだけ」
「あら? 何かしら、ヨシュア」
「一度、ナイトレイドのアジトに連れて行かれたんですが、その後に帰り際で襲撃してきた異民族に、戦術導力器を使う男が一人いたんです」
確かに、何故か異民族の中に戦術導力器のエニグマを持つ男がいた。ここに度々干渉している可能性があった結社が、ここに流した可能性は否定できなかった。
「まさかとは思いますけど、結社が絡んでいたりは……」
「ええ。主に博士がね」
しかし、ヴィータは意外なことにあっさりとその詳細を明かした。そのため、ヨシュアは驚いてしまう。
「博士。つまり、第六柱のF・ノバルティスの事か」
「ええ。博士は知的好奇心が強いから、それが暴走してそこいらの帝国にいる勢力に人形兵器とかいろいろ提供してるのよ。結社の力がどこまで帝具に通用するかっていう大義名分でね」
「博士の暴走、盟主に変わって僕らが謝罪しよう」
珍しくカンパネルラまでが真面目に謝罪してきたため、少なくともこの二人に関しては今回は白だと判断された。
「……わかった。今回は僕らへの協力もあるから、それを信用しよう。ただし」
一応、ヨシュアは了承するが最後に念を押すように告げるのだが……
「もしエステルやリィン、ロイドといった僕の恋人や仲間があなたたちの奸計で危機に陥ろうとするのなら、玉砕覚悟で一切の容赦もなく切り刻ませてもらう」
凄まじいまでに寒気を感じる目つきで、はっきりと告げた。元執行者No.XIII”漆黒の牙”としての彼の名残である。
「ええ。でも、私たちもただじゃ死ねないから抵抗はさせてもらうけど」
「それじゃあ、話はそれで済んだみたいだし今度こそ置賜させてもらうね」
しかし二人は、余裕そうに流しながら帰還の準備を始める。カンパネルラが指を鳴らすと二人の体を炎が覆ったが、カンパネルラの炎を用いた幻術による転移であった。
「陛下、今後のあなたに期待していますよ」
「それじゃあみなさん、ごきげんよう!」
最後にそれだけ告げて、去っていったのだった。
~回想了~
「さて。そろそろ、ミーティングに行くか」
「ええ。みんな、リィンの復帰を心待ちにしてたんだから」
「いけね。俺もサヨを待たせてるんだった」
一件を思い出し終えたころ、リィンも着替えが完了したので部屋を後にするのだった。
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同時刻・帝都にて
「……これが、大臣が余に隠していたことだったのか」
「ええ。正直、話に聞いた以上です」
皇帝はクローゼや護衛のユリア、ミュラーといった面々に連れられて街の様子を見ていた。揃って庶民的な格好をして、周りにバレないようにしている。
貧しさに喘ぐ民、私腹を肥やす貴族、ここまでなら他にもみられる国はあるだろう。しかし、広場には処刑台が立ち並び、老若男女問わず病んだ眼をした人がチラホラと見られ、この国の異常を物語っていた。
「一般市民が生活できないレベルの徴税、それが一度や二度出来ないだけで処刑、まさに暴君のそれだな」
「例の大臣がどこまで腐っているか、街の様子を一目見ただけでわかるな」
ユリアもミュラーも、この状況を作り出し維持している大臣や、彼を支える貴族の暴虐ぶりにはご立腹のようだ。しかしその一方、ミュラーはあることが気になっていたのだった。
「しかもそんな中で、あのバカ皇子は一人でほっつき歩いている……考えただけで頭が痛くなる」
「ミュラー殿、少し肩の力を抜いたらどうだ?」
オリビエが一人どこかへと消えてしまったらしい。そんな状態で服装はスーツにサングラス、というため結構怖かったりする。そしてそんな彼に少し怯えながらも、皇帝が抑えようと頑張っていた。妙なところで傑物らしさが出てきている。
「ところで、ミュラー殿はなぜそのような格好をしているのだ? もっと庶民じみた格好があったと思うのだが」
「あのバカは素性を隠すとき、決まって演奏家を名乗っているのでな。俺はそのマネージャーという形で同行しているゆえ、このような格好になっているのです」
「そ、そうか(どちらかというと、その道の人間に見えるのだが……)」
