いやー、あの後は本当に面白――ゴホンゴホン、大変でしたね。
ネギ君が担任になると知ってショックを受けたらしいツインテガールこと
あの歳でくまパンはないと思います。しかも毛糸でしたし。タカミチが気まずそうに目を逸らしていたのが印象的でした。
説明を求めて学園長室まで着いてきた明日菜さんと黒髪ガールこと
修業とか課題とか、やや危なげなワードを口にする
木乃香さんは修業という言葉に首を傾げていましたが、勘づいたということはないでしょう。
ネギ君に木乃香さんを彼女として勧める学園長に(どうやら孫娘らしいです)トンカチで頭をぶっ叩くというハードなツッコミをしているのには少々驚きましたが、その後の反応を見る限りでは大体いつものことっぽいですね。
閑話休題、ネギ君はまずは教育実習からということになるそうです。それに対して『子どもが先生というのはおかしい』という尤も過ぎる明日菜さんの意見を、笑いながら流してネギ君に覚悟の有無を聞いたところで、指導教員さんが入って来ました。
ナイスバディなお姉さんです。胸おっきい。しずな先生というそうです。胸おっきい。わからないことがあればあの人に聞けばいいんですって。胸おっきい。
で、ネギ君は明日菜さんと木乃香さんの部屋に泊まることになりました。
木乃香さんはいいらしいんですが、明日菜さんが猛反対。ですが学園長の『仲良くしなさい』という一喝で事は終了。
私と学園長を除いた四人が部屋を後にしていきました。一日目から険悪になりましたねー。すっごく面白――大変そうです。いやごめんなさいやっぱ嘘つけませんめちゃくちゃ面白いです! ああちょっかいかけたい! 引っかき回したい!
「……君は聞いている通りの問題児っぽいのぉ……」
どうやら顔に出ていたようです。学園長の呆れたような物言いで我に返ります。
「私ってどんな風に伝わってます?」
「授業をサボってばかりのイタズラっ子」
「ああ、それであってます」
自覚はしてますし、私もそれで通してますしね。しっかり私という存在が固められているようで何よりです。
「フォフォフォ、筋金入りのようじゃな、取り繕うこともせんとは。しかしそうなるとまともに授業を受けるとも思えんのぉ?」
「ええ、受けませんけど何か? 学だけで言えばそれなりにありますし。今更中学生レベルの勉強をする気は起きないですねー」
問題行動のおかげできっちり七年間在籍させられましたが、そこらの大学の問題なら余裕で解ける程度の学力はあります。そうじゃなければ高度なイタズラ技術を生み出せませんし。あれです。ピ〇ゴラスイッチみたいなやつ。あれいいですよね。
「ふむ。
「……ほう? と言うことは何かしら手を考えているので?」
何かを含む言い方に私の興味が移ります。どんな方法があるのでしょうか。もしかして実力行使? そしたら通報しますけど。
「
「ええ。確かナマハゲでしたよね」
「著しく間違っておるがその通りじゃ」
矛盾してますねぇ。
魔法使いの間じゃやたら有名ではありますが、その姿についてはあまり知られてないのですよね。
強さだけは尾ひれも付いて広まってますから、脅しの文句には最適なのですが。
「そのナマハゲがここに在籍しておる」
「はぁ、ナマハゲが」
気のない生返事をします。いや、だって魔法世界にその名を轟かすナマハゲが、こんな
「今日の授業が終わったらここに来なさい。その者の元へ案内しちゃる」
「授業は受けませんが了解しました。後で来ます」
まあでも、その手の話には割と興味があります。例えナマハゲじゃなくても、それに準じる恐怖心を煽る存在はいるのでしょう。
私はイタズラに使えそうなら何でもいいのです。噂だろうが虚像だろうが。その姿を確認してみるのも一興でしょう。
授業をサボる宣言をして部屋から出ると、なんとそこには黒スーツ着用のグラサンをかけたヒゲが。
問答無用で手足を拘束され、無理やり教室へと連行されました。解せぬ。
面白くもなんともない苦痛な時間を終え、ようやく放課後になりました。
脱走しようと何度も試みたのですが、その度にグラサンに捕まってしまいましたね。あの人暇なのでしょうか?
