オーバーロード ~アンデッドは生者の夢を見る~   作:snd_rcv

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一日目 ①

アインズは焦っていた。

 

アルベドからシャルティアが反旗を翻したとの連絡を受け、アインズはすぐさまナザリックに戻ってきた。

 

アインズは嘘であれと願いながら王座でマスターソースを開いた。すると本来白い文字のはずのシャルティアの名前が黒くなっているのを確認した。

 

黒くなっている意味、ユグドラシル時代でそれは精神支配によって一時的に敵対行動をとるようになったNPCを表すものである。

 

「ありえない」

 

近くにいるアルベドに聞こえない程の声量でアインズはつぶやいた。

 

「アンデッドであるシャルティアが精神支配を無効化するはずだ。こんなことがありえるのか?」

 

アインズはアルベドへ尋ねた。

 

「……わかりかねます。ですが、シャルティアが反旗を翻したことは事実です。至急、シャルティアの討伐隊を編成することを進言いたします」

 

アインズの問にアルベドは冷静な口調で返答する。

 

「待てアルベド。まだシャルティアが反逆したのだとは決まっていない。まずは現状の把握、そしてもし本当にシャルティアが反逆したというのならば、その原因を突き止めることが最優先だ」

 

そうだ。まずは現業を把握することが最優先だ。

 

もし誰かに精神支配をされてしまっているのならば、討伐よりも救ってやらなければならない。

 

部下を切り捨てるなど誰にだってできる。部下を救えるものこそが良い上司というものだ。

 

(でも待遇面で不満があるんだったらどうしよう…。給料やボーナスアップで問題が解決すればまだいい…。仕事内容に不満があった場合もまあなんとかなるだろう。問題は人間関係に不満がある場合だよな…。性格は合う合わないあるからしょうがないことだけどさ、上司が解決できない問題がほとんどだからなあ。あ、もしかして上司である俺に不満があるならどうしよう…。でもその可能性が一番ありそうな気がしてきたぞ……)

 

と、答えの出ない考察にヒートアップしていたところ、精神安定化が発動しアインズは我に返る。

 

そして、咳払いを一度してアルベドに尋ねる。

 

「んん。そうと決まればアルベドよ。シャルティアが今どこにいるのか把握はしているのか?」

 

「申し訳ございません。未確認です。今はシャルティアの襲撃に備えて迎撃の準備をしておりました。」

 

「そうか。では、お前の姉の力を借りるとしよう。彼女ならシャルティアを見つけられるだろう」

 

アインズは王座から立ち上がり、すぐさま地下第五階層へ向かった。

 

 

◆ ・ ◇ ・ ◆ ・ ◇

 

 

シャルティアは夢を見ていた。

 

夢のなかでシャルティアは、少年の格好をした少女といがみ合っていた

 

「アンタもいい加減胸にもの詰めるのやめたらどう?みっともないたらありゃしない。ナザリックの皆はアンタがぺったんこのことは知ってるんだから、今更詰めたところで誰も見向きもしないわよ」

 

「あ~あ。これだからちびっ子は…。大人の魅力というものが分からんでありんすえ。男はみな大きなお胸を好むんでありんす。嘘だろうと本当であろうと大きいことに越したことはないでありんすよ!」

 

「だからその考えがみっともないんだってわからないわけ!?何見栄を張っているのよ!だいたい大きいよりも小さい方が良いっていう男もたくさんいるわよ!」

 

シャルティアと少女が大声で罵倒している横で、少女の格好をした少年がおどおどと怯えていた。

 

だが言い合っているふたりは鬼気迫る表情とは裏腹に、なぜだかそれを楽しんでいるようだった。

 

不毛な言い争いは次第にヒートアップしていった。

 

「じゃあ男の意見を聞くというのはどうでありんすか?それをもって正しい答えとしてありんしょう?」

 

「そうね。あたしもそう思うわ。じゃあ男に意見を聞きましょうか」

 

そして二人は少年の方へ目を向けた。

 

少年は嫌な予感を察知して逃げようとしていたが、時すでに遅し。

 

少年はもはや蛇に睨まれたカエルよろしく、顔には引き笑いを浮かべて体を強張らせていた。

 

「さあ教えてちょうだい。ない胸に詰め物詰めるバカと自然体であるあたし。どっちが魅力的だと思う?」

 

