ゲームの彼女とリアルの彼女   作:悠木仁

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第20話 決闘

 

 

 

 

 夜中の十時。俺は専用のパソコンを立ち上げ、ゲームを起動する。

 そして、いつものようにギルドのメンバーたちに軽く挨拶をし、チャット画面をギルチャからコチャに切り替える。相手はあかり……ではなく、ギルマスの九条だ。二重奏(デュエット)の組み合わせについて、あいつと話し合う必要がある。弱みを握ることができなかったのが多少痛いが、この際仕方ない。

 相手が九条―――プレイヤーネーム『テル』であることを確認し、早速文字を打ち込む。

 

 

『テル。二重奏について話がある』

 

 

『わかっているよ。あかりんのことだね』

 

 

 送信してから十数秒で返信が届いた。きっと俺が聞いてくることを予想していたのだろう。

 つまり今朝のあいつの発言は、俺を挑発していたということなのだろう。

 

 

『なんでパートナーにあかりんを選んだんだ?実力的にも相性的にも、お前にはアクセルさんの方が合ってるだろ?』

 

 

 FQのアバターの特性は大きく分けて二つ、近距離型と遠距離型だ。細かく分ければ遠距離支援型や近距離攻撃型などがあるが、二重奏ではあまり意識されない。

 俺とアクセルさんは近距離型で、あかりんとテルは遠距離型。どう考えてもテルとあかりんでは相性が悪い。……作戦によってはそれもアリかもしれないが。

 

 

『まあ、そうだね。僕も別に遠距離から敵を狙い撃ちして無傷で完勝しようなんて考えているわけじゃない』

 

 

 端から見るととてつもなくゲスい作戦だが、実際にやっている人もいる。ただ、近距離戦に持ち込まれた時に対処不能になってしまう恐れがあるので、実力者の多い公式戦ではあまり使われない戦法だ。

 

 

『それじゃあいったい何が目的なんだ』

 

 

 あいつの考えていることがさっぱりわからない。単なる俺への嫌がらせとも考えにくい。顔バレする恐れがある公式戦で、それだけのために負ける可能性が上がるような行動をとるはずがない。プライドの高いあいつなら尚更だ。

 俺が送信してから少し間が空き、やっと返信が届いたが、その内容に俺は思わず目を見開いた。

 

 

『七瀬あかりの地位と名声』

 

 

「………はぁぁぁぁあ!?な、なんでこいつあかりんの正体を知ってるんだ?!」

 

 

 もしかしてあかりが伝えたのだろうか。いや、それならあかりが何か言ってくるはずだ。そもそも、あかりが自分からそんなことを言うはずがない。

 

 

『なんであかりんのリアルネームを知ってるんだ?』

 

 

 ちなみにリアルネームとはプレイヤーの実名のことである。人によって言い方が異なることがあるが、これで大体の意味は通じる。

 

 

『ははっ、やっぱりそうだったのか。相変わらずカズは素直だね』

 

 

「……ハメられた」

 

 

 まさかこんな古典的な方法に騙されるとは思ってもみなかった。

 この場合、悪いのは俺なのだろうか。あかりに言ったら俺が怒られそうなんだが。

 

 

『だいたい察しはついてたんだ。だけど確信がなかった。カズが単純で助かったよ』

 

 

「こいつ……明日会ったらぶっ飛ばす」

 

 

 しかし察しはついてたということは、原因は俺ではないのだろうか。となれば、やはり悪いのは俺ではないということになる。

 

 

『どうして分かったんだ?』

 

 

 とりあえずあいつがあかりんの正体を知るまでの経緯を聞かせてもらおうじゃないか。

 場合によってはそれが俺の免罪符になる。

 ……なんだか主旨が変わってるような気がしないでもないが。

 

 

『日曜日の夜にあかりんから言われたんだよ。「二重奏に出る」ってね。今まで決して自分の素顔を晒さなかった彼女が、だ』

 

