英雄伝説 斬の軌跡(凍結)   作:玄武Σ

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意外に書けない。難産な作者で申し訳ない。しかも最近、FE覚醒に嵌るという……自己管理して、こっちも書けるよう頑張りたいです。
話題は変わって閃Ⅲまで2か月を切り、webで先行CMが流れ出しましたね。ちらっと流れた主題歌、かっこよすぎか! そこはいつものファルコムさんと感心しましたね。

今回は騎神戦とナイトレイドとの語らいです。


第27話 騎神の力・想いの強さ

「何ですって!? もう一度言ってちょうだい!!」

 

リィン達がマーグ高地で戦闘しているのと同時刻、Dr.スタイリッシュが研究室で部下から聞いたある報告を聞いて驚愕していた。その内容を信じられず、再び報告を聞いてくる。

 

 

「帝国各地の秘密実験所が爆破され、迎撃のために解放された検体も一匹残らず死亡していました」

「証拠だってあります。死んだ検体という、これ以上ない物が」

 

そう言いトビーとカクサンが見せてきた物は、ロイド達がマーグ高地で遭遇したものと同種の人型危険種の死体であった。そしてその死体は、体の各所に銃痕や切り傷を作った、文字通り八つ裂き状態である。

 

「死体の様子からして、真正面から戦って惨殺された感じね」

「はい。各現場に残っている死体も、同様になっています。攻撃手段まで同じということは、お分かりですよね?」

「……たった一人か、全く同じ規格の武器を持った集団に壊滅させられたというわけね」

「ええ。前者だったら帝具使いか将軍級の戦闘力を持つ化け物、後者なら超大規模の勢力、といったところですね」

 

正体不明の敵対者が出現し、スタイリッシュも警戒する。そんな中でトビーにあることを尋ねる。

 

 

「何か犯人を調べるための手がかりはあったのかしら?」

「一応、それらしきものがあったのですが……」

 

そう言い、トビーが見せたのは一枚の紙きれに書かれた絵だった。

 

「……蛇が自分の尻尾を噛んでいる、紋章?」

「ええ。見たことない字で何か書いているんですが、ご丁寧に帝国の文字での翻訳も一緒でした。で、それによると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”身喰らう蛇”と書いているようです」

 

まさかの身喰らう蛇の名が、こんなところにまで現れた。これで実質、帝国側にも彼らの名が知られたこととなる。

 

「エスデス様が戦って楽しかったとか話してた男、そいつがいた組織の名前らしいわね。つまりまた未知の勢力がここに乗り込んできたと……面白いじゃない」

 

そういうスタイリッシュだが、その表情はどちらかと言えば憤怒の色合いが強い。自分の拠点が攻められたため、嘗められていると考えたようだ。

 

「そいつらが見つかり次第、あたしの手で直接実験やら拷問やらしてやろうじゃないの! この天才、Dr.スタイリッシュ様をバカにしたこと、一生後悔させてやるわ!!」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

マーグ高地にて謎の巨人型危険種が出現し、リィン達は対抗するために騎神を起動することを決意した。そして、三体の騎神がついにその力を異大陸で振るう時が来た。

 

「リィン、エステル。このデカブツを抑えるのを、手伝おう!」

「やっぱり、ロイドのいたところからも見えていたみたいだな」

「さて。久しぶりの騎神戦、行っちゃいますか」

 

リィン達がコクピットからそれぞれに呼び掛け、三体の騎神を戦闘態勢に入らせる。直後、目の前の巨人型危険種が拳を振り下ろしてくるのが見えた。

 

「やばい、回避だ!!」

 

咄嗟にリィンが周りに呼び掛け、騎神達はジェットを噴射して攻撃を回避する。更にその直後、巨人型危険種の体に繋がれたコードがひとりでに動き出し、それが触手の様にこちらへ目掛けて伸びてきた。しかもその先端に、注射のような針が生えている。