ミュラーの返答に、思わず苦笑いしてしまう皇帝。しかしそんな中、さっそく事が起こってしまった。
「何ィイ!? 金が無いから一日待てだと!?」
近くからそんな声が聞こえたと思いきや、声の主らしき人物が一人の男を突き飛ばした。声の主の男は禿げ頭に小太り、カイゼル髭を生やした如何にもな小悪党。突き飛ばされたのは痩せ気味のボロイ服を着た男だった。今の言葉から察するに、それぞれ徴税官と取り立てられている市民だろう。そんな中で、男の家族と思しき子供や女性が駆け寄ってくる。
「パパに乱暴しないで、オジサン!」
「よしなさい……どうか、一日待ってもらえないでしょうか?」
「明日には給料が入るんだ。だから、それで税を払うから待ってほしいんだ!」
「ダメだね。期日は守らなければ、貴様も不穏分子として処分せねばならん。現金でなくともいい、とにかく今すぐ持ってこなければ……」
そして徴税官は、下卑た笑みを浮かべながら一家に無慈悲に告げる。
「貴様ら一家、いや親類縁者全員を反乱分子とみなして公開処刑する。そして土地を含めた全財産を皇帝一族に献上させてもらおう。そして今この場にいる者ども、庇い立てするならば全員に同じ罪を着せるぞ!!」
余りの横暴ぶりに、この場にいた皇帝やクローゼも腸が煮えくり返る思いになる。
(余は、そんなことを望んでおらん! 今すぐにやめさせて……)
(待ってください。今行ってもあなたが皇帝だと信じてくれないでしょうし、下手をしたら一緒に……)
(クローディア殿、ではこのまま黙ってみていろと……)
皇帝が動こうとした直後、クローゼは怒りを抑えながらそれを制止する。罪なき一家が暴虐の犠牲になろうとしたその時
♪~~♪
どこからかリュートの音色が聞こえた。
「やれやれ、哀しいことだね……」
直後に現れたのは、白いコートを纏い、先ほどの音色の元と思しきリュートを携えた金髪の青年。それこそ、オリヴァルト皇子が素性を隠す際に用いる、旅の演奏家”オリビエ・レンハイム”としての姿であった。
(え? オリヴァルト殿、何をしてるのだ??)
(あはは……やっぱり、なってしまいますよね)
(話には聞いていたが、あれがか)
(あのバカが!)
その様を始めてみた皇帝は困惑し、クローゼも苦笑、そんな彼に苦労しているミュラーは、今にも殴り掛かりたいという気持ちを押し殺している様子だった。
「争いは何も生み出さない……虚しい亀裂を生み出すだけさ。そして、金欲に溺れた君も愛を知らない哀れな迷い子」
いきなり現れてズケズケと言ってのけるオリビエに、一家も徴税官も、果ては観衆も視線をオリビエに向けてしまう。
「そんな君たちに歌を送ろう。心の断絶を乗り越えてお互いに手を取り合えるような、そんな優しくも切ない歌を……」
そして、オリビエはリュートを演奏しながら歌い始める。歌自体は切ない曲調のバラードでいいのだが、ぽっと出の怪しい青年が歌っているので周辺の人々は硬直していた。ちなみに、エレボニア帝国で人気の”琥珀の愛”という楽曲だというのは完全な余談だ。
そして演奏を終えたオリビエは前髪を払って言ってのけた。
「フ……みんな感じてくれたようだね。ただ一つの真実、それは愛は永遠だということを。
今風に言えば、ラブ・イズ・エターナル」
直後、なぜか彼の表情が輝いて見えたのだが、周囲の人間は一人残らずキョトンとしている。そして
「えっと、今回は見逃す。また明日、来るから税金を用意しておけ」
そして徴税官の男は一家に一方的に告げて、逃げるように去っていった。オリビエのおかげで、とりあえず時間は稼げたようである。
「……は! イカン、非常事態だというのに何を固まってるんだ!?」
「あなた、とりあえず時間は稼げたわ。あとはお給料が入るまで凌げれば……」
ひとまず、無事を確かめて安心する一家。そんな中、皇帝とクローゼが一家に近寄ってきた。
「すまぬ、少しいいか?」
「え、子供?」
突然、仰々しい口調の子供が近寄ってきて声をかけてきたので、一家の父もまた固まってしまう。しかし、直後に皇帝はあることをしたのだった。
「その様子だと明日税を払っても生活が苦しいだろう。これを売って足しにしてくれ」