「さあ教えてくんなまし。色気皆無の洟垂れガキンチョと、色気たっぷりなわたし。どっちが魅力的であるかを」

 

明らかに言い争っていた内容と質問内容が違っていることに戸惑いを感じながらも少年はふたりをまっすぐに見て口を開いた。

 

「ぼ、ぼくが好きなタイプはモm―」

 

そこで夢は途絶えた

 

 

◆ ・ ◇ ・ ◆ ・ ◇

 

 

シャルティアはノックの音で目を覚ました。

 

もう一回ノックをされたので、シャルテイアは小さな声で返事をした。

 

返事を返すのと同時にドアが開き、そこから少年―レン―が顔をだしてシャルティアを見ている。

 

まだ幼いその少年は、シャルティアへ無邪気な笑顔を作りながら大きな声で挨拶をした。

 

「おはようございます!シャルティアお姉ちゃん!朝ごはんの準備がもうすぐできるって姉ちゃんが言ってたよ!」

 

「そう……ありがとう。すぐに降りるわ」

 

返事を返すとレンはより一層笑顔にして、リビングのある一階へ階段をドタドタ降りていった。

 

何がそんなに面白かったのかとシャルティアは思ったが、あの笑顔には嫌悪感を感じなかった。

 

昨晩はレンの姉でもあるカトレアからシャルティアはさんざん質問を受けた。

 

自分がどこから来て、なぜあそこにいたのか。なぜ傷だらけだったのかなどなど。だが結局全然覚えていなかった。

 

昨日唯一思い出せたことは、自分の名前が(多分)シャルティアであることだけだった。

 

カトレアは精神的なショックや疲れによって記憶が曖昧になってると判断し、その段階でお開きとなった。

 

「しかし何なの…この感じ、とても…だるい……」

 

寝起きの気だるさにシャルティアは辟易とした。記憶がないとはいえ、未だに感じたことのない感覚だな…となんとなくシャルティアは思った。

 

少し時間が経過し、気だるさが薄くなってきた頃シャルティはベッドからでて立ち上がった。

 

シャルティの体は傷だらけではあったが、すべてがかすり傷程度だったらしく、体を動かすことに支障はなかった。

 

服がボロボロであるのに体の方は大した傷がないのにカトレアは不思議そうにしていたが、大して気にとめていない様子だった。

 

シャルテイアがもともと着ていた服はボロボロになっていたため着ることができず、今はカトレアが貸してくれた服を着ている。

 

幸いシャルティアとカトレアは体型が近いこともあって、シャルティアは問題なくカトレアの服を着ることができた。

 

ただ胸の部分だけ、少しダルダルになっていることを除いては。

 

そのことにシャルティアは何故か憤りを感じられずにいられなかった。

 

何か胸に詰めれるものがあったら詰めようと考えていたとき、そういえばと思い返す。

 

(胸で思い出したけど、さっきの夢はなんだったのだろう)

 

シャルティアは先程まで見ていた夢について考え始めた。

 

ぼんやりとしているが、少年の格好をした少女と少女の格好をした少年と話をしていたことは覚えていた。

 

だがそれ以外は思い出せない。彼らの名前さえ思い出せない。

 

彼らは誰だったのだろう。とても大切な…大切な人だったような……。いや、そうでもないような気もする。

 

夢について色々考えていたら、リビングの方から騒がしい音が聞こえてきた。どうやらレンが朝食の催促をしているようだ。

 

時計を見るとレンが起こしに来てから結構な時間が過ぎていた。

 

そろそろ降りないとレンがまたドタドタやってきそうだと、シャルティアは考え、ゆったりと一階のリビングへと歩き始めた。

 

 

◆ ・ ◇ ・ ◆ ・ ◇

 

 

自室に戻ってきたアインズは大きな溜息とともにベッドに倒れ込んだ。

 

そして小さく「くそが」とつぶやいた。

 

アンデッドであるため疲労はしないが、精神的に負担を感じているため、疲労感は感じていた。

 

そもそもなぜこんなに精神がすり減っているかというのは、ずばり自分の計画通りにまったくことが進んでいないからである。

 

次から次へ不足の事態が発生する。

 