 

「ちょ、嘘でしょ!?」

 

エステルは驚くも、騎神の武器でそれをいなす。リィンとロイドも、それぞれの騎神を操って攻撃をいなしていく。

 

「合成素材の触手……ますます自然の生物じゃなさそうだな」

「リィンも流石に気づいているか。で、俺たちはさっきこれと近い見た目の危険種と遭遇したんだが、ちょっと嫌な予感がするんだ」

 

ロイドは目の前の危険種に、先ほど相対した人型危険種と同じ違和感を感じてそれを伝える。

 

「……なるほど。人型で人工物を体に付けているから、何かあるとは思ったが」

「この国であり得ない物を見てきたから、あり得なくもないかもね」

 

ロイドのその言葉だけで、なんとなくだがそれを察した。事実、Dr.スタイリッシュは天才的頭脳と帝具の力で人体への武器や危険種の細胞を移植という、技術的にも倫理的にも不可能な改造を行っている。この危険種も、それによる産物だというのは、少なくとも確実だった。

 

「コイツが何者にしろ、放っておいたら危険だ。無力化するぞ」

 

そのままロイドが告げると、リィンとエステルも続いて騎神の得物を構えなおして戦闘に突入する。

まずはエステルが操るドルギウスが片手で棒を振り回す。ペン回しの様に指だけで、器用に高速回転させていたのでその動作の精密性がうかがえる。そして回転を止めると同時にダッシュし、一気に懐へ飛び込むと同時に巨人の鳩尾に重く鋭い突きを放つ。

 

「え、硬!?」

 

しかし想像以上に皮膚が頑強だったようで、コクピット越しに衝撃が走ってきた。巨人も流石に攻撃されたことには気づいたようで、ドルギウスを叩き落とそうとする。。

 

「ブレイブスマッシュ!!」

 

しかしエステルが回避に回るより前に、ロイドがウィルザードで自身の技を放つ。トンファーを構えた状態で高速回転しながらの突貫。何気に螺旋の要素が組まれた技で、騎神のジェットバーニアによる推進力と回転運動により生じる異なる方向の運動エネルギー、それを掌に叩き込まれたため大きく腕が弾かれることとなる。

 

「四の型”紅葉切り”!!」

 

そしてそれによって生じた大きな隙をついて、リィンがヴァリマールで抜刀術を放つ。攻撃した場所は巨人の首筋、つまり動脈部である。ひとまずいつもの魔獣討伐の要領で、この巨人型危険種も仕留めるつもりで攻撃したリィンだった。

しかし、何故か傷を負ったにもかかわらず、首からは出血すらしないという謎な事態になってしまう。

 

「どうなってるんだ、一体……二人とも、いったん距離を取って観察するぞ」

『オッケー。それにしても、あれだけ深く切られて血も出ないのは、流石におかしいわね』

『人工生物だけあって、血管の流れ方まで弄られてるのか?』

 

目の前の巨人型危険種の不可解な様子に、距離を取りつつも考察する三人。しかしそんな中、リィンがある物に気づいた。

 

「!? 二人とも、あの危険種の額を見てくれ!!」

 

そしてリィンはエステル達にもそこに視線を向けさせる。するとそこに、信じられない物があった。

 

「え? 何よ、アレ??」

「何か生えている……あれは!?」

 

謎の巨人型危険種の額、そこから拘束具で体を覆われた人間の上半身(・・・・・・)が生えていたのだ。

 

「まさか、あれが本体?」

「恐らくそうだろう……嫌な予感が当たってしまったな」

「うん………”人間を危険種に変えてしまった”わけね」

 

やはりというか嫌な予感が当たってしまった。そしてロイドの脳裏にエスデスが話していたDr.スタイリッシュの帝具の詳細、リィンとエステルもロイドから聞いたその話を思い出していた。

 