そう言って、指輪を外して父親に渡す。赤い宝石が付いた、高価そうな代物だ。
「え!? でも、そんな……」
「一人で大金を抱えるのが怖いというなら、周囲の者たちと分け合ってもよい。遠慮するな」
少なくともこの行いで一般庶民ではないことはバレてしまうが、なるべく一人称を使わないなどの工夫をして、皇帝はうまく素性を隠しながら力になろうとしたのだ。
「こんな子供で高そうな指輪を……君、貴族か?」
「まさかとは思うけど、私たちを騙そうとしてるんじゃないでしょうね?」
当然、いきなり理由もなく善意を向けてきたので疑う夫婦。善人を装って暴虐を行う人間が多い帝都では、当然だった。
「単にあの男の行いを見ていて腹が立った。これは自己満足でやっているだけだから疑う必要はない。なんなら、換金に同行してもいいぞ」
「というか、いきなり質屋に持ってこられてもお店の人に疑われるでしょうから、同行させていただきます。これで信じていただけないでしょうか?」
しかし皇帝とクローゼがそろって告げ、その胸の内を明らかにしていく。そして、二人の目を見て夫婦は言葉に嘘が無いことを確信した。
「わかった、これはありがたく使わせてもらう」
「信じてくれて、感謝する」
そして二人に礼を言う夫婦は、次にオリビエに視線を向けた。
「あなたも、徴税官を抑えてくれて助かりました。ありがとうございます」
「いや、礼を言われるほどでもないさ。僕は愛こそが世界を回すと信じる旅の演奏家、故に愛のないこの国の現状を憂いているだけの事さ」
「ああ、国の現状に関しては同感だがこの馬鹿の言うことは真面目に聞かないでいいぞ。この男のマネージャーとして、忠告しておく」
またオリビエが愛について語ったことに、ミュラーが割って入ってきて告げた。それに対してシュン、としてしまうオリビエに場が和むのだった。
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「……以上が、私が軍に志願したのと文官志望の理由です」
「そんなことがあって、いいのか?」
その頃、宮殿にあるイェーガーズの詰め所でランがウェイブ達に初任務で語った叶えたい願い、アリサたちとのやり取りで出てきたそれにまつわる過去、それらの詳細について話していた。
元教師で、経営していた村の学校の生徒たちが凶賊に皆殺しにされた。しかも領主が村の治安がいいという評判を落とさないために隠ぺいした。似たようなことを各地で大臣への賄賂で許可されていたこと。包み隠さず話した。
ウェイブにはアリサ達との戦闘後で話すといったが、結局はゼムリア大陸からの飛行艇による騒ぎを鎮圧するなどの任務で後回しになり、今になってようやく話せたのだ。
「はい。オネスト大臣や彼に賛同する貴族や文官に賄賂さえ払えれば、あらゆる罪状や事件を隠蔽可能。今のこの国はそんな状況になっています」
「オーガとかいう警備隊長が似たようなことしたって聞いたが、そんなのが何人もいるのかよ……」
余りにも悲惨、イヤ凄惨な帝国の惨状を聞いてウェイブは驚嘆していた。そしてそれに対して、一緒に話を聞いていたボルスとクロメも口を開いた。
「うん。私も疫病が蔓延した村を命令で焼き尽くしたり、そんな滅茶苦茶な罪で死刑になった人を何十人も帝具で火あぶりにしてきたよ。前者に関しては、もしかしたら反乱軍掃討のためのでっち上げなんじゃないかって思う時もある」
「私もこの国の在り方は間違っていると思う。反乱軍に行こうとした良識派の将軍だって、骸人形にしちゃったし」
二人が語ったその業に、ただウェイブは驚くしかなかった。しかし、二人はそのまま話を続ける。
「でも、それでも一緒に戦った仲間、カイリみたいに生き残っている仲間や骸人形にしたナタラみたいに死んじゃった仲間、そのみんなを裏切りたくないから今もここにいる」
「私も、それでも連れ添ってくれる妻や娘を守りたいから今もここにいる。反乱軍が戦いを起こしたら、私はともかく二人の幸福を潰してしまうかもしれないからね、戦争を阻止しないといけないんだ」
