「「「Happy New Year!!!」」」
俺たちがそう叫ぶと同時に、いつの間にか周りに立っていたメイドたちが一斉にクラッカーを鳴らした。
クラッカーの中から出てきた色とりどりの紙吹雪が宙へ舞う。
「新年だー!今年も遊ぶぞぉー!!」
年明け早々莉乃ちゃんが新年のモットーを高らかに叫んだ。
彼女は一般的には受験生のはずだが、清秋学園は中高一貫校なので入学試験が存在しない。
だから年中遊んでいても問題ない。
………いやいやいや、大有りだよ。普通に勉強しろよ。成績が悪いと進学できないぞ。
「あんたはとりあえず冬休みの課題を終わらせなさい」
すかさず雫が莉乃ちゃんにツッコミチョップを浴びせる。
そういえば俺も終わってないな……。てか、手すらつけてないし。
「和也くんの課題はわたしが手伝ってあげるからね」
雫の言葉を聞いて凍りつく俺に気づいたのか、葉月が救いの手を差し伸べてくれた。さすが俺の自慢の彼女だ。
「ほんとか!葉月が手伝ってくれれば百人力だな」
「姫宮先輩。あんまり先輩を甘やかさない方がいいです。この人はすぐ調子に乗りますから」
喜んだのもつかの間、突然美雪ちゃんが横槍を入れてきた。
相変わらずこの子は俺に厳しいな。お前は俺の母親か。
「そ、そんなことはないぞ?!冗談はよしてくれよ美雪ちゃん」
「それもそっか」
「葉月!?!?」
酷い言いがかりだが、なぜか葉月は納得してしまったようだ。
ちょっと待て、さすがに一人じゃあの量は終わらないぞ。
「どうすんだよ一ノ瀬。お前今回も課題サボったらさすがにマズイぞ?」
渡辺が心配そうな声で言った。
心配そうなのは声だけで顔がニヤついてるんですけど?!
「それじゃカズくん、私が手伝ってあげるわよ。
「おお、あかり。正気に戻ったのか」
「は?」
俺の言葉を聞いたあかりがポカンとした顔をした。
あんなにはしゃいでいたのにどうやら覚えていないらしい。こいつ将来的に酒癖悪くなりそうだな。
「いや、なんでもない。手伝ってくれるならありがたいよ」
「やれやれ。女性の手を借りるとは情けないな、カズ」
すると今度は九条が絡んできた。
なんなんだよお前ら。そんなに俺を留年させたいのかよ。
「別にいいだろ。こっちは進級がかかってるんだ」
「え、お兄さん留年するんですか?惜しいなぁ。あと一年早く生まれてれば同じ学年になれたのに」
「しねーよ!!」
「桜内さん、冗談でも言っていいことと悪いことがあるわよ」
美雪ちゃんが腕を組みながら冷たい声で言い放った。珍しく俺を庇ってくれたらしい。
そうだそうだ、もっと言ってやれ。
「先輩と私が同級生なんで冗談じゃないわ」
あ、そっちなんだ。
なんだかんだで俺を信頼してるとかそういう展開ではないんだな。
「私だって実の兄が留年したなんて知れたら恥ずかしくて外も歩けませんよ」
雫まで……。どうして
自分でも結構面倒見のいい方だと思うんだけどなぁ。
(やっぱりあかりを頼るしか……)
そう思った俺はもう一度あかりに頼み込もうと彼女の方を向いたが、そこには天堂さんと言い争っている彼女の姿があった。
「なんですって?もう一回言ってみなさいよ」
「ええ、何度でも言ってさしあげますわ。あなたは他人の心配をする前に自分をどうにかしたほうが良いですわよ」
「なによそれ。つまり私が馬鹿だって言いたいわけ?!」
「あら、自覚はあるんですのね」
「あんたねぇ……」
………そっとしておこう。どうやらお取り込み中のようだ。
しかしそうなると手詰まりだな。どうしたものか。
(そ、そうだ!鈴森先輩に頼めばいいんじゃないか?)
生徒会の仕事もあるだろうしなるべくは避けたい選択肢だが……なりふり構っている余裕はない。
真面目なあの人ならきっと引き受けてくれるだろう。
(それじゃ早速……ってあれ?)