”神ノ御手”パーフェクター:装着者の手先の精密さを数百倍にはね上げる、手袋の帝具。Dr.スタイリッシュはそれと自身の天才的頭脳を使い、近代兵器の開発や人体改造による強化人間を生み出している。

恐らく、ロイド達が遭遇したあの人型危険種と目の前の巨人型は、その強化人間を生み出す一環で人間から作られた危険種なのだろう。

 

「人を異形の怪物に変えてしまう……その発想に至ったこととそれを実現してしまう帝具、やっぱり恐ろしいな」

「ああ。あのドクター、結社のノバルティス博士よりもマッドな思考をしてるらしい」

 

余りにもマッドすぎるDr.スタイリッシュに、嫌悪感を丸出しにする三人。しかしそれをよそに、巨人は再び攻撃を仕掛けてきた。

ひとまずそれを回避すると、ロイドがある提案をしてくる。

 

『リィン、あいつの首の切れ込み、もっと深くできないか? そこから先は俺に任せてほしいんだが』

「もっと威力のある技を出せばたぶん……なるほど。そういうことか」

『大方の予想はついたわ。あたしは隙を作るから、上手くやってね』

 

ロイドのその提案で、何をするかを察した二人。そしてエステルが宣言したとおり、巨人にとびかかって隙を作る。

 

「行くわよ、金剛撃!」

 

エステルは巨人の胴に、飛び切り重い打撃を叩き込む。よほどの衝撃だったのか、そのまま巨体を大きくのけ反らせた。しかし、すぐに持ち直して反撃に入る。

 

「まだまだよ。百烈撃!!」

 

だがエステルも伊達にA級を名乗ってはいない。巨人が反撃に入るよりも前に、更に超高速の連続突きを叩き込んで一気に隙を作る。

 

「それじゃあもういっちょ……捻糸棍!」

 

そして距離を置いたエステルは棒先に気を練り、その場で一回転してから一気に撃ち出す。騎神の運動性能により加えられた遠心力は、生身で撃ち出す同じ技よりも勢いよく気を放った。そしてついに、巨人はその巨体を地に伏せることとなった。

 

『チョロイチョロイ!』

 

エステルはドルギウスのコクピット越しに言うと、再び棒を高速回転して構えなおした。

 

『エステル、こっちも準備が終わった。あとは任せてくれ』

 

一方、リィンはヴァリマールで次なる技を繰り出そうと溜めに入っていたが、それが完了したところである。ヴァリマールの持つ刀には金色に輝く気が纏わっており、先ほどまでとは段違いの攻撃力を見目ているのは目に見えていた。

 

「八葉一刀流・七の型」

 

呟いた直後、リィンは立ち上がろうとする巨人へと急接近する。そして刀を振りかぶり

 

「無 想 覇 斬!!」

 

技名を叫び、先ほど付けた首筋の傷目掛けて刀を振り下ろす。そして納刀すると同時に、傷口で気がさく裂してより深い傷を負った。そして食道近くの中心に近い場所に傷が達し、ようやく出血する。

 

「ようやくダメージらしいダメージが入ったか。だが、あとは決めるだけだな」

 

そしてその様子を見ていたロイドは、ウィルザードを遥か上空、というか大気圏外まで飛ばし、トンファーを構える。そして地上の巨人を目掛け、急降下した。

 

『メテオ・ブレイカぁああああああああああああああ!!』

 

そして技名を叫びながら、縦に高速回転して巨人の頭部に激突。その威力とリィンによってつけられた首の傷、いや切れ込みによって頭が丸ごとちぎれ飛んだ。

 

『おっと、危ない!』

 

そして巻き添えを食らわないように離れていたエステルが、ドルギウスで飛んできた首をキャッチ、ゆっくりと地上に降ろす。

エステルがあの巨人の方を見ると、その巨体が倒れていく様子が見える。そしてそこから、リィンとロイドも駆けつけてきた。

 

