英雄伝説 斬の軌跡(凍結)   作:玄武Σ

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先行したVSワイルドハントは果たしてどうなるのか?


第29話 邪心の再始動

「オラオラ、シャムシールで細切れになっちまえ!!」

 

コスミナの帝具でユーシスたちの動きを止め、その隙に自身の帝具で四方八方からの攻撃を畳みかけるエンシン。味方の帝具の特性を理解し、それを効率的に使うタイミングを支持したのだ。確かに、戦闘力=強さという認識を改める必要があった。

 

(プラチナムシールドで……いや、間に合わない!)

 

ユーシスは咄嗟に防御用のクラフトを行使しようとするも、コスミナの奥の手が予想以上に効いていたようで、以前ピンチには変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グラールスフィア!!」

 

しかしその時、男の声が聞こえたと同時にユーシス達に結界が纏わって攻撃を防いだ。増援が来たようだが、援護はこれだけに留まらなかった。

 

「インフィニティスパロー!」

 

今度は技名を叫ぶ女性の声が聞こえたと同時に、何かがエンシンとコスミナを目掛けて無数に飛んできたのだ。

そしてエンシン達二人を斬りつけると、それが駆けつけてきた二人組のうち、女性の手元に集まって剣になった。

 

「胸騒ぎがしてたけど、来て正解やったな」

「ここからは、私達も加勢します」

 

現れたのは、星杯騎士のケビンとリースだった。リースが先ほど飛ばしたのは法剣(テンプルソード)と呼ばれる星杯騎士が用いる武器で、刀身を分割してワイヤーで繋ぐことで、鞭の様にしなる特殊な構造になっている。その刀身は分解可能で、今のようなクラフトも使用可能であった。

これに対してケビンは、仕込みボウガンと聖痕を用いた法術を戦闘に用いている。

 

「な、何だ? 武装した聖職者で、あのシスターが攻撃したのか?」

「でも、いい男だよ。私、あの彼ともしたいなぁ」

「おめぇはそればっかりか!? あの攻撃を防ぎ切ったんだぞ、明らかにやべぇだろ!」

 

増援が予想しない面子でエンシンは思わず呆然とするも、すぐにコスミナの反応で憤慨してツッコミを入れる。この局面で、しかも傷を負いながらも性欲を隠そうともしない淫らな彼女は、味方ですら理解しがたいもののようだ。

 

「みんな、無事でよかった。それじゃあ、今から回復するね」

 

そしてその間にユーシス達がエリオットの方に集まっており、それに合わせてエリオットも回復に回ろうとする。

 

「届け、癒しの歌!」

 

エリオットがつぶやくと同時に魔導杖を掲げると、オルガンのような音色が辺りに響いた。するとエリオットを中心に、集まった面々の顔色がよくなっていった。エリオットの回復用クラフト、ホーリーソングである。

そして回復したのを確認し、ケビンがエンシン達に警告を開始した。

 

「さて。俺らは危険な古代遺物、要は君らの帝具みたいな道具を回収、封印するのが仕事でな。国の要人相手ならともかく、無法者相手だから遠慮なくやらせてもらうで」

「あなた方は戦闘が帝具頼りのようですし、大人しく手放して悪事から足を洗うのなら見逃します」

「あぁ? このエンシン様が攻撃を防がれた程度で負けを認めるわけないだろ。徹底抗戦させてもらうぜ」

 

ケビンもリースも得物を構えて降伏を訴える。しかし、エンシンは懲りた様子もなく闘争心を見せつけていく。

しかしそんな中、ある人物がコスミナに声をかけてきた。

 

「君、何故か知らないけどさっきの歌に悲しいものを感じたよ。何かあったの?」

「え?」

 

それはエリオットだった。余りに唐突だったため、コスミナ本人だけでなく仲間達も呆気に取られてしまった。

 

「エリオット、急にどうしたの?」

「ごめん、フィー。あのコスミナって人の歌、帝具を介してっていうのを踏まえても、妙な違和感を感じたんだ。それも、悲しみとかそういう負の感情を押し殺した感じの」

「それにしても、あんな淫乱極まりないのに話しかけるのはどうなんだ?」

「どっちにしても彼女は事件の容疑者だから、一度捕まえないといけないわよ」

 

シェラザードも再び鞭を構えて、臨戦態勢に入る。しかしその直後に、急に光が生じたと思いきや、そこにシュラとイゾウが現れる。

 

