ゲームの彼女とリアルの彼女   作:悠木仁

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【番外編】2015→2016(前編)

 

 

 

 

 今日は十二月三十一日、つまり今年最後の日だ。

 俺と雫は今、七瀬邸の入り口付近に立っている。

 あかりの提案で年末年始パーティーをしようということになり、俺たちはここに集められたのだ。

 

 インターホンを鳴らすと突如メイドが現れ、俺たちはパーティー会場へと連れて行かれた。

 

 

「カズくん、雫ちゃん。よく来たわね」

 

 

 そこにいたのは純白のドレスを着たあかりだった。いつもの彼女の雰囲気とは一変した 姿だがとても良く似合っている。

 これがギャップ萌え、というものだろうか。

 

 

「招待してくれてありがとうな、あかり」

 

 

「べっ、別にあんたのためじゃないし!雫ちゃんのついでなんだからね!!」

 

 

 とても分かりやすいツンデレっぷりだが、雫のことを溺愛しているあかりが言うとあながち嘘だとも言い切れない。

 

 

「はいはい、わかったわかった。もうみんな集まってるのか?」

 

 

「ええ、大体は集まってるわよ。まだ全員じゃないけどね」

 

 

「しっずくーーー!!」

 

 

 いきなり妹の名前を叫びながら走って来たのは、雫の親友である莉乃ちゃんだ。

 どうやら彼女もパーティーに呼ばれていたらしい。

 

 

「相変わらず騒がしいわね、莉乃。他人の家なんだからもう少し大人しくしたら?」

 

 

「別にいいわよ。今日は親もいないしね」

 

 

「だって!!」

 

 

「『だって!!』じゃないわよまったく……」

 

 

 相変わらずこの二人は仲が良いな。

 俺の友達もこれくらい可愛かったらなぁ……。

 

 

「よっ、一ノ瀬。どうした?そんなしけた顔して」

 

 

「だれがしけた顔だ……って渡辺!?」

 

 

 噂をすればなんとやら。そこには俺の友人、渡辺が立っていた。

 俺の友人として呼ばれたのか……?

 

 

「俺だけじゃないぜ。ほら」

 

 

 そう言った渡辺が指差した先にいたのは、俺が所属しているギルドのリーダー、九条輝だった。

 天堂澪花となにやら立ち話をしている。

 貴族の家系同士、話が合うのだろうか。

 

 

「あかり、あいつも呼んだのか?」

 

 

 九条に聞こえないように俺は小声でヒソヒソとあかりに言った。

 するとあかりは顔をしかめて答えた。

 

 

「仕方ないでしょ。一応彼にも世話になったしね。それになんだか呼ばなきゃいけない気がしたのよ」

 

 

 気がしたってなんだよ。

 神のお告げかなんかの類か?

 

 

「まあいいけどさ。新年早々喧嘩なんて嫌だぞ俺は」

 

 

「ちょっと、やめてよね。せっかくのパーティーなんだから」

 

 

 それから十分ほど楽し気な雑談を繰り広げていると、部屋のドアが開かれ、賑やかな集団が中へと入ってきた。

 葉月に鈴森先輩、美雪ちゃんもいる。

 どうやら生徒会チームらしい。

 

 

「お、一ノ瀬。最愛の彼女さんのお出ましだな」

 

 

「そうみたいだな。あかり、清秋の生徒会まで呼んだのか?」

 

 

「まあね。少し前に知り合ったのよ」

 

 案内をしてくれたメイドに礼を告げ、三人がこちらへ歩いてきた。

 途中、一瞬美雪ちゃんと目が合ったが、すぐに逸らされた。

 照れているのか?まったくしょうがない後輩だなぁ。

 

 

「招待してくれてありがとう、七瀬さん」

 

 

「どういたしまして。……一人足りないようだけど」

 

 

「あ、姉さんは後から来ると思います」

 

 

 あかりの質問に美雪ちゃんが答えた。

 「思います」と言っているところがまた神楽坂先輩の気まぐれさを匂わせる。

 