『とりあえず、無力化は出来たわね』

『あとはあの額の人間を、引きはがす手段を見つけないとな』

『言ってみればコイツも被害者、助かる可能性を探す前に息の根を止めるわけにもいかないからな』

 

見てみると額の人間はまだ生きているようで、やはりこちらが本体であの巨人を操っていたと思われる。支援課が遭遇した人型危険種と合わせて、元に戻す手段がないかを調べないといけない考える。

 

「グワォオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

しかしその直後、またも巨大な方向が聞こえたので、そちらに視線を向ける。

 

「な、もう一体!?」

 

なんと、同じ巨人型の危険種が出現し、こちらへと向かってくるのが見えたのだ。突然の出現に驚き、思わず対応が遅れてしまう。

しかしその直後

 

「ギャアアアアア!?」

「「「え?」」」

 

突如としてどこからか極光が放たれて危険種の伸ばした手が弾かれた。飛び上がって光の放たれた方を見てみると、マインがナジェンダに支えられた状態でパンプキンを構えているのが見える。マインは再びパンプキンの引き金を引くと、またも極光が放たれ、それが危険種の体を後ろに倒した。

 

「なにあの威力……嘘でしょ?」

「生身の人間が使う武器で、あれなのか?」

「帝具のすさまじさは何度か目の当たりにしたが、あそこまでできるとはな」

 

余りにも非常識な事態の発生に騒然とするリィン達だが、そんな中で倒れた危険種の胴体の上を駆ける人影が見えた。拡大してみると、それがアカメだと判明する。

 

「アカメ、流石に無茶じゃ……」

「まずい、敵に気づかれた!」

 

やはり巨人も自身への攻撃を狙う相手には気づいたようで、アカメに手を伸ばそうとする。その直後、一人の人物が現れてその攻撃を防いだ。この時のリィン達は知らないが、スサノオである。

 

「何だ、あの男?」

「あの攻撃を生身で防いだのか?」

 

リィンとロイドがスサノオのパワーに驚いている一方、アカメは村雨を片手に、危険種が攻撃目的で伸ばした無数の触手を次々と切り落としていく様子が見えた。純粋なスピードや手数はヨシュアに劣るが、攻撃の一つ一つが精密なようで、傷の一つも追っていない。攻撃の規模で言えば、機関銃の掃射に正面から突き進んでいくようなものであるため、これはすさまじい。

 

「葬る」

 

そしてアカメは危険種の頭頂部に到着すると同時に、振りかぶっていた村雨で本体を一刀両断。呪毒が回ってそのまま危険種は絶命、起き上がる最中だった巨人の胴体はそのまま地響きを立てて倒れ伏した。

 

「……まあ案の定、仕留めること前提だったわけね」

「だな。また、アカメの手を汚してしまった」

 

アカメの様子に思うところあるリィン達。しかし今は気持ちを切り替え、他にも同様の個体がいないか警戒することに決める。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

その後、あの人から作られたと思しき危険種に対応するため、ナイトレイドとは一夜限りの協力となった。具体的には彼らの寝床の警備のため、飛行艇を仮アジトとなっているログハウスの近くに移動させる。そしてその近辺での見回りをするといった具合だ。

 

「昼間は何かと、世話になったな」

 

エステルとヨシュアが見回りをしていると、アカメが近づいてきた。ちなみに、スサノオやチェルシーとは既に自己紹介は済ませている。

 

「ああ、別に大したことじゃないわよ。遊撃士は人を助ける仕事だしね」

「そうか。民間人の保護を最優先にした戦闘のプロ……お前達は本当の意味で、民の幸せのために戦える仕事をしているんだな」

「そんな大げさな物じゃないと思うけど……ところで、こんな時間にどうしたんだい?」

「スーさんが夜食を作ってくれてな。お前達とは話したいこともあるし、そのついでに届けに来たわけだ」

 