「エンシン、苦戦してるみたいだな。撤退するぞ」

「シュラ! あいつらの狙いは帝具だ、ここで逃げてもどうせまた戦うことになるんだ。今ここでぶっ殺しちまおうぜ!!」

 

シュラはリィン達に告げたようにあくまで挨拶目的のため、ここから逃げることを優先する。しかし、無法者ゆえか嘗められるということ自体が気に食わないエンシンは、そのまま戦闘継続を決め込もうとする。

 

「おらぁあ!」

「ぎゃは!?」

 

なんとシュラは、そのままエンシンの鳩尾に回し蹴りを叩き込んだ。それによってエンシンは大きく吹き飛び、近くにあった建物の残骸に体を叩きつけられる。

突然の仲間同士での攻撃に、ユーシス達も驚愕。しかし、シュラは気にした様子もなくエンシンに詰め寄り、そのまま胸ぐらを掴みだした。

 

「お前なぁ、最初に言っただろ。ゼムリア大陸の連中には挨拶目的で会いに行くだけだって。俺が大臣の息子でお前がその仲間ってわかれば、奴らも容易に手が出せねぇ。ぶっ殺すのはその後で一方的にの方が効率がいいし、気持ちもいいってわかんだろ。あぁ?」

「わ、悪かった……だから、もう勘弁してくれ。あいつらの、攻撃を結構、喰らっちまったんだよ……」

 

胸ぐらをつかんだまま、シュラはドスを利かせた声でエンシンに言い聞かせる。そんなエンシンも、シュラに怯えている様子を見せながら承認していた。

 

「わかればいい。コスミナ、お前も後でいい男を用意してやるから、今は撤退しろ」

「わかった、でもちゃんとしてよね。もしくは、シュラ君が相手してくれるのもいいけど」

「いや、お前はしんどいから勘弁な」

 

そのままコスミナの承認を得るシュラだが、相手の様子に冷静に対応する。シュラも色欲は高いようだが、それでもコスミナは相手にしたくないらしい。

そのままシュラはシャンバラを起動し、撤退の準備に入る。

 

「あ、待って! 君、本当に何があって……」

 

エリオットがそのままコスミナに必死に呼びかけるも、間に合わずに転移してしまった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

一方、アガットたちのチームにて

 

「だらぁあ!」

 

アガットは回避できない空中でありながら、自身の得物である重剣を投げて飛んできた球にぶつけた。直後、その剣が一瞬にして腐食し、そのまま崩れてしまった。しかし、そのおかげでアガット自身は無傷で済んだのである。

 

「くそぉ、潰し損ねたか……って、ぐはぁあ!?」

 

攻撃が不発に終わって悪態をつくチャンプだったが、直後に彼の顔面に何かが飛んできて爆発した。アガットが何事かと思い着地して見回すと、ティータが腰を抜かしながらも大砲を手にしていた。これで攻撃したようだ。

 

「い、今ノエルさんが増援を呼びました! いくら帝具使いでも、このままじゃ数の差で勝ち目はないはずです。おとなしく投降してください!!」

 

そのまま腰を抜かしたままだが、それでもはっきりと告げるティータ。リベールの異変をエステル達と切り抜けただけあって、胆力は見事なものである。

 

「今のは少し効いたが……どうやらお嬢ちゃんは、クソ野郎の仲間入りしてしまったらしいな」

 

しかし、爆炎が晴れた先にいたチャンプは血を流しながらもあまり応えた様子が無く、それどころか目に深い憎悪の色が見え始めている。

 

「しょうがねぇ。クソ野郎になった以上、お嬢ちゃんはいい思いさせないで地獄に送るしかないか」

「え?」

 

しかもそのままティータに対して強い殺意を抱き始め、手にした帝具を構えなおして臨戦態勢に入る。しかしそれでも、アガットは先ほどからのチャンプの一方的な殺意に違和感を感じ、懲りずに問いかけた。

 

「てめぇ、マジで大人って存在自体が憎いらしいな、それに協力的な奴も含めて。本当になんでそこまで嫌悪するんだ?」

「どうせ武器もないんだ、冥土の土産に教えてやるよ。俺はガキの頃から、親を始めとした大人たちに散々な目にあわされてんだ。だから、大人って存在が憎くて憎くて仕方ねぇんだ。それに引き換え、子供たちは本当に天使だぜ」

 

要約すると、チャンプは虐待で大人=悪という屈折した感情を抱いてしまったらしい。それで殺されるのは、理不尽且つ迷惑極まりない事実であった。しかし、ここでまたも違和感を感じる。

 

