しがないドラム缶押しのネタ帳   作:日λ........

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一夏強化物。鈍感さとかなんとかする為にどうすればいいかと悩んだ末の一作。
案外その鈍さや図太さは世紀末で生きていくにはちょうどいい資質なのではないかと思ったりしました。


INFINITE MAX ReSTART(IS×METALMAX2 ReLOADED)

 

 

 

「次元を超える転送装置?そんな高度な物この世界に残ってると思うのボケナスは?」

「いや、あるが俺の目的に使えないってだけの話だよ。物にしか使えないみたいだし」

 

人里離れた辺鄙な場所に立てられた研究所に、二人の男の姿があった。一人は研究者のような白衣の男。もう一人は藍色の戦闘服に身を包んだ青年である。

年齢も職業もかみ合わない二人であるが、友人であるという事は確かであった。研究者はその自覚の無い罵倒癖から人に疎まれているものの、青年はこの男に悪意があるわけではないことを知っているし、何より鉄クズから戦車を生み出せるその技術力から戦前の機械に関する知識に対しては誰よりも信頼していた。

 

「タキオンテレポーターって言う装置なんだが、どうにかして人間を送れるようには出来ないのか? 今まで見つけた物の中だとアレか転送装置位しか俺の目的を果たせる方法は思いつかない……。無理は承知で、頼むよバトー博士」

「うーん、何とかしたいのは山々なんだけどねぇ。他にもないボケナスの頼みだし出来る事はしてあげるけど、そもそもボケナスの言う故郷の地球の次元座標が分からないとどーしよーも無いんだよねぇ」

 

お手上げさ、とでも言うようにバトー博士は両手を挙げながらそう言った。それもそうだった。そもそも自分が体験したのは時間漂流なのか、別次元の世界からの転送なのかすら検討も付いていない。

 

「帰る道が分からないと、転送しても無駄死にで終わるかもしれないしねぇ。そもそも人が生きていける場所に流れついただけでもボケナスは幸運だと思うよボクは。まあそもそもそんな与太話、ボケナス達以外が言った所で信じる気になれないしねぇ」

「……俺以外ってことは、俺の言う事なら信じてくれるんだな」

「うん。だってボケナスは嘘をつける程賢い人間じゃ無いもんね!」

「ひでぇやバトー博士。でも、ありがとう。こんな無茶聞いてくれて」

「そりゃそうさ、君と僕の仲だからね。今更さ」

 

改めて青年__織斑一夏は思った。やっぱりこの人、姉の友人のあの人と同類だな、と。

そういえばあの人から渡されたお守りがあったっけ? 事故でこっちに来るときも持っていた数少ない私物だが、アレって何処に……ん?

 

「あ!?そういえばアレ怪しいわ!?どうして俺気が付かなかったんだ!?」

「き、急に大声上げないでよボケナス! 僕のデリケートな耳がキーンとしたよ耳が!?」

 

バトー博士は非難の目を一夏に向けているが、彼は慌ててハンターゴーグルの収納空間か一つの「お守り」の形をした布袋を取り出した。渡した人の実家が神社であった為、やたらと達筆な文字で『安全祈願』と書かれたそれの紐を解いて、中身を取り出すと……SFめいた形状をした白い金属の機械のようなものが入っていた。

表面には、しっかりと兎のマークが書かれている。

 

「やっぱりあった!……どう考えてもコレ束さんの発明品だよな」

「何に気が付いたというんだいボケナス。君がこっちの世界にきたという証拠か理由でも見つけたの?」

「多分だけど、コレ位しか心当たりがないというか……ちょっとコレ、調べてくれないか?もしかすると本当に俺がこっちに迷ってきた理由かもしれないんだ。友達のお姉さんが渡してくれた物なんだけど」

 

そういって俺はそのあの『天災』が作り出したと思われる機械をバトー博士に渡した。

 

