絶賛春休みです。
後で聞いた話なのですが、どうやらネギ君に課題が出されていたようですね。何でも、期末試験で2-Aが最下位脱出できたら正式に先生になれるのだとか。
三日間ほど姿が見えなかったのは、集中勉強でもさせてたのでしょうか? 別に何でもいいですが。
何はともあれようやく休みですよ。あのヒゲグラから解放されて一安心です。
特に用もなくふらふらと出歩いてましたけど、自然と足がここに向かったんですよね、これが。多分、自分で思ってる以上にあのことが気にかかっていたのでしょうけど。
「おーい、キティちゃーん。開けてくださーい」
コンコンと扉をノックします。反応がありませんね。
「いないんですかー? 居留守ならキティちゃんの写真加工してないことないことばら撒きますがー?」
「やめんかバカ者!」
バンッ! と勢いよく扉を開けて出てきたのは、金髪幼女のキティちゃん。こんな
「ったく……何の用だ? まだ作戦決行までには日があるが」
「いやまあ、別に用はなかったのですがね。気が変わりました。決行するにしてもお互いの魔法は把握しておくべきかと思いますので暇なら相手してくれませんかね?」
キティちゃんはネギ君の血を吸って呪いを解くため、私は単に嫌がらせ目的でキティちゃんの手伝いをするわけですが、ある程度何ができるかは知っておいた方がお互いにいいと思うのです。
キティちゃんはふむと唸って手招きします。入れということでしょうか?
おじゃましますと中に入ってキティちゃんに着いて行くと、なんと地下室がありました。
奥に鎮座ましますは水晶に入った建物のようなもの。何でしょうね、あれ? ミニチュア?
「『ダイオラマ魔法球』」
キティちゃんが言います。
「私が造った別荘だよ。しばらく使ってなかったんだが、ここなら私も多少魔法が使えるからな。相手をするなら丁度いい」
「ほほー。で、どうするんです?」
「こうするんだ」
言うなり背中を押されました。
「へっ?」
一瞬の浮遊感。そして景色が変わりました。
「……へ?」
見渡す限り青一色。足元には魔法陣が描かれており、ずっと向こうにはあのミニチュアと同じような建物が見えます。
これは……もしかしてあのミニチュアの中……?
「ふふん、驚いたか?」
声に振り向いて見れば、キティちゃんが得意気な顔をしています。どういうことでしょうかね、これ。
「さっきも言ったが、ここは私の別荘だ。外とは時間の流れが違ってな。ここでの一日が外での一時間なんだよ。魔力も充溢してるから、力が封印されている今でも多少なら魔法が使える」
「ふーん……まあそこらへんの事情はどうでもいいのですけど」
何にせよ、転移魔法か何かでここに飛ばされたってことでしょうね。これだけの物を造るってのもなかなかにイカれた話ではありますが。
ともあれ、人に見られることなく魔法が使えるわけですね。懸念していたことが消えましたよ。
「着いてこい。お前の力を見てやる」
ニッと年不相応な挑戦的な笑みを見せるキティちゃん。ああ、なんか嫌な予感がしてきましたね、これは。ただ私の力を見てもらうつもりだったのに、それだけでは終わらなそうです。
広場の中央にて相対する私とキティちゃん。
魔法を使うには血が必要だと言うことで、体調に異常をきたさない程度に血を吸わせてあげましたが、どうにもプレッシャーがすごいですね。相手の見た目は幼い女の子だというのに。
「来い」
「では」
その一言で私は無詠唱
キュバッと空気を焼いて進む炎の矢は、しかしあっさりと同じく氷の
まあこんなものでしょう。次々行きます。
「ルベル・クラクル・カーバンクル。
「ふむ、17矢か」
私の詠唱を聞いて同じ数の矢を生み出すキティちゃん。でも私のはただの矢じゃないのですよね。
「――
「何!?」
「
私の左手に集まった火球が高速回転を始め、まるでチャクラムのような形状を生み出します。
「ほいさ」
障壁突破の恩恵で、本来なら物に当たると炸裂してしまう矢が貫通力を得るため、このような芸当ができるようになります。
キティちゃんが放った矢をやすやすと切り裂き、本体へと迫る私の魔法はそれなりに驚いてくれたようです。
若干慌てた様子で右へと跳んで避けられました。
「ふむ、面白い! なかなか発想に富んでいるではないか!」
嬉々して私の魔法を褒めるキティちゃん。悪い気はしませんけど、完全になめられてますね。そりゃ経験差がそうさせるのでしょうけど、余裕マックスはさすがに肝に据えかねます。
「それはどうも。では――」
「――もう少し踊ってくださいな」
なので、その余裕顔をちょっとばかし崩してやりましょうかね。
無詠唱で放たれた三つの炎輪が飛び交い、キティちゃんに襲いかかります。
ひらひらと躱された挙句、指に引っ掛けてクルクル回された時はイラつきを通り越して尊敬すら覚えましたが、そうやって余裕かましてるがいいですよ。
「
唱えると同時、調子に乗ってたキティちゃんは『わぷ!?』とか言って炎輪の爆発に呑まれました。いい気味です。……おや?
「くく、キーワードで爆発を誘導できるのか。案外器用なことだな、銀ギツネ」
「……その呼び方広まってるんです? ルベル・クラクル・カーバンクル。
右手による魔法暴走を無視して、自らかけた上限の17を超えた27矢を放ちます。まさか上級生の、しかも不登校児にまで知られているとは。
「至るところでイタズラかまして、あのヒゲグラにまで追いかけられてれば嫌でも有名になるさ。リク・ラク・ラ・ラック・ライラック。
運良く暴走せずに撃てましたが、残念ながら同数の矢で相殺されます。やっぱり
うーん……そろそろ強い魔法でケリと行きますか。これだけ見せれば充分でしょう。
「ま、別にいいですけどね。ルベル・クラクル・カーバンクル。
「くくっ、大技か。リク・ラク・ラ・ラック・ライラック。
同種の魔法ですか。撃ち合う気ですね。ま、相殺くらいには持っていけるでしょう。
「行きますね」
「ああ、来るがいい!」
ほぼ同時に腕を振りかぶり、放ちました。
「
「
炎を纏った閃光と、闇色の吹雪が激突します。
対極であり同種の魔法のぶつかり合いは拮抗し、しばしのせめぎ合いが続きます。しかし――
「あ、やば」
強力な魔法はその範囲も大きいのです。必然、私の右手付近にも魔力が来るわけですね。
一瞬ならともかく、継続してそこにあり続ける魔力だった場合、私の右手が及ぼす影響は最早何を言わんやでしょう。
炎の閃光が手前からぐにゃりと捻じ曲がり、不規則な軌道を描いてすっ飛んで行きます。
「げ! おい逃げろ! いや、間に合わん! 障壁で防げ!」
キティちゃんが何か叫んでいますが魔法の音がうるさくて聞こえません。そしてもうこれ手遅れです。
結果として、私はキティちゃんの闇の吹雪の直撃を受けるはめになりました。無念。
「お、おい大丈夫か!? 茶々丸! 茶々丸来てくれ! おい外で見てるんだろ!? はや――く!」
ああ、そう言えばこの中で見てませんでしたねと思い返しながら、私は静かに目を閉じました。
こちらに出てくるラテン語は、一応調べて書きましたが間違いがないとは言えません。というか、おそらく間違ってます。
それっぽくしてはいますが、ラテン語わかる人は間違いを指摘してくれたら助かります。気にならない人はそのままどうぞ。
まだいくつかオリジナル魔法を考えてますので、今後を楽しみにしていただければ幸いです。