アドリブに弱いアインズにとって不足の事態に陥るのは精神的に負担が大きいのである。

 

まず、ニグレドのところからうまくいっていなかった。

 

 

―――回想――

 

ニグレドのところから王座へ戻ってきて、アインズは力なく王座へ座った。

 

そして、アルベドに見られないよう何気なくため息を吐く。

 

アルベドの姉であるニグレドに頼んでシャルティアの居場所を見つけて、それからどうしようか考える算段だったが、そもそもこの時点で計算が狂っていた。

 

結論から言うと、ニグレドの力を持ってしてもシャルティアを見つけることができなかったのだ。

 

ナザリック最高の情報収集能力をもち、調査系の能力特化した高レベルNPCで見つけることができないとなると、アインズにとってお手上げ状態である。

 

唯一分かったことは、シャルティアの居場所ではなく、シャルティアが一時的にいた場所ということである。それはどこか森の中にある開けた平野とのこと。

 

何か手がかりがあるかもしれないと思い、アインズが出向こうとした時、間が悪いタイミングでナーベラルから連絡が来た。

 

その物悪さにアインズは苛立ちを感じたが、ぐっとこらえナーベラルへ返答する。

 

「なんだナーベラル?」

 

『はっ。実はアインズ様を冒険者組合が呼んでおりまして』

 

「冒険者組合?」

 

『はっ!どうやら吸血鬼に関する討伐の依頼だとのことでした』

 

「吸血鬼……?」

 

アインズは背筋に冷たいものが走るのを感じた。

 

「その吸血鬼の特徴について何か言っていたか?銀髪であるかなど」

 

『いえ、使いの者は詳しい事情を知りませんでした。詳しくは組合の方で話すとのことでした』

 

「そうか……。」

 

アインズは考える。平地へ行くか組合へ行くか。

 

しかしアインズの頭では判断がつかず、アルベドへ尋ねてみた。

 

アルベドも情報不足のため、どっちを選んでもメリット・デメリットがあるため、アインズ様の決めて問題ないとのことだ。

 

結局は自分で決めるしかないか……。とアインズは心のなかで落胆した。

 

アインズは覚悟を決めて必死で考える。今現在で一番の問題はシャルティアを発見できず、状況を把握できていないことだろう。

 

これによって次の一手を決めあぐねているのだ。

 

シャルティアが精神支配されていた場合、支配者の思い思いのままとされ、ナザリックの情報はダダ漏れになるだろう。もう手遅れの可能性もあるが情報漏れは最小限に抑えたい。

 

ならば、先にシャルティアの現状を調査することが重要だ。

 

それに仮に冒険者等でシャルティアの討伐をするにしても、ニグレドで見つけられなかった相手だ。奴らで見つけられるとは到底思えない。まおそらくまだ見つけていないはずだ。

 

ならば、冒険者組合の方はあとに回してもなんとかなるだろう。

 

凡人の頭をフル回転させて決まった決断を、アインズはナーベラルに伝える。

 

「ナーベラルよ、私は今早急にやらなければならないことがある。組合の方にはモモンは出席できないことを伝えておいてくれ」

 

『畏まりました。では使者の方にそのように伝えておきます』

 

「うむ。よろしく頼む」

 

ナーベラルとの<伝言>を切ったあと、アルベドへ視線を向ける。

 

「聞いていたなアルベド?しばらくしたらシャルティアが居たという場所へ向かう。おまえを伴して連れて行きたい。至急に装備の準備を整えよ」

 

「はっ。畏まりました。ただちに準備を致します」

 

そうアルベドは答えると、一瞬でアインズの目の前から姿を消した。

―――――――

 

そしてアインズは自室に戻り現在に至る。

 

アインズは少しベッドで横になったあと、すぐさま立ち上がり、装備の準備を始めた。

 

平地では何が待っているかわからない。もしかしたらシャルティアを精神支配した奴らが潜んでいるかもしれない。

 

そのため装備は戦闘力を上げるものよりも逃げることを優先したものへと変更した。

 

防御重視のアルベドを同行させるのも、逃げることを優先したためである。

 

(願わくはシャルティアが無事でありますように)

 

準備を済ませてアインズは心の底からそう思い、自室をあとにした。




やっぱりオーバーロードにはアインズ様がいなくちゃね。
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