そういうアカメの手には、大きな葉で包まれたものが二つあった。そこからいい匂いがしたので、料理を包んでいるものと思われる。しかもご丁寧に、干し草で編んだ紐で留めてあり、木で作られたスプーンも一緒に括り付けている。

 

ぐぅうううううう

 

「あ」

「はは、エステルは腹ペコ状態みたいだね。せっかくだし、いただこうか」

 

ヨシュアが笑いながら料理を受け取ると、予想外のことに顔を赤らめるながら、エステルも受け取った。

紐をほどいて包み紙代わりの葉を広げてみると、中身がチャーハンだと判明する。

 

「チャーハンか。クロスベルの龍老飯店で食べて以来かな」

「なんか、美味しいけど意外と食べない物ってたまにあるわよね」

「そうか? 私は美味いなら何でも食べるが。まあそれはともかく、スーさんの料理は絶品だぞ」

 

そういうアカメは、普段の無表情と違いドヤ顔になっている。アカメ自身も料理は出来るが、その本人がここまで太鼓判を押す辺り、かなりのものなのだろう。

 

「君がそういうなら、期待が持てそうだね」

「それじゃ、いただきます」

 

そして二人して、スサノオ特製チャーハンを一口食べる。

 

「こ、これは!?」

「美味しい! 何これ!?」

 

一口目でもう、評価が決まった。細かく刻んだ肉は昼間に倒した食用になる危険種の物で、甘辛いたれに漬けて香ばしく焼き上げているようだ。そこにマーグ高地内で採れた山菜を加え、独特の苦みと清涼感のある香りがアクセントとなっている。そしてチャーハンの基盤である食材のライスは、水分が程よく飛んで絶妙なパラパラ具合になっている。

チャーハンのようなシンプルな料理は料理人の腕を試されるとは言うが、それをここまでのレベルで仕上げたスサノオは相当の腕を持っているようだ。

 

「スーさんは要人警護目的で人型に作られたらしいから、それで料理も得意だとボスは言っていたぞ」

「えっと……その理由はどうかと思うけど」

「まあ作った人の意図はともかく、そのおかげであたし達が美味しいものにありつけたわけね」

 

色々とツッコミどころもあるが、今はエステルの言う通り食事を堪能することにする。

そして完食したところで、アカメが声をかけてきた。

 

「食後いきなりですまないが、お前たちに聞いてほしいことがある」

「どうしたんだい、改まって」

「元々、そのために来たんでしょ。頼み事だろうと何だろうと、問題はないけど」

「そういうことじゃない。私の過去についてだ」

 

それを聞き、ふと思い出した。最初にナイトレイドと遭遇した時、成り行きから彼らのアジトで寝泊まりすることとなったのだが、その時にアカメやブラートは元は帝国軍や暗殺部隊で活動していたと軽く聞いていた。ブラートはロイドがその過去を聞いているが、アカメについてはまだ深く踏み込んでいないのだった。

そんな中、アカメが自ら過去を語ろうとしていた。

 

「私が暗殺部隊に入った経緯なんだが、妹と一緒に親に売られたのを軍勤めの暗殺者に買われたのがきっかけだった」

 

いきなり衝撃の事実、しかしこの国の惨状を考えるとあり得ない話ではない。というか、フィーがザンクと交戦した夜もそのための市場があるという噂を調べた帰りだった。

 

「妹……リィンが捕まっているときにあった、クロメの事だね」

「確かに、そんなことでもない限り一緒に暗殺者なんてやらないでしょうね」

「クロメにはもう会っていたか。で、そのゴズキという男に私やクロメ、他にも親に先立たれたり捨てられたり売られたり、いろんな理由で宿無しになった子供を暗殺者にするために引き取ったんだ」

 