 

「今度はどうしたんだ?神楽坂先輩」

 

 

「あっ、いたんですね先輩。全然気がつきませんでした」

 

 

「さっき目合ったよね!?」

 

 

 なんでこの子はいつも俺にだけあたりが厳しいんだよ。

 俺に恨みでもあるのか。

 

 

「朝にはすでにいなくなってたみたいなの。まったく、吹雪ったら……」

 

 

 すかさず鈴森先輩がフォローを入れてくれた。口ではああ言ってるものの、探しに行かないあたりなんだかんだで信頼しているのが分かる。

 

 

「葉月。麗さんは連れてこなかったのか?」

 

 

 美雪ちゃんが招待されていて麗さんが呼ばれない道理はないはずだ。

 

 

「誘ったんだけどね。仕事が忙しいらしくて……」

 

 

「そうか。大変なんだな、モデルって」

 

 

 しかし俺は内心ホッとしていた。

 神楽坂先輩と麗さんが揃うのは正直避けたい。

 色々とカオスなことになりそうだ。

 

 

「みんなー!年越し蕎麦(そば)だよ!!」

 

 

 突然部屋中に声が鳴り響いたので、キョロキョロと辺りを見回すと、お盆を持ったメイドの近くではしゃいでいる莉乃ちゃんがいた。

 なんとか彼女(なだ)めようと隣で雫が狼狽えている。

 

 

「金持ちの家でもやっぱり蕎麦なんだな」

 

 

「人のことをなんだと思ってるのよ……」

 

 

 俺の言葉を聞いたあかりがジト目でこちらを見てきた。このお嬢様は偏見にお厳しいな。

 

 メイド達が蕎麦を配り、みんなで一斉に食べ始める。椅子がないので立ち食いだ。

 洋風のパーティー会場で蕎麦を立ち食い、傍から見るとすごくシュールな光景だろう。

 

 

「あ、この蕎麦美味しい!」

 

 

「あら、葉月さんは蕎麦が好きなのね」

 

 

「ふむ、たまにはこんな年越しも悪くないな」

 

 

「おっかわりーー!!」

 

 

「こらっ、莉乃!!意地汚いわよ!」

 

 

「七瀬財閥の娘ともあろう者が蕎麦とは……情けないですわね」

 

 

「そう思うなら食べるのを止めなさいよ!」

 

 

「蕎麦美味いか?美雪ちゃん」

 

 

「先輩、ちゃん付けはやめて下さい」

 

 

 それから数時間後、大勢のドンチャン騒ぎも収まってきたところで、ついに新年のカウントダウンが始まった。

 

 

「よし!カウントダウンするわよ!!」

 

 

 ステージの上に立ったあかりが柄にもなくマイクを持って叫び始めた。

 雰囲気酔いでもしたのだろうか。

 

 

「あかり、しっかりやれよー!」

 

 

「この場はあなたに譲りますわ。失敗は許しませんわよ!」

 

 

「あかりさん頑張ってー!」

 

 

 あかりに数々の声援が送られる。

 これは責任重大だな。

 

 

「そういえば神楽坂先輩はいいのか?」

 

 

「あの姉さんのことですから。どこかで楽しくやってるんじゃないですか?」

 

 

「……だな。ちょっと申し訳ない気もするが」

 

 

「大丈夫ですよ。姉さんはいつでもどこでもエンジョイしますから」

 

 

 暴論にもほどがあるが妙に納得してしまう。

 まあ実の妹が言うなら間違いないだろう。

 

 

「それじゃあカウントダウンいっくよー!!」

 

 

 今年一年頑張った自分に、そして友人達にお疲れ様の意味を込めて、俺たちはカウントダウンを開始する。

 

 

 

「「「3!」」」

 

 

 

「「「2!!」」」

 

 

 

「「「1!!!」」」

 

 

 





みなさん一年間お疲れ様でした。
来年もよろしくお願いします。

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