「おい、だったらなんで子供まで殺すんだよ? 好きなんじゃねぇのか?」

「そりゃおめぇ、あれだ。大人になったら、せっかくの天使がロクデナシのクソ野郎になっちまうだろ。天使のままでいさせてやるためだよ」

 

疑問を口にするも、チャンプはとんでもない暴論を、何のためらいもなく告げてきた。大臣の息子であるシュラが仲間にしただけあって、この国の狂気を体現した男であった。

 

「……ティータ、お前は先に逃げろ。あっちの連中も、エプロン女の相手で手一杯みたいだし、俺は増援が来るまでアーツで何とか凌いでおく」

「そんな!? 私だってオーバルギアを使えば……」

「電撃に腐食、他にも効果はあるだろうがその二つは機械には危険すぎる。お前に何かあったら、どのみちお前の家族に文句を言われちまう。だから逃げろ」

「ダメです! アガットさんも私を含めて心配してくれる人がいるんだから、何かあって欲しくないんです!!

 

アガットはどうにかティータを離れさせようと説得するも、強情な様子で聞こうとしない。

 

「隙ありだ、爆の球!」

「しまっ……」

 

しかしチャンプはこちらが逃げるまで律儀に待つような男ではなく、そのまま二人纏めて葬ろうと帝具を投げつけてきた。名前から察して爆発攻撃、その為に当たれば二人纏めてあの世行きは確実である。

 

 

 

 

「せい!」

ドカァアアアアアアアアアン!

 

直後、誰かが横から何かを投げつけ、アガット達に当たるよりも早くに球を爆破してしまった。

 

「な、何が起こ…」

「ふん!」

「ぐひっ!?」

 

更にスキンヘッドとサングラスの大男が現れ、チャンプの顔面を殴り飛ばした。

 

「急いで正解だったみたいだね。下手したら、死人が出てたよ」

「まあ、我々が来た以上はさせないがな」

 

直後に現れたのはワジだった。ワジは格闘術以外にもトランプやビリヤードの球を投擲した技を得意とし、先ほどチャンプの攻撃を阻止したのもトランプのカードを投げつけての攻撃だった。もう一人のスキンヘッドの男は、ワジの補佐を務めるアッバスという騎士だ。クロスベルでの潜入捜査時は、不良グループ”テスタメント”としても補佐を務めていた。

どうやら、彼らが増援らしい。

 

「お前ら……正直、今回は厳しかったぞ。助かった」

「凄腕のA級遊撃士の助けになれて、光栄だね」

「得物を紛失しているようだから、無理をしないで撤退した方がいいぞ」

 

ワジとアッバスの加勢で、撤退する余裕が見えたアガット。

一方、ガイウスたちと交戦しているドロテアもその様子に目を向けていた。

 

「うむ、向こうで噂は聞いたが、あれが星杯騎士か。厄介そうじゃな」

「隙ありです!」

「うぉお!?」

 

しかしその間に、ノエルがサブマシンガンを構えてドロテアに発砲。慌てた様子で回避するが、避けそこなって足を負傷してしまう。

 

「身体強化に帝具所持。確かに厄介だが、元が後方支援型だけあって戦闘技術そのものが出来上がってないな」

「加えてこの人数差、あなた方の勝ち目が薄いのは明白です。投降してください」

 

その様子にガイウスとエマが得物を向けながら告げるが、ドロテアは聞き入れる様子はない。それどころか、強い殺気を発している。

 

「若造共が、錬金術師の底力を舐めるでないぞ」

 

そういうドロテアは、スカートの中に手を突っ込んだと思いきや、そこから何かガラスケースのような物を取り出す。何か錬金術による攻撃手段かと警戒するが、それが決行されることはなかった。

 

「おっす、ドロテア。迎えに来たぜ」

「シュラ、いいところに来たの」

 

直後に魔法陣が展開されたと思いきや、そこからエンシン達を回収した直後のシュラが姿を現す。

 

「やってるみたいだが、俺らはあくまで挨拶目的なんだからな。そろそろ親父に顔を出しするから、その後なら好き勝手に暴れていいからよ」

「うむ、そうだったな。頭に血が上っておった、許せ」

「エンシンと比べて、お前は利口だな。チャンプ、撤退するぞ」

 

そのままドロテアはシュラの撤退要請に乗るが、チャンプはそうもいかないらしい。

 

「シュラ、ロクデナシの考えに染まっちまった天使がいるんだ。お仕置きしてからでもいいか?」

 

アッバスの拳を食らって鼻血を流すチャンプだが、それすら眼中になくティータを狙っている。

 