「ふーん……サーズデー、このガラクタに解析掛けて!」

「リョウカイ シマシタ バトーハカセ」

「ボケナス! しばらくはぶらぶらしてるといいよ! ここにいてもどーせ役に立たないだろうからね!! 自慢のバカ力で近くのモンスターでも狩ってくるか、酒でも飲んだくれてればいいさ! 解析できたら手紙送るからね!友だちに手紙送るのってやりたかったんだよね!」

 

そういうとバトー博士は自前のコンピューターのある部屋に篭ってしまった。研究者としての血が騒いでしまったのか、こうなるときっと数日は篭りっぱしになることは明白である。

 

「……はぁ」

 

姉も天災の友人に対してこのように振り回されていたのか。そう思うと姉の気苦労が少し分かってしまう気がした。

結局、バトー博士の言葉に従い研究所から外に出て暇つぶしをする事にした。まあ確かにあの復讐の日々が終わって約半年。そろそろ以前の仲間や義兄弟に会いに行くべきかもしれない。

そう思った俺は、愛車のバイクに乗りエンジンを掛け、ドッグシステムを起動させる。

唸るエンジン音を耳にしながら、俺はバイクを走らせた。

見渡す限りの荒野をスピード出し放題でかっ飛ばすことは、文明が滅んだこの世界でしか出来ない贅沢かもしれない。目的地はマドの町。俺達の復讐が始まった場所であり、結婚して賞金稼ぎを引退した俺の義兄弟が住む町だ。奔放して資材や人を集めたこともあり、かなり思い出深い場所である。

 

途中で襲い掛かってくるミュータントモンスターもいるが、そんなモノ物ともせずに蹴散らして俺は走り去っていった。

 

 

 

 

▲▲▲▲▲▲▲

 

 

 

 

 

「にいちゃん、賞金首を倒した時の話を聞かせてよ!」

「いいぜ。そ~だなぁ……賞金詐欺な強さのサイゴンを倒したときの話はしたっけ?」

「それはまだにいちゃんがねぇちゃんと結婚する前に話してたよ! 一にぃが死にかけたけど、なんとかギリギリ倒せたんだよね?」

「おう。流石にあの頃はまだまだ弱かったし、旅の仲間も俺と兄貴しかいなかった。クルマもボロボロになってなぁ。あの時は死ぬかと思ったもんだぜ……お前が大きくなっても、信頼できる友達や仲間は大切にしろよ?でねぇとああいう修羅場は越えられねえぞ?」

「うん、分かった!」

「おう、いーい返事だ。よし、まだ話してない奴と言えば……」

 

マドの町に着き、クルマをじいさんに任せると聞き覚えのある二人の声が聞こえた。

……ようやく年相応の笑顔が自然と出来るようになったみたいだな。ケン

 

「よう、元気にやってるみたいで何よりだ兄弟」

「兄貴!」「一にぃ!」

 

一夏の声に、それまで楽しそうに話し合っていた二人の兄弟が振り向いた。まだまだ成長期の二人は、半年前に比べてだいぶ身長が伸びたように見える。ケンに至っては、いつの間にか俺と同じ位背が伸びていた。

 

「久しぶりだな、イリットちゃんは元気か?」

「ああ、俺もイリットも元気にやってるよ。カルも元気だよな?」

「うん、一にぃひさしぶりー!」

 

カルの元気そうな声に、一夏に安堵の感情が零れた。今の時代、子供は結構死にやすい。この町は井戸があるし、ケンがたまに狩りに行くので食料の問題はほとんどないが病気となると簡単には治らない。薬に頼る手もあるが、それが未知の病である場合ほとんど手の出しようがないのである

 

「そういう兄貴こそ、無茶してないよな? 結構抜けてる所もあるからちょっと心配だったんだよなぁ」

「……だ、大丈夫だ。流石にパーティ組んでた頃並みの無茶はしてねぇぞ!」

「いやソレ自分から無茶してるって言ってるようなもんじゃねぇか!? んまあ俺もあんま強く言えない立場だけどさぁ……それで、何か用事で来たのか? こっちは見ての通り大体平和にやってるぜ。仕事だったら手伝うけれど。俺の手、いるか?」

