ゲームの彼女とリアルの彼女   作:悠木仁

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第7話 恋は一瞬、愛は一生

 

 

 

 

「おかしい……」

 

 

「あん?」

 

 

 朝、俺が机に突っ伏しながらそう呟くと、前の席に座っていた渡辺がそれに反応する。

 

 

「葉月が……」

 

 

「あ、別に語らなくていいから」

 

 

 珍しく俺が悩みを相談しようというのに、渡辺はあっさり拒否した。

 

 いや、拒否してんじゃねぇよ。

 仮にも親友だろ。

 

 

「どうせノロケ話でも聞かされるんだろ?俺はごめんだね」

 

 

「ちげぇよ。今の俺のどこがノロケてるっていうんだ」

 

 

「彼女がいるところ」

 

 

「……」

 

 

 何も言い返せなかった。

 ちょっと違う気がしないでもないが、確かにその通りかもしれない。

 

 

「とにかく、そういうのじゃないんだよ」

 

 

 そして俺は渡辺に俺が悩んでいる理由を事細かに話した。

 それはもうじっくりと、俺の告白から初めてのお家デートまで詳しく語った。

 

 

「そこで葉月が言ったんだよ。和也くんは本当に」

 

 

「いい加減にしろぉぉぉお!!!」

 

 

 急に渡辺が叫び出し、俺の話を遮った。

 

 なんだよ、これからがいいところなのに。

 

 

「やっぱりただのノロケ話じゃねーか!悩みはどうしたんだよ!?」

 

 

 しまった。

 途中から話すのが楽しくなってしまい、つい関係ないことまで語ってしまった。

 非リアの渡辺には悪いことをしたな。

 どうやらリア充ってのはそれだけで罪らしい。

 

 

「すまん、つい熱くなっちまった」

 

 

「はぁ、もういいから。要点だけ言え」

 

 渡辺が呆れた様子でそう言った。

 

 要点だけか、なかなかに難しいな。

 簡単に、より短く、俺の言いたいことを渡辺に伝える。

 

 

「つらい」

 

 

「ぶん殴るぞてめぇ」

 

 俺の回答が気に入らなかったのか、渡辺が拳を構えた。

 俺はなんとか彼をなだめようとする。

 

 どうやら簡略化し過ぎたようだ。

 それでは真面目に答えてやるとするか。

 

 

「葉月が冷たいんだよ……」

 

 

 昨夜、彼女が帰宅した後にメールを送ってみたところ、返信の内容が素っ気ないように感じられた。

 だが、そんなことで落ち込むほど俺はネガティブ思考ではない。

 校門前で声をかけても、挨拶をしたっきりそのまま歩いて行ってしまったのだ。

 

 

「マンネリ化したんじゃねーの?」

 

 

 (おど)けた様子で渡辺がそんなことを言った。

 何故だか無性に腹が立つ。

 

 

「よし、表へ出ろ」

 

 

「冗談だよ、冗談」

 

 

 拳を構えて勢いよく席を立った俺を、渡辺が慌てて(さと)す。

 今は大事な話をしているのだ。

 冗談を言っている場合ではない。

 

 

「ところでマンネリ化ってなんだ?」

 

 

「知らないのに怒ったのか!?」

 

 

 そんなことは大体口ぶりで察することができる。

 これでも一年親友やってんだぞ。

 ・・・そんなに長くもないな。

 

 

「マンネリ化っていうのは……まぁ簡単に言えば、時間が経過して冷めることだな。恋は一時の恥ってやつだ」

 

 

「それを言うなら恋は一瞬、だろ?」

 

 

 恥じてどうするんだよ。

 相手に失礼だろ。

 

 

「細かいな、どっちだっていいだろ」

 

 

「よくはないだろ……まぁいいや。お前に聞いたのが間違いだったよ」

 

 

 俺がそう言うと、渡辺が色々と文句を言ってきたが、俺はひたすら無視を続けた。

 

 

(でも本当にどうしたんだ?……後で聞いてみるか)

 

 

 多少勇気が要るが、このままでは(らち)が明かない。

 手遅れになる前に手を打っておいた方がよさそうだ。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「あの、和也くん」

 

 

 昼休み、葉月になんと言えばいいか考えていると、驚くことに彼女の方から話しかけてきた。

 

 

「や、やぁ葉月。キョウハイイテンキダネ」

 

 

 緊張し過ぎてつい片言になってしまった。

 彼女も彼女で「う、うん、そうだね。本日はお日柄もよく……」とか言ってるし。

 お日柄は天気が良いという意味ではないのだが・・・そんなに混乱しているのか。

 

 

「えっと、今朝はごめんなさい。わたし、和也くんのこと無視しちゃって……」

 

 

 あぁ、そんなことか。

 わざわざ謝りに来てくれるなんて・・・ほんと律儀というかなんというか、真面目だなぁ。

 

 

「大丈夫、気にしてないから。それより何かあったの?元気がないみたいだけど」

 

 

 本当はすこぶる気にしていたが、それよりも葉月のことが心配だ。

 

 

「……ううん、特になにも」

 

 

 少し間があったが、彼女がそう言うなら心配はない……のか?

 結局振り出しに戻っただけの気もするが。

 

 

「一つだけ聞いてもいいかな?」

 

 

「ん、どうしたの?」

 

 

 何を聞かれるのかとドキドキしていたが、それは杞憂に終わった。

 質問の内容が至極単純なものだったからだ。

 

 

「週末に予定はある?」

 

 

 デートのお誘いかと思い一瞬心の中で舞い上がったものの、よく考えれば週末には用事があるのだった。

 そう、あかりんと遊びに行くという用事が。

 

 

「ごめん、先約があって……」

 

 

 すると、葉月の身体が少し震えたように見えた。

 

 今日はいつもより冷えるもんな。

 風邪には要注意だ。

 

 

「そう、なんだ……楽しんで来てね!」

 

 

 満面の笑みでそう言い残し、葉月はどこかへ去って行ってしまった。

 

 

(……『楽しんで来てね』?)

 

 

 ……葉月に「友人と遊びに行く」なんて言っただろうか?

 

 

 

 

 

 

 それから数日後、相変わらず葉月とはギクシャクとしたままだが、俺は約束の日曜日を迎えたのだった。

 

 

 

 

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