「後回しにしておけ。エンシンがこいつらの仲間に叩きのめされてんだ。いくらお前でも、この人数は厳しいぞ」

「でもよ……」

「そのエンシンも聞き分けが悪かったんで、のびてもらってるぞ。それに、あとで好き勝手出来るんだからそこからでもいいだろ?」

「ぐ……」

 

しかしシュラに正論と脅しを同時にかけられ、結局同意してしまう。

 

「それでいい。それじゃあ、シャンバラの連続使用でしんどいから、さっさと戻るか」

「逃がしません!」

 

そしてそのままシャンバラを起動するも、ノエルは再びサブマシンガンを乱射する。しかし間に合わず、シュラ達は転移してしまった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

一方、更に別の襲撃ポイント

エステル・ヨシュア・タツミ・サヨ・クローゼ・オリビエ・皇帝

 

「地方の防衛も整っていないし、帝具が賊に渡っているから仮に整えても危険……悪循環とはこのことなのか」

 

エステルやタツミ達は別の襲撃ポイントで、皇帝やクローゼ達王族組と供に調査に出ていた。最初は危険なので同行させるわけにもいかないと拒否していたが、皇帝は地方の現状を見たいと強い意志を見せてきたので、最終的には折れることとなったのだった。

そして現状をこの目で見た皇帝は、思わず深い悲しみを浮かべてしまう。

 

「陛下、大丈夫ですか?」

「ああ、すまないサヨ。ところでタツミ、そなた達の故郷も辺境の山奥で高い税に苦しめられているそうだな」

「はい。それで仕官して稼ごうと、サヨやイエヤスと帝都に行ったんです。でも、サヨが外道な貴族に酷い目にあわされて、イエヤスがそいつらの所為で……」

「すまない。余が大臣に利用されていなければ、このようなことには……」

 

皇帝に声をかけられ、タツミは自身が帝都入りした経緯を語った。そしてその際にイエヤスの死を思い出し、そのまま深い悲しみの色を浮かべてしまう。

それに気づき、皇帝はすぐにタツミに謝罪の言葉を伝える。

 

「いえ、大丈夫です。陛下自身はこの国を本当に愛しているって、直に見ていて気付いたので」

「それに、あなたがもっと現状を知ってそれを本人に告発できれば、オネスト大臣にも正式な裁きを下せるでしょう」

「その為なら、いくらでも手を貸しましょう」

「オリヴァルト殿にクローディア殿……ありがとう。なら、余も早くそれに答えねばな」

 

しかしタツミも共に過ごすうちに皇帝の真意を知り、彼への理解を深めていた。そしてそんな彼に、クローゼもオリビエも全面協力を改めて伝え、再び意志が固まることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう。今の話が本当なら、そこにいる少年が皇帝というわけか」

「え? 今の声って……」

 

そんな中、エステル達の耳に聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「そ、そんな……なんであんたが?」

「ああ。彼は死んだと、確かにケビン神父から聞いたはずだ……」

 

振り返った先にいたのは、青い髪をオールバックにした眼鏡の男。知的な容姿でありながら、目に底知れない邪悪な何かを感じる男。

 

「確かに私は、ケビン・グラハムに塩の杭を撃たれて死んだ。しかし、エイドスの導きか悪魔のいたずらか、私は甦ったのだよ。まごうことなき、ゲオルグ・ワイスマンだ」

 

エステル達の目の前に現れたのは、シュラ達が偶然に蘇らせてしまったあの男。ゲオルグ・ワイスマンであった。

 

「とある集団が作っていたホムンクルスに、偶然にも私の魂の残りかすというか、残留思念というかが宿ってね。そこから自我が再構築されて、私は甦ったわけだ」

「まさかとは思うが、昨年のゼムリア大陸を襲撃した帝具使い達の一団か?」

「そこは想像に任せてもらおうか」

 

自身の復活した経緯について簡単に説明するワイスマンだが、そのきっかけとなった集団についてははぶらかす。

 

「な、何なのだ、この男は?」

「エステルさん、陛下の言う通りこいつ何なんです? なんか、やべぇオーラしかしねぇんだけど……」

「はい。以前にリィンさんの救出でちらっと大臣を見ましたけど、その比じゃない何かが…」

 

突如現れたワイスマンに、初見のタツミ達も得体の知れない恐怖を感じる。

 

「ゲオルグ・ワイスマン。数年前に私たちがリベールの異変で戦った、身喰らう蛇の幹部、”使徒”の一人です」

「白面の二つ名を持っていて、愛とは程遠い思想の御仁さ」

 