「いや、仕事は今休暇中だな。目立った賞金首もまだ出てねぇし、遺跡荒しも出来るような場所、この辺りは大体したから目立った物は無いだろうからなぁ。というかお前は引退してるだろ!」

「あーそっか。まあ、グラップラー潰したってのにそうぽんぽん凶悪な賞金首が出てきても困るよなぁ。まあそれならいいや。今日は久しぶりに一緒に飲もうか。カル、イリットに兄貴と酒場に行くって伝えておいてくれ」

「うん、分かった!」

 

ケンの言葉を聴いたカルは、ガレージの二階への階段へと向かっていった。うーん、元気なのはいいが相変わらず突っ走っていくなぁ。転ばなければいいが

 

「んじゃ行こうぜ兄貴。募る話もあるし、酒場で色々情報交換しようか」

「そうすっか。今日は俺の奢りな。そこそこ小金は稼いでるし」

「お、マジで?ありがとう兄貴、実は最近ちょっと貯金してて……」

 

……やっぱ所帯を持つと人間変わるのかね。ケンって結構PTの中でも浪費家だったんだがなぁ

 

 

 

 

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「「乾杯!」」

 

 

マドの町にある酒場に着くと、俺たちはそれぞれお気に入りの酒を頼み、一気に一口目を煽った。ああ、この味だ。見知らぬ地で見慣れぬ酒を一人で飲むのもいいが、仲間と飲む飲みなれた酒は格別だ。

 

「かぁー、染みる!やっぱいちころは最高だぜ!」

「相変わらず渋い趣味してるなぁ兄貴……あ、マスターおつまみにぬめぬめ焼き頼む。半生で」

「お前も言えた口じゃねぇだろケン……ぬめぬめ焼き半生って通を超えてゲテモノだぞ?」

「つまみにはコレが一番って思うんだよね。兄貴は何頼む?」

「んじゃモジョバターとアホウ鍋と……お!今はオムレツなんかやってるのか。マスター!地底オムレツとモジョバターとアホウ鍋一つ頼む!」

 

そういうと、顔なじみである店のマスターはキッチンへ向かっていく。相変わらずいい腕だな。なんでも昔は打ち上げられた軍艦が元になった町でシェフをしていたらしく、その料理への情熱はかなり凄い人だ。まあ、それはさておきケンと話すか。

 

「んで、最近はどうなんだ兄貴。こっちはさっき言った通り大方上手く行ってるぜ。イリットともな」

「さらっと惚気てるんじゃねぇよ。まあ、ぼちぼちだな。最近はグラップラーの残党もほぼ消えた。まあ、俺たちに仕事が無いって事は、それだけ平和って事だからなぁ。昔じゃ考えられないな……俺個人としては、ちょっと進展あったよ」

「え? 帰り道、見つかったのか?!」

 

ガタッと席を立つケンに他の客が視線を一瞬向けるが、俺たちを見て直ぐに視線を外した。そりゃ有名なハンター二人が騒いでたら、怖いだろうなぁ。ましてや二人とも人間戦車なんて大層かつ言葉通りの称号持ちだ。顔馴染みである町の住人はともかく、酒場は人が集まるので外の人間も多い。血の気の多いハンターたちが乱闘騒ぎを起こすなんてよくあることである。昔全員で騒いでた頃によくあんな感じで見られていたのでもうなれてしまった視線だ。

 

「いや、見つかるかもしれないって所。今はバトー博士に祈るしかないなぁ。なんか元々俺が持ってたお守りがあったんだけど、その中に変な機械が入っててな。俺がこっちに来たのもそれが理由かもしれん」

「あのお守りの中身、そんな物が入ってたのか?大切そうにしてたから思い出の品かと思ってたんだけど」

「まあ、確かに数少ない俺が持ってきた向こうの物だったが、渡してきた人がちょっと厄介な人でね……どう考えても厄い代物だとおもってたから落とす訳にもほっぽり出す訳にもいかなかったんだよなぁ」

