ゲームの彼女とリアルの彼女   作:悠木仁

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第14話 寛大な彼女は嫉妬なんかしません

 

 

 

 

 あの後一部始終を見ていた最上が取材を申し出てきたが、無理やり断って俺はなんとか教室へ辿り着くことに成功した。

 しかしそこで待ち受けていたのはクラスメイト達(主に女子)の冷ややかな目だった。

 もう呆れに呆れたのだろうか、罵倒が飛んでくるようなことはなかったが、重い空気に包まれながら俺は渡辺のもとへ歩み寄る。

 

 

「おはよう渡辺。今日も天気がいいな」

 

 

「そうだな、お前さえいなければもっとよかったんだけどな」

 

 

 どうやらかなり怒っているらしかった。

まぁそりゃ怒るよな。

 この前まで一緒に「リア充爆ぜろヒャッハー」とか言ってた同士が二股疑惑かけられてるんだもんな。

 

 

「渡辺、違うんだよ。これには深い理由があってだな……」

 

 

 慌てて弁解しようとするが、しかしそれは渡辺の笑い声に掻き消された。

 

 

「冗談だよ。そこそこの付き合いだ、お前に二股かけるほどの度胸がないことくらい知ってるよ」

 

 

「そ、そうか。それならよかった」

 

 

 なんだか馬鹿にされたような気がしないでもないが、許してくれるらしいのでひとまず安心だ。

 ……いや、安心するにはまだ早いな。

 

 

「ところで、葉月はどこに……」

 

 

 俺がおずおずと尋ねると、渡辺は急に険しい顔になり、無言で遠くを指差した。

 その先にいたのは、席に座りながら例の新聞紙を読んでいる葉月だった。

 

 

「遺骨は拾ってやる」

 

 

「不吉なこと言うなよ!!」

 

 

 一年生のとき、葉月が本気で怒った時があったが、さすがの俺もあれにはビビった。

 怒られてた奴泣きそうになってたもんな。

 

 

「いいからさっさと行け。姫宮のやつ、さっきからずっとあんな調子なんだよ」

 

 

「え?」

 

 

 もしかしたらあの記事に相当ショックを受けたのかもしれない。だとしたら早く誤解を解かなければ。

 覚悟を決めた俺は、ゆっくりと葉月へ近づいていった。

 すると周りがさらにざわつき始める。修羅場でも期待しているのだろうか。

 

 

「は、葉月。その記事は全部デタラメだ。俺はただあかりとデート……じゃなくて、遊んだだけなんだ。えっと、あかりとは昔からの知り合いで、だから浮気とかそういうのとはまた違うわけで……」

 

 

 自分でも何を言っているのかわからなくなってきたが、それでも必死に訴えかける。

 

 

「と、とにかく、俺が好きなのは葉月だけだ!だから俺を信じて」

 

 

「和也くん」

 

 

 突然葉月が俺の言葉を遮った。

 怒られるのかと思った俺は一瞬死を覚悟したが、頭を上げた葉月の表情はいつも通りの穏やかな顔をしていた。

 

 

「大丈夫だよ。わたしはこれっぽっちも疑ってないから」

 

 

「怒ってない……のか?」

 

 

「うん、怒ってないよ」

 

 

「本当に?」

 

 

「本当だってば。疑り深いなぁ」

 

 

「そ、そうか。よかった……」

 

 

 どうなることかと思ったが、葉月は俺が想像していたよりも寛大な性格だったらしい。

 様子を見ていたクラスメイト達の緊張も解けたようだ。

 意外とキレた葉月の恐ろしさを知ってる人って多いんだな。

 

 

「ちょっとお手洗いに行きたいんだけど……」

 

 

「あ、あぁ!いきなり話しかけて悪かった」

 

 

 席を立った葉月が教室を出て行ったので、俺は机の上に置いてある新聞紙を手にした。

 さっきは慌ただしくてあまり読む時間がなかったのだ。

 

 

「それにしても無駄によく撮れてるな。さすが最上……ん?」

 

 

 よく見ると写真に穴が空いている。ちぎったような何かで突き刺したような……とにかく自然に破れたわけではなさそうだ。

 

 

「……葉月がやったのか?」

 

 

 いや、それはありえない。さっきは許してくれるとか言ってたし、きっと他の誰かがやったんだろう。それか手元が滑っちゃったとか、そんなところだろう。

 

 

「おーい、一ノ瀬。雫ちゃん来てるぞー」

 

 

 そんなことを考えていると、俺を呼ぶ渡辺の声が聞こえてきた。

 噂を聞きつけてすぐに駆けつけたのだろう。さすがは雫だな。

 

 

「仕方ない。もう一仕事といくか」

 

 

 正直非常にめんどくさいが、そんなことも言ってられないだろう。

 重い足取りで、俺は妹のいる廊下へと向かった。

 

 七瀬あかりの顔の部分だけが破られた新聞紙を、机の上に置いて。

 

 

 

 

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