そこから語られたのは、凄惨な過去であった。10歳前後の孤児たちを危険種が跋扈する森に放り込み、何十人という子供が森にいる危険種たちの餌食となった。そして生き残った中で上位ランカーを選抜部隊、残りを生存者を投薬による強化を促した部隊に所属させる。アカメはクロメと二人で協力し7位と8位に食い込むも、ゴズキの肉親同士を同じチームに入れないという教育方針、一度に教育できる人間が七人までだったことから8位からが強化組になってしまい、引き離されてしまう。

 

「そこでゴズキは私や他の仲間の養父として、一般常識や殺しの技術などを教わった。そして私たちは常にこう聞かされた」

 

”私たちが人を斬ることで、民が幸せになる”

 

それによって、アカメは選抜組の仲間達と暗殺者の任務をこなす。帝国との敵対勢力や彼らに雇われた暗殺結社との闘いの日々で、その最中で仲間の死を何度も経験することとなった。

 

「そしていくつかの任務とその最中の事件、それによる仲間達の死から段々とやってきたことに疑問を感じていった。そしてある時、民を不幸にしているのは帝国そのものだと確信、ゴズキの帝具だった村雨を手に入れてボスの誘いを受けたんだ」

「……なるほど。それで君はナイトレイドに入ったんだね」

「ちょっと待って。クロメは仲間を裏切れないって言ったけど、無理やりにでも連れていけなかったの?」

 

アカメの過去については判明したが、ここでクロメに関する疑問が生じたのでエステルが尋ねる。

 

「やろうとはしたが、力不足だった所為で周りからの妨害などで叶わなかった」

「じゃあ、今は仲間も力もそろってるし、助け出すのね」

 

エステルの問いかけにアカメは、首を横に振った。これが意味することはつまり

 

「だめだ、クロメは殺す。少なくとも、もうそれしか救う手がない」

「はぁあ!? 何言ってるのよ、貴方!」

「確かにクロメは君を殺して帝具の操り人形に加えるとは言ったが、まさか同じようなことを考えて…」

「そうじゃない」

 

ヨシュアがまさかと思い真っ先に口にするが、アカメはすぐに否定し、あることを話した。

 

「クロメは薬物による強化部隊に入れられたと言っていたが、薬による強化は副作用がある。それによりクロメは薬、もしくはそれを加えた菓子を摂取しないと発作を起こして死んでしまう。しかも、強制的な薬での強化で内蔵、ひいては脳にダメージを負って寿命を削り、異常な思考をするようになってしまったんだ」

 

エステル達はその話を聞き、リィン救出の最後に現れた暗殺部隊たちを思い出す。そのリーダー格である少年カイリは、副作用のせいで老人のような容姿と化していた。アカメの話をまとめると、クロメは逆に体の内側に副作用が生じたということになる。

 

「だから私はクロメを、この手でこれ以上罪を重ねる前に殺さないといけない。それが、私が姉としてしてやれることだと信じている」

 

アカメはそういうが、目にはなぜかクロメに対する信頼が見える。恐らくクロメの方も同じと思われ、殺し合う関係の中で歪な親愛でつながっているのが推察された。

 

「……アカメ、やっぱり僕は反対だ。君も妹も、手を汚したからって日陰者のまま一生を終えること自体、僕は許せない」

「そうよ。なんでそこまで、汚れ役を買おうとするのよ」

「エステルはともかく、ヨシュアもまだ言うのか。ここまで言えば、引き下がると思ったが」

 

アカメは思わず言ってしまい、そのままヨシュアに問いかける。

 

「お前も私と同じで手を血で染めたと、初めて会ったときに話していたな。戦い方からして、私と同じ暗殺業だろうが何故そこまで綺麗事を言える? エステルのおかげで変われたと言っていたが、他にも何かあるのか?」

「そうだね。アカメがわざわざ僕らに過去を教えてくれたんだ、今度は僕の番だね」

 

結果、ヨシュアは自らの過去を赤めに明かすことを決め、ついに打ち明けた。

 