「ええ。私も復讐は考えていますが、反乱軍のように数多の命を巻き込むやり方は許容できませんのでね。反乱軍を止めるまでは文官にはなるつもりもないです」
三人の語った決意に、ウェイブは少し考え、何かを決心する。そして二人に向き合って言葉を発した。
「俺も、海軍の恩人や田舎に残した母ちゃんの為に戦う。そんでもって三人、いやセリューの物騒な物言いのフォローも含めてみんなの力になってやる。だから、みんな俺の事をこれからどんどん頼ってくれ!!」
「いや、ウェイブまだそんなに頼れる感じしないから、逆に私が守ってあげるけど」
しかしいきなりクロメにそう返され、場が静まり返ってしまう。
「……で、でもこれから強くなっていけばいいんだし、その投資……って言い方は変だな。とにかく、今は未熟だけど先を考えて頼ってくれれば」
そこまで言い切ったところで、詰め所の扉を開けて入ってきた人物がいた。
「アナタ、お弁当忘れてたわよ」
くすんだ金髪のものすごい美女が、自分によく似た少女を抱いて入ってきた。しかも口ぶりから夫に会いに来たようだが、この時点で正体が判明した。
「ま、まさかこの人が、ぼ、ボルスさんの?」
「うん。私の妻と、一人娘のローグ。さっきも話したけど、私の仕事とかを知ったうえで連れ添ってくれてるんだ」
そしてボルスは二人の元に駆け寄っていき、そのまま話を始める。そして少し話したところで、再びウェイブに向き合う。
「だから私も頑張れるし、ウェイブ君は今は自分の事だけを考えて突き進めばいいと思うよ。でも、これから先に大変なことがあるかもだし、その時はよろしくね」
一応フォローは入ったのだが、ウェイブはボルス一家の幸せオーラに充てられてその場で崩れ落ちてしまう。そしてそんな彼の肩をクロメが叩き、無言の慰めが入ったため、ウェイブは自分の情けなさに泣き出してしまうのだった。
(クロメさんもさっきはああ言いましたが、君には期待しているようですよ。それに、私もあなたのまっすぐな所には期待しています。あのゼムリア大陸とやらから来た若者たちにも、そこは負けていませんからね。私も期待させてもらいます)
ランもウェイブを調子に乗せるのではと思い黙っていたが、内心ではウェイブに期待しているらしい。尤も、そんな彼らの真意を本人が知るのはもうしばらく先なのだが。
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翌日、リィン達はある場所にカレイジャスで訪れていた。そこはマーグ高地という危険種の群生地であった。そろそろリィンの体力が万全になったので、勘を取り戻すのとタツミ達増援組との連携を図るのにちょうどいいと判断、鍛錬に入ろうと思ったわけだ。
「高地だけあって、空気が薄いな。果たしてどうなるやら」
「リィンの実力なら心配はないと思うけど、病み上がりにこれは結構負担がかかると思うから、無理しないでね」
リィンとアリサは新しい服に着替えて、それぞれの得物を片手に高地を進んでいく。
リィンは上着が赤いジャケットから白いコートに変わり、剣聖の二つ名に相応しい落ち着いた佇まいになっている。アリサも胸元が強調されたノースリーブの服の上から白いジャケットを羽織り、大人っぽく決まっていた。
「な、なぁサヨ……アリサさんのあれ、なんかエロくないか?」
「私に振らないで、バカ」
「ヘケッ!?」
その後ろでタツミがサヨに振った話題のせいで殴られていたが、二人ともスルーしている。
「あたしもそろそろイメチェンした方がいいかな? アリサって一応、一つ下だったはずだし」
「エステルが本心でしたいならいいけど、そういう理由だったらお勧めしないよ」
そこに同行する、エステルとヨシュア。二人とも揃って普段通りの恰好だが、実はエステルは正遊撃士になってから今のオレンジのスカートを履くようになり、ヨシュアも何度か服装を変えたりしている。なので今更イメチェンという気も起きなかったようだ。
「……近くから水の音が聞こえる。この勢いからして、滝か?」
そんな最中、リィンが音に気付いたので一行が駆け出す。そして到着したのは、崖の下を流れる川だった。近くに音の発生源と思しき滝が流れていた。