 

「日曜って……あかりと出掛けた日じゃないか」

 

 

 どうやら二重奏に出場することはテルにも伝えていたらしい。

 まあ、今までずっとパートナーの申し出を拒否してた人が何も言わずに出場してたら不快に思う人もいるだろうしな。

 

 

『そして彼女と特に仲が良い君の二股疑惑に関するスクープ記事ときたもんだ。さすがに偶然じゃ済まされないだろう?』

 

 

「だから二股は誤解だっつーの……」

 

 

 しかしどうやら完全にばれてしまっているようだ。ゲームなんてやってないで探偵にでもなったらどうだろうか。

 

 

『たまにはあの鬱陶しい女も役に立つみたいだね。新聞委員会の解散の件に関しては再検討するとしよう』

 

 

「この女って最上のことだよな?あいつやっぱり九条にも絡んでたのか」

 

 

 その積極性は評価するが……あいつのせいで新聞委員会がとばっちりをくらってるじゃないか。委員会の解散なんて初めて聞いたぞ。

 しかし残念ながら今はそんなことを考えている余裕はない。あかりの正体がバレてしまっている以上、余計に下手に動けなくなってしまった。逆恨みで身元を晒されたりしたら一大事だ。

 

 

『……それで、地位と名声ってどういうことだ?』

 

 

 そう、一番重要なのはそこなのだ。当たり前だが、彼女とパートナーを組んだからといって地位と財産が手に入るわけではないはずだ。

 

 

『そのままの意味だよ。僕はこれでも顔が広くてね。彼女と僕の関係が周りに知られれば、あとは親たちが勝手に縁談を進めてくれる』

 

 

『ちょっと待て。……縁談?』

 

 

『そう、縁談。これでも僕はフランス貴族の孫だからね。お金はあるんだよ。企業家にとって、お金は喉から手が出るほど欲しいはずだろう?』

 

 

 そう……なのか?金持ちやビジネスマンの考え方はよく分からないが、縁談なんて実在するのだろうか。アニメの中だけの話かと思っていたが。

 

 

『とはいえ今の時代、見知らぬ人と結婚させられるなんてケースは減ってきている。大抵は遠い親戚だとか友人の貴族と結婚する場合が多い』

 

 

『そのためだけにパートナーをあかりんにしようとしてるのか……?』

 

 

『そうだとも。それに彼女に断る選択肢なんてない。僕が身元をバラせば、彼女はこれ以上ゲームを続けられない。その辛さは君がよくわかっているだろう?』

 

 

 あいつ、本気なのか……?自分の為だけにあかりの趣味を取り上げるのか?あかりの初めての公式大会を、あいつはそんなことに利用するつもりなのか?!

 

 

『それでも俺は認めないぞ、テル。あかりんと出場するのは俺だ!』

 

 

『慌てるなよ、カズ。僕たちの他にも彼女と組むことを希望する人は山ほどいるんだ。そして僕はギルドのマスター。……あとは分かるよね?』

 

 

 たしかに、毎年パートナーにあかりんを誘う人は少なくない。比較的少ない女プレイヤーだからという理由で誘う人もいれば、その実力を見込んで誘う人も多い。

 

 

『……もしお前が無理矢理あかりんと組んだりしたら大ブーイングだろうな』

 

 

 それこそギルマスの職権乱用とかなんとか言われることになるだろう。そうなればテルのゲーム人生は破滅だ。

 

 

『その通りだ。だから君たちにはチャンスをあげよう。まあ、君たちといっても、最後に残るのは君と僕だろうけどね』

 

 

『チャンス……?』

 

 

『決闘だよ。ここらではっきりさせようじゃないか。君と僕のどちらが彼女に相応しいのかを。あの時、どちらが正しかったのかを、ね』

 

 

 

 

 




シリアスっぽいことやってますけどゲームの為にゲームで争うってもうただの廃人ですよね。
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