「君が昼に話してくれた、犯罪組織の身喰らう蛇に会ったという話だけど……僕がいた裏組織も、その身喰らう蛇だったんだ」

「な!?」

 

まさかの事実に、アカメも思わず驚愕する。ヨシュアも「当然だよね」といった表情を浮かべ、そのまま話を続けた。

 

「僕は以前に話したハーメルの悲劇、それによって姉さんの幼馴染だったレオンハルトという人と僕だけが生き残った。そこを、身喰らう蛇の幹部の一人に拾われた」

 

アカメはかつての仲間である執行者ナハシュと遭遇した際、聞いた名をヨシュアから聞くも今は彼の話に集中した。

ハーメルの悲劇での姉や親、隣人の死。姉を殺した襲撃者をこの手で殺したショック。当時6歳のヨシュアが心を壊すには、十分な材料がそろっていた。そしてそこをレーヴェと供に幹部の一人であるゲオルグ・ワイスマンに引き取られ、暗示による調整で感情無き殺戮マシンへと変えられる。そして誕生したのが暗殺と諜報、集団戦闘と破壊工作に特化した、執行者No.XIII”漆黒の牙”ヨシュア・アストレイである。

 

「12歳で今の父さんであるカシウス・ブライトに敗れてその娘であるエステルと一緒に育てられて、そこで光の中で生きてきた。それも教授、例の幹部の計画の内だったんだけど、エステルとの繫がりが強くなったおかげで最後に僕は解放された」

 

一度はエステルを穢したくないという思いから離れるも、それでもエステルは負けじとヨシュアを追い続けた。結果、エステルはヨシュアの心を解きほぐし、彼に再び光の道を歩く決意を固めたのである。

他に理由があったわけではない。たった一つの理由がどんなものよりも重く強いものだったからだった。

 

「だから、僕はアカメだけでなくクロメにもそうあって欲しい。今は停戦状態だけど、いずれは力ずくでもこの道から外させてもらう」

「……決意は変わらないか。いいだろう。でも、それが帝国にとって良くない方向に行くと判断したなら、この手でお前たちを葬らせてもらう」

 

ヨシュアもアカメも、それぞれの立場での意志の固さを互いに認識することとなる。

 

「そうだ。最後に一つだけいいかな?」

「何だ?」

「最初にクロメを助けようとしてた時のことだけど、例の薬の後遺症って直す手立てはあったの?」

 

ふとエステルが気になったので、アカメに問い尋ねる。Dr.スタイリッシュのような優れた科学知識や医療技術を、他に帝国内で見られるかが疑問なので当然だった。

 

「ああ。辺境にある様々な成分の温泉が湧き出る療養地で、神の秘湯と呼ばれる場所がある」

「神の秘湯? 随分と仰々しい名前ね」

「だが、不治の病で余命半年を宣言された人間がここで療養して、五年たった今でも生きているという報告がある。ここで薬を抜いて湯治に専念すれば、寿命もいくらかは回復するかもしれないと思っていた」

「オッケー、それだけ分かれば十分だわ。ありがとう」

 

そして、エステルはアカメに教えてくれたことに対して礼を言う。

 

「それじゃあ、あたし達は見張り続けてるからゆっくり休んでて」

「つまらない話に突き合わせて、すまなかった。それじゃあ、お休み」

 

そして、そのままアカメは去っていく。しかし、そんな中で彼女は考えていた。

 

(お前達は、本気でクロメの事を助けようとしてくれるんだな。確かに例の大陸の技術なら、医学もレベルは高いだろうし、神の秘湯と合わせればクロメの寿命はもっと延びるかもしれない)

「……クロメが助かるかもという事実に、少し安心してる。ここで揺らぐなんて、私らしくないな」

 

アジトに戻ったところで、アカメは一人呟く。ヨシュアの強すぎる意志に、つい揺らぎかけてしまった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ねえあんた達、一個だけ聞きたいんだけど」