「おっし! それじゃあ、水棲危険種でも釣りますか!!」
そう意気込みながら、タツミが釣竿を取り出す。すると、それにエステルとリィンが反応した。
「それって、レイクロードスターか?」
「レイクロード社の超高性能釣竿じゃない」
「はい。向こうでリィンさんの同級生だっていう、ケネスって人から貰って」
ケネス・レイクロード。トールズ士官学院貴族クラス所属の、リィン達の同級生。エレボニア帝国の老舗釣り具メーカー・レイクロード社の次男でもある。いつの間にか意外な人物と知り合いになっていたことに、リィンも驚いていた。
そんな中、エステルもあることに気づいた。
「そういえば、二人が今履いてるスニーカーってストレガー社のロゴがついてるけど、まさか最新モデル?」
「あ、はい。グランセルで修行中に、シェラザードさんが買ってくれて」
エステルの趣味は釣りと一緒に、ストレガー社のスニーカー収集だったりする。細かいところを見ていると、タツミ達がゼムリア大陸の生活に染まりつつあるという事実があった。
「さて。それじゃあ、釣りにでも興じますか」
「それじゃあ、誰が大物を釣るか競争にでも入るか」
「修行から離れてる気もするけど、あたしも賛成。釣れたのが危険種なら、その場で戦えばいいし」
そういい、三人そろって釣竿を取り出して糸を垂らす。アリサもヨシュアも呆れながら見守っていると……
「お、かかった!」
「タツミが先手を取ったか。やられたな」
「爆釣王のあたしから先手を取るって、やるじゃない」
タツミが手ごたえを感じ、一気に引っ張ろうとする。だが、以外にもあっさり引き寄せられた。しかし、それを見てみると
「あ、あれ?」
「ぶ、ブラジャーか、それ?」
「いや、どっちかというとビキニじゃ…」
釣れたのはなぜか女物の水着だった。危険種の群生地で、まさかの水浴びかと思わずポカンとしていたが、すぐに正気を取り戻して三人は慌てだした。
「え、えええ!? なんで、なんで水着が!」
「落ち着け、タツミ! とりあえず、そこにもう一回投げ入れろ!!」
「そうよ、急いで! でないと、セクハラで捕まっちゃうから……」
しかしその直後、下からの強烈な殺気を感じ取って飛びのく。すると、激しい音と同時に崖下から光線が放たれてそれが地面を消し飛ばしたのだ。
「な、何だこの威力?」
「まさか、誰か帝具使いでもいるんじゃ……」
「まさか賊の類か? だったら、持ち主の女の子が襲われてるかも!」
「タツミ、一人じゃ無茶だ! それに、その女が攻撃してきたんじゃ……」
そしてそのまま、リィンの制止も聞かずにタツミは崖から飛び降り、攻撃してきた張本人に向かっていく。
「アリサ、追うぞ!」
「わかったわ!」
そしてそのままアリサを負ぶさり、リィンも後を追う。
「二人とも、僕も行くよ!」
「サヨちゃん、負ぶっていこうか?」
「大丈夫。これでも準遊撃士ですから」
そしてエステルとヨシュア、サヨも追いかけて崖から飛び降りる。
そして着水し、タツミは近くの岩場に上がって双刃剣を構える。
「おらぁ賊共! 遊撃士規約に則って、お前らを拘束するぞ!!」
「タツミ、持ち主の女の人が賊って可能性もあるんじゃ…」
「あれ? あんたら」
直後、聞き覚えのある声が聞こえたので視線を向けるリィン達。続いて到着したエステル達も、視線に映った人物を見て驚いた。
「あれ? あの子って、確か」
「ナイトレイドの、マインちゃんだっけ?」
「賊じゃなくて、ナイトレイドがいるのか?」
エステルの言うとおり、そこには胸元を巨大な銃の帝具パンプキンで隠している、マインの姿があった。
予想外の形で、ナイトレイドと再会を果たすこととなった一行であった。
オリビエのあれは一回やりたかった。なので満足である。
そしてリィアには心機一転、閃Ⅲのティザーサイトに載ってた衣装に着替えさせてもらいました。しかしアリサの新衣装、作者の語彙力のせいでうまく説明できず。
Orz
P.S.デザートランナーは名前聞いた瞬間、ロード・ランナー(バッグスバニーに出てくるアレ)を連想したので飛べない鳥と解釈しました。