そういえばさっきから鈴森先輩の姿が見当たらない。トイレにでも行ったのだろうか?
「なあ、美雪ちゃん」
「なんですか、先輩。課題なら手伝いませんよ」
「ちがうよ。そもそもお前は一年生だろ?二年生の課題なんてできるわけ……」
「先輩と私を一緒にしないでください。基本までなら予習済みです」
「お、おう。そうか……」
さすがは生徒会長の妹ってとこか。
根本的に頭の出来が違うらしい。
「それより鈴森先輩がどこにいるか知らないか?」
「早苗さんですか?さっき廊下に出て行くのを見ましたけど……」
「ふーん、わかった。教えてくれてありがとな」
「それは別に構いませんが……まさか早苗さんに課題をやってもらおうなんて思ってないですよね?」
思いっきり見透かされていた。
めっちゃ鋭い目で睨まれてるし。
「あ、あはは。そ、そんなわけないじゃないかー。んじゃ、ちょっと行ってくるわ」
「あ、先輩っ!」
焦った俺はそれだけ言い残してすぐにその場を立ち去る。
慌てていたとはいえ、我ながら酷い演技だった。
(絶対バレてるよなぁ……)
後のための言い訳を考えながら、俺は廊下へ出る扉へと走って向かった。
◆◆◆◆◆◆
「はぁ?展望台?」
廊下へ出てからしばらく歩くと、奥からそんな声が聞こえてきた。
少し近づいて覗いてみると、そこには電話中の鈴森先輩の姿があった。なんだか不機嫌そうにも見える。
「そんな理由でパーティーに来なかったの!?」
鈴森先輩が怒鳴り散らすなんて珍しいな。
相手は誰だろうか?
「あ、ちょ、まだ話は終わってな……切られた……」
どうやら電話を一方的に切られたらしい。どことなく落ち込んでいるようにも見えるのは気のせいだろうか。
とにかく俺は鈴森先輩の下へと駆け寄った。
「誰からだったんです?」
「え?あ、あぁ、一ノ瀬くん。……吹雪からよ」
「神楽坂先輩?」
そういえばまだ来てなかったな。すっかり忘れてたけど。
「ええ。彼女、今展望台にいるみたいなの」
「て、展望台!?どうしてまたそんなところに?」
「新年を迎える前に登っておきたかったんだって。ほんとに何考えてるんだか……」
「あは、ははは……」
これはさすがになんと言ったらいいか分からない。てことはあれか?あの人は展望台で年を越したのか?何やってるんだあの人。
「まあいいわ、あの子の奇行は今に始まったことでもないしね。……それで一ノ瀬くんは私に用があったんじゃないの?」
「そ、そうなんですよ!実は冬休みの課題。手伝ってもらいたくて……」
「あら、まだ終わらせていなかったの?課題は早めに終わらせなきゃダメよ」
「うぐっ、返す言葉もございません……」
さすが生徒会副会長。言うことが的確だ。
「仕方ないわね。……今回だけよ?」
鈴森先輩が苦笑いをしながらそう言った。
どうやら承諾してくれるらしい。
なんていい人なんだっ!!
「あ、ありがとうございます!!」
嬉しすぎて俺は思わず頭を下げてしまう。
が、忙しい中わざわざ手伝ってくれるというのだから、これくらいはして当たり前だろう。
しかし次の瞬間、彼女の口から絶望的な一言が発せられた。
「それじゃ、今からやるわよ」
「………へ?」
「時は金なり、よ。どうせ今日は朝まで起きてるんでしょ?時間が勿体無いし、早目にやっちゃいましょう」
「え、ちょま、今から?……えっ?」
「ほーら、行くわよー」
「え?嘘ですよね?年明け早々勉強!?嫌だー!!」
こうして俺の2016年は鈴森先輩との地獄の課題ラッシュで始まることとなったのだった。
社会人の方々は仕事も再開しているころでしょう。
学生の方々は課題は終わったでしょうか?
入試が近い人もいると思います。
今年も一年、頑張っていきましょう!!