「どうした?」

 

一方、タツミ達のところにもマインが夜食を届けてきたようで、そのついでに何か話し込んでいる。

 

「あんた達が行って見てきた、ゼムリア大陸ってどんなところなの?」

 

マインが振ってきたその話題に、タツミ達も答える。

 

「向こうは向こうで問題はあったけど、帝国に比べたら平和そのものだったぜ」

「問題? 例えば、人種差別とかはあるの?」

 

マインが尋ねたそれは、彼女の出生である異民族とのハーフということにも関与していた。

 

「直接は行ったことないけど、昔はカルバード共和国ってところが移民受け入れしたら反対した人間が事件起こしたって聞いたことはあるな」

「まだ百年くらいしか歴史のない国だから、速く力をつけるのに必死だったみたい」

 

とりあえず、向こうで習った歴史についてマインに話す。すでに起きたことだが、やっぱりといった具合の表情を浮かべている。

 

「まあ問題があるって言っても、帝国に比べたらかなり平和だったな」

「街は大きくて、人の活気もあって、遊撃士や警察なんていろんな組織の人がそんな環境を守って……あ、写真あるけど見る?」

 

そんな中、サヨが懐からアルバムを取り出しながらマインに尋ねる。

 

「写真?」

「風景とか見たままの映像を紙に焼き付けたもので、って現物見せた方が早いか」

 

そしてアルバムを開くサヨ。そこには今まで訪ねた街の風景や人の様子、中には列車など向こうで初めて見た物が写っていた。

 

「たしかに、見たまんまの風景が写ってるわね。色々と見たことのない物に、人とかも……」

 

帝国以上に高度な技術力、美しい風景、そこで暮らす人々の笑顔。確かに帝国のそれを上回る文明レベルと平和な世界が実現していた。

 

「向こうにも悪い奴はいるけど、まあ拷問が趣味とかそういう類の奴は今はいないぜ」

「私たちが知らないだけかもしれないけど、帝国みたいにそこかしこに跋扈しているわけじゃないから安心して」

 

写真を眺めるマインは、タツミ達の話を聞いて色々と思案する。

 

(まあ、少なくとも向こうが平和なのは確かみたいね。でも、だからと言ってお偉方はこっちの帝国をここみたくしてくれるとも限らない。属領にしようなんて腹かもしれない)

 

マインは革命に身を投じる身として、タツミ達の見て触れてきた物を知っても疑念を抱き続けている。するとそれを察したのか、タツミが声をかけてきた。

 

「確かに疑う気持ちは大事だけどよ、同じくらい信じる気持ちは大事じゃないか?」

「へ?」

「そりゃあ、俺だって帝都についてすぐの時はアリアたちに騙されちまった。正直、疑わなさすぎだったよ。でも、だからって信じる気持ちを忘れるのはお門違いだろ?」

「マインは仲間の言葉は信じているだろうし、それと同じで違う志の人間を陰で信じて応援するって気持ちも、持ち合わせたらどうかな?」

 

タツミがしゃべっていると、今度はサヨも信じることについて語り始める。

 

「そうやって、形は違うけど一緒に戦ってくれる人間がいる。そう思うだけでも、気が軽くなると思うわよ」

「少なくともアニキ、ブラートはロイドさん達を信念とは別で応援してるみたいだぜ」

「……そういうものかしらね」

 

少し間をおいて口を開くマインだが、表情が若干だが緩んでいるように見えた。

 

(って、何こいつらに毒されそうになってるのよ!? ブラートはブラート、あたしはあたしよ。こいつらを信じるなんてありえないから!!)

 

しかし、すぐにハッとなって考えを振り切る。だが、影響を受けているのは目に見えていた。

そして翌朝、一行は飛行艇でマーグ高地を去るのだった。




次回、そろそろ敵さんを動かそうと思います。どうなるかは、まあ見てのお楽しみ。
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