 

酒を煽り、昔のことを思い出す。アレは10才の誕生日の事だったか。あのお守りは、束さん曰く「コレがあればいっくんの安全は完璧だー♪」とかいいながら渡してきた代物である。あの人の事だ、あの恐ろしくオーバーテクノロジーな科学技術をもってして作り出した俺の危機に反応して空間転移を行う機械だったのかもしれない。それが座標がずれてこちら側に来てしまったとすれば、一応の仮説は付く。それにしても滅茶苦茶だが。

うん、帰ったら一発げんこつでもかますべきだろうか?何が安全だっつーの。思いっきり事故起きてるじゃねーか……

……いや、止めておこうか。でこピンでも下手するとつぶれたトマトになりかねん。

あの人地味に頑丈だから耐えれるかもしれないけれど、最近普通に『すで』で殴るだけでも弱い戦車くらいなら一撃で鉄クズだもんなぁ。こちとらとっくに人間卒業(レベルメタファン)してるのである。

向こうにいったら自重しなければいけないこともあるだろう。こちらと違って法律あるし、無理やり力ずくで押し通るようなことは避けねばなるまい。まあ、今の時点では帰れるか微妙だけど

 

「……俺達じゃ兄貴の帰る場所にはなれねぇか。残念、だな」

 

おいおい、神妙な顔して悲しい事いうんじゃねぇよ兄弟。

 

「んな事ねぇって。俺はお前らに十分救われてる。ただ、故郷には色々置いてきちまったモノがあるだけさ。俺達の居場所って言ったら、ケンとイリットちゃんと、カルと爺ちゃんが居て、マリアが眠ってるこの町だ。……だが、姉さんに何も告げないでいなくなった事が心残りなんだ。短かったけど、好きな人と結婚した事も伝えたいし」

「ッ!……セシルさんの事は、その……」

「お前が気にする事じゃない。俺は、俺達は幸せだったさ」

 

そういって、俺はいちころを煽る。ぴりりと喉に来る日本酒みたいな辛味が、心地よい。この味を気に入るまで、何回飲んで、吐いて、グラップラーへの恨みを綴って、仲間と一緒に賞金首討伐の祝杯を挙げただろうか。ああ、うまい。初めの頃は安いが不味い酒といった印象だったのに、今ではすっかり気に入ってしまっている自分がいた。……この数年で苦いも甘いも味わいすぎたな。貧弱なボーヤだった筈なのに。

 

「お前が幸せそうで何よりだよ。復讐に囚われる前のケンに無事戻れた、というかさ。復讐を終えた後になんにも残らないんじゃないかと正直少し心配だったんだ」

 

一人、復讐を終えて真っ白に燃え尽きた男を見たからこそ生まれた懸念だった。

 

アクセルはグラップラーの存在が気に食わないからと、色々な騒動の末に仲間になった男だ。だから旅終わってもそこで立ち止まらないだろうと感じていた。

ミシカは__まあ、アイツは復讐が終わったらそれでスッキリするだろうと思っていたので特に心配してなかった。事実、勝手に飛び出していきやがったし。

だがケンは、とくにそういったやりたい事はこの旅の中でほとんど済ましていたのだ。マリアと約束した、一人前のハンターとなる事も、大陸中にいる賞金首退治も、行動の燃料元である復讐も、終えていたからだ。だからこそ、あの孤独な船長のようになってしまうのではないかとかなり心配だった。

そんなケンが、マリアが死んでから中々笑わなくなっちまったケンが、唯一頻繁に笑顔を見せる相手がイリットちゃんと、その弟のカルだった。

復讐の旅が終わって、色々後片付けも済んだときにハンターを引退してイリットと結婚するとケンが言った時、胸の中の重荷が一つ降ろせたように思えたもんだ。

 

 