そんな中でクローゼとオリビエがワイスマンについて説明を入れるが、オリビエの表情には明らかな嫌悪感が見える。放蕩王子と呼ばれる程に飄々とした彼から想像できない様子だった。

 

「確かクロチルダ殿のいた組織……得体の知れない何かは共通しているが、はっきり言える。彼女と違い、邪悪さしか感じないぞ」

 

オネスト大臣には即位に漕ぎつけた恩もあるため長らく気づかなかった皇帝だが、それで麻痺した感覚でもはっきりと邪悪だと言える程の男の出現に、思わず身構える。

 

「ふむ、心外だな。一応、今でも盟主への敬意はあるのだが」

 

その様子に、エステル達も咄嗟に戦闘態勢に入る。オリビエは銃、クローゼはフェンシング用の剣をそれぞれ得物とするが、揃ってアーツの方が得意なためARCUSも同時に用意する。

 

「まあ、いい。今はこの大陸で目的があるので、本来は顔見せする気はなかったのだがな。そこにいる少年が皇帝だと聞いてつい出てきてしまった」

 

しかしワイスマンは戦闘の意志は無いらしく、そのまま転移の準備に入ってしまう。

 

「私の目的は、お前たちに阻まれてしまったあの計画を再び実行すること。その為にも帝具のテクノロジーを手にすることのを優先するつもりだ」

「あ、こら! 待ちなさい!!」

 

エステルが止めようとするも間に合わず、ワイスマンはそのまま転移してしまった。

 

「エステル、まさか教授の言っていた計画って」

「でも、そんなわけないわよね。影の王国でケビンさんの倒した教授も再現体だったらしいし、だからあれの事実は知らないはずよ」

 

ワイスマンの言い残した言葉に、エステル達は疑問を残すこととなった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

その日の晩、宮廷にて

「シュラ、予定より早く戻ってきたと思ったら、何者ですか彼は?」

「ええ。しかも私にまで面会を求めるなんて、どういう了見なのかしらね?」

 

夕食の席にて、オネスト大臣は帰還した息子のシュラが紹介したい人物がいるとして、Dr.スタイリッシュと供にワイスマンとドロテアを紹介していた。オネストも胡散臭そうにワイスマンを見ながら、ボンレスハムにかぶりつく。

 

「ああ。西の王国出身の錬金術師ドロテアに、そのドロテアが作ったホムンクルスにとりついて生き返ったらしい、ワイスマンって男だ」

「お初にお目にかかる。貴殿らはこの国の現在の実質的な支配者と、最高の頭脳を持つ科学者だと聞いている」

「シュラから聞いておったが、おんしの技術は相当なものだと聞いたぞ」

 

そのままシュラに紹介されながら、ワイスマンとドロテアは揃って挨拶をする。

 

「私はシュラにある提案をして仲間に迎えてもらったのだが、貴殿らにも有益な話だと思ってね。それと、ある報告が」

 

そしてワイスマンが自身の手引きとシャンバラを駆使し、シュラ達をゼムリア大陸に招き入れたことをオネスト達に明かした。皇帝がリィン達ゼムリア大陸組と行動を共にしていることも、一緒に。

 

「陛下があのゼムリア大陸とやら来た連中と一緒に……しかも、あなたそこに行ったんですか」

「ああ。この二大陸の間に挟まれる形で未開の島国とやらがあるみたいだが、そこには行けなかったのが残念だったぜ。だが、ゼムリア大陸はハッキリ言って帝国よりも先進国だった」

「そしてそこで手に入れた技術に、妾の錬金術とスタイリッシュ殿の技術を合わせれば先ほど話した物を作ることが可能と、ワイスマンは睨んだわけじゃ」

「それさえあれば、至高の帝具とやらにこだわらなくとも帝国どころか世界を手に入れ、それでいてより高い次元に人間という種を進化させられる。どうだろうか?」

「それに、もしかしたら妾の技術で、至高の帝具の問題もある程度は何とかなるかもしれないぞ」

 

ワイスマンはシュラ達の話が終わると同時に、そのまま提案を出す。

 

「いいですね。全世界を私たちの好き勝手にできる、まさに神というわけですか。乗りましょう」

「それを作れたら、究極のスタイリッシュに到達可能じゃないの! 私も乗るわ!!」

「話が早くまとまって助かった。これで私の目的も達成できる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”福音計画”の再興をな」




色々と飛ばしましたが、果たしてどうなるのか?

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