もしかしなくても、私の脱走対策だったりしますかね。だとすればかなりハイレベルな人選だと思います。
まさかああまで私の脱走術を看破されるとは……! 魔法まで使って存在を偽装したりしていたのに、余裕で突破されて連れ戻されました。しかも他の生徒には気づかれないように。
あの人も多分魔法使いですね。じゃないと私の脱走術を見破れるわけはありませんし。大っぴらに魔法を使えないのがここで響きますねー……。小細工は通用しなさそうですし、不真面目に授業を受けるしかなさそうです。
ともあれ、いよいよナマハゲとの邂逅です。さあ、鬼が出るか蛇が出るか。いや、出るのはナマハゲ固定ですけど。
学園都市内の桜ヶ丘4丁目29番地にある、なんかいい感じのログハウスに住んでいるそうな。いいところに住んでますね、その人。
「おーい、エヴァや。おるかのー?」
カランコロンと扉についているベルを鳴らして、中のエヴァさんとやらに話しかける学園長。しかし返答はありません。
もう一度ベルを鳴らそうとすると、それより少し早く扉が開きました。
中から出てきたのはナマハゲ――ではなく女の子。でもこう、なんといいますか……。
「……ロボッツ?」
完全にロボットです本当にありがとうございます。いくらナマハゲと呼ばれていても、
「で、この人(?)がエヴァさんですか?」
「いや、違う。この者は茶々丸。それの
「あの……何かご用でしょうか?」
おずおずといった感じで口を開くロボさん。おお、滑らかに動きますね。動きだけなら人と変わらないレベルです。素晴らしい技術ですね。
……この技術、教えてもらえないでしょうか。
「うむ、エヴァはおるかの?」
「マスターですか? いますが……」
「どうした茶々丸。誰か来たのか……ってお前か、じじぃ」
不機嫌そうな声でのぞき込んで来たのは、小さな――いや、私もあんまり人のこと言えませんが、それよりも小さな女の子。
今度はロボットじゃありません。完全に人間の姿で、煌びやかな金髪。ロリコン大歓喜の美少女と言って差し支えない容姿の子でした。
まあ、尋常じゃなくレベルの高いロボットという線も無いではないですが、多分普通の女の子だと思います。
「おお、いたいた。紹介しよう。このロリがエヴァンジェリン・
「誰がロリかこのクソジジィ!」
少女の痛烈な蹴りが、学園長の顔にヒットしました。この学園長はなかなかどうしてハードなツッコミを受けがちですね。
でも……うーん……。この子が私の登校に関係するのでしょうか? ただ可愛い女の子ってだけですし。いや、確かに大好物ではありますが。
「そして、
「!」
今までは適当に流して、可愛い女の子ですねーぐらいの感想しか持っていませんでしたが、その言葉を聞いて意見が百八十度変わりました。
こんな小さな子が……
「ナマハゲ……!?」
「誰がナマハゲだ! おいお前私のことをどんな風に紹介したんだ!」
ガスガスと学園長の顔面を殴りつけるエヴァンジェリンさん――いやもう面倒ですしキティちゃんと呼びましょう。可愛いですねキティ。
いや違います。この子が
確かに吸血鬼の真祖であれば見た目は子ども、頭脳は大人を通り越して老人な感じでも不思議はないですが……。
「おい、そこのお前!」
ズビシ! と指を指される私。はい何でしょう?
「私に何か用があるのか? あるならさっさと言え」
「いや、ないですが」
「そうか……って、はあ!?」
いや、だって『
「ではさようなら」
「ちょちょちょ、待っ――おいこら待て! 早足で行くな――こら何加速呪文を唱えている! ――ってあいつ魔法使いか!?」
一人で勝手にコントをやっているキティちゃんを尻目に、その場から離れようとします。面倒事はごめんです。本物かどうかは知りませんが、そんなことはどうだっていいのです。
あーあ、せっかくネギ君に怖い話をしてあげようとしたのに、こんな女の子じゃ怖がらない――
「――
声と共に、突如目の前に氷が飛来します。危なっ! もう少しで当たるところでしたけど!?
振り返ってみると、キティちゃんの近くにガラス片が散らばっていました。液体もあるところを見ると、どうやら魔法薬のようですね……。それを触媒にして魔法を使いましたか。
「……何です? 私はあなたに用はありませんが?」
イタズラならまだしも、ケガをする可能性がある攻撃魔法を撃たれて黙ってられるほど私は温厚じゃありませんね。
イタズラには礼儀と節度があるのです。そしてこれはイタズラの域を越えています。
無闇に魔法を使うなとの教えですが、これは正当防衛ですよね? ということで――
「
私が撃てる最大本数の
「
「ストップじゃ」
と、撃とうとしたらその前に止められました。
ええー……さっきまでキティちゃんの下敷きになってたじゃないですか……。何でもう私の近くまで来てるんです?
腕を抑えられて仕方なく魔法をキャンセルします。むぅ。先にやったのはあっちなのに。
「全く……魔法は使えんと聞いておったのに、まさか17矢を撃てるとはの……」
「ああ、それは誤解です。使えないんじゃなくて、抑えてるだけです。ハンデがなければもっと撃てます」
全く。忌々しいこの右手さえなければもっと自由に魔法を使えたでしょうに……。切り落とすのは流石に憚られましたのでやりませんけど。
「む? ハンデとな?」
「ええ。見せましょうか?」
言うと肯定の気配を感じたので、
するといつもの通り、発動した魔法がぐにゃりと捻じ曲がり、危うく暴発しそうになりました。
すぐさまそれをキャンセルして、ほらね、と学園長の方を見ます。
「むう……これは……」
髭を撫でて訝しげに私を見つめる学園長。まあこんな反応も大体いつも通りです。
全く。本当にこんなハンデさえなければ――
「……こで」
「はい?」
どこか震えたような声。若干の怒りを孕んだようなその声の主はキティちゃんでした。
何か様子がおかしい……?
「貴様……どこで
「え? いや……どこでも何も、産まれた時からこうですけど……」
「嘘を吐くな!」
今度こそ、完全に怒りをそのままにぶつけて来ました。ええ? 私何か変なことしました?
「それは……その技は私固有の呪法のはず! なぜ貴様が
……前言撤回です。この子は私の何かを知っている可能性が出てきました。