「俺がそんなふうにならなかったのは、きっと兄貴とセシルさんのお陰だよ。いくら大切な人でも別れが必ず来るって知ってたはずなのに、俺は目を背けてたって気がついた。だから、復讐を終えて、ケジメをつけたら少しでも長く彼女と一緒にいようと思ってハンターを引退したんだ。やりたい事も、それ以外もうなかったからさ」

「……やっぱり強いな。ケンは」

 

俺が元々ハンター稼業をする気になったのは帰る手段を得る為だ。マリアが殺されて、優先順位がグラップラーへの復讐にシフトしたが、復讐を終えた後は元々の目的に立ち戻るつもりでいたのだ。

だが……今もセシルが生きていて、彼女が元気であったなら俺は故郷への未練を捨てて、こっちで骨を埋める気だったろう。今のケンのようにハンターを引退してたかもしれない。

だが、あくまで<もしも>の話だ。隣にいた自分の妻はもういない。

俺はその頃から寂しさと虚しさからか、それまで忘れかけていた望郷の念に駆られるようになってしまった。

だから俺は今でも立っていられる。燃え盛る炎のような復讐心は無くても、帰りたいと望む気持ちがあるからだ。女々しくても、情けなくても、その気持ちがあるから俺は今動ける。

だからもしもその感情がなければ……帰る場所が無かったら、ビイハブ船長のようになってしまっていたのは俺の方だったかもしれない。

 

(……ハァ。よく考えたら、俺は心配する側じゃなかったな。ケンの方がよっぽどしっかりしてるじゃねーか)

 

セシルが死んだ時、俺は人目を憚らず泣いた。人生で一番泣いた日はきっとあの日であろう。

そうして、セシルの葬式をしてから、しばらくは立ち直れなかった。だが、そうしてる間にも聞こえていたケン達の活躍がぴたりと聞こえなくなった時、気がついたらソルジャーの装備を着て、バイクに跨ってイスラポルトの港を飛び出していた。

セシルに、何時までもうつむいている姿を見せている気がして情けなく感じたからか、ケンたちが心配になったからか。今となってはもう覚えていない。

だが、立ち直る為には考える前に動く事は必要だったと今は思っている。

 

「さ、湿っぽい話は終わりだ。今日はたっぷり飲もうぜ!」

「……ああ! オッちゃん、酒おかわり頼む!」

 

俺は手にしていたいちころを一気に煽った。安っぽいケミカルなアルコール臭さが、体に活力を与えてくれる気がした。

 

 

 

 

 

 

 

▲▲▲▲▲▲▲

 

 

 

 

 

 

そうして数日間、俺はマドの町で過ごした。

ケンは、本当にそれまでの重荷を下ろす事が出来たようで、すっかりマリアを失う前の明るさを取り戻していた。幸せすぎて腑抜けてないか心配だったので手合わせもしたが、相変わらずのすばしっこい動きと銃捌きで一応安心である。

もっとも、人間卒業してる俺達の手合わせは一般人から見ると壮絶な殺し合いにしかみえなかったそうで。

見物客からその事を聞き、駆けつけたイリットちゃんに涙目で怒られるというケンからしたら最悪の落ちがついた。というか俺も凹んだ。

このご時勢に、ケンがいるからといやな顔一つしないで俺達にも夕食を作ってくれたり、マリアを殺されて荒れてた頃のケンを笑顔にする事から天使とか女神とか言われてたイリットちゃん泣かせるとか、一緒に旅した連中に何言われるやら。

 

カルは、相変わらず腕白に育っている。何処で拾ってくるのか、たまーに凄い貴重品を見つけてくる所も変わらない。将来が楽しみなような怖いような……。

 

イリットちゃんには心配させた事を謝ったが、理由を話すと納得してくれた。

本当に足を向けて寝れないねこの子。この荒れた世界でよくもまあこんな健気ないい子に育ったものだ。

久しぶりに何回か食事にお邪魔させてもらったが、俺の教えた料理や、戦前の料理本のレシピを自分の物にして更に旨くしていた。なんというか、ホッとする味なんだよなぁ……ロリおかんとはこの事か。ケン、うらやましい奴め。

 

いや__下手したら本当に母親になるのも近いかも、しれん。

この世界平均寿命が短いからか、親になるのが早い奴は本当に早いのだ……加えてケンはかなり稼いでいて、子供が何人かいても問題なく養える。そしてこの前偶然見てしまった、寝室(ケンが増築した)に向かう女の表情をしてたイリットちゃんの姿から察するに……イカン。

この前見つけた未使用品のコン……ゲフンゲフン謎のゴム風船をケンに渡しておこう……もう手遅れかもしれんけど渡しておこう。何せこんな時代だから子供が出来るのはめでたい事だが、夫婦だけの時間というのも大切だと思うし。

 

まあ、そんな感じで俺は外のモンスター狩って村の食料事情に貢献したり、カルに探索の話をしながら過ごしていた。

 

ただまあ、俺は流れ者だ。そろそろ出発してアクセルのいるキャタピラビリッジにでも行こうかなどと考えていた時だ。待ちに待った手紙が届いたのである。内容は……実に「バトー」博士らしい代物であった。まあそこら辺の言葉を除いて内容を纏めると、例の装置だが『当たり』だったようだ。

座標も分かった。タキオンテレポーター用の防護膜の材料になるタキオンマターは確保済み。つまり俺は……帰れるのだ。

待ちに待った時が来たというのに、何故か気が重く感じた。

……この重さが、この世界で得てきたモノの重さなのだろうか。

 

 

 

▲▲▲▲▲▲▲

 

 

 

思えば、望まずとはいえこの世界に来て俺は良かったと思う。

まず、姉以外居なかった家族が出来た。血は繋がっていないが、そんな物よりも大切に思える絆を得た。

年齢故に姉に頼らざるを得なかった稼ぐ手段を得た。誰かを守るために必要な力を得た。

金だって、今なら幾らでも稼ぐ方法がある。向こうに帰れば様々な物で縛られてしまうだろうが、そんな物はたやすく断ち切れるであろう程、自分は成長したと思う。

 

だが、同時に様々な物を失ってきた。力なく、守られる側でしかなかった自分はこの世界で得た師であり、母親のような人を奪われた。義弟の年齢相応の笑顔を奪われた。

奪われた相手に復讐を果たす為に義弟と共に各地を転々としていた、あの頃に出会った最愛の彼女も、崩壊したこの世界では満足に治療を受けさせてあげる事が出来ず、病に命を奪われた。

悪人相手とはいえ、両手を血で染め上げた。数え切れないほどに。はじめて人を殺した時は、思い出せない程吐いたのも、今では遠い記憶のようだ。

 

この世界が自分の住む地球の未来の姿なのか、それともまったく別の世界なのかは結局判別つかなかったがそんなことはもうどうでも良い。ここも、大切な俺の故郷だ。

あちら側に残してきた姉が居なければ、俺はあちら側を捨ててこちら側で得た友人達とともに生きていっただろう。しかし、あの人には家族は俺しかいない。血の繋がった家族という意味では、自分も姉一人だ。残していくには、俺はあの人に恩を借り過ぎている。

だから、帰らなければいけないのだ__女尊男否は広がっているが、文明の崩壊はしていない。俺の故郷の地球へ。

 

 

「……調整、完了したよボケナス」

「最後までありがとうバトー博士。コレで、姉さんに無事だって事を伝えられる」

「まあ、ボクとしては数少ないトモダチが居なくなるのが寂しいけど、ボケナスが決めた事だからねぇ」

「……なんなら一緒に来るか?サースデイも一緒に」

『イ・ヤ・デ・ス』

「ハッ、お断りするよ!そもそも君の無茶に付き合ってたら何個命があっても足らない!大体分かってるの?『タキオンテレポーター』は確かに時空間を飛んでいけるしボケナスの故郷に座標向けたけど、本来無機物専用なんだよ!『タキオンマター』製の防護膜で君とクルマを覆ってるから計算上は行けるけど、それでも100%安心って訳じゃないんだ!そんな命知らずな真似はボケナスだけですると良いよ!…・・・それに、ワカメやうすのろがたまに家に来るから一人ぼっちじゃないさ。ボケナスは自分の身の心配だけしてなよ」

「そっか」

「じゃ、ボクは装置の制御に行くよ。バイバイ、ボケナス。今までたのしかったよ」

 

いくよサースデイ。

そういって、隣にいるサースデイと一緒にバトー博士は制御装置の方に歩いていった。

年の離れた親友。それがバトー博士と俺の関係だった。不器用な人だし、口もいいとはお世辞でも言えないけど、この世界じゃ珍しいほどの良い人。こんな無茶にも付き合ってくれるし、罵倒癖はあるけど掛け替えの無い友人の一人だ。また一人ぼっちになってしまうのではないかと、ついあんな事を聞いてしまったが、どうやら自分の懸念はとんだ検討違いだったみたいだ。

 

 

「……さて、行くか」

 

別れが辛くなるからと、オレが行く時間はアイツ等には伝えていなかった。手紙は書き残したし、バトー博士に送ってもらえるように頼んだから心配は要らないだろう。

念のために、今回タキオンテレポーターに突っ込む用にカスタマイズしたバイク『サイファイ』の調子を見る。バイク専用エンジン「サイクロン」はご機嫌に唸った。防護膜も完璧にコーティングされている。車体はお陰で新車のようにピカピカである。

やっぱり良い腕してるなぁ……オレも便利だからサブジョブでメカニック技能鍛えたけれども、本職の戦友にはやっぱり及ばない。

最後のチェックも完了した。行き先は既に設定されている。後は突っ込むだけだ。

 

「……っ!」

 

意を決して、アクセルを全開にする。唸る光の渦の中に、オレは全速力で突っ走っていく。

あまりのまぶしさに目を閉じ、それでもバランスを崩さないようにまっすぐ突き進んでいった。

 

 

 

 

 

 

そして、やがて光は収まった。俺はバイクを止め、目を開ける。そこは……

 

 

傷一つない、大きなビル群。整備された道路。滞りなく動く信号機。

どれもこれも、かつては見慣れた代物だった。だが、それまでいた世界ではまったくありえない光景。

 

「……帰、れた」

 

声が、震える。

 

「帰って、これた。帰れたんだ……ッ!」

 

目の前が滲んでいく。二度と帰れないかと思っていた故郷の風景は、想像以上に心に堪えた。

__日本だった。それも、自分の家の近くだ。

 

「帰るんだ。家に。千冬姉が、待ってる」

 

俺、織斑一夏は世紀末な世界より帰還を果たした。姉さんは俺たちのあの家にいるだろうと、自分でも良く分からない確信を持って、俺はバイクを走らせた。

ようやく、帰れるんだ。急ごう、姉さんに、千冬姉に、『ただいま』を言う為に。

 





一回真っ当に恋愛させれば一夏も鈍感具合が少しはマシになると思うの。ただしヒロイン達からすると亡き妻という最大の壁も出来上がるという鬼畜仕様。まだセシルが死んで一年も立ってないから一夏も恋愛に関しては臆病になってるという()
セシルに一夏が惹かれた理由はMM2Rやってた人にはわかるかも知れませんが、復讐と戦いの日々の中で出会えた平穏な日常が彼女だったからです。ケン(2R主人公)からするとイリットの立ち居地に彼女が居ました。外での冒険や戦いの事を話したり、一緒にご飯食べてゆっくりしたり、そうやって過ごしていくうちにお互い惹かれあったようです。
因みに一年くらい時間がズレています。MM世界で4年位過ごしてたはずが、IS世界だとまだ三年